fate/dark moon   作:ホイコーロー

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 二次創作だしこのくらいの無茶は許されるはず。てかむしろ公式でも実装してくれと。こいつは本来こうじゃないかと。


 


六話 召喚〜訪問

「ちょっと何よこれ……」

 

 衛宮くんに召喚を行わせるため召喚に使えるものを探していた私は、屋敷の土蔵で信じられないものを二つ見つけていた。

 一つは一見はなんの変哲もない花瓶や小さな机などの家具類。ただ、これらには微弱だが魔力の残滓が宿っており、魔術によって何らかの作用をもたらされたものだと分かる。

 いや、宿っているどころではない。()()()()()()()()()()()()()()()。これが何なのかは分からないが、推測通りなら私の手には負えないほどの代物だ。でも召喚に使えるものではないので一先ずは置いておく。

 そしてもう一つ。これも土蔵にあったものだが、こちらは召喚に使えるというか何というか……。

 

「これ、召喚の魔方陣そのものじゃない!!」

 

 どうしてこんなものがここにあるわけ!? それに、パッと見ではあるが衛宮くんのような未熟な魔術師でも召喚が行えるように調整が施されている。

 誰かが元々、衛宮くんを聖杯戦争に参加させるつもりだった……? 誰かってそんなの―――

 

「遠坂ー、なんかあったかー?」

 

「―――ッ。え、えぇ! 準備できたわよ! こっちに来て頂戴!」

 

 おかしい。本当におかしい。どうしてこう私にばかりアクシデントが降りかかってくるの!? どこかに、私の予想を裏切ることを何よりの楽しみにしている神様でもいるんじゃないのかしら。

 いつか会ったらぶっ飛ばす。

 

 衛宮くんにも話しておきたいところだが判断材料が少なすぎる。土蔵の魔方陣、謎の作成物、魔術師、親……。これはもしかしたら衛宮くんにとってよくない話が出てくるかもしれない。

 それによく考えればそんな義理はどこにもない気がする。聖杯戦争が終わってお互いが無事だったら話してあげようかしら……。

 

 そんなことを考えながら、やって来た衛宮くんに召喚の説明をする。もちろん聖遺物なんてものは用意できない。あれ、もしかしてこれ……上手くいったらセイバーを召喚しちゃうんじゃないの?

 ……いいや、それは考えないでおこう。

 

「あれ、衛宮くん、それは何? 木刀?」

 

「え、あぁ。これを持ってた方が落ち着くからさ。集中だよ、集中。そのくらいいいだろ?」

 

「ふーん、その方がやりやすいのなら別にいいけど。それじゃあ、初めて頂戴。アーチャーは引き続き周囲の警戒よろしくね」

 

 そしてついに召喚が始まった。

 

 

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師衛宮切嗣。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 しっかりと前を見据えながら詠唱を行う。おそらく、かつてない異変に身体中が悲鳴をあげていることだろう。やがて、彼専用の魔法陣が起動を始め、部屋全体が蒼く染められていく。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 私でさえあの有様だったのだ、彼が行う召喚に危険でない箇所などない。一瞬でも集中を乱せば何が起こるかはわからない。

 彼にもそう伝えてあるはずだが、そんなことは知らないとばかりにその佇まいは真っ直ぐであり続けていた。

 

「―――――Anfang(セット)

 

 衛宮くんの左手の甲が紅く光り、そこに紋様が刻まれる。それが彼の令呪。彼のこれからを生か死か、どちらかに揺り動かす運命の天秤。その形は、鋭い三振りの剣のようにも見えた。

 

「――――――告げる」

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 詠唱が終了し、儀式が完了した瞬間だった。

 雷でも落ちたかのような衝撃が屋敷全体を襲い、思わず両手で頭を抱える。いや、比喩でも何でもない。()()()()()()()()()()。この周囲だけが嵐にでも見舞われたかのような荒々しさが残る中、ゆっくりと顔を上げる。

 そこには予想通り滅茶苦茶になっている土蔵と、アーチャーに衛宮くん、そして―――

 

「いよおぉぉ! 召喚してくれてありがとよぉ! 初めましてだなぁ、マスター!! 俺の名前は坂田金時、クラスはセイバー!!

 一騎当千のゴールデン! ここに見参だぜ!!」

 

 ―――そして最後に、産声というには雄々しすぎる奇声をあげた、存在感バリバリな金髪マッチョ快男児(ゴールデン)の姿があった。

 

 

 

「おっとぉ、俺としたことが先走りすぎたなぁ。よぉ! お前が俺のマスターか、坊主! ……ってアァン!? 俺以外にもサーヴァントがいるじゃねぇか! ピンチか!? これはピンチってやつか、マスター!?」

 

「……あ!? いやいやいやいや! 違うんだ! 遠坂は敵じゃない! とりあえずは大丈夫だから、落ち着いて話をしよう! な? な?」

 

 召喚した直後はあまりのテンションの違いに呆気にとられていたが、彼の言葉に三人ともが正気に戻る。私の時もなかなか焦ったが、こっちは何というか……ついていけない。

 私たちが地雷原を慎重に歩いていたら、こいつが後ろからバイクに乗って地雷を踏み潰しながら通り過ぎた感じだ。

 

 それにしても確かに、彼から見たらこの状況は奇怪に過ぎるかもしれない。召喚されたと思ったら、敵と思しきマスターとサーヴァントが傍にいたというのだから。

 臨戦態勢に入ろうとした彼を衛宮くんがなんとか宥める。……これってマスターとサーヴァントとしてはかなりおかしい光景なのではなかろうか。

 

「はぁー……やっぱりセイバーを引いたのね……。一先ずはおめでとうと言っておこうかしら。えーと、セイバーさん? 私たちは彼の召喚の手伝いをしていただけで今のところは敵対の意思はないわ。彼が教会でマスター登録を済ませるまでは不可侵でいきましょう」

 

「アァン? ほぉ……何だよ、それならそうと早く言ってくれりゃいいだろうがよ。危うくゴールデンに消し飛ばすところだったぜ」

 

 我ながら本当におかしいことを言っているとは思うが、何とか納得してもらえたようだ。さっきから言うこと為すこととんでもないが、理解が悪いわけではないらしい。

 というかこいつ、さっき自分で真名を大声で叫んでたんだけど。私も普通に聞いちゃったんだけど。しかもめっちゃ有名人だったんだけど。

 なんかこう……英霊の真名ってもっと極秘事項みたいなもんじゃないの? ランサーといいアーチャーといいこいつといい……。

 

「……存在感すごいな、お前」

 

「いよぉ! 初めましてだな、サーヴァント! 言っちまったから白状するが俺はセイバー、坂田金時だ! 以後よろしくな!」

 

「お、おぅ。俺は夜科アゲハ、クラスはアーチャーだ。こっちこそよろしく」

 

 そしてがっちりと握手を交わす二人の男。片方は170cmにも満たなく物足りないのに対し、もう一人は2mはゆうに超えている大男なものだから違和感が半端ではない。まるで地球人と宇宙人の出会いみたいだ。って―――

 

「――ってあんたなんで自分の真名までバラしてんのよおぉぉ!?」

 

「痛いッ!? だ、だってこっちだけ聞いたんじゃフェァじゃないだろう? だから痛いって! ごめんなさい、反省してます!」

 

 この男のノリに中てられたのか……? まぁ、あっちと違ってこっちは知られても困るもんじゃないしいいんだけど。

 

「フンッ、それによろしくなんてしないわ。あくまでも『今は』不可侵なだけで、今後に出会すことがあれば話は別なんだから」

 

「おいおい、なんだお前あれか、ツンデレってやつなのか。ツレねぇこというなよ、聖杯戦争は道連れってよく言うだろ?」

 

「言わないわよ!」

 

「遠坂……なんかその、すまないな……」

 

「どこかにまともなサーヴァントはいないの……」

 

 こいつらに付き合ってたら話が一向に進まないことを悟った私は、これから教会に行ってマスターになったことを監督役に報告することを告げた。私自身も面倒で済ませていなかったので、ついでに付いて行くことにする。

 それにしても……まさか坂田金時を引き当てるなんて。伝説通りならとんでもない強敵になるかもしれないわね。

 

 

 

 教会へ向かう道すがら、私は衛宮くんにマスターとしての知識をレクチャーしていた―――

 

「ちょっとなに、それじゃあなたは強化の魔術しか使えないまるっきりの素人ってことぉ!?」

 

「あ、いや……まぁ、そういうことだ」

 

 ―――筈なのだが、彼のあまりの無能っぷりに開いた口がふさがらない思いになっていた。

 五大要素の扱いも知らない、パスの作り方も分からない、父親以外には魔術を教わったこともない。それってどんな魔術師よ!?

 ちなみに、アーチャーには辺りの様子を見張らせているのでこの場所にはいない。異変などを見つけたら彼のスキル『意思疎通(テレパス)』で合図を送る手筈になっている。

 

「それにしてもなんでこんな奴がセイバーを……」

 

「呼んだか!?」

 

「呼んでないッ! あんた圧力が半端ないんだから、急に出てこないで! 心臓に悪いのよ!」

 

「そんな照れんなって。ほら、夜道って何かと危ないだろ? ゴールドなゴールデンの一つや二つ持ち歩かないと……」

 

「ゴールドなゴールデンってなに!? いいからあんたは黙ってて!

 それで……ってあいつのせいで何を言いたかったか忘れちゃったじゃないのおぉぉ!!」

 

「遠坂すまない……本当にすまない……」

 

 そう言えばこいつ、召喚をした直後だってのに思ったより元気ね。ランサーに殺されそうになった時といい、このタフネスさに限って言えば抜きん出たものがあるとも言える。

 

「と、とにかく一言だけ言っておくわ!

 あなたのお父さんは魔術師なんかじゃない。その人はね、魔術師である前に……あなたの父親であろうとしたのよ」

 

 屋敷の結界しかり、彼への魔術の伝授の仕方しかり。切嗣という人は、魔術の在り方を冒涜しているに等しい。そんな人に、魔術師なんて名乗らせてたまるもんですか。

 魔術師はただひたすらに親から継いだ魔術を鍛え、そのためだけに命を注ぎ、そして命の結晶たる魔術刻印を次の世代に伝授する。家族のことを顧みる臆病者なんて、魔術師じゃないんだから……。

 

「…………」

 

「なに、どうかしたの? そんなにじーっと見て。私の顔になんかついてる?」

 

「あ、い、いや、何でもない。気にしないでくれ」

 

 なんか衛宮くんの様子がちょっとおかしい。普通に話していたかと思えば、何かを思い出したかのように黙り込んでしまう。まぁ、短時間でいろんな事があったし疲れているのかもしれない。

 それから私たちは黙って歩き続けるのだった。

 

 

 

「ここが教会……」

 

「なに、衛宮くんは教会に来るのは初めて? なら覚悟しておいた方がいいわよ、ここの神父は一筋縄じゃいかない人物だから。セイバーはどうする?」

 

「俺はいい、とっとと行って済まして来ちまいな、マスター」

 

「あらそう。それじゃあ早く行きましょ」

 

 セイバーは残るようだ。聖杯戦争の中立地帯である教会で危険なことなどあるはずもないので、問題はないだろう。

 できればあいつに会うのは避けたかったんだけど、こうなったら仕方ない。一層の事、留守でいてくれればいいのに……。

 

 

 




 既にお気付きの方もいるでしょうが、この聖杯戦争……実は……日本の英霊も召喚できるんです! 僕がこっそり改造しておきました! 冗談です。
 あの設定はどーも邪魔だったので消えていただきました。ストーリーにも大して影響ないですしおすし? 元祖弓を使わないアーチャーとかも世界中回ってるとか言っても日本人じゃないですか。
 だからいいかなって。

 あと報告なんですが、更新がさらに遅くなりそうです。書溜めを放出しながら書いてたんですが、どうにも進みが良くないです。元々こういうのは得意じゃないんですね……やっぱり。
 具体的に言うと八話か九話を投稿した次あたりから二週に一度、それより遅いくらいになりそうです。
 今までの投稿作品と違い、結末まで筋書きは考えてるんで失踪だけはしないよう気をつけたい。てか絶対に書きたい(願望)

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