私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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名前をどうすればいいのかわかない。リアルの人物名は問題になるし......
今回の話で出てくる人物の名前を変更してほしいと思った方は是非とも感想をください。


糸を繋げ

 

人間は、男女を問わず、自分が生まれもった容姿によって、必ず性格形成または社会的立場に影響を受ける。

人間は、その人の生まれつきの「容姿のタイプ」によって性格や能力を判断される。また、外見から判断され、特定の役割を期待されることを幼少期から積み重ねることによって、性格のうち、後天的に形成される部分がある程度影響され、人格そのものが変化する、ということも充分にあり得る。

程度の問題はあるが、容貌は、私たちの自己像、他人への認識、そして社会生活に何らかの影響を与えるのだ。

 

武偵高校 鑑識科ーー

 

「ーーお前が復顔をするのかよ」

 

「鑑識科の子達に頼んだらアッサリと承諾してくれたよ」

 

現場から切り抜かれたコンクリートを前に私と金次君はそんな会話していた。

鑑識科に復顔をしてみたいと頼んだら「構いませんよ。寧ろもっと頼ってください!」と言ってくれた。鑑識科には相談に乗ってあげた子がたくさんいるからね。人の縁とは大事だ。

 

「ほら、手袋をはめて。金次君も手伝ってよ」

 

「俺もかよ。どうやればいいかわからないぞ。というか、お前はわかるのか?この前、復顔の技術はないと聞いたが......」

 

「大丈夫。頼むついでに鑑識科から聞いてきたから。あと、ドラマなんかで見たことがあるし、それらも頼りにすればやれるよ」

 

「ドラマかよ......それで大丈夫なのか?」

 

「できないことはないさ。さあ、手伝って。これも科学だよ」

 

「誰のセリフだ」

 

私はシリコンの入った容器を金次君に手渡す。

まずはシリコンで型を作成しないとね。

 

「これでどうやるんだ?」

 

「こうやるんだよ」

 

私は金次君の手を取り、一緒にシリコンをすくい上げると型を作る為、死体の埋まっていたコンクリートーー顔が埋まっていた場所にシリコンを当て型取りをしていく。

共同で作業するのもいいね。

 

「なんか粘土細工を作ってるみたいだな」

 

「それと似たようなものだからね」

 

金次君はぎゅっとシリコンを当てて型取りをしていく。

力があるけど、あまり強すぎるとコンクリートが壊れてしまうよ。

 

数十分後ーー

暫くしてシリコンが固まり、形が崩れないようコンクリートから剥がしていく。

 

「ーー形が不細工だな......これじゃ役に立たないな」

 

「光の当たり方次第で影が形を作るんだよーーこれならどうかな」

 

型取りしたシリコンに手を加え、顔の半分を作成する。

うーむ、まだまだだね......鑑識科にはまだ敵わないかな。

 

「今の私にはこれが限界かな」

 

「そんな事はないぞ。素人の俺から見ても立派なものだ」

 

「ははは、お世辞かい?」

 

「褒めてんだよ。そんなに卑下するな」

 

「ありがとう。金次君からそう言われるなんて新鮮だね」

 

次に予め作っておいた頭蓋骨のレプリカに型取りした顔半分ーー左半分のシリコンを貼り付ける。

 

「顔の右側も作らないと感じが掴みにくい。左右対称じゃないけど見た目の違和感はない」

 

「そうなのか?てっきり同じかと思った」

 

人間の頭蓋骨は左右対称であることは滅多にない。ほとんどの場合で、何かしら歪みがある。骨の形を見ながら、顔の歪みに合わせて表情筋ーー粘土をつけていく。

顔に粘土を薄く塗る事で型との境をなくし、肉付けしていく。

 

「なんで皮膚を半分だけしか貼らないんだ?」

 

「顔の印象を見るためだよ」

 

そして皮膚を付けるのだが、顔全体に貼り付けると骨の形がわかりにくくなってしまうので、半分ずつ付けて顔の印象を見る。その後で全体の皮膚をつけて彩色し、毛穴やキメをいれていく。

 

「頬骨と鼻の形から日本人の系統だね。この人はきっと黒髪かな」

 

日本人の大部分は遺伝形質的には髪の色は漆黒であり、褐色や茶色を帯びている人は少数なので、黒のセミロングのカツラを被せる。

 

「茶色?黒色の眼球じゃないのか?」

 

「日本人の眼球色は黒と思われがちだけど、茶色なんだよ。遠目から見れば黒に見えるけどね」

 

義眼をはめ込む際、金次君がそんな事を言ってきた。

金次君、今度鏡で自分の眼を見てごらん。君の眼は見事な茶色だからさ。

それにこっちの方が写真の写りがいいからね。

 

「よし完成だ」

 

復顔が終わり、完成したのは美人というよりも愛嬌のある女性だった。

少し微笑むと、その丸く肉付いた頬にまで表情が溢れそうだ。

 

「10〜20代前半くらいか?でも白骨化していたし、もっと歳をとっていたかもしれないぞ」

 

「若い女性だよ。頭蓋骨のつなぎ目がまだあったし、歯並びもしっかりしていた」

 

頭蓋骨のつなぎ目を見れば、成人の年齢は分かるが、50歳を過ぎると特定が難しくなる。一方、成長途上の子どもや未成年なら、成長の度合によって、成人よりも細かく年齢を推定できる。たとえば、3歳の乳児なら、頭蓋泉門(ずがいせんもん)が埋まるので、1〜2年程度の誤差の精度で年齢を特定できる。

 

「それじゃ、この顔を基に行方不明者リストを当たってみようか」

 

 

後日ーー時刻は13時

私たちは東京足立区のとあるマンションの一室に来ていた。

遺体の身元が判明したからだ。名前は山中 苗さん。行方不明時18歳。

昨日の晩にリストを調べていると、捜索願の中に彼女が該当した。

そして、今日の朝に彼女の身内ーー母親である山中 由梨さんに連絡し事件の経緯を説明した。電話越しに母親はかなりショックを受けていた。

今日、私たちがここに訪れたのは詳しい話を聞くためだ。

リビングで座っていると、由梨さんがアルバムを持ってきた。

うむ、親子だからかーー彼女と同じように愛嬌のある女性だ。年齢は50歳ほど。ショックを受けたせいか頬の皺が目立つ。

 

「あの子に何が起きたか知りたいんです」

 

テーブルにアルバムを広げ、私たちに娘について語り出すーーその目に涙を浮かべながら......

 

「何としても犯人を見つけます」

 

そんな彼女を気遣ってか、金次君が励ます。

金次君は犯人が許せないのか、その顔には正義感が溢れている。

警察官の鑑だね。いや武偵の鑑かな?

 

「スポーツは好きでしたか?」

 

「ええ、特に野外スポーツが大好きで」

 

アルバムには外でスポーツをしている写真がある。その中の一枚に、

 

「スキューバダイビングもしていたのですか?」

 

「将来は資格を取るのが夢でした」

 

海でダイビングを楽しむ光景を撮った写真があった。

 

「娘さんはいなくなる当日か、その前日に誰かと出かけましたか?ダイビングとかビーチとか......」

 

「いいえ、私の知る限りでは」

 

「いなくなるまで貴女とずっと一緒だったのですか?」

 

「山田 キリオと一緒でした。キリオは今でも豊島区に住んでいます」

 

キリオね......私はアルバムの中に男と一緒に写っている苗さんの写真を発見した。

程よく日焼けした体格のいいスポーツマンタイプの男だ。年齢は20代。おそらくこの男がキリオだろう。

 

「そのキリオさんには娘さんがいなくなったーー当日、警察や武偵も話を聞いてきたのでしょう?」

 

「聞かれたそうですが、何もしてませんよ」

 

「何故わかるのですか?」

 

彼女の答えに金次君が疑問をもって尋ねる。

確かに何故そんなことがわかるのだ?

 

「彼は愛していました。羨ましいくらいに......」

 

「......喧嘩をしたことは?」

 

「愛し合っていれば喧嘩なんてしないでしょうーーあの子も夢中でした」

 

語り終えると口に手を当て、泣き出してしまった。

様子からして嘘をついてはいないね。

 

「お話ありがとうございました。全力で犯人を見つけてみせます」

 

「ーーええ、お願いします」

 

話を聞き終えると私たちは部屋を出た。

 

「どうだ零。さっきの話は本当に思えるか?」

 

「うーむ、嘘をついてはいないから本当じゃないかな」

 

「またお得意の心理学かーーこのセリフ何回目になることやら」

 

「さぁ?それよりも今度は豊島区に住んでいるキリオ氏に話を聞いてみよう」

 

由梨さんから聞いたキリオ氏の住まいに向かうことにした。

何かわかればいいのだが......

 

 

東京 富島区ーー住宅街

聞いた住所を頼りに来てみたが、立派な一軒家だ。表札には山田とある。間違いなくここだ。

キリオ氏は事件当時は21歳。現在は31歳で結婚しているそうな。

さて、どうなる事やら......私はインターホンを鳴らす。

 

「はい......どちら様ですか?」

 

ドアを開け出てきたのは、フェーブの黒髪の30代風の女性だった。

少し痩せ気味だが、不健康と呼ばれる程ではない。左手の薬指には指輪をはめている。おそらく彼女がキリオ氏の結婚相手だろう。

 

「突然すみません。私たち東京武偵の者です。あっ、こっちは私の助手です」

 

「だれが助手だ。お前の助手になった覚えはないぞ」

 

私と金次君は武偵手帳を見せ、身分を明かす。

ドラマなんかでも刑事がするからね。身元を明かせば相手も自分の事を相手に明かさなければいけないと思うし。

 

「武偵が何の用ですか?」

 

彼女が私たちに尋ねていると、

 

「沙良、誰が来たんだ?」

 

玄関に面した廊下の部屋から1人の男性が出てきたーー山田 キリオだ。

 

「実は、10年前の山中 苗さんが姿を消した件を調べています。上がってもいいですか?」

 

「......ええ、どうぞ」

 

家主のキリオ氏は少し警戒してか、間を空けて私たちを家に上がらせた。武偵は評判があまり良くないからかなー。

 

「彼女は......苗は見つかったのですか」

 

「殺されていました。何年も前のことです」

 

「おい⁉︎いきなり」

 

キリオ氏の問いかけに私は答える。

それに反応して金次君が慌てるが無視する。こういったときは、前置きはない方がいい。

 

「......そうですか。残念です」

 

キリオ氏は顔を伏せる。彼の妻ーー沙良氏も顔を伏せる。彼女も苗さんの事を知っているのか。

 

「家の中を見せてもらってもいいですか?」

 

「苗と暮らしたのは一ヶ月だけ。10年も前ですよ......ご自由にどうぞ」

 

「ありがとうございます。さあ、行こうか金次君」

 

キリオ氏の許可をもらい、家の中を調査していく。

調べている間、キリオ氏とその妻、沙良氏も付いてきた。自分達の家が調べられていれば気になるよね。

私と金次君が一階を調べていると、

 

「おや、これは......金次君。これを見てよ」

 

「ーーその水槽がどうかしたのか?」

 

広くピカピカしている黒塗りの床が張ってある、リビングの一室に水槽を発見した。

4面の150cmのガラスの水槽だ。

 

「これはミノカサゴですね。色合いが綺麗だ」

 

「ええ、そうです。私の妻が好きでね......苗も好きだった」

 

水槽の中にはミノカサゴが泳いでいた。

私はヒョウモンダコとホオジロザメが好きだが......

 

「ーー見かけは綺麗だけど、背びれには強い毒がある」

 

私が水槽を鑑賞していると、ギシと何かが軋む音がした。

音のした方を向くと、キリオ氏が歩いていた。

 

「何か?」

 

「すみませんが、床を調べてもいいですか?」

 

キリオ氏が立っている床が軋んでいる。立派な家なのに......

足を退けてもらい、床を調べていると、

 

「板がそっているのですよ」

 

「初めからそうよ」

 

夫婦揃って床について話し出した。

うーん、成る程ね。

 

「海水魚の水槽をここに置いたことはありますか?」

 

「多分......ずっと前に。なぜ?」

 

「誤ってこぼした事は?例えば壊れて」

 

「覚えてませんよ」

 

「自由に見てもいいのですよね?」

 

私の質問にキリオ氏は「ええ」と短く答えた。

私は床に伏せ、バタフライナイフを取り出すと軋んでいる板を剥がした。簡単に剥がれたね。

 

「何なんですか一体?そこに何かあるのですか?」

 

「終わったら戻しますよーー見てご覧、金次君」

 

「これは砂か?」

 

リビングの板の下から砂つぶを見つけた。死体についていた砂つぶは水槽のものだった。

 

人工の砂ーー海水魚の水槽

 

「キリオさん、水槽はここにあった。ガラスが割れて海水と人工の砂がここに溢れたんでしょう?」

 

私の問いかけにキリオ氏は顔を伏せ、妻の沙良氏も顔を伏せ夫の後ろに隠れた。

 

「すまないが帰ってくれ」

 

「いいですよ。また来ますのでーーそれじゃ行こうか金次君」

 

「って、おい⁉︎零」

 

採取した砂を持って家を後にする。

 

「いいのかよ零。あの夫婦メッチャ怪しいぞ」

 

「金次君から見ても怪しいかい?まあ、同意見かな」

 

あの人は怪しい。おそらく犯人は間違いなく''あの人''だ。

 

「下手したら証拠を消されるかもしれないんじゃないのか?」

 

「大丈夫。証拠は消されないよ」

 

あの証拠はまず消されない。これは保証できる。

あの人は消そうとするが、できないだろう。

あとは逮捕するためのステージを作るだけだ......これには金次君が最適かな。

 




次回はキンジ視点になるかもしれません。
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