―東方撞賢木― 『巫女と男の運命』   作:Veruhu

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"第四項"

「ええええええええええええっ!」

 

 

 私は遂に思わず叫んでしまった。

 

 風を操るのは幻想郷でも天狗だけ特権の筈である。しかし目の前には風を操る技術の一つ、竜巻が作り上げられていた。

 

 

「あやややや、天狗の真打ちが何処からともなく現れた……、ということでしょうか。」

 

 

 私はそう推測した。しかし天狗にそんな暇な奴など大して居なかった筈である。

 

 

 やがて完全にその竜巻は霊夢達を包み込み隠してしまった。しかしその竜巻は別に霊夢達を攻撃する為の物ではないようだ。確かに大きいもののその渦の巻き方と風の大きさは大したものでは無かった。

 

 

「内部がひっじょーに気になりますが、中に行ったらモロバレするでしょうね……。ここは我慢です!」

 

 

 私はそう呟き決心した。

 

 

 それから一時するとその竜巻は威力を無くし、消滅していった。

 

 視界を取り戻したその地点には見たことも無い新手の男が立っている。

 

 

「誰でしょうか……、何処かで見たことがある気がするのですが。」

 

 

 私は記憶を振り絞り此処最近の記憶の棚を空けてみた。しかし該当する人物は居ない。だが天狗でないことは確かのようだ。

 

 

「おかしいですねぇ……。」

 

 

 私はそう呟きながらも4人組とったこの霊夢達を観察し続けた。

 

 

 まず竜巻が起きる前と変わった点がいくつかあることに着目する。まずは今も言ったように新手の男が立っていた。第二に四重結界が消えていた。第三に四重結界の中に居た筈の阿比留が新手の男に対して跪(ひざまづ)いていた。第四にアキラが霊夢に

 

倒れながらも抱き抱えられていた。しかもその抱き抱えられているアキラの右腕の前腕部は明らかにおかしな方向へ曲がっていた。

 

 

「あちゃー、新手の男に腕、折られちゃったんですかねぇー。」

 

 

 私はそう呟くとこれまでしてきたようにまたメモ帳にペンを走らせた。

 

 

「うがっ……!」

 

「動いちゃ駄目です!」

 

 

 アキラは起き上がろうと右手を使おうとしたのだろうか、呻き声を上げた。そして霊夢にそれを制止される。

 

 

「そういえば私、霊夢とあのアキラの関係について取材に来てたんでした・・・。確かに二人の関係は恋人に見えますが、しかしそれよりももっと重大な事件が起きてしまいましたねぇ。」

 

 

 私は呟きペンを唇に宛(あて)がう。

 

 

「今頃気づいたのかい? 威。さっきから気づいていたものかと勘違いしていたよ。」

 

 

 男はアキラにそう突っ込みを入れた。そしてその事にはあまり興味は無いというように話の矛先を変える

 

 

「で、話を戻すよ。なぜ君が八雲紫(やくもゆかり)の息子であると分かったか。それは君が四重結界をいとも簡単に使えたからだよ。幻想郷の誰にも簡単には真似できなかった術をね。」

 

 

「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ………。」

 

 

 私は二度目の驚きの声を上げてしまう。といっても今回はばれないように小声であったが。

 

 しかしなるほど、その考え方は無かった。確かに八雲紫の息子だとすれば四重結界を使えても不自然ではない。しかし空を飛べないほどの人間が本当に四重結界を出せる物なのだろうか。それに彼に妖怪らしき点は確認できない。八雲紫の息子であれば妖怪にな

 

る筈であろう。しかしなぜ彼は明らかに人間の容姿をしているのであろうか。私は何度考えてもこの点に至っては理由が分からなかった。

 

 

「・・・ま、これ以上の面倒事は避けたいのでね。……俺達はこれで退散させて頂くよ。」

 

 

 新手の男はそう告げた。本当に帰る心算なのだろうか。

 

 

「待てッ!」

 

「無理ですっ!」

 

 

 アキラは声を張り上げた。だが霊夢は必死にアキラに抱きつく力を強め制止した。

 

 

「退けッ!」

 

 

 だがアキラは興奮しているのだろうか、霊夢から離れようともがいた。

 

 

「じゃ、これでおさらばとさせて頂くよ! 威! 霊夢! "また君達を殺しに来る"けれど、それにはかなり長い月日を経たせることにするよ。威という異質で特異な存在が現れたからね。大幅な作戦変更が必要となりそうだ!」

 

 

 新手の男はそう別れの言葉を告げた。その直後また先ほどと同じように辺りにに竜巻を作り出す。

 

 

「くそっ、放せッ! 霊夢!!」

 

「嫌ですッ!」

 

 

 そしてその霊夢とアキラの声を最期に、内部の様子は分からなくなってしまった。

 

 

 それから一時、竜巻の様子を眺めていると少しの間だけ内部から強い光が漏れて来た時があった。私はその瞬間シャッターチャンスと思い、シャッターを切った。なぜシャッターを切ったのかと言うと先ほどから日が暮れていたため、在るのは月明かりだけだっ

 

たのだ。つまり感度の低いこのフィルムじゃシャッターを切ってもあまり写らない。しかし強い光があればシャッターを切ればちゃんとフィルムに情景が写る。つまりはそういうことだ。

 

 

 それからまた一時待機していたが大した変化もなく、やがて竜巻は消滅していった。中には倒れた霊夢とアキラしか居なかった。だが気絶しているのであろう。呼吸の為か胸が上下していた。

 

 

「…………今日の取材は此処まで……でしょうか。」

 

 

 私はそう呟き、安堵とも無念ともいえぬ心情を描いた。そしてその場を後にする。今日の大スクープ取材は終了である。

 

 

 

 

 

 

 *                  *                  *

 

 

 

 

 

 

 

「うああああああああ!」

 

 

 私は突然のことに驚き叫んでしまった。なんと目の前に先ほど見た竜巻が出てきたのだ。私はそれをギリギリの所で回避する。

 

 

「危ないですねぇ……。」

 

 

 私はそう呟きながらも、ここから先ほどの新手の男が出てくるのではないかと期待しつつ観察していた。

 

 

「悪かったね、新聞記者。」

 

「……っ!」

 

 

 突然後ろから声を掛けられた。私は咄嗟に護身しようと動きを取る。

 

 

「おっと、動いたらこれだよ。」

 

 

 動きをとろうとした瞬間、背中に何か鋭利な物を当てられた。

 

 

「なにするんですか! ちょっと!」

 

 

 私はそう叫び後ろに男に訴えた。

 

 

「いやはや新聞記者ほど面倒な者は居ないのでね。彼等は本人が書いて欲しくも無い事を平気で書き、捏造を繰り返して注目度を上げようとする。」

 

「正義の新聞記者、射命丸文はそんな事しません!」

 

 

 私はそう叫び反論する。後ろの男は「フッ」と笑い鋭利な物を当てる力を強めた。

 

 

「そうか、それは安心したよ。……だけど僕は全ての目撃者を消す主義でね。」

 

「何の話ですか。」

 

「おいおいとぼけてもらっちゃ困るよ。さっきの戦いの様子……、君が上から観察していたの見てたんだよ?」

 

「…………やはり貴方はさっきの。」

 

 

 私はそう呟いた。あまり先ほど男の声をよく聞けなかったので判断をつきかねていたのだ。

 

 

「そうだよ。僕は熊埜御堂 直彦(くまのみどう なおひこ)だ。……新聞記者さんには僕の名前位は覚えておいて貰おうか。」

 

 

 そう熊埜御堂直彦と名乗る男は告げた。

 

 

「……ちょっといいですか~?」

 

「なにかな?」

 

 

 私は唐突に声を発した。熊埜御堂直彦は聞いてくれる心算のようだ。

 

 

「いえ名前をメモ帳に書いておこうと思いまして……、いいですか?」

 

「あぁ、構わないよ。」

 

 

 よし、掛かった! 私はメモ帳を取り出すフリをして直ぐに熊埜御堂直彦から離れようとする。さすがに私の全速力には付いてこれまい。

 

 

「……消された後ならね。」

 

「えっ。あッ!」

 

 

 突然、私は何もされていないのにも関わらず自身の意識が薄れていく感覚を覚えた。気絶していくのである。

 

 

「スペルネームは所詮お飾りに過ぎない。……ネームを言わずともスペルは発動出来る。……君なら知っているよね。」

 

 

 そんな事知っているに決まってるじゃないか。内心そう突っ込みながらも意識がだんだん閉ざされ、体が地面に向かって落下していく。その最中、熊埜御堂直彦の体が視界に入った。手に持っているのは、ただのペンだ。

 

 

「………サノバ……ビッチ。」

 

 

 私は意識が閉ざされていくなかそう捨て台詞を吐き、やがて完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 *                  *                  *

 

 

 

 

 

 

 

 

  八雲紫 視点

 

  場所:スキマ

 

 

 

「あらあらまあまあ、……威。そんな物を作り出してしまうなんて。さすが私の息子ね。」

 

 

 私は今、峯野威と博麗霊夢、対、阿比留菊理の戦いをスキマから観戦している。なぜ助けに行かないのか。その理由は簡単だ。我息子、峯野威の能力を早期開花させる為である。

 

 まあ危険な状態になればさきほどから蠅(ハエ)のように飛び回っている天狗が何とかしてくれるでしょう。

 

 

「しかし私の四重結界を作り出してしまうなんて。……私の息子である確かな証拠ね。」

 

 

 私はそう納得して微笑んだ。

 

 

 

 

 

 やがて戦いはヒートアップし遂に威は阿比留を四重結界で捕えた。

 

 だがそれからして一時するとその周辺に竜巻が作り上げられ始める。

 

 

「…………やはり来ましたか。」

 

 

 私はこの光景を昔見たことがある。ざっと150年ほど前といったところであろうか。

 

 あの竜巻の中から妖怪が出てくるのだ。そしてその妖怪は周辺に居る者達の"記憶の一部を消し"、また竜巻に紛れ消え去る。

 

 

「―――憶消者。」(おもいけしもの)

 

 

 私はそう呟いた。しかし憶消者とは私しか使っていない名称だ。それはあいつの記憶を今だ忘れずに持っているのが、私独りである為である。

 

 あいつは威や霊夢の記憶を消し、また帰っていくのであろうか。

 

 

「威……、霊夢……。」

 

 

 私は心配になり二人の名前を呟いた。しかし此処で私が出て行き私の記憶まで消されたら元も子もない。幻想郷で"あの"記憶を失わずに残しているのは私だけなのだから。

 

 

「……大丈夫。あの二人なら……。」

 

 

 私はそう自身に言い聞かせ心を落ち着かせた。

 

 

 一時するとまた再度、竜巻が渦巻き始める。憶消者は帰る心算なのであろう。

 

 その竜巻はやがて光を放ち始めた。前回と同じである。

 

 

「…………そろそろ離れた方がいいでしょう。」

 

 

 私は今まで腰掛けていたスキマの中に入り、穴を閉じていく。

 

 

 

 

 

「―――ちぇ、また逃げられちゃった。」

 

 

 

 

 

 

 スキマが完全に閉じきる直前、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 *短篇第壱節* 「光輝を放つその傑物は」 終わり

 

 

 




 *短篇第壱節* 「光輝を放つその傑物は」
 これにて閉幕にございます。

 読者の皆様、いかがでしたでしょうか。なにか短篇の癖に無駄に長いような気がしなくも無いですが……。気のせいでしょう。はい。


 やっと戦闘シーンも終了、次章からは博麗神社での日常を描く予定であります。また射命丸文の文文。新聞も書きたいなと考えているところでございます。どうぞお楽しみに。


 ではこの場をお借りしまして謝辞を。


  これまで沢山の読者様に支えられた御蔭で此処まで来ることが出来ました! この『巫女と男の運命』をここまで見て行って下さり誠にありがとうございました! これからも頑張って参りますのでどうぞこの小説を御愛読なされますよう、謹んでお願い申し上げます。


 それではまた会う日まで、さようなら。
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