私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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本当の相棒

キンジ視点

 

ーー兄さんが死んだ。

俺は、いつものように強襲科で訓練をしていると、急に教務科から呼び出しをくらった。

何事かと思い、教務科ーー職員室に向かうと、そこで浦賀沖海難事故を聞かされた。

日本船舶のクルージング船・アンベリール号が沈没し、乗客1名が行方不明となり......死体も上がらないまま捜索が打ち切られた。

死亡したのは、船に乗り合わせていた武偵......遠山 金一。俺の兄さんだったーー警察の話によれば、乗員・乗客を船から避難させ、そのせいで自分が逃げ遅れたのだそうだ。

だが、乗客たちからの起訴を恐れたクルージング・イベント会社、そしてそれに焚きつけられた一部の乗客たちは、事故の後、兄さんを激しく非難した。ネットで、週刊誌で、そして遺族の俺に向かって吐かれた、あの罵詈雑言の数々。

ーー兄さんはなぜ、人を助け、自分が死んだ?

ーーなぜ、助けた人間から罵倒される?

ーーなぜ、スケープゴートにさせられた?

ーーヒステリアモードのせいなのか?

ーー武偵なんかをやっていたからか?

学校にいる間、俺の頭の中は様々な疑問で一杯だった。訓練について行けず、初歩的なミスを連発した。教務科の怒鳴り声も、どこか上の空で聞いていた。

フラフラした足取りで歩いていると、いつの間にか校門の前に来ていた。このまま、自分の部屋に帰ろう。1人になりたい。そのまま、校門を出て、寮に戻ろうとしたら、

 

「金次君」

 

校門の陰から零が姿を現した。まっすぐと俺の顔をとらえ、哀れむような目で見てきた。

 

「......何の用だ。何もないなら退いてくれ」

 

今は誰とも喋りたくないだ。頼むから、俺を1人にしてくれ。

 

「ちょっと、私の部屋まで付き合いなよ。なぁに、直ぐに済むからさ」

 

零は校門の向こうーー女子寮がある方角を親指で、クイクイと指す。

今は付き合っているヒマはない。

 

「悪い......また、今度な」

 

俺は零の横をそそくさと通り過ぎるが、後ろからガシッと手を掴まれた。

 

「離してくれ......いや、離せよ」

 

「いいや、離さないよ。そんなヒドイ顔をしている相棒を、このまま帰してたまるか」

 

ヒドイ顔?鏡がないから分からないが、零が言うくらいだーーきっとヒドイ顔なんだろう。

しかし、なんで俺のことを心配する?ああ、成る程な。お前もクルージングの事故を知ったのか。コイツなら、俺のことを観察すれば分かるか。

俺は零の手を振りほどき、そのまま逃げようとしたが、爪を立てられた。

 

「いてっ」

 

「いいから、黙ってついて来てよ」

 

俺の手を引っ張り、急ぎ足で寮に向かって歩いていく。

 

 

 

女子寮に到着すると、そのまま零の部屋ーーリビングに通された。

部屋の中は相変わらず、本や訳の分からん実験器具でいっぱいだったが、そんな事どうでもよかった。

 

「まあ、ソファーに座ってよ。コーヒー出すから」

 

俺を1人がけ用ソファーに座らせて、キッチンの方に向かった。

キッチンからは、零がスイッチを入れたのだろうーーゴポゴポとエスプレッソマシンが豆を焙煎している音が聞こえる。

暫くして、零が戻って来たーーその手に週刊誌を持って。

そのまま俺の向かい側ーー同じ1人がけ用ソファーに座った。

 

「聞いたよ。金一さんの一件。大変だったよね」

 

「慰めの言葉を言う為に、俺を部屋に入れたのかよ」

 

零はパラパラと、持ってきた週刊誌を確認するように眺めるーー兄さんを非難した記事だ。

そんな不快なモノを俺に見せないでくれ。

 

「しかし、マスコミも言いたい放題、やりたい放題だネ。金一さんは命懸けで、乗客を救ったというのに」

 

やめてくれ。

俺の気持ちをつゆ知らずか、零は記事を見せてくる。

 

「金一さんも災難だネ。正義の味方が、これでは悪党みたいだ」

 

「ヤメロヨ」

 

俺は自分でも驚くほど、低い声が出た。

それ以上、兄さんを侮辱するな。

 

「まったく、金一さんは大変だネ。自分がちょっと行方不明になったくらいで、凹むような金次君をーーダメな弟を持ってさ」

 

「やめろって言ってんだろうが‼︎」

 

俺は思わず、零の制服の襟を掴みそうになったが、寸前の所で思い留まった。

 

「ねぇ、金次君。金一さんは死んだと思うかい?船が沈没したくらいで、ましてや、逃げ遅れるようなヘマをするような武偵だと思うかい?」

 

ーーやめろ。やめてくれ。お前まで兄さんを侮辱するのか?俺の相棒であるお前が。

 

「はぁー、後輩の鏡であるプロの武偵が、あの体たらくでは、未来ある武偵の今後が心配だネ。まったく、あのクソ武偵は......」

 

「それ以上兄さんを侮辱すんじゃねえ‼︎俺の敬愛するあの人をーー正義の味方を悪く言うな‼︎」

 

「だったら......生きてるって、信じなよ‼︎君の大好きな兄さんを‼︎君が両親を失って、失意のどん底にいた所を救ってくれ正義の味方をさ‼︎」

 

零のその言葉を聞いて、俺はナニかを撃ち抜かれたような錯覚を覚えた。

今なんて言った?生きてるって......待てよ。俺はいつから兄さんが死んだと思っていた?

 

「金次君。今、この瞬間、最も金一さんを侮辱しているのは君だよ」

 

「なんでそうなるんだよ⁉︎俺がいつ兄さんを侮辱した⁉︎」

 

俺が兄さんを侮辱するなんてあり得ない。侮辱しているのは、世間の方だ。

 

「君が自分のお兄さんをーー遠山 金一を死んだと勝手に決めつけて、それで終わろうとしている。それは金一さんにとって最大の侮辱だよ」

 

零の言葉に俺は何も言い返せなかったーーただ、黙って聞く事しかできなかった。

 

「マスコミが、世間が何だ‼︎ナニが『遠山 金一は死んだ』だ‼︎そうやって弟である君が、勝手に解釈してしまったら、金一さんはーー君のお兄さんは本当に死んでしまうじゃないか‼︎」

 

零は、自分と俺との間にあるテーブルをバァン‼︎と手で叩きつける。

その動作に俺は活を入れられた。同時に目が覚めたように思えた。

そうだ......俺は兄さんを......あの人を死んだと勝手に解釈していた。しかし、

 

「捜索はされたが、兄さんは発見されたかったんだぞ」

 

「死体は上がったのかい?」

 

「いいや......上がっていない」

 

俺の一言を聞いて、零は「ふむ」と言い、何処からかパイプを取り出し咥えたーーツヤのある黒いパイプで『M』と金字の刻印がしてある。

おいっ!お前、未成年だろうが!何で平然と吸ってやがる。いや、この匂いは精油か。

そのまま、パイプを吹かしながら、ソファーの肘掛け部分をトントンと指で叩く。これは、零が思考している時に見られる癖だ。

 

「カオスのカケラを再構築してあげよう」

 

「突然どうした?頭でも打ったか?それとも変なモノでも食ったか?」

 

零がワケの分からん事を言い出した。カオスのカケラを再構築って、何だよ。本当に何があった?

俺は考えられる限りの事例を上げる。

頭を撃たれるーーコイツなら撃たれるヘマはしないな。

変なモノを食べるーーコイツは昔から変なモノを平然と食う。

うっ、こいつの手料理を思い出すと胃が......⁉︎

ダメだ。分からん。

 

「何か前に、りこりんが私のパイプを見つけて、謎解きするときはコレを咥えて、さっきのセリフを言ってほしいってさ。リクエスト通りにしてあげたら、大爆笑してたね」

 

理子......お前、零に何を吹き込んだ?大方、アニメの台詞だな。

それと謎解きだと?どういう事だよ。

 

「なあ、零。謎解きって、あの事故に何か思う事があるのかよ?」

 

「そもそも事故という前提が間違っているのだよ」

 

零は一旦、言葉を区切り「フゥー」とパイプを吹かす。その姿は、どこか優雅さを感じさせる。

吹かし終えると、再びパイプを咥えながら、週刊誌を眺める。

 

「沈没の原因は機関ーーエンジントラブルとあるが、大嘘だね」

 

「大嘘って、警察が調べたんだぞ?嘘ついて何になるんだよ」

 

「今の時代、エンジントラブルで船が沈没するなんて、そうそう起きるモノじゃない。沈没の原因の大多数を占めているのは、他船との接触なんだよ」

 

零はソファー近くーー隣にあるテーブルから一冊のファイルを俺に寄越した。何だコレは?

俺は零に断りをいれてから、ファイルを開く。

それは近年、起きた船舶事故を纏めたモノだった。

零の言う通り、船舶事故ーー特に沈没は他船との接触が原因だ。

 

「これが何の証明になるんだ?いや、まさか......!」

 

「君も私と組んだおかげで、少しは頭を使えるようになったようだね。関心関心」

 

零は「ふふふ」と笑ってみせる。

うるせぇ、大きなお世話だ。

 

「あれはただの事故ではなく、故意に起こされた事件だってのか」

 

「その通り」

 

俺が閃いた可能性を伝えると、零はコックリとうなづく。

 

「私の推理いや、分析では、船体の外板ーー船底それも浮力タンクに近い部分に、風穴を開けて沈めたんだろう」

 

今、推理じゃなく分析に言い換えたな。そこは素直に推理って、言っておけよ。こいつは何故か推理という言葉を使いたがらない。

 

「浮力タンクは、その名前の通り船体を海に浮かせる役目を果たす。そこを......パアン!」

 

零は手をグッと握り、パッと開く。コレは爆弾を表現しているのか?

 

「一体誰が船を沈めたんだよ?沈めて何になる?まさか、クルージング会社が保険金目的で、沈めたんじゃないだろうな」

 

「まあ、悪くない例えだね。私がその会社ーー保険金目的で沈めるなら、7通りほど思い付くが......」

 

「やめろ!やるんじゃない!お前なら本当にやりそうで怖いんだが......!」

 

「失礼だなー、ほんの例えだよ。金次君は真に受けすぎだよ」

 

零はぷくっと頬を膨らまる。普段、クールな印象のコイツがこんな動作をすると、新鮮な感じがするな。って、今は見惚れている場合じゃない。

 

「その一つ、シージャックがポピュラーだね」

 

「シージャックって、船を乗っ取ってどうするんだ?ハナっから、船を沈めるつもりなら、余計な手間だろう」

 

「''シージャック''だからこそだよ。だだの事故なら会社に責任があるけど、船が乗っ取られ、オマケに沈められたなら、その船ーー船舶会社も立派な被害者だ。正規の手順で、保険会社から保険金が支払われる。さらに、沈没の責任をシージャック犯に向けられるし」

 

「なら、クルージング会社が沈没させたのか......!」

 

保険金の為に、そんなくだらない理由で俺の兄さんを......!

俺はクルージング会社を憎悪しそうになった。

 

「早とちりしないでよ金次君。件のクルージング会社は白だよ」

 

「何でだよ」

 

「まったく、のび......金次君、君は実にバカだな〜」

 

「やめろ。あと、完全にド○えもんの声で喋るな」

 

そのセリフ、久しぶりに聞いたぜ。オマケに前に比べて声も似せてよ。あと、のび○君はバカじゃないぞ。勉強は兎も角、あの射撃の腕は、武偵として尊敬する。

 

「白だと思うには、何か証拠があるのか?」

 

俺の問いかけに、零は「これだよ」と週刊誌ーーそれも、クルージング会社の声明文が書かれた記事のページを開いて、俺に渡してきた。

こんなモノ、見たくもないが零に進められ、仕方なく読んでみる。

案の定、そこにはクルージング会社の保守的な、声明文がダラダラと書かれていた。これが何の証拠になるんだよ?

 

「その声明文が証拠だよ。そこには『我が社は悪くない。事故の責任は遠山武偵にある』と書かれている」

 

「だから何だよ。早く言えよ」

 

「まったく君は......少しは頭を使えるようになったと、私は思ったのに......やれやれ」

 

零は欧州人がやるような『困ったよポーズ』をする。

ぐっ!ムカつくが、非常に様になっている。

 

「クルージング会社は『事故』と言っているーー自分たちが責任を負うことになる事故とね」

 

事故......そうか!

 

「自分たちが賠償責任を負う可能性があるにも関わらず、事故と認めている」

 

「さっきも言ったように、沈没の責任を取りたくないなら、シージャック犯ーー第三者による犯行にしてしまえばいいのに、会社は金一さんに責任を押し付けている。これだと、世間から無責任だと罵声される上......」

 

「事故だと保険金は下りても、会社としての信頼を失う。しかし、第三者による犯行なら会社も被害者なワケだ。これなら世間からの信頼も、そこまで落ちないし、保険金も下りるーー事故と認めている事が証拠なワケか!」

 

逆転の発想とは、まさに零に似合う言葉かもな。事故そのものを証拠にしてしまうなんてな。

 

「クルージング会社が白だって事は分かったが、誰が沈没させたんだよ?会社に恨みのあるヤツか?」

 

「ふーむ、恨みね......違う気がするね。クルージング会社はコレといった事故......ああ、勿論、この事件の前の話だよーー事故はなかったし、会社内・接客でトラブルなし、船体調査・造船過程での事故もなし。誰かに恨みを買われる事はしてないね。あと、脅迫文・怪文章の類もなし。....それから」

 

零は長々と語る。

 

「お、おい。いつから調べたんだよ?事件があったのは、1週間前だぞ」

 

いくら何でも知りすぎだ!一体、いつから調べていたんだ?

俺の疑問ーー反応を見て、零は咥えていたパイプを離し、

 

「金一さんが行方不明と知った時ーー私の銃を褒めてくれた素晴らしい人がさ」

 

零はホルスターから、愛銃であるウェブリー・リボルバーを抜く。

もう一方のホルスターにも拳銃があるぞ。そっちは抜かないのか?俺は、もう一方のホルスターに納められている銃を見る。

グリップからして、その銃は......兄さんと同じコルト・シングルアクション・アーミーじゃねぇか。色は兄さんのシルバーと違いブラックだ。

 

「私ね、ウェブリー・リボルバーが好きだよ。でも、一部の人から時代遅れだって、言われて他の銃に替えようかな思っていた時期があるんだ」

 

「......それで?」

 

「丁度その頃、金次君の実家で金一さんにあったじゃない」

 

ああ、前に『脳の疲労』で眠りについた零を実家に運んだ時の事か。

その時、兄さんにあって話をしたんだっけな。特にリボルバー関係で、兄さんと盛り上がってたのを覚えているぜ。

 

「でね、金一さんが私の銃を見て『個性的で素晴らしい銃だ』って、褒めてくれたんだ。あの時、初めて自分の愛銃が褒められて、嬉しかったな。それから、私はこの銃が、さらに大好きになったんだ」

 

零はウェブリー・リボルバーを愛おしく撫でる。

 

「そんな大恩ある人が、人命を救ったのに関わらず、罵倒されるのは許せないんだ。悔しいのは、君だけじゃないんだよ金次君」

 

今度は俺の方を真っ直ぐと見つめるーー強い意志を秘めた目だ。思わず、マジマジと覗き込んでしまった。

 

「ハッキリと言うよ。コレは事故じゃない。第三者が犯した事件だよ。それも恨みなんかじゃないーー別の目的の為にね」

 

「別の目的?」

 

「金次君も聞いたことがあるんじゃないかい?『武偵殺し』という犯人を」

 

『武偵殺し』......確か、武偵の車なんかに爆弾を仕掛けて自由を奪った挙句、マシンガンのついたラジコンヘリで追い回しーー海に突き落とす。そんな手口のヤツだったか。

 

「兄さんが、『武偵殺し』に狙われたって言いたのか⁉︎でも、『武偵殺し』がシージャックするなんて、聞いたことがないぞ」

 

「君は知らないだろうけど、日を増すごとに『武偵殺し』の犯行はエスカレートしているーー付いて来たまえ」

 

零はソファーから立ち上がり、リビングから出て行った。俺はその後を追う。

案内されたのは、別室の前だった。

零はドアノブに手をかけ、「どうぞ」とドアを開けて、俺を入れる。

部屋の中は、リビング以上にごちゃごちゃだった。

壁や天井、床にいたるまで地図で埋め尽くされていた。さらに、目を引いたのが、地図には......その国で起こった事件だろうか?ーー事件の詳細・犯行現場を撮らえた写真・人物画・新聞記事が貼られ、それらは、青い糸で繋げらていた。

 

「驚いた?コレはね私が作った事件の関係図ーー通称『蜘蛛の巣』だよ」

 

「関係図って、事件を結びつけて共通点を見つけ出すってヤツか?」

 

「その通り。因みに、この部屋を訪れたのは金次君が初めてだよ」

 

零はニコッと笑ってみせる。

おい、何で笑うんだよ?俺を招き入れたのが、そんなに可笑しいのかよ?

 

「これをご覧よ」

 

零はトントンと『蜘蛛の巣』のひとつを叩く。

俺は近づいてみる。コレは『武偵殺し』に関する事件か!目で追っていく。

事故ってことになっているだけで、実際は『武偵殺し』の仕業で、隠蔽工作されているヤツもある。よく調べたな。

 

「この図を見ていくと『武偵殺し』の犯行は、零の言った通り、エスカレートしているな......自転車ーバイクー車そして......船か」

 

最後にアンベリール号の沈没に行き着いた。

 

「本当に兄さんは『武偵殺し』に狙われていたのか?模倣犯の仕業って事も」

 

「いいや、それは無いね。用意周到な手口・犯行計画など挙げられるモノからして、模倣犯ではない」

 

「コイツに兄さんは......」

 

俺は『武偵殺し』に対し、煮えたぎるような怒りを覚えた。

 

「待ちたまえ。まだ、お兄さんがやられたとは限らないよ」

 

やられたとは限らないだと?それは死体が上がっていないからか?

 

「金次君。君にとってお兄さんはどんな人だい?」

 

「イキナリ何だよ?」

 

俺が疑問に思うと、「いいから、答えて」と急かす。

 

「俺にとって兄さんは......正義のヒーローさ。誰よりも真っ直ぐで、カッコイイ理想のヒーローだ」

 

「そんな敬愛する正義のヒーローが、『武偵殺し』みたいなチャチな小悪党に負けると思うかい?ましてや、命を取られるなんてヘマをさ」

 

零の言葉で、俺は兄さんの姿を思い描く。

兄さんは強いーー俺なんかよりも。誰よりも義に生きる人で、遠山家の長男。俺の兄だ。俺の憧れたヒーローだ。

 

「そうだよな......兄さんが、遠山 金一が死ぬワケがない」

 

兄さんは生きている。きっと、何処かで必ず。今は、何か理由があって姿を現すことができないだけなんだ。

 

「行方不明=死んだというワケじゃない。君のお兄さんは生きている」

 

「それは推理によるものか?お前のお墨付きなら、信じられるぜ」

 

「いいや、勘だよ」

 

って、勘かよ‼︎推理だと期待したのに......俺は思わずガックリとする。

 

「そんなにガッカリしないでよ!私が勘に頼る事なんて、殆ど無いんだよーー今回、頼ったのは、金一さんの件が初めてさ」

 

「いつもの分析じゃなく、何で勘なんだよ?」

 

「......内緒」

 

零は口に人差し指を当てる。そこは言えよ。

すげぇ気になるぞ。

 

「しかし、『武偵殺し』が兄さんを襲った事に間違いない。乗っていた船を沈められたんだーー少なくとも兄さんは遅れをとった」

 

「何か不安そうだね。言ってご覧よ」

 

「......そんな相手に勝ち目はあるのか?」

 

俺が問いに、零は「ふっ」と不敵に笑い、

 

「ゼロじゃないさ」

 

ハッキリと言い切った。

ゼロじゃない。勝ち目がある。まだ、望みはあるってことか。

 

「君は1人で『武偵殺し』と戦うみたいだけど、それじゃ勝ち目はない」

 

そう言って、零は右手を差し出してきた。

 

「何も全て抱え込む事はないよ。私もいるよ?私も一緒に戦わせてよ。なんたって相棒だからね」

 

「ははは、まさか有料じゃないだろな?」

 

「相棒だから無料にしてあげるよ」

 

ここで有料なんて言われたら、ズッコケていたな。こいつのギャグはシャレにならん。

俺は零の手を取った。

 

「よろしく頼むぜ相棒」

 

「任せてくれ相棒」

 

お互い笑顔で握手した。

この時、俺は零と初めて本当の相棒になれた気がした。

こいつとなら、どんな事件でも乗り越えられる。待っていてくれ兄さん。あんたの仇は俺と零が捕まえる。

 

 

 

ーーーーーー

 

スイス ライヘンバッハにて

大きな滝があったーーライヘンバッハの滝だ。

シャーロック・ホームズとジェームズ・モリアーティの最終決戦の舞台として、知られている名所だ。

そんな断崖絶壁の上に2人の男女がいた。

滝からの水飛沫でお互い、びしょ濡れに関わらず、

 

『零‼︎お前は間違っている!』

 

『なんで分かってくれないの⁉︎間違っているのは......君の方だ‼︎』

 

銃を構え、そして、パァン!と2つの銃声が轟音にも関わらず、滝に響いた。

 

 




次回は遂に原作突入します。アリアとの対面......気づけば30話超えていた。
やりたいネタが沢山あります。
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