武偵殺し編を終えて、早く魔剣編を投稿したいぃぃぃ‼︎
話の頭はできてるのに、武偵殺し編を終えないといけない。
戦闘シーンは難いし、納得いくような話が書けない(泣)
ANA600便・ボーイング737ー350、ロンドン・ヒースロー空港行きの機内にてーー
機体は上空に出て、ベルト着用サインが消えた。
俺は仕方なしにアテンダントを落ち着かせてから......アリアの席、というか個室に案内してもらう。
この飛行機のキャビン・デッキは、普通の旅客機とは明らかに異なる構造をしていた。
1階は広いバーになっていて、2階、中央通路の左右には扉が並んでいる。流石、金持ち飛行機『空飛ぶリゾート』とかニュースで言われてた、全席スィートクラスの超豪華旅客機。
ふぃにキョロキョロと辺りを見渡すが、零の姿はない。間に合わなかったか。突然連絡入れたから当然か。
「......キ、キンジ⁉︎」
スィートルームでアリアが、紅い目でまん丸に見開いた。
「......さすがはリアル貴族だな。これ、チケット、片道20万ぐらいするんだろう?」
「断りもなく部屋に押しかけてくるなんて、失礼よっ!」
「お前に、そのセリフを言う権利はないだろう」
アリアは自分が俺の部屋に押しかけたことを思い出したのだろう。
うぐ、と怒りながらも黙る。
「......なんでついてきたのよ」
「武偵憲章2条。依頼人との約束は絶対に守れ」
「......?」
「俺はこう約束した。強襲科に戻ってから最初に起きた事件を、一件だけ、お前と一緒に解決してやるーー『武偵殺し』の1件は、まだ解決してないだろう」
「ーーまだ覚えてたの」
「アリア、何があった?俺に一言もなく、『武偵殺し』の件をほっぽり出して、突然ロンドンに帰るなんて、お前らしくもない」
『武偵殺し』にもう少しで追いつきそうという、このタイミングでアリアは急にロンドンに戻るーーここに来る前、お台場のクラブ・エステーラで理子から聞いた時は驚いた。
「......この前のニュース、あんた見た?」
アリアはすがりつく様な声で俺に尋ねる。
「この前のニュースって何だよ?お前がロンドンに戻る事と関係あるのか?」
「......シャーロック・ホームズ」
まだ軽くヒスってるおかげか、アリアの口からボソッと出てきた名前ですぐにピンと来た。
シャーロック・ホームズ。誰もが知る世界的なイギリスの名探偵。武偵の祖。かの有名な名探偵に先日、日本中いや世界中の武偵が注目された。
それは『シャーロック・ホームズ イカサマ師疑惑』。何処から、誰がリークしたのかは定かではないが、かの名探偵にペテン師の疑いが掛かったのだーー数々の解決した事件はホームズによる自作自演という。有名なだけに大スキャンダルだ。
「あのニュースか......」
俺の言葉の意味を悟ったのか、アリアがコクリとうなづく。
アレには俺だけじゃなく、学校の連中も驚いてたっけな。中にはショックを受けて暴れ出す者やソレを止める連中の対立で、一時学校が二分したが、零を初めてとした生徒会や委員会が鎮圧して事なきを得たらしいが......
「ねぇ、あんたから見て曽......シャーロック・ホームズってどんな人?」
「どんなって......」
「あんたもペテン師だって、思ってたりしてないわよね?」
「いいや、思ったりしてねぇよ」
俺はアリアにハッキリと自分の気持ちを伝える。
「......⁉︎その根拠は何処から来てるのよ?それだけ言うからには、ハッキリとした根拠があるんでしょうね?」
「ペテン師が世界的に有名になれるほど安いモンなのかーー名探偵ってやつはよ。コレは誰にも零にさえ言ってないが、俺は武偵としてシャーロック・ホームズを慕っている。ニュースを見た時はそりゃ驚いたが、すぐに嘘ぱっちだと確信したよ。如何にも世間の注目を集める事が目的って感じでよ。だから、アリア。あんな馬鹿なニュース気にすんな。お前の前でホームズをイカサマ師呼ばわりする奴がいたら、俺がぶっ飛ばしてやる」
「強引な結論ね。でも......信じてくれて......あ、あ、あり、がとうね。あんたみたいな奴がいて、ちょっとだけホッとしたわ」
アリアは頬をちょっとだけ、ポッと染めてソッポを向く。
「そんで、シャーロック・ホームズとお前に何の関係があるんだ?」
俺の言葉にアリアがズルッと、席から盛大に落ちそうになる。コントのような光景だ。
「あんた分からないの⁉︎てっきり、知ってるから追いかけて来たんじゃないかと思ったのに!」
軽いヒステリモードが切れたのかーーノーマルな思考に戻ったのが分かる。
「すまん、本当に分からん」
ここはキッパリと言う。
分からない事を分かったように見せるのは逆効果だと、前に零から教えてもらったからな。ここは素直に......
ゲシッ!ゲシッ!ゲシッ!
なったが、席から立ち上がったアリアから蹴りをお見舞いされた。
痛い!地味に痛いから!脛を蹴るな!
「まだ分からないの⁉︎信じらんない!バカバカ!どバカ!ギネス級のバカ!バカの金メダル!」
言い過ぎだろうコラ。
「あたしはあんたをパートナーにして、曽お爺さまみたいに立派な『H』になるの!そう決めたんだから!」
癇癪を起こしたように暴れ出した。
言ってることが、まったく理解できん。突然、どうしたんだ?今のアリアは自分を奮い立たせてるようにも見えるーーそうでもしないと自己を確立できないかのように。
「何なんなんだよその『H』ってのはーー!」
「ああもう!あんたで決定したんだから教えてあげるわよ!あたしの名前はーー」
アリアは犬歯をむくとーーぐい!と。両手を腰に当て、その寄りも上がりもしない胸を張った。
「神崎・ホームズ・アリア!」
「ホー、ムズ......⁉︎」
「そう!あたしはシャーロック・ホームズ4世よ!で、あんたはあたしのパートナー、J・H・ワトソンに決定したの!もう逃さないからね!あと、レイとイチャイチャしようとしたらーー」
待て、待て。待ってくれ!
「ーー風穴あけるわよ‼︎」
シャーロック・ホームズ。
そういうこと、だった、のか。自分の曽祖父がペテン師扱いされたら、そりゃ怒るわな。俺も兄さんが似たような扱いをされたから分かる。
でも......なぁ。ももまんが好物で。ことあるごとに拳銃ぶっ放して。ポン刀ぶん回して。
こんな......ちっこカワイイ......ホームズって、ありえんだろう!
「で、お前は事の真相を探る為にロンドンに戻ろうと?」
「そういうこと。事の始まりはロンドンーーイギリスのタイムズ紙が出した号外から始まったわ。『シャーロック・ホームズはイカサマ師だった』ってね」
アリアは苦々しい思いで語り出す。
ここだけ聞いてると、こっちまで苦々しくなるな。
「あたしの実家、ロンドンにあるホームズ家には今尚、群衆が詰めかけてるそうよ。タイムズ紙の号外を片手にね......」
「ーーいったいどうなってるんだアリア。何故、そんな誰でも分かりそうな偽情報がマスコミに、いったい誰がリークしたんだ?」
「そんなことあたしが知りたいわよ!でも、先日イギリス中の各社が一斉に号外を出したの!それとほとんど同時にラジオ局も同じニュースを流し始めたわ!」
イギリスでホームズはヒーロー的な存在だ。そんな人物をイギリス中の報道機関がこぞって、イカサマ師にするなんて。誰かの意図を感じるな。裏でシャーロック・ホームズを陥れたい誰かが......
「いったい誰があんな偽情報をこんなにタイミングよく流したの?『イ・ウー』?......いいえ、連中は曽お爺さまについてはノータッチだったし、『武偵殺し』だってここまで手際よくはできないし......」
「少し落ち着けアリア」
アリアが自分の曽祖父ーーシャーロック・ホームズをいかに慕ってるのかが、よく伝わってくる。
許せねぇだろうな。自分の尊敬する身内が大衆からイカサマ師呼ばりされたら。
「これだけ各社が一斉にしかもイギリスの時間帯ーー夕食時にニュースを流せるような仕込みをやってのけるなんて......」
「ただものじゃないな。誰かはわからないが、仕掛けた奴は悪魔みたいに狡賢い奴だぜ」
この騒動の仕掛け人ーー犯人に俺は怒りと恐怖を覚えた。
世界的に有名な名探偵を一日でペテン師にするだけの手腕と大衆の注目を集める手際の良さ。それを実行に移せるだけの行動力と大胆さ。
並大抵の奴じゃないのは確かだーー裏で糸を引くお前は誰なんだ?
「......ロンドンに着いたら、曽ジィさんの冤罪を晴らすのか?」
「当たり前じゃない!その為にあたしは......!」
「本当は実家から戻って来いって、言われたから戻るだけじゃないのか?」
「......!......そ、それは」
俺の問いにアリアは言葉が詰まるーー何も言い出せない状態だ。
どうやら、突発的に行動しちまったみたいだな。まぁ、俺も人のことは言えんが。
「お前がロンドンに戻ちまったら、留置されてるかなえさんはどうなるんだよ?」
「曽お爺さまの冤罪を晴らしたら、すぐにママも......!」
「裁判まで時間はあまり残されていない。それまでに解決できるのか?名探偵の冤罪を晴らす事がーーお前1人に」
「何が言いたいのよ?」
「仕方ねぇから付き合ってやるよ。お前の曽じいさんの疑惑を晴らす仕事をよ」
乗りかかった船ならぬ乗っちまった船だな。零には悪いが、このまま行かせてもらうぜ。この飛行機に乗っていれば、『武偵殺し』にも会えるしな。
「ーー何よカッコつけちゃって。勝手にしなさい」
アリアはふんっと、顔をそらすが、俺には少しだけ笑ってるように見えた。
強風の中、ANA600便は東京湾に出た。
アリアは腕組み足組みをして座席に座って、外を眺めている。
「アリア......前々から聞こうと思っていたんだが」
「何よ?ハッキリと言いなさい」
「お前と零は何であんなに仲悪いんだ?」
アリアと零は側から見て凄まじく仲悪い。初対面の車然り、俺の部屋然り。
車でのやり取りは、アリアが自分の愛車のフロントガラスを砕いたとはいえ、零は大人気ない態度ーーアリアを罵る言動が目立った。対するアリアも負けていなかったけどな。
そんで俺の部屋では互いに口喧嘩では済まず、取っ組み合いに発展。最後はベランダから海に転落するという、ある意味で壮絶な最期を遂げた(二人とも生還したが)
ジャジャ馬のアリアは兎も角、零は普段の冷静さのカケラもない。
キャラ崩壊を起こしている。「むぎー!」とか子供みたいに叫んでたし......
「レイと顔を合わせるとムカッとしてくるのよ。特にあんたと一緒にいるところを見ると尚更ね」
なんじゃそりゃ?俺と一緒にいるのが気に入らないってか?仕方ないだろう。零とは昔からコンビを組んでいるんだから。一緒にいる事は自然なことだ。
「ーーあんたとレイって、いつからコンビ組んでんのよ?」
下から俺を見上げるような形でコンビ結成について尋ねてくる。
「いつからって、そうだな......高一からコンビ......いや、正確には高一の三学期から本格的に組んだかな」
嘘であり本当である。俺もハッキリとは言えない。
コンビ結成のきっかけは兄さんの勧めが濃い。その兄さんが事故に偽造されたシージャックにあって行方不明になって......それからだな。一緒になって本格的に事件を解決し回ったのは。
事件の大半は依頼人ーー第三者のクエスト依頼を俺が零に伝えて、それを零が解決する。
俺はというと零に引っ張り回されていた感が強いーー零が犯人を追い詰めて、俺がとっ捕まえる。そんで、決まって俺だけ周りから何故かヒーロー呼ばわりされる。
あんま活躍してないのに、キラキラした尊敬の眼差しでヒーロー扱いされるのは正直キツイ。
零から持ち上げられた感があるあるだ。あいつの方がヒーロー扱いされていいのに。
「ハッキリしないわね。でも、まだ1年にも満たないのね......」
アリアは俺に背を向けて、グッ!とガッツポーズする。
何故、そこで勝ち誇る?何か勝つ要素があったか?
「あっ!あとよ。俺の部屋でのベランダのやり取り......」
もう一つ気になっていた案件ーーベランダ事件を言い切ろうとした瞬間、アリアがギロッと睨んできた。怖っ!俺は蛇に睨まれた蝦蟇か。
「嫌な事をぶり返さないでよ」
本当に嫌なのか。アリアはズーンと効果音が流れそうな顔をする。美少女がそんな顔をすると、される方も嫌な気持ちになる。
「悪りぃ。でもよコレも聞いておかないとお互いの今後の為にならん」
お互いの心理状態の把握は大事だ。不満や要望を理解し合えば任務の遂行がスムーズに運ぶ。
「今後って......!そ、そうよね!お互いの事はちゃんと知っておかないと」
アリアはテンパった。俺は当たり前の事は尋ねただけだぞ。
「それで?何が聞きたいのよ?」
「俺の部屋で零が言ってた作戦をパクったって何の事だ?」
あいつの作戦立案は凄い。言われた通りの時間に突入すれば、まるで魔法の様に扉が開き、邪魔者は誰1人いなかった。まさに天才だ。アレでどれだけの武偵が危険を避けられたか。特に強襲科の連中は大いに助けられた。
「昔、偶々レイの作戦を見かけて参考にした事があるのよ。本当に参考にしただけよ!そ、そりゃほんのちょこっとだけ、そのまま使った事があるけど、ほんの少しだけよ!あたしなりに改変もしたんだから!」
アリアの話を聞くかぎり怪しい。
額に似つかわしくない汗がだらだらと滲み出ているぞ。少しどころじゃなくそのまんま使ったな。零が怒るのも無理もないーー世間ではそれをパクったって言うんだぞ。
「何処で見かけたんだ?」
「ロンドン武偵時代にあたしの戦姉が偶々ネットで公開されてたレイの作戦を見つけてね。ちょっと厨二病な人だったけど。偉く気に入って参考にしていたわ」
ネットで公開だと?零は自分の作戦を大々的にひけらかす真似はしない筈だが。さては誰かが無断で公表したな。
しかし、その話し気になるな。俺の知り得ない作戦があるかもしれん。
「どんな作戦が公開されていたんだ?」
俺は好奇心に駆られてアリアに尋ねてみた。
「次から次へと......レディに尋ねてばかりで失礼ね。まぁ、いいわ。特に気に入っていたのは......」
アリアは語ってくれた。
数で大きくまさる犯罪者達に対し、弱体な武偵を突出して配置することで強力な装備の犯罪者に押し込まれても時間を稼げるようにし、その間に強力な武偵で犯罪者を蹂躙し、その後弱体な武偵戦力と合わせて犯罪者を包囲殲滅する。
同士討ち覚悟で突入し、立てこもり犯を出口に誘い込みと出口に配置した武偵と最初に突入した武偵とで強力な火器をもって挟み撃ちにする。
その他......etc....黙って聞いてみると、どれもこれも犠牲上等の様な作戦ばかりだ。
本当に零が考えたのか?あいつは仲間が犠牲になるような作戦を考えるようは奴じゃない。しかし、当の本人が立案したような言動は取った。「あんただったのねー!私の作戦パクったの!」って、叫んでいたし。
アリアが先に述べたーー少しだけ改変して使ったという話は本当みたいだな。こいつがこんな作戦をそのまま使うとは思えん。
「あたしの戦姉はダークヒーローみたいでカッコイイって、はしゃいでいたわ」
ダークヒーロー。悪を持って悪を倒すか......アニメやコミックでしか存在しないと思われがちだが、そんなことはない。偶に武偵崩れの中にそう呼ばれ奴がいる。しかし、行き過ぎた正義は何たらってやつだーー大概はロクな最後を迎えない。
零がダークヒーローねぇ...,...キャラ的にピッタリな気がするな。
「そうか...,..なら、俺の部屋で零に言った『あんたの方こそ!』ってのは何だよ?あいつがお前の作戦か何かをパクったのか?」
「ええ、そうよ!何処で聞いたか知らないけど、レイたらあたしの作戦だけじゃなく、戦闘スタイルーー双剣双銃までパックったのよ!転校初日に後輩達があたしと同じスタイルで戦ってるのを見て、誰に教わたのって尋ねたら、レイから習ったと確かに言ったわ」
アリアは作戦、零は戦闘スタイルをパクったのか。どっちもどっちだな。
「それにあの子たち物凄く下手すぎ!あたしと全然似てない!見ていてイライラしてくる!」
当時の光景を思い出したのか、アリアはキー!と唸る。
これは思い出し笑いの怒り版だな。自分の戦闘スタイルを真似られて、思うモノがあるだろう。アリアの気持ちも分からんことはない。
今のアリアの状態を例えるなら、スポーツの熟練者が初心者のフォームを見てイライラするのと同じだろう。
「慣れない戦闘スタイルは死を招くんだけどな。あいつが何のアドバイスもなしに後輩達に教えたとは思えんが......何処であいつはアリアの双剣双銃スタイルを知ったんだ?」
「あたしも2つ名持ちだからある程度は名が知れてるし、そういった情報が知られても不思議じゃないわ」
ますます謎が深まる。
零は何を考えて後輩達が使いこなせない双剣双銃を伝授したんだ?まるで慣れず使えずの奴から現場で死んだほしいとばかりに......いや、考え過ぎか。あいつに限ってそんなことはない。後輩の面倒もしっかりと見るし、何か考えがあっての......
「何か考えがあっての事って、あんた今、そう思ってるでしょう?」
アリアが何の前触れもなく急に話しかけてきた。
「何で分かったんだよ?顔にでも出てたか?」
「勘よ。思考停止した武偵はその時点で終わりよ。あいつが、パートナーが、何か思って行動してるとか安易に思うのはやめなさい」
さっき考えていた事を訂正するかの如く、アリアは俺に注意を促す。
「零を疑えってか?あいつに限って...,...」
「ほら、それよ。すぐにそうやってーーあいつは大丈夫。心配ない。やましい事なんてない。悪いヤツじゃないって、先入観に囚われすぎ」
「ーー零が影で悪さでもしてると、言いたげだな」
アリアの言動に、俺は思わずキレそうになった。が、グッと堪える。
「そこまで言ってないわよ。ただ、あたしが言いたいのは、あんたは自分の......認めたくないけど、ずっと前から組んでるレイを疑わな過ぎ。いいえ、疑うのを怖がってる。あたしには分かる」
俺が零を疑うのを怖がってるだと?あいつの何処を疑がって怖がる必要がある。
「あんただけじゃない。武偵高の皆んなもそうよ。ぷらぷらと回ってレイの印象を聞いて回ったけど、一様に頼りになる、信頼できる、何でも打ち明けられる、協力したくなる、そんなのばかりだったわ」
零は学年問わず、学校の連中から慕われてる。
入学してからそうだったし、進級して生徒会長になって後輩ができてからは、さらに板についたとは思うが。
「別に悪いことじゃないだろう。それだけ全員から信頼されてる証拠だ」
「いいえ、アレは信頼ーーカリスマ性とか、そんな単純なモノじゃないわ。あたしから見れば、みんなレイに洗脳されてるような気がする」
アリアはそこに零がいるかのようにジッと、壁の方を眺める。
「まだハッキリしてないけど、あたしの勘が言ってる。レイは何か隠してる。それも表だって言えない様なヤバい感じの」
この業界表だって言えない仕事くらいはあるが、零が俺に隠れてヤバい事に手を出してると?
アリアのこの様子からして普通じゃない。明らかに零を警戒している。
「考え無しに相手を信頼し過ぎると身を滅ぼすわ。あんたもーーその足りない頭の片隅にでも留めておきなさい」
足りない頭は余計だ。
確かに零は時々、隠し事をしてると匂わせる言動や行動が見て取れる。
だからなのか?アリアの意見も無視出来ずにいた。こいつの勘は当たることは当たる。
最近、当てた事といえば零のもも饅下痢疑惑だったが。
できる事なら思い過ごしであってほしいな。
アリアとキンジの会話を考えるのは意外と難しい!