―東方撞賢木― 『巫女と男の運命』   作:Veruhu

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"第三項"

―――ヒュゥゥゥ

 

 

 

 

 

 

 

 やがて阿比留の両手から集束した弾が放たれた。その弾は一直線に霊夢の元まで向かう。

 

 

 それと同時にアキラは霊夢に向けて走り始めた。だがあれでは絶対に間に合わない。

 

 

「あやややや、今こそ私が出るべき場面でした……。」

 

 

 そう呟いて居る最中、阿比留の爆裂撃は霊夢に命中。大爆発を起こし付近に爆風を巻き起こした。その爆風は土を巻き上げる。

 

 

 その後、アキラは必死に霊夢の安否を確認しようとしていた。

 

 

「アキラ君! 無駄だよ無駄! 博麗霊夢は死んだッ! 私の仇討ちもこれにて閉幕だよッ!」

 

 

 阿比留はそう勝利の雄叫びを上げていた。

 

 

「ハッ! 霊夢さんがそんな簡単に死ぬわけ無いでしょう? だ、大丈夫ですよ。」

 

 

 私は爆風で自身の声が大して周りに響かないことをいいことにそう呟いた。だが最期の最期に噛んでしまう。動揺が隠しきれない。

 

 

 やがて爆風で巻き上げられた土が地面に戻り始めた。私は霊夢が居た地点に目を凝らし続ける。

 

 

 

 

―――霊夢は・・・、生きていた。

 

 

 

 

「霊夢っ!!!」

 

「なにっ!?」

 

 

 アキラがそう叫ぶと直後、阿比留は驚愕の声を上げた。

 

 

「よ、よかったぁ……。」

 

 

 私もいつのまにか安堵の言葉を吐いていた。

 

 

「なっ! なぜだっ! なぜ傷一つも受けずにっ……!」

 

 

 阿比留が相変わらず驚愕の声を上げている。だが確かに霊夢に傷一つついていないのはあまりにも出来すぎていた。私は周辺に目を凝らしやがて"納得"する。

 

 

 霊夢の直上には"四重結界"が張られていた。

 

 

「ばっ、馬鹿なああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 

 阿比留がそう叫んだ。私も正直「ええええええええええええええええええええっ!」と叫びたかったが、今は私の存在に気づかれてはいけないと、自重した。

 

 

 八雲紫が助けに来たということであろうか。しかし付近に八雲紫の姿は無い。

 

 

「違うだろう……、多分これは……、俺が張った。」

 

 

 やがてアキラがそう話すのが聞こえた。私はその言葉に絶句してしまう。だがやがて意識を取り戻した私の脳内では素早く情報の整理が行われた。

 

 四重結界を張れる者はこの幻想郷で八雲紫しか居ない筈、だとしたらなぜアキラにそれがいとも簡単に作り出せたのであろうか。

 

 

 何度も何度も思惟するが、やはり理由は分からなかった。

 

 

 その後、アキラは四重結界を大きくしたり小さくしてみたりして見せた。やはりアキラが張っているということに間違いはないようである。

 

 

 

 しかし博麗霊夢はここまでも弱かっただろうか。かりにもこれまでかずかずの異変を解決してきた彼女なのだ。此処まで圧倒される筈が無いはずなのだが。彼女はスペルカードルールでなければまともに戦えないということなのだろうか・・・。

 

 それともやはり何かしらの事情で疲れているか、病気で弱っているのか・・・。これはまた取材する必要がありそうだ。

 

 

 

「はっ、笑わせてくれるじゃないかアキラ君っ! 君の何処にそんなが底力(そこぢから)が眠っていたのか探ってみたい所だが、生憎(あいにく)僕の我慢の尾は切れてしまったのでね! その出来損ないの結界と共に消させてもらうよッ!」

 

 

 阿比留はそう叫びまたスペルを発動させるようだ。アキラ達はそれを四重結界で防御しようとしている。

 

 

「襲符 虎襲爆裂撃ッ! 第一射ッ!」

 

 

 阿比留はそう叫び射撃を開始した。第一弾が四重結界に命中し辺りに土埃を巻き上げる。

 

 

「まだまだこんなものじゃないよ! 第二射! 第三射! 第四射! 第五射! 第六射! 第七射! 第八射! 第九射!」

 

 

 今度は本気で潰しにかかっているのか、阿比留は幾度も射撃を連続した。やがて付近には大きな土埃が舞い始め、視界を閉ざし始める。霊夢達の周りの木々はどんどん薙ぎ倒され、消されていっていた。

 

 やがて土埃が視界を完全に閉ざし霊夢達の安否を不明にさせた。だがそれでも尚、阿比留は射撃を止めることは無かった。

 

 

「第六十六射! …………第六十七射! はぁはぁ、だ、第六十八射っ!」

 

 

 阿比留は今だ射撃を止めない。阿比留の発射した砲弾は既に六十を越していた。

 

 

「あやややや、これはどうなってしまうのでしょうか……。」

 

 

 私はそう呟き、傍観者を決め込んでしまう。一時は助けようとも思ってみたものの、この世紀の戦いをカメラに収められないのは酷く悔しかった。

 

 

「第っ……六十九! ……第七十ッ!  はぁはぁはぁ、畜生ッ! 素人がっ……造り出したっ……即席の結界がッ……なぜっ、ここまでッ!?」

 

 

 阿比留は遂に疲れたのか射撃を停止してしまう。

 

 

 その後一時経つと、阿比留と霊夢達の言い争いが始まった。だが霊夢達には動く気配が一向に無い。そこで何時までも四重結界で防御している心算なのだろうか。

 

 

「……、そろそろ移動したかい! 私も疲れが取れて来たから攻撃を再開するよ!」

 

 

 やがて阿比留が射撃再開の旨(むね)を霊夢達に伝えるためか叫んだ。

 

 

「……居るわよ! 此処に!」

 

 

 霊夢達は相変わらず地点を変更していないようだ。最早移動する心算は無いらしい。

 

 

「あぁ……、そうかい。……どうして、何もしてこないんだい? 同情でも誘っている心算なのかな?」

 

「そんなもの期待してもいないわよっ! 私達は絶対にこの結界が貴方の力よりも長持ちするのだと、信じているだけ!」

 

「そうかい。アキラ君! 君の能力は素晴らしい物だね! 感服したよ! 四重結界なぞ、紫以外の者が出したところを私は見たことが無いからね!」

 

「……集中していて、喋ることも止めているみたいよ!」

 

「なるほどね! ……君は優れた逸材だから、今だったら見逃してあげるよ? 霊夢をこちらに引き渡せばね!…………そうだよね。君がそんな事をするはずが無いか……。いいよ……、君の四重結界と私の虎襲爆裂撃(こしゅうばくれつげき)、どっ

 

ちが強いか勝負してみようじゃないか! そして君に君がお望みの名誉ある最期を、遂げさせてあげるよ!」

 

 

 二人は暫くこのような言い争いをして居た。だが阿比留はやはり射撃を再開するようである。

 

 アキラが四重結界を張ったのだろうか、土埃が薄らと薄い紫色に変色した。

 

 

「あれ……? 薄い紫?」

 

 

 私はとっさに異常を感じ取った。アキラの四重結界は確か薄い青色と赤色で構成されていた筈である。だが今見えるのは薄い紫色であった。

 

 

「薄い紫色は霊夢さんの二重結界の色の筈なのですが……。」

 

「襲符 虎襲爆裂撃! 第一射!」

 

 

 私がそのような疑問を呟いたその直後、阿比留の射撃が開始された。黄色に輝くその虎襲爆裂撃は、霊夢が居るであろう場所に向けて急降下していく。

 

 

「第二射! 第三射! 第四射!」

 

 

 阿比留はまた何度も射撃を繰り返すようだ。だが私の予想が正しければ、

 

 

「霊夢さんが……やられる……。」

 

 

 さきほど霊夢は「アキラは集中している」と言っていた。だがアキラは四重結界を張っていない。逆に霊夢の二重結界が張られている。しかも先ほど阿比留と霊夢がなんど言い争いをしようともアキラはそれに混じらなかった。つまり……、最初から居なかったというわけだ。

 

 

「アキラが何処に行ったかは分かりませんが、さすがに此処は私の出番かも知れませんね!」

 

 

 霊夢に大した力が残っているとは思えない。それに土埃で見えないといえど、目の前でやられていくところを助けないで居たら正義の名が廃る。それに貸しも一つ作れる。

 

 私は高速で阿比留に接近し、スペルカードを出してスペルを発動させようとする。わざわざスペルカードを出すのは、面倒なことになっても後でスペルカード戦に持ち込む材料にするためだ。

 

 

「風符"天狗道の……」

 

 

 と、私がスペルを宣言しようとしたその刹那

 

 

―――目の前に四重結界が形成された。

 

 

「うわっっっっと!」

 

 

 私はすんでのところでこれを回避した。私自身非常に高速で飛んでいたのだから、回避は一苦労である。

 

 

「なんなんですか……、一体。……、えぇっ!?」

 

 

 私は今、四重結界を回避したのだ。つまりそれは

 

 

「アキラ……、逃げていたわけではなかったのですね。」

 

 

 四重結界は阿比留が居た所に大きく正方形で形成されていた。最期に発射された爆裂撃もその結界の中で爆発している。そのためか結界内部は爆風で視界が悪くなっていた。

 

 

「霊夢を囮にしてその間に自身は阿比留を捕獲に向かう。見事なものです。女を囮にするのはあまり褒められたものではないですが、致し方無かったのでしょうね。」

 

 

 私はそう批評すると自身の存在が割れないように地点を移動し再度観察を始めた。

 

 

 

 アキラは警戒しながらも空中に出来た四重結界に接近していく。結界内部の煙は薄れ始めた。やがて結界の底の方に阿比留が座りこんでいるのが確認できるようになる。

 

 

「見事なものですねぇ……。」

 

 

 私はそう呟いた。

 

 

 アキラは接近してから一時すると結界内部の阿比留と会話をし始めた。だがもう日は暮れていたため、お得意の読唇術は使えない。

 

 

「―――霊夢ッ!!! 大丈夫か!!! 霊夢ッ!!!!!」

 

 

 アキラは霊夢の安否を確認するためか、叫び始めた。だが肝心の霊夢からは返答がない。

 

 

「おい!!! 霊夢ッ!!! 返事しろッ!!!!! 霊夢!!!」

 

 

「うぅっ……、い、生きてるわよぉっ!!!」

 

 

 突然霊夢からの返答が帰ってきた。良かった。私は内心安堵する。

 

 

 アキラも霊夢からの返事があったことに安堵したのだろう再度、結界内部の阿比留と会話をし始めた。しかし薄い青色と赤色で染まった四重結界の内部に捕えられた阿比留には抵抗の意志を失っているようだ。それもそうだろう。結界内部でスペルを使えば自

 

身にも被害が出る。自殺行為だ。

 

 

 そしてやがてその会話にも決着がついたのだろうか、アキラが目を瞑り四重結界の構成に意識を傾けているように見える。

 

 

「止めを刺す心算でしょうか……。」

 

 

 私はそう呟いた。確かに仕方の無いことだろう。これはスペルカードルールを元にした戦闘ではない。確固たる命を賭けた決闘で在ったはずだ。もともと阿比留は霊夢達を殺傷する心算でこれまで攻撃してきたいた。つまりアキラ達には阿比留を殺す当然の権利

 

があるわけで。この決闘を終結させるにはそれが一番最善にも思える。

 

 

「待ってッ!!!!」

 

 

 だがその時横の林からなんと霊夢が飛び出してきたいた。私はてっきりさきほど撃たれていた地点に留まっているものと思っていた為、唖然としてしまう。

 

 

「阿比留ッ! 貴方は死ぬ前に一度、貴方の子供の神霊が世に降ろした言葉を知りたいとは思わないの!?」

 

 

 霊夢はそう叫んだ。そういえばそうでしたと、私は独りでガッテンする。

 

 

「……まだそんな戯言(たわごと)を言うのか。そんな事出来る筈がないと何度も言ったじゃないか。」

 

 

 阿比留はそう返した。阿比留自身大して興味もないのだろうか。

 

 

「……貴方の子供の名前は、阿比留 嶺之介(あびる いわのすけ)。男の子でしょう? 神降ろしの儀式の際に貴方の子供は"阿比留嶺之介郎子命"(あびるいわのすけのいわつこのみこと)と名乗って居たわ。」

 

「なにっ!?」

 

 

 阿比留はそれに驚愕したのだろうか、声を上げた。

 

 

「阿比留 嶺之介とその神霊"阿比留嶺之介郎子命"ですか……。まあ、この幻想郷は何でも有りですからね。なにが起きても驚くに値しないでしょう。」

 

 

 私はそう呟いた。しかし阿比留のあの驚く具合を見ると多分図星なのだろう。完全に絶句してしまっている。

 

 

「"阿比留嶺之介郎子命"は生前14歳であったこと。男子であったこと。母は阿比留 菊理(あびる くくり)であったこと。自身は母を護るために死滅したことを紹介として降ろしていたわ。」

 

 

 霊夢はそう告げた。やはり過去の博麗帆純(はくれいほずみ)の狂乱妖怪討伐事件と殆ど一致する。

 

 

 やがて阿比留菊理は顔を伏せ時折、体を奮わせた。多分、泣いているのだろう。博麗霊夢の話を信用する気になったのだろうか。

 

 

「…………再度、問うわ。……阿比留菊理、貴方は阿比留嶺之介の神霊、"阿比留嶺之介郎子命"が降ろされた言葉を見たいとは思わない? …………黙ってたら分からないわよッ!! 阿比留菊理ッ!!」

 

「私……わっ。ぐすっ・・・。私、はっ!!!  ……私はっ! それをッ!!」  

 

 

 遂に納得し、博麗霊夢の話に乗る気持ちになったのだろうか、阿比留が霊夢の質問に答えようとした。

 

 だがその刹那、突然、博麗霊夢達の周りに疾風が吹き荒れ始め、やがて竜巻を作り出した。

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