私は教授じゃないよ。大袈裟だよ   作:西の家

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何故、fgoは狙ったかの如くイベントをやってくるのだ‼︎まぁ、嬉しいけどさ‼︎


お金の貸し借りは慎重に

「金次君どこに行ったのかな?」

 

私は放課後の探偵科の校舎を歩きながら金次君を探していた。

しかし、探せども彼が姿を現わす事はない。

くそ。アリアが現れてからよく金次君は姿を消すようになってしまった。

こそっと2人で待ち合わせでもしてるのかな?気に入らない。

心の中で愚痴をこぼしながら、捜索を打ち切ろとしていた私は......

 

「だ、だーれだ?」

 

と背後から目隠ししてきた側近ことモランに驚き、一瞬、黙ってしまった。

モランなの?嘘だ。あのモランが私の背後を取った上で、こ、こんな。可愛げのある行動にでるなんて。

 

「その声は私のかわいい子犬ちゃん♪」

 

「そ、そんな子犬ちゃんだなんて‼︎恥ずかしいですよ主〜‼︎」

 

私の子犬ちゃん発言に、モランが「きゃー!」と黄色い声を上げ、身じろぎして恥ずかしがる。その瞬間、

メキメキメキ‼︎

私の顔に信じられないほどの急激な圧力が加わる。

ぐわー!イタイイタイ‼︎何か出る⁉︎何か出ちゃうよ‼︎

あまりの痛さにモランの手をバシバシと叩き離させる。

 

「主⁉︎うわぁぁぁ!耳から変な液体が⁉︎」

 

「だ、大丈夫だよ。これは......そう!水だよ。だから、心配ないから落ち着こうか」

 

耳から水?のような液体を垂れ流す私を見て取り乱すモランを落ち着かせ、私はポケットからハンカチを取り出し液体を拭き取る。

あ、危なかった。モランがあとコンマ数秒離すのが遅かったら、私の頭が握り潰されたトマトになるところだった。

背後を取られるとこういう結果を招く。

 

「本当に大丈夫ですか?念の為、救護科に行きましょう。今すぐに‼︎」

 

「大丈夫だって。ほら、この通り」

 

健全さをアピールするため彼女の前で、シャドウボクシングをやってみせる。

少々、視界がグラつく大事無い。

 

「うう......すみません。私の軽率な行動が主を......主をぉぉぉ」

 

「あー、はいはい。分かったから、泣かないの」

 

泣き出したモランを胸の中で包む込むように「よしよし」と頭を撫でてあげる。

うんうん。分かっているよ。たまには茶目っ気を出してみたかったんだよね。

 

「はい。私はもう泣きません」

 

頭なでなでが効いたのか?モランはいつものキリッと......いや、頬を赤らめ少しニヤついている。

マゾヒストの素質があるのかな?まあ、どうでもいいか。

 

「......それで、ここに来たのは私に会いに来ただけじゃないでしょう?」

 

私はわざとらしく姿勢を正すと、モランに訪問の目的を訊ねる。

主人の変化に敏感なモランは今度こそ態度を改め、ピシッと真面目な態度に早変わりする。

 

「主の警戒にあった『イ・ウー』らしき人物の姿は現在のところはありません。故意に姿を消しているのか、或いはもう既に......」

 

「いいんだよモラン。そんなに自分を責めなくても。君はしっかりと仕事をしているからさ」

 

探偵科の校舎の中でも御構い無しに『イ・ウー』の名を堂々と上げる。

放課後、探偵科の校舎に生徒(金次君以外)が残る事は''まず無い''ので、安心して会話ができるのだ。

『武偵殺し』こと峰 理子の一件以来、『イ・ウー』が直接ーー私達の周りで事件を起こす気配はない。

 

「私の方でもざっと生徒の経歴ーーりこりんのような密偵がいないか調べたけどヒットしなかったね」

 

願わくば教務科の人間も調べたかったが、そこは俗に言うアンタッチャブルーー危険を冒してまで調べる気にはならなったので保留。

 

「仮にモランが『イ・ウー』の人間だったら、武偵側にどんな事を仕掛ける?」

 

突発的にモランに尋ねてみた。すると、彼女は少々難しい顔で悩み、

 

「私がですか?生憎とそういった予想は苦手でして......」

 

「いいんだよ。軽い気持ちで考えて。さあ、さあ」

 

急かすように意見を求める。

君が山育ちで培った野生のカンは頼りになるからね。

カンによる捜査や行動が苦手な私も例外的にモランのカンは信頼しているのだ。

そんな信頼を寄せるモランは「では遠慮なく」と前置きし、

 

「私でしたら、将来的に組織の脅威となる人物の抹殺を行いますね。火種は大きくなる前に消すに限る、と言いますし」

 

成る程ね。無難な意見だと思う。

しかし、それならとっくの昔にやり終えているだろうーーあの組織ならそれ位はやってのける。

因みに彼女が将来的に脅威と見做す人物も好奇心的に聞いておきたいが、今は置いておこう。

 

「ははは、成る程ね。抹殺、抹殺ときたか。でも、それは少し当たり前過ぎるんじゃないかい?」

 

「では、主には『イ・ウー』が次に何を仕掛けてくるか見当がついているのですか?」

 

「残念!まだな〜にも分からないんだよね」

 

私がお手上げとばかりに、両手を大きく広げてオーバーアクション気味に答えてみせると、モランは釣られたようにズルッとずっこける。

ナイス・リアクション!

 

「まっ、今はのんびりと様子見といこうじゃないか。放っておいても必ずぶつかり合うのだし」

 

天体力学法則では物体同士が衝突する際、付随する物にもダメージが及ぶ。

この際は組織の犯罪者を1人でも構わない。仕留める事ができれば『イ・ウー』という組織自体にも少なからず打撃を与えられる。

のんびりとは言ったが、実は内心では早く来ないかとワクワクしている。

しかし、こればかりはモランにも言えない。

 

 

 

モランと一通りの段取りを終え、私は探偵科の校舎を後にする。

別れる際、モランが離れたくないとばかりーーメンバーの前では絶対に見せない上目づかいで尚且つ、ウルウルと涙目になったが、そこは厳しく寮に戻りなさいと諭した。

そんな事を思い出しながら、ブラブラと夕焼けをバックに歩いていると、

 

「あれ?ボニーとクライドじゃないか。何やってんだろう?」

 

探偵科棟では見かけない顔が2つーーボニー&クライドの二人組の姿が。

辺りをキョロキョロと見渡している。様子からして誰かを探しているようだ。

思わず気になったので、一声を掛けようと歩み寄ろうとするが、それより早く彼女らはお目当ての人物を見つけたようで、

 

「「見つけぞ!キンケツ‼︎」」

 

息ピッタリ。

夕焼け空をバックに飛ぶカラスもサッと逃げ出すような大声を上げ、教務科の前に立っていた人物ーー金次君目掛けて走り出した。

ついでとばかりにアリアの姿もある。彼の隣に!隣にネ!

 

「何だよおま......ぐぇ⁉︎」

 

「ちょっ⁉︎ボニー、クライド!あんた達、急に現れたと思ったら、何すんのよ」

 

ボニーとクライドの突然の登場に驚く間も無く、2人に襟首を掴まれ金次君は苦しそうだ。

アリアはそんな金次君を助けようと3人の間に入るが、哀しきかな身長差的に無理だった。そう、無理だったよ。

まったく、見てられないよ。

やれやれとばかりに助けに行こうとした瞬間、

 

「「借金返せ‼︎」」

 

えっ?

ボニーとクライドのセリフに思わず目が点になり、同時に足がピッタリと止まる。

ウソ。金次君......君はよりにもよってこの2人からお金を借りたのかい?

ボニーとクライドはお金に対して、超が付くほど執着心がハンパない。借金しようものなら、サラ金も真っ青な取り立てーー地の果てまで追われるぞ〜。

 

「何の事だよ?俺はお前らから金なんて......」

 

「オオッ?しらばっくれるてカ?コラッ!」

 

「トぼけんじゃぞ。今日の昼休みオレらから金借りに来ただろうがよ!」

 

弁明も虚しく、クライドが金次君の顔面にビシッと突きつけたのは一枚の借用書だった。

遠目から見るにサイン欄には金次君の名前が。

そして、肝心の借りた金額は......400万円⁉︎

金次君〜返せる当てはあるのかい?そもそも、400万も何に使ったの?400万円は大金ですよ〜。

 

「オラッ!ちゃんと耳揃えて返せヤ」

 

「放課後必ず返すって、お前ちゃんと言ったよな?」

 

「知らん!本当に知らねぇぞ。オレはお前らから金なんて一円も借りてねぇ」

 

「ホッホ〜?ツまりはしらばっくれた上に返さないってか?」

 

金次君の態度に腹を立てたのか、クライドがググッと握り拳を作り殴ろうとした瞬間、アリアがスカートから抜いた二丁拳銃をクライドとボニー両者に向ける。

 

「今すぐにキンジを離しなさい。幾ら何でもやり過ぎよ。話すんだったら、ちゃんとした場を用意してから話しなさい。これは命令よ」

 

「「アッ?」」

 

命令。この一言でボニーとクライドの目から光が消えた。

代わりにあるのは、ドス黒い殺気のこもった瞳だけだ。

あー、あー。2人とも完全にキレたね。

金次君を地面に落とし、2人は拳銃など恐れずアリアに詰め寄るーーボニーは腰のホルスターに、クライドはスカートの中に仕込んだナイフに手をつける。

 

「一丁前にオレらに命令だとヨ。どう思うクライド?」

 

「アあ。ウぜぇし、生意気だなこのチビ」

 

「それ以上近づかないで。あと2人とも武器から手を離しなさい。これは警告よ」

 

警告、命令。

ボニーとクライドに対し、絶対に言ってはいけない3つのワードの内、アリアは2つも言った。

間違っても最後のワードである''アレ''を口にしないでよ。

ハラハラする中、地面に倒れていた金次君が立ち上がり、

 

「お前らが用があるのはオレだろ。アリアは関係ないだろうが」

 

アリアを守るようにボニーとクライドの前に立ちはだかる。

その姿はまさに騎士の如く。いや、あの2人相手に負けじとメンチ切る姿は極道の若頭って、私は何を言ってるのだ⁉︎

 

「下がりなさいキンジ。この2人......マジでヤバい感じがするわ」

 

教務科の前で一触即発の雰囲気を醸し出す4人組にとうとう我慢できなくなった私は、

 

「おやおや?何をやってるのかな?4人して天下の教務科の前で」

 

今しがた到着したかのように装いながら彼らの前に姿を現わす。

我ながら白々しい。

突然の登場に一同驚くも、特に面白いリアクションをしてくれたのは、

 

「零!いいところに来た。ちょっと助けてくれ」

 

「何ちゃっかりとコイツに助け求めてんのよ」

 

私の登場があまりに嬉しいのか、金次君は目を光らせる。

 

「どういった状況なのかな?誰か説明してよ」

 

隠れて様子を見ていたから分かっているが、敢えて状況が飲み込めないフリをする。

私が事情を求めると、金次君は事の顛末を語り出す。

要約すると、ボニーとクライドから金を借りていない。対して、2人は金次君に金を貸したと主張する。

そんな説明を「ふむふむ」と愛用の精油パイプを咥えながら、一通り聞き終える。

 

「つまり......金次君は身に覚えのない借金の返済をこの2人から求められていると」

 

「あぁ、だから困っていてな。頼む!お前の方から説明してやってくれ」

 

「この通りだ」とばかりに手を合わせ頼んでくる。

ほっほ〜。私に頼み事ね〜。ならば、その代わりに今度、女装して新作同人誌のモデルになってもらおうか。生でネ♪

 

「いいよ。助けてあげよう。このシャーロック・ホームズがネ」

 

「勝手に曽おじい様の名前を騙ってんじゃないわよ。あと、あたしの家の名前を使うのも禁止!」

 

「さてと......うるさいピンク頭は放っておいて、と」

 

「無視すんな‼︎」

 

私の嫌味にぐるる〜と犬みたいに犬歯むき出しで威嚇するピンク頭は無視だ無視。

 

「ボニー、クライド。君たち2人は''確かに''金次君本人からお金を貸してと言われたから貸した。そうなんだね?」

 

「おうヨ。確かにキンケツだったゼ。なあ、クライド」

 

「アあ、キンケツだった。アと言っとくが、キンケツの代理人とかはないぜ」

 

「特に変わった様子は?例えば声が風邪気味だったとか」

 

「いいヤ。別に何もないゼ」

 

「いつもと変わらず、根暗なキンケツだっタ」

 

「根暗は余計だ」

 

2人の様子を見るにウソは吐いていない。

私の前でウソがつける程賢くなければ、肝も据わってない。

 

「ーーだそうだけど、金次君?」

 

「だ・か・ら。俺は一円も借りてなんかない」

 

金次君の証言にボニーとクライドが「ウソつけこの野郎!」とキレ出すが、何とか宥める。

うーむ、金次君のこの様子を見るに、こちらもウソをついてない。

三者の間で意見が全く異なるぞ。

 

「金次君は昼休みの間に何処にいたの?」

 

私が尋ねると彼は少し悩んだ後、「......俺は」と言いかけた所で、

 

「コイツはずっとアタシと一緒にいたわ‼︎」

 

アリアが背後にドンと効果音が鳴るイキヨイで高らかに宣言。

それを聞いて金次君が「ちょっ!おま......」と動揺を隠せない。

 

「本当に?本当の本当に一緒にいたの?いたの?ねえ、いたの?」

 

「当たり前よ。ウソなんて吐いてないわ」

 

なんか怪しいな〜彼を庇ってる?しかし、朝の一件もあるしウソとは言い切れない。

ぷかぷかとパイプを吹かして悩んでいると、

 

「どうしたのアリア?私の顔に何か付いてるのかい?」

 

「アンタ、その精油パイプどこで手に入れたのよ?似たような物を見た記憶があんだけど」

 

「君の故郷イギリスのロンドンーーベイカー街の知り合いからチェスで勝ち取った戦利品だよ」

 

アリアがジロジロと私の精油パイプを見つめてくるので、コレの経緯について説明してやると、アリアは何か悟った様子で黙り込んでしまった。

まったく、人の謎解きに口を挟まないでくれよ。

気を取り直し、私はボニーとクライドの承諾を受けて問題の借用書を観察する。

取引金額、借り手の署名と住所、押印、契約日、返済期日、返済方法

など必要なことが記入されている。

因みに、返済が遅れた際の取り決めは遅れた分だけ殴られるであった。怖っ‼︎

 

「署名はパッと見た限り、金次君ので間違いないね」

 

私の証言にボニーとクライドは「だろう!」と自信たっぷりに胸を張る。

これには金次君も信じられないとばかりに、私から借用書をぶん取ると目を見開きまじまじと見つめる。

 

「君の字で間違いないのかい?」

 

「......ああ、信じられないが俺の字だ」

 

今の君の姿はギリシャ神話のゴルゴーンにでも睨まれ石にされたようだよ。

筆跡学は探偵科で習ったが、あれは個人的には学問とは呼べないのであまり真剣に取り組んでない。

 

「ねぇ、金次君。試しにサインしてみてよ。勿論、フルネームでね」

 

私は武偵手帳を開き、項垂れる金次君にサインを書かせてみる。

さらさらと書かれたサインを見て気づいた。

縦線が突き出した文字の部分は、長いとリーダー気質がある。これはあってるが、文字の右払いの長さが微妙に違う。

借用書の方は長いのに対し、金次君が書いた方は少しだけ短い。

僅かな違いと思うが、右はらいが長めなところにハートの熱さが出てくる。

金次君には少々身勝手さが出るが、借用書の署名には身勝手さが感じられない。

従って彼が書いた字ではなく、別の第三者が書いたものだ。

 

「これは第三者が金次君になりすまして2人からお金を騙し取ったと見て間違いないよ」

 

私は導き出した結論を4人に告げる。

 

「だったら俺は金を返さなくていいんだな?」

 

「勿論。誰かが勝手に金次君名義でお金を借りたとしても、その借金を返済する義務は生じない。それはたとえ友人であっても、親と子の関係であっても同様だよ」

 

保証人として契約書に署名していない限りは、どんな間柄であっても返済の義務が生じることはほとんどない。

今回は保証人にされてなかったのが幸いした。

 

「ちょっと待ってくれヨ!だったら、俺らはどうなるダ⁉︎」

 

「キンケツになりすましたヤツを探せってか⁉︎」

 

「借用書一枚で疑いなく貸した君達にも非はあるよ。考えてみたまえ。この年がら年中金欠で、学食で一番安い蕎麦ばかり食べて、銃弾一発買うにも苦労してる金次君が400万円も借りて返すアテがあると思うのかい?」

 

「おい。途中から完全に悪口になってんぞ」

 

「あんたが蕎麦ばかり食べてる理由がなんとなく分かった気がしたわ」

 

このまま一件落着の雰囲気と思いきや、そこは問屋が何たら。

 

「「納得いかねぇな」」

 

ボニーとクライドは食い下がる。

どんな事をしてでも金を取り返す気だ。

やれやれ......手の掛かる姉妹ちゃんだネ。

 

「この話はこれでお終いだよ」

 

私は背後から2人の間に入ってポンとそれぞれの肩に手を置く。

 

「こんな推理ごっこで納得いくかヨ」

 

「オレらが貸したって言ってんだから、貸したんだよ」

 

「この話はこれでお終いだよ」

 

まだ、食い下がる2人に同じセリフを言ってやるーー今度は耳元で囁くように。

 

「だからぁ......キンケツに貸したってんダ......」

 

「サがれってんなら断るぜ。コっちとら、400万も出したんだから......」

 

2人は一呼吸入れて、

 

「「手ぇ離せや」」

 

ギンッと飛び切りの睨みを利かせる。

しかし、私はそんな2人の威嚇を無視して、

 

「この話はこれでお終いだよ」

 

オウム返し気味に、また同じセリフを吐き捨てる。

これにはとうとう2人して額に青筋を浮かべる。

 

「「耳ィ遠いのかよメスグモ⁉︎ヤダってーー」」

 

「これで 終わり だよ」

 

駄々をこねる2人の肩にグッと少し力を入れ、両者を地面に跪つかせる。

側から眺めるアリアと金次君は目を丸くし、ボニーとクライドも驚くがすぐに立て直し、

 

「へっそうかヨ......」

 

「ドうしてもってんなら......」

 

私の手を払いのけ、再び立ち上がる。

 

「「今ここでオマエと闘ってもいいんだぜ?」」

 

格闘ゲームのキャラみたいな事を言って、

ーーゴゴゴゴゴゴーー

誰も彼もの神経を焼きつかせるような、殺気を放った。

この圧力の中、金次君とアリアは少なからず飲まれつつも、反撃できるレベルの意識を保っている。

心地いい殺気だネ〜。また、昔みたいにボコられたいみたいだ。

ほら、かかってきなよ。君達のボスが誰なのかもう一度教えてあげる。

デスマッチよろしくのバトルが始まると思いきや、

 

「ハァ、しょうがねぇナ」

 

「ヒいてやる」

 

意外にも先に折れたのはボニーとクライドだった。

この結果は意外である。てっきり身体に教え込むことになるとばかり......

 

「「ただし......オレらを騙した張本人見つけろよな」」

 

「勿論さ♪」

 

捨てゼリフを吐いて教務科棟を後にする2人。去り際に犯人捜索を依頼するあたり馬鹿ではない。

今度こそ一件落着と。

 

「さあて。やっとうるさいのが行ったね金次君」

 

ニパァと飛び切りの笑顔で彼の方を振り向く。

 

「零......よくあの殺気の中、臆さなかったな。こっちは張り詰めるのに精一杯だったってのに」

 

「アンタ本当に何者?あの2人が言ってたメスグモってどう意味よ」

 

「そんな事どうでもいいじゃないか。一件落着ってことでさ♪」

 

やばい!安心した瞬間、眠気が襲ってきた。か〜ら〜の〜、

 

「金次く〜ん。眠くなってきたから背中におぶって」

 

よいしょっとばかりに前置きもなく、彼の背中にダイブするーーおまけとばかり自分の胸を押し付けて。

 

「って、おい胸!背中に胸を押し付けるな‼︎思い切り当たってから」

 

「降りなさいよヘンタイ女‼︎いいえ、そのまま動かなくていいわ。風穴開けてやる!」

 

私を背に乗せロデオの牛みたいに動き回る金次君、それを追いかけるアリア。

ははは、興奮してテンパってる。ついでに、太もも押し付けてやれ♪

ギャーギャーとお馴染みとなったやり取りをしていると、急にアリアが立ち止まった。

 

「これ見て」

 

「......何だ」

 

「これは......」

 

びしっ、とアリアが指す掲示板を3人してのぞき込むと......

 

『 生徒呼出 2年B組 超能力研修科 星伽白雪』

 

白雪さんが、教務科に呼び出しを受けていた。

 




眠気が......眠気......が......ガック

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