私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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実家で休ませてもらったからお礼を

 

「うーん......はぁー、よく寝た」

 

目を覚ました私は身体を起こし、大きく伸びをして周りを見渡す。

布団が敷かれた和室ーーどうやらここが金次君の実家のようだね。

眠ってしまった私の為にわざわざ布団まで敷いて寝かせてくれるなんて、本当に優しいね。

感傷に浸っていると、ガラッとふすまを開けて、

 

「よう、起きたか零」

 

金次君が入ってきた。こらこら、ノックくらいしたまえ。いや、ここは金次君の実家だし、それにふすまをノックするのは不自然かな。

 

「いや〜ごめんね。実家にお邪魔させてもらってさ」

 

「別に気にすんな。休ませるには俺の実家が近かったからな」

 

近くにね。豊島区からここまでとなると......巣鴨辺りかな。

見るからに和風でかなり古いが、この部屋の作りからして広い家だ。

豊島区で古い一戸建ての多い住宅街となると巣鴨くらいだね。

 

「そうだ零。寝ている間にお前の親父さんから電話があったぞ。何でも今度の土曜か日曜に実家に帰ってこいだとさ」

 

父さんから?珍しいね。父さんは自分から電話を掛けることは滅多にない。

私の知る限り、自分から誰かに電話を掛けた事があるのは8回くらいだ。

 

「教えてくれてありがとうね金次君」

 

私がお礼を言うと、金次君は「ああ」と短く返答した。

しかし、電話があったという事は彼は私の携帯を開いたという事だよね。まあ、そこは大目に見てあげよう。事件の時、彼を囮に使ってしまったし、これでおあいこにしよう。

 

「あと、こう言ったら悪いが.....お前の親父さん電話を掛けるのにしつこいぞ。豊島区を歩くーーお前をおぶっている間、ずっと電話が鳴りっぱなしだった」

 

なんと⁉︎それなら電話に出るしかないね。

金次君の様子からして嘘はついてない。

父さん......電話くらい程々にしようよ。

 

「ごめんね。今度、父さんに会ったら注意しておくからさ」

 

「会ったらって、親父さんに今は会えないのか?」

 

「うん。何かさ海外で仕事をしているんだって」

 

「海外で仕事ーー何をしているんだ?」

 

「探偵だよ」

 

父さんは探偵をしている。それも人探し専門にしている。

人探しに関してはそこら辺の武偵よりも秀でていると思う。

前に仕事を手伝った事があるけど、本当に凄いんだよね。

20年も前に行方不明になっていた人ーー殺害された死体を見つけ出したのだから。

父さん曰く「生きた人間と死んでいる人間を探すのでは、時間と手間が違ってくる。依頼を受けた時点でそこを判断できれば探すのは簡単さ」らしい。

 

「珍しいな。今時、探偵なんて」

 

「なんか武偵は肌に合わないらしいよ。まさに、武偵が主流の時代に生き残った人さ」

 

「シーラカンスかよ」

 

シーラカンスね......うーん、何か父さんには合わない表現だ。

私が考え込んでいると、

 

「キンジ、連れの同級生は起きたか?」

 

「兄さん」

 

部屋に誰かが入ってきたーー男だ。

男にしては長いーー腰まである長髪、そして胸元を少しはだけさせたシャツを着ている。

その顔ーー目が金次君と似ている。さっきの金次君の発言からして、この人は......

 

「突然、お邪魔してすみません。初めまして、東京武偵高校1年の玲瓏館・M・零といいます」

 

「ああ、初めまして。俺は遠山 金一。キンジの兄だ」

 

やっぱり金次君のお兄さんだったか。なかなかのイケメンだね。

私の目から見て、かなりの修羅場を潜り抜けてきたのが分かる。

前に金次君からお兄さんは武偵庁に勤める特命武偵だと教えてもらったけ。

 

「取り敢えず、居間に移動しないか?起きて早々に悪いが、君と話をしてみたい」

 

おや?私と話をしてみたいとな。奇遇ですね〜私もアナタと話をしたかったんですよ。

 

「ええ、構いませんよ」

 

私はそう言って、金一さんと金次君の後に付いて行く。

寝ていた部屋から卓袱台のある畳の居間に移動した。

卓袱台か......私の家にはないな。

 

「まあ、座ってくれ。キンジ、台所からお茶と菓子を持って来い。客人に何も出さないワケにはいかん」

 

「あっ、お構いなく。突然、お邪魔してしまったのに......」

 

「気にしないでくれ。これも我が家のあり方のようなものだ。ほら、早くしろキンジ」

 

「分かったよ。兄さん」

 

そう言って、金次君を台所に下がらせる。

金次君と同じで律儀な人だな。この兄あって弟ありだね。

 

「すみません。何から何まで親切にしてもらって」

 

「キンジが君をおぶって帰ってきたから驚いたが、事情を聞いたら何でも『脳の疲労』で休眠に入ったそうだな」

 

『脳の疲労』ーーこれは衛生科と救護科の先輩から聞いた事だが、私の脳は人一倍疲労しやすく、限界を迎えると休息を欲して突然の睡魔が襲ってくる。

中学時代はこんな事はなかったんだけど......武偵高校に入ってからだな。

 

「そうなんですよ。武偵高校に入学してから休眠に入りやすくなって」

 

「武偵高ーーキンジから聞いたが、君は一般中出身者だそうじゃないか。何でまだ武偵になろうと思ったんだ?正直に言って武偵は危険な仕事だ」

 

「あー、それなんですが......」

 

私はオペラーー国立劇場で金次君から聞かられたように答えた。

 

「つまり親御さんに送り込まれたと......災難だったな」

 

「ははは、まあそんなところです」

 

金一さんは呆れ気味に答える。やはり兄弟だね。呆れ顔までよく似ている。

 

「でも入学してから悪いことばかりじゃないですよ」

 

「ほう?いい事でもあったのか」

 

「はい、中学では習わなかったことばかりーー武偵の授業は新鮮で学習意欲が湧いてきます。あっ、私は探偵科を専攻してます」

 

「探偵科か......あそこはドンパチとはあまり無縁だから危険はそこまでないか。そういえば、強襲科のキンジとは気が合うそうじゃないか。君が寝ている間、あいつが言っていたよ『零には本当に世話になっている』とな」

 

金次君がそんな事を言っていたなんて......私の前では喋った事はないのにね。あの照れ屋さん......

 

「金一さんは武偵庁に勤務しているのでしたね。今日はお休みですか?」

 

「いや、偶々仕事が早く終わったから実家に顔を出しにきたんだ。俺は......」

 

「乃木坂にお住まいですね」

 

「......!俺は君に乃木坂に住んでいるとは言った覚えはないが?」

 

金一さんは驚いて目を丸くしている。

はは、驚いた顔までそっくりだ。ここまでそっくりなのはこの兄弟くらいかな。

 

「さっき仕事が早く終わったから実家に来たといいましたよね?となれば巣鴨に近い場所にお住まいなのは確実です」

 

「巣鴨に近い場所なら他にもあるが?」

 

「金一さんが着ているシャツーーそれは乃木坂にある東京ミッドタウンのユニクロの品です。この東京でファション店は沢山ありますが、服の状態からしてかなり愛用していますね。そうなれば、ユニクロで買い物ーー失礼」

 

私は金一さんの顔をジーっと眺める。うん、顔色も良く健康だ。食生活は規則正しいようだ。

 

「俺の顔に何かついているのか?」

 

「顔色も良く健康ーー食生活はしっかりしている。コンビニで済ませず、ご自身で料理している。乃木坂周辺はコンビニが少ないからスーパー特に六本木ストアーで食材を買って調理してますね」

 

一人暮らしとなれば自炊するしかない。

金一さんの服装は綺麗だ。しっかりと洗濯をしている証拠ーー綺麗好きな人は料理が得意な事が多い。

どうせ料理するなら綺麗な環境ーーちゃんとした部屋で料理したいからね。

そして食材も選んでから料理する。コンビニで食材を買うとなると限られてくる。

 

「医学にも精通しており、外科医のライセンスを取得している」

 

見るからに清潔的で普段から衛生に注意している。これは医者によく見られる特徴だ。おまけに発音に英語のニュアンスが混じっている。

 

「身体に何らかの問題......この季節、長袖のシャツと冬物ジーンズを着ている様子から自律神経が狂っており、体温調節がうまくできていない様子だ」

 

「驚いたな。まさか、それだけの情報で俺の事を分析するとは......とても一般中出身とは思えん」

 

「明白ですよ」

 

金一さんから絶賛されたが、私はまだ未熟者ーー知識が足りていない。まだまだ勉強することは沢山ある。

 

「そして変わった趣味、いえ性癖をお持ちですね」

 

最後に私は気になっていたことを言う。これは大事な事だ。今後、金一さんが人生を全うするために‼︎私からの警告なのだ。

 

「.........それはどういう意味だ?」

 

「女装癖があるでしょう?」

 

一瞬だが私から目を逸らした。ビンゴだね。

 

「......なぜそう思うんだ。理由があるのだろう?」

 

「貴方は歩く時、何度かつま先に体重を乗せて歩きましたよね?一般的に男性は踵に体重を乗せて歩くのに......見るからに足に怪我を負っている様子はない。そうなると、よく頻繁につま先に体重を乗せて歩くーーこれは女性の歩き方です」

 

女性の私はつま先に体重を乗せて歩くから、金一さんの歩き方ーーつま先に体重を乗せて歩くから変だなと思ったんだよね。

 

「髪の手入れもしっかりしている。仕事終わりにシャワーを浴びてきましたね。香りからして、これは女性に人気があるティエラコスメティクスのシャンプー」

 

おしゃれを思いきり楽しむ大人のための、美髪ベースメイクシャンプー・トリートメント。

カラーリングやパーマによる乾燥、紫外線のダメージから髪を守り、艶やかでしなやかな髪へ導く。

熱に反応して蓄積ダメージを補修するナノリペアー成分や、アルガンオイル、紫外線ダメージから守るシアバターなど、美髪成分を贅沢に配合しているから大人の女性に人気がある。

因みに私はFORM/フォルムを使っているけどね。

 

「お肌の手入れにも気を使っていますね。男性にしては肌の水分と油分のバランスが取れている。女装時の服装は......」

 

私が続けて結果を喋ろうとしたら、金一さんはガタンと卓袱台に顔をつけて、

 

「降参だ......それ以上は言わないでくれ」

 

燃え尽きた。真っ白に燃え尽きてしまった。ジョーいや、金一‼︎立つんだ金一‼︎

 

「そんなに落ち込まないでください。金一さんはパーツが整ってますし、女装しても大丈夫ーー綺麗だと思いますよ」

 

「ガバッ....!」

 

「それに趣味は人それぞれですし......」

 

「......もうやめてくれ」

 

まずい⁉︎さらに落ち込んでしまった。言い方がまずかったか......でも正直に言っただけだ。金一さんは見るからに美形だし、女装ーー化粧や服装次第では女性にしか見えないだろう。

 

「何か理由があるのでしょう?お仕事の関係ー潜入調査ですか?」

 

「......キンジが信頼している君になら話してもいいかもしれんな。実は......」

 

そう言って金一さんは身の上ーー遠山家の男子について語り出した。

ヒステリアモードーー性的興奮で自身の能力を何倍に引き上げる遺伝子。自分たちは遠山 金四郎の子孫である事。

 

「成る程......金次君が異性で傷ついたのはそれが原因だったのですね」

 

「キンジが君に話したのか?珍しいな。あいつがことを女子に喋るとは......」

 

「前に彼を分析してみたんですよ」

 

「あいつはわかりやすいからな。君にはお見通しか」

 

金次君はすぐにわかるからね。金次君の事を考えていると、

 

「お茶と菓子を持ってきたぞ」

 

台所からお茶と菓子を持って金次君が戻ってきた。

噂をすれば何たらだね。

 

「零、兄さんと何を話していたんだよ?」

 

「人生についてさ♪」

 

そう言って出されたお茶をズズッと啜る。はあー、お茶がうまい。

 

「人生って、兄さんこいつに助言でもしてやったのかよ」

 

「まあ、そんなところだ」

 

「そうそう。特に女装について金一さんから助言をいただきました」

 

ジョークで言ったつもりだったが、金一さんはまたしても卓袱台に顔をつけてしまった。

そんなに恥ずかしいのかな?

 

「......まさか、兄さんを分析したのかよ⁉︎」

 

「あー、うん。女装は趣味ではなく、仕事をするために必要なトリガーだという事をね」

 

「......ゴフッ......!」

 

「頼む。それ以上は言うな。兄さんのライフはもうゼロだ」

 

まさかここまでとは......意外だったな。金一さんを女装ネタでいじるのはやめてあげよう。しかし、反応を見ているとオモシロイ。

 

「それと君の事ーーヒステリアモードについても聞かせてもらったよ」

 

「......ッ......!聞いたのか。軽蔑しただろう?」

 

「どうして私が金次君を軽蔑する必要があるの?」

 

「気持ち悪くねぇのかよ?女に興奮して強くなる体質なんて......」

 

金次君は中学時代にその体質を女子に利用されて、都合のいい正義の味方として使われていたそうな。

だから異性や正義の味方という言葉に対して、あんなに凹んでいたのか......トラウマってやつかな。

 

「全然。金次君はご先祖様が嫌いかい?自分にそういう体質を受け継がせた家の人がーーお父さんやお兄さんを含めて」

 

「そんなわけねぇだろう‼︎」

 

金次君は声を張り上げて否定した。

 

「金次君。君がその力を代々受け継いだのには、何か意味がある筈だよ」

 

「意味って、何だよ?」

 

「力には大きな責任が伴う。力を受け継げるのは自分を戒めることができる人間」

 

「ーー誰の名言だ」

 

「自論だよ。金次君がその力を受け継いだのは、君が力の使い方を正しいものにできる人間だからだよ」

 

力といっても様々なモノがあるけどね。

 

「......力には正しいものがないようにも聞こえるぞ」

 

「力は無数にある。だが正しい力なんて存在しない」

 

「全部間違いだと言うのか......?」

 

「違うよ。それを正しいものにしていくんだよ。金次君が自分の力を正しいものにできそうないなら、私が隣に立って一緒に正しいものーー誇れるものにしてあげる」

 

金次君は何だか放って置けない。入学してから彼は危なっかしい所があるからね。私が隣に立ってあげないと。そして、力の使い方を教えてあげるよ。タダシイモノヲネ。

 

「そんな事を言われたのは初めてだ」

 

「よかったじゃないかキンジ。お前のことを受け入れてくる女子がいて」

 

いつの間にか金一さんが復活していた。誰が復活の呪文を唱えたのかな?

 

「キンジ、この子を相棒にしてみたらどうだ」

 

復活して早々、金一さんがそんな事を言ってきた。

相棒か......それはいいアイデアだ!それなら隣にいて講義できるしね。

 

「相棒って、零はいいのかよ?こんな俺でも......」

 

「私は金次君と相棒になりたいな。これからずっと」

 

まあ、高校卒業か長くて大学までは相棒でいたいな。

 

「そ、そうだな......相棒ーー武偵としての相棒だよな」

 

どうしたんだい?そんなに顔を赤くしてさ?私は何か変なことでも言ったかい?

 

その後、3人で卓袱台を囲んで雑談を交わした。

金一さんとはリボルバーの話で盛り上がった。彼はコルト・シングルアクション・アーミーを使用している。

試しに持たせてもらった。うーむ、素晴らしい。

 

「ピースメーカーは偉大な銃ーー世界で最も高貴な銃だと思いませんか?」

 

「わかるか⁉︎俺もそう思うんだよ」

 

金一さんが私の言葉に食いついてきた。

そんなに目を爛々と輝かせるとは、本当にこの銃を誇りに思っているんだな〜。けど、この銃は平和の作り手と銘打っているが実際は暗い事情があるんだよね。西部を征服した銃ーーアメリカの先住民達を......おっと、この話はやめておこう。

 

「リボルバーに1発ずつ弾を込めていると何だか命を吹き込んでいるような感じがしません?」

 

「ああ、シリンダーを出して1発ずつ弾を込める、あの感覚がたまらない」

 

「そんなに回転式拳銃はいいのかよ兄さん?あれは最大で6発しか入らないだろう」

 

なんて事を言うんだよ金次君!君にはリボルバーの魅力がわからないのか。彼はオートマチックだったな......

 

「キンジ......それは宣戦布告として捉えていいのだな」

 

金一さんは私からピースメーカーをヒョイと取り返すと金次君に向けて、ジャキッと構えた。

 

「ごめん、兄さん!だから銃を向けないでくれ!ここで撃ったらマズイから。近所迷惑になる」

 

「そうですよ金一さん。その銃は高貴な銃ーー人を撃つための銃じゃないのですから」

 

ここで流血沙汰は面倒なので私は止めに入る。

 

「まだ金次君にわからないか〜、リボルバーのクラシカルな美学が」

 

「何だよクラシカルな美学って?」

 

クラシカルな所がリボルバーの最大の魅力なんだけどな......金次君に今度、リボルバーについて講習してあげようかな。

 

「そういえば零もリボルバーを使っているんだったな」

 

金一さんが訪ねてきた。

私だけ手の内を明かさないのは失礼なので、ホルスターからそれを抜き、金一さんに渡した。

 

「ウェブリー・リボルバーか......それも初期モデルのウェブリーMr1とは中々の年代物を使うんだな」

 

「イギリスを代表する中折れ式リボルバーだから好きなんですよ」

 

中折れ式リボルバーあるいはヒンジフレーム式リボルバーとは、文字通り銃のバレル部分が折れる仕組みになっており、そして弾の排莢、装填ができる。

詳しく言うと、銃身の付け根の真下あたりに、ジョイント部分がある。リアサイト付近にある、止め金を外せば、シリンダーごと前へ折ることができ、自動的に排莢が行われる。西部劇でおなじみのピースメーカーより、少しばかり進化したリボルバーだ。

 

「フレームの強度から威力の強い弾が使えない。装填は早いが、機構の複雑さがあだとなり、今はスイング・アウト方式のリボルバーにとって代わられているが、それもまたこの銃の個性だと思うな」

 

「おお、まさかそこに個性を見出す人がいるとは話がわかりますね」

 

やはり金一さんとは話が合う!これを気に私も金一さんと同じ銃ーーピースメーカーを使ってみようかな〜装備科にお願いすれば用意して貰えるかも♪

 

 

「すっかり話し込んでしまったな」

 

「いいえ、楽しかったですよ。リボルバーについてこんなにも語ることができて」

 

時刻は18時ぴったりだ。本当に話し込んでしまった。お腹が減ってきたな。

 

「取り敢えず、なんか食べるか。零も食っていけよ」

 

金次君が提案してきた。嬉しい話だが家で休ませてもらったし、お礼はしないとね。

 

「だったら私が作るよ」

 

「料理できるのかよ?でも客人に飯を作らせるのは......」

 

「いいよ。気にしないでテーブルに座って待っていたまえ。金一さんもいいですよね?」

 

「構わないが......うちの台所にある食材では和食くらいしか作れないぞ」

 

ご心配なく、限られた食材で料理を作る事で新しい発見があるかもしれない。寧ろ、楽しい状況ですよ!

2人の了解を得て、私は台所に移動した。

 

「えーっと、何があるかな?」

 

冷蔵庫を開けて、食材を確認する。

卵、玉ねぎ、鶏肉、トマトケチャップーーこれならオムライスができるね。

私は早速、調理を開始する。

 

数十分後ーー

チキンライスが完成した。あとは溶き卵を乗せるだけだ。しかし、それだけでは何か足りない。せっかく、実家で休ませてもらったのだから、美味しいーーアレンジを加えたモノを出したい。

他に何かないか探しているといい物を発見したーーねりからしだ。

これはいいぞ!私は早速、チキンライスにねりからしのチューブを丸ごと一本加えて混ぜた。ねりからしはいいんだよね〜食べるとスカッとする。

 

「他には何かないかな?」

 

探してみると、あるある。様々な食材が置いてあるではないか!探せばあるものだ。

辛子明太子、唐辛子、わさび、ショウガを発見した。全部刻んで混ぜて味見してみた。うーむ、まだ何か足りない。

フッと台所を見てみると、にんにくを発見した。これだ!

 

 

 

「お待たせしました」

 

私はできたオムライスを持って、居間に戻ってきた。

 

「オムライスか......よくうちの食材だけで作ったものだ」

 

「意外だったぜ。まさかお前が料理できるとはな」

 

失礼だな金次君!私だって料理くらいできるさ。

 

「ほら、金次君。あーん」

 

私はスプーンでオムライスをすくって金次君に食べさせようとした。

 

「おい⁉︎ガキじゃないんだから変な事すんな!」

 

「ははは。キンジは恥ずかしやがり屋だな。いいじゃないないか相棒から食べさせてもらえ」

 

金一さんは面白そうに笑って眺めると、オムライスを口に運んで、

 

「自分で食うから必要ない」

 

金次君はそう言ってタイミングぴったりにオムライスを口に入れて、

 

「「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎あひは!ふひは!」」

 

兄弟揃って断末魔を叫んで、足をバタバタさせ卓袱台をひっくり返した!

2人ともどうしたのさ⁉︎私が疑問に思っていると2人は「み、水ぅぅぅぅ‼︎」と叫ぶながら這って台所に駆け込んで行った。

 

「これって、私のせいかな?」

 

何であんなに叫んだんだろう?味見した時、私は何ともなかったけどな。

 

 




今度はシチューにしようかな

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