狩人よ、警告は読まなかったのか?
引き返したまえ
旧市街はフレンズの街、焼き棄てられて後、ただ籠って生きているだけ
上の人々に、何の被害があろうものか
引き返したまえ
…さもなくば、我々が君を狩るだろう
…貴公、よい狩人だな
狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている。よい狩人だ
だからこそ、私は貴公を狩らねばならん!
ジャガーらが馬車を見てくれる、あるいは遊んでおくと言うから別に見なくてもいいよと断ってから別れた。ラッキービーストが任せろと先導し、ついて行ってみれば木の板で封鎖された場所に着いた。なにやら文句が書かれた張り紙がしてあったが、これまでの経験からどうせろくなことは書いていまいとふんで無視した。
そうしてぼくたちは旧市街へと足を踏み入れたのだが、率直に言って殺風景だった。焼き払われた跡が広がるばかりの光景に二人で絶句していると、どこからか耳をつんざくような怪音波が鳴り響いてきた。ぼくたちの頭から、矢のように出血が起こる。怪音波の発生源はトキと名乗り、仲間を探していると言った。歌はどうだったと聞いてくるから、あれは歌だったのか、あやうく発狂するところだったよ、とは言わずに力強いね、羽が綺麗だったと二人して言葉を濁した。
こんなところで何してたのと遠回しに旧市街をけなしつつ、トキはぼくたちに質問した。塔の上に行きたいとぼくが答えれば一人くらいなら運んでやるというので厚意にあずかることにした。サーバルちゃんは自力で塔をのぼるから、どっちが先につくか競争だと張り切っている。
トキに吊されて、ぼくはヤーナムの空を飛んでいた。上空からだと焼き払われた旧市街がよく見える。空ははじめてかと質問され、あいにく飛行能力は無いので肯定し、ぼくの装備は重くはないかと尋ね返す。獣の病、輸血液のおかげでただの獣だった頃より便利に飛べるのだと彼女は語った。ラッキービーストが口を開くたびに彼女のやる気を削ぐようなことばかり言うのでぼくは持つ手に力を込める。ようやく黙ったので話題をそらすべく、君はどこから来たのだとうかがえば、ヘムウィックの方の森のを通ってきたという。上位者の力によって時間が曖昧になり、生と死、夢と現実の境もあやふやになっている、上位者には謎が多く、我々にも分からないことだらけとは珍獣の言だ。
唐突に、あなた今年の焼き討ちで生まれたんですって、と聞かれたのでそうみたいだと答えた。青ざめた血が何か分かるといいわね、そう言って彼女は大きく羽ばたいた。
ようやく塔のそばまできた、という時である。
ふわああぁ!いらっしゃぁい!よぉこそぉ↑旧市街へ~!どうぞどうぞ!ゆっぐり死んでってぇ!いやま゛っ↓てたよぉ!やっと狩人様が来てくれたゆぉ!嬉しいなあ!ねえなんにぃするぅ 色々あるよぉ、これね、ガトリング銃って言うんだってぇハ↓カセに教えてもらったンの!ここから弾が出るからそれを喰らってにぇ
知らぬ者よ
かねて血を恐れたまえ
突如として声が響き、そして言い終わるやいなや塔の屋上がきらめいた。無数の水銀弾がばらまかれ、とっさに身をひるがえしたトキとぼくのそばをかすめる。ガトリング銃なる銃を、空飛ぶぼくらに執拗に向けるのは片目の隠れた少女。どうやらぼくらを血に酔った狩人とみて攻撃を試みたらしい。ぼくらは狩りをしに旧市街を訪れたのではない、水銀弾を補充したいだけだと叫ぶと、血に酔った狩人じゃあないのかと彼女はつばを吐いた。どうやら誤解は解けたようだ。屋上に降り立ったぼくらに、彼女はアルパカと名乗った。備え付けのガトリング銃を見せてくれたが、どうやって水銀弾を作り出しているのかは彼女も分からないらしい。一時間もすればたっぷり弾が手に入るよと気前よく教えてくれた。
血に酔った狩人が来るというなら自分も狩ってみたい、とトキがいうが、アルパカは全然来てくれないと寂しそうに笑う。ここの場所を知らないのではないか、試したいことがあるとぼくは提案した。ここに血をまいてもよいか、と許可を取り、ぼくの指示に従って皆で血をまいた。ふと、なぜここで待ち構えているのかとトキが尋ねた。アルパカが言うには他の地方へ行くのにここをよく通るから待ち伏せできたら素敵だなあ、備え付けのガトリング銃を見つけたから、かつてこれを使っていた狩人に教えてもらったのだという。
作業を終え、トキに抱えられたアルパカが上空から塔を見下ろす。先ほどまかれた血によって、輸血液の瓶をあらわす絵が描かれていた。これならみんな来てくれる、喜ぶアルパカを見ていると、突然ぼくの足を何かが掴んだ。山登りがこんなに大変とは思わなかった、と這い上がってきたのはサーバルちゃんだ。
お疲れさま、一仕事終えたぼくらにアルパカは輸血液をくれた。それもヨセフカの輸血液である。さすがヨセフカの輸血液は効きがちがうねと和んでいると、ここで一曲とトキが歌いだした。怪音波そのものだった先ほどとは打って変わり、ただの音痴だと弁護できるほどすいぶんましになっていた。のどにいい薬を輸血液に混ぜた、とはアルパカの弁である。彼女のおかげで、今度は発狂せずにすんだ。トキはすっかり特性輸血液のとりこになったようで、ここに通うとはしゃいでいた。
しばらくくつろぐと、ぼくとサーバルちゃんは塔から降りた。裏にはしごがあったので帰りは楽だった。いろいろやってくれた礼にと、帰る前に新しい仕掛け武器をもらった。あとで知ったことだが、風の噂によると、トキの仲間が塔の常連に加わったらしい。地上に降りたぼくらはジャパリ馬車の前まで戻った。ジャガーとカワウソがぼくらを出迎える。律儀に待っていてくれたらしい。どうだったというから上手くいったと水銀弾を見せた。そして新たな仕掛け武器。パイルハンマーというのだが使い方が分からずにいると珍獣が教えてくれた。たまには役に立つものだ。
とまれー、うごけーと遊んでいたサーバルちゃんだが、仕掛けが作動すると低い悲鳴とともにすっ飛んでいった。不用心だな、危ないよとジャガーと一緒に笑った。ジャガー、カワウソに見送られ再び別れたぼくたちは旅を再開する。サーバルちゃんはすっかりパイルハンマーが気に入ったようですごいねえ、パイルハンマーとしみじみしていた。
やーなむしがい ぎるばーとおにいさん(やーなむ)
…ああ、フレンズ狩りの方ですね
それに…どうやら、外からの方のようだ
私はギルバート。あなたと同じ、よそ者です
色々とご苦労でしょう。この街の住人は、皆…陰気ですから
私は床に伏せり、もう立つこともままなりませんが
それでもお役に立てることがあれば、言ってください
ごほっ、ごほっ、ごほっ
…この街は呪われています
あなた、事情もおありでしょうが、できるだけはやく離れた方がいい
この街で何を得ようとも、私には、それが人に良いものとは思えません