このお話は第参章で霊夢と威が阿比留や直彦と戦闘や会話を行っていた際、裏でなにが起こっていたかを紹介するものです。
第一項では主に射命丸文視点からお話をしていきます。
第参章の復習とその考察と考えてもらってもいいかもしれません。
それでは、始まり、始まり。
"第一項"
射命丸文(しゃめいまるあや)視点
場所:人里
私は今ネタ探しに人里へ来ている。最近あまり面白い異変や事件もなく、まともな記事を書けて居ないため今日こそは何かしらのスクープを手に入れたい。
「ネタ探し、ネタ探し~っと。およ?」
私は付近を探索しているとその視線は一つの目標を捉えた。博麗の巫女、博麗 霊夢である。彼女が人里に居ることは大して珍しいことではない。彼女だって生活する為には食料が必要なのだから、人里にも良く来ているのだ。だが問題は其処(そこ)ではない。なんと、あの博麗霊夢が男を連れているのである。今までそんな情報、何処(どこ)からも入って来ていない。まさに"スクープ"である。
「激写、激写っと!」
私はどこぞの早撃ちガンマンかのように一瞬にしてカメラを取り出すと、霊夢とその連れの男に見つからぬように撮影を開始した。
「しかし、何処の馬の骨なんでしょうねぇ。あの博麗霊夢に近づくとは、ある意味で怖いもの知らずですよ。」
そう霊夢にとっても連れの男にとっても失礼な事を呟きながら撮影していると、二人は八百屋に入って行った。
「変装道具があればあそこに入って行けるのですが……。」
まさかこんな事態になろうとは思いにもよらなかったため、私は変装道具を持ってきていなかった。幻想郷最速たる私の力で取りに帰ってもいいが、その間に移動されては後々探すのが面倒だ。私は記事を噛み千切る思いで、二人の入っていった八百屋を恨めしそうに睨んでいた。
「あー、そこの天狗さん。怪しいですね。ちょっとそのカメラ、拝見させてもらってもいいですか?」
気づくと私は上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)に、所持品検査を求められていた。彼女は人里の自警団の団長でもある。まあいわば与力(よりき)なのだが。
「あやややや、別に私は怪しいものでは……。」
私はついテンパり外界のアニメのような受け答えを返してしまった。上白沢慧音はしきりに首を傾げている。
「なぜそこまで焦るのですか? 怪しいですね。ちょっと寺子屋までご同行願えますか?」
遂に上白沢慧音は外界のポリスマンのように私に任意同行を求めてきた。しかし此処(ここ)で易々と捕まる訳にはいかない。なんてったって目の前には"スクープ"が在るのだ。
「私にはまだやらねばならないことが在るので、退散させて頂きます!」
私はここぞとばかりに自身の力を奮い立たせ、一気に空え舞い上がった。
「あっ! 待てっ!」
上白沢慧音は追ってくる心算のようだ。しかし幻想郷最速の私には敵うまい。私は全速力でその場を飛び出した。見る見るうちに後ろの上白沢慧音は点のようになってしまう。
「…………て、貴方には何度か取材をしたことがあるでしょう!!!! 私は射命丸文ですよ!!!」
私は遠くでまるで点のようになった上白沢慧音に叫び掛けた。上白沢慧音は「あ、そうだった。」呟くのが見える。読唇術(どくしんじゅつ)を極めた私が言うのだから間違いない。
「覚えてやがれですよ!!!」
私は湧き出てくる涙を抑えながら、絶対に主人公になれないキャラの台詞を叫ぶとただ闇雲に飛行した。
* * *
「はっ!」
私は突然、意識を取り戻した。といっても別に気絶していたわけではない。呆(ほう)けていただけである。
「あやややや、私は一体何をして居たのか。はっ!」
私は当初の目的を雷光の如くピキーンと思い出した。
「"スクープ"です!」
そう言うと同時に私は人里へ向けて飛行を開始した。
人里に着くと既に八百屋には霊夢達の姿は無かった。がそれも当然である。長い間、闇雲に飛び続けていたのだから。
しかし、此処で止めるわけにはいかない。私は思い立ち八百屋へ飛び込んだ。
「らっしゃい! おぉ、え、えっと……、て、天狗ちゃん! 毎度ありー!」
「射命丸文ですよ! どうして人里の人は私の名前をことごとく忘れているんですか!」
私は私自身の名前が忘れ去られている事実の愕然とするが、元気を奮い立たせて取材を開始する。
「えっと、唐突ですが取材させて下さい! 宜しいですか?」
私はそう尋ね、ペンとメモ帳をこれまたびっくりの早業で取り出した。八百屋のおっちゃんは「いいぞ!」と答え、強く頷く。
「先ほど此処に来られた霊夢さん方々についてなのですが……。」
私はそう取材を開始した。
「あぁ! あの二人のことか! いやはや霊夢ちゃんがまさかあんなに良い男をひっかけてくるとは思いにもよらなかったよ!」
なるほどなるほど。私は真摯に受け止め頷きながらも、メモ帳にペンを走らせた。
「と、言うことは、あの二人は恋仲であるということで間違いないですか?」
私はそうおっちゃんに尋ね核心を突いた。
「う、う~ん。二人は否定していたけれど、あれはどうみても恋人同士に見えたがなぁ……。」
「なるほど、なるほど! ご協力ありがとうございました~! 出来れば何か買って行きたいものですが、二人を追わなければならないので私はこれで失礼させて頂きます! それでは~!」
私は八百屋から飛び立ち空中でメモ帳にペンを走らせる。
「二人は恋仲であった、と。」
私は記者としての常套手段(じょうとうしゅだん)を用いるとフッと笑い
「―――バレなきゃ犯罪じゃないんですよ!」
と、外界のアニメで出て来た決め台詞を呟いた。
「あ、やっぱりバレたら信頼が落ちる……。」
そう呟き結局私は正しい内容に書き改める。
* * *
「見つかりませんねぇ……。」
私は人里の上空から博麗霊夢とその連れの男を探索した。しかし、何度探しても見つからない。
「何処かの店に入っているか、あるいはもうすでに人里から抜け出したか……。」
実は最初に博麗霊夢を発見してからもう既に2時間30分以上が経過していた。
「にっくき上白沢慧音め! サノバビッチ!」
私はまるでアメリカのアクション映画のキャラクターのように呟いた。しかし幾等(いくら)汚い言葉を吐こうとも、博麗霊夢ご一行は見つからない。これはもう人里から抜け出したと見て間違いないだろう。私はそう考え、博麗霊夢が次に向かうであろう博麗神社に向かうことを決心した。
「まぁ、私の速さを持ってすれば追いつくのは容易いことでしょう。」
私はそう呟きながら博麗神社に向けて飛行を開始した。
* * *
博麗霊夢達を見つけるのは案外容易いものであった。彼女等はなぜか飛行せずに森に作られた簡易的な道に沿って歩行している。
「恋人と一緒に居られる時間を長くしたいという考えからでしょうか!? 激写、激写っと!」
私は低空まで降下して、また撮影を再開した。だが二人は恋人というには相応しくない表情をしている。どのような表情かと問われれば、まるで今からゲリラに襲われるのを知っているかのように、闘志や恐怖が見え隠れした表情である。
「この様子はあまり記事には相応しくないですねぇ……。」
私はカメラを降ろし撮影を停止した。そして隠密に二人を観察しようとより一層、降下して木々のてっぺんギリギリのところを飛行しながら接近した。二人の間に目だった会話はない。二人とも真剣な表情をしていた。これから何かが起こるというのであろうか
。私は隠密に、そして慎重に二人を窺い続ける。
それからして一時経つと、博麗霊夢の連れの男が突然立ち止まった。「なんだ……?」と呟いている。博麗霊夢はそれに合わせて止まって、振り返り「どうしました?」と問いかける。その刹那
「―――弓だッ!!!」
突然、男はそんな事を叫んだ。その直後「くそっ! 伏せろッ!」と叫びながら霊夢に飛び込み、二人で地面に倒れ伏せる。
私はその二人の頭上を高速で通過していった矢の存在を見逃さなかった。
「また新たな"スクープ"到来ですか!? しかし、今のは当たっていたら二人のどちらかがかなりの重症を負っていたような気が……。」
助け舟を出した方が良いだろうか。私自身も記事と博麗霊夢達の命、どちらが大切かと聞かれればそれは……
「記事……?」
馬鹿なっ! と自身の正義心の無さに愕然としながらも、さすがにあの博麗霊夢でも対処しきれないレベルの戦いになったら助け舟を出してやろうと決心した。
二人は第二射に備えて逃げようとしている。だが間に合わないことを悟ったのか、霊夢の前に抜刀した男が立ち塞がった。
「刀で矢を切り落とす心算でしょうか。なかなか、骨のある馬の骨ですね……。」
と訳の分からない言葉を呟きながらも、私は握ったカメラを二人に向けてシャッターチャンスを待った。
その直ぐ後に弓矢の第二射が二人に接近していることを悟った私は、刀を振り降ろし始めた男がいざ矢を斬り落とさん一瞬を予測し、シャッターボタンをプッシュ、シャッターを切った。
だが私の予想もその男の予想も外れたであろう。矢は博麗霊夢が作り出した二重結界に命中し、地面へ落ちていた。
「なんか……、かっこわるいですね……。」
と私は独り呟きもう一度、二重結界で護られた二人を撮影すると、釈然(しゃくぜん)としない気持ちでカメラを降ろし二人を見やった。
「しかし、何者なのでしょうか、あの二人を伏撃してきた者は。妖気をさっぱり感じませんが、人間なのでしょうか? だとすればそいつはかなりの命知らずですね。」
と、一人で推察していると霊夢は今矢が飛んできた方向へ向けなにやら叫びかけ、御札やらを取り出して射撃を開始した。そして射手を捕えるためか、はたまた射殺するためかどんどん接近していく。そして茂みの中へ入っていって弾幕以外見えなく
なった。私は急いで付近へ接近し様子を窺った。
「痛っ!」
と、突然奥の茂みのなかより女性らしい声が上がった。弾が命中したのであろうか。
「あーもうっ、しつこいんだよッ!」
そういう声が聞こえたと同時に草むらや枝、葉を掻き分ける音が聞こえて来た。木々の上空へ飛び出したようである。
連れの男が「霊夢っ、上だッ!」と叫んだ。霊夢は「分かってます、よっ!」と言いながら射手を追い飛び出した。
連れの男もそれに続くかと思っていれば、飛行することが出来ないのだろうか、その場に留まり続けた。この男の上空を飛行して二人を追えば自身の存在が割れることを危惧(きぐ)した私は、此処で取材を続けることにする。
二人は上空で追いかけっこをして居たが、やがて射手はスペルを叫んだ。
「ははははっ! 名を尋ねる余裕なんて君にあるのかなっ?」
―――輪符 円月輪陣撃!(えんげつわじんげき)
聞いたことの無いスペルだった。この正義の記者である射命丸文でさえも知らないスペルである。一体あいつは何者であろうか。
「本当、今日はスクープ尽くしの良い日ですね!」
私は嬉々しながら取材を続ける。
敵の作り出した輪陣撃はなかなか霊夢を苦闘させているようである。正直先ほどから霊夢の様子を見ていると本調子が出せてないようにも見受けられる。風邪を引いているのか、はたまた疲労困憊(ひろうこんぱい)しているのだろうか……。
二人の戦闘は尚(なお)も続いた。