"第一節"
プロローグ
正しさなんて物は、大人だってよくは分からない。
世の中の正義は法だ。それが法治国家、日本の在り方だ。
だがすべてが正しいわけじゃない。正しい判断をしているかどうかは、裁判官だってよく分からないはずだ。検察が言ってることが正しいとは限らない。弁護が正しいとは限らない。正義なんて言葉自身が、詭弁なのかもしれない。
世の中は間違ったことばかりだ。
だが、間違いに気づくことは出来ない、直す事も叶わない。
何時もこの世は、悪と擬似的な正義によって成り立っている。だが我々の認識している正義は本当に正義なのだろうか。悪は実は正義なのではないか。正義は自分が正しいと思って行動している。だが悪側も自分が正しいと思って行動しているのではないか。
世の中の正義は、その国の王の方針によって180度変わる事だってある。
目の前で殺戮が繰り返されられる所を目撃して、それを助けることも叶わないと知った時、人間は絶望せずに、狂わずに済むのであろうか。
俺には…………
―――無理だった。
―第零章―
男の前世
俺は、この世界に絶望した。日々繰り返される戦争、殺戮、強盗、略奪、強姦、拷問、虐殺、その他もろもろ。同じ人間同士が、食料、金、権力、権威、地位の利潤を求め殺しあう。
平和ボケした日本、贅沢慣れしたこの国では世界の情勢の詳細を知ることは出来ないだろう。
俺の住んでいる日本は先進国の中でもトップクラスで平和な国だった。平和ボケしているといわれても文句はいえない。
親は片親の父だけであった。単身赴任という言い方が正しいか、いや単身渡亜と言ったほうがいいのだろうか。収入はよかったので、金にも食べ物にも困らなかった。
父は戦場カメラマンである。現在は、アフガニスタンにいるのだそうだ。漢字表記は亜富汗斯坦だという。先ほどの、単身渡亜というのは、この漢字表記から取っただけだ。
戦場カメラマンという名称は最近では珍しくなくなった。だが数は米粒ほどなのでこのことを言うと誰もが驚く。有名だけれども、人が少ない危険な職なのである。
母は幼い頃に亡くなったそうだ。さすがに小学1年生程度の子供を家に一人で居させておくなんてのは無理だと思ったのだろう。父は戦場から帰宅し、俺を3年生まで育てた。
先祖の遺産のおかげで、父も簡単な職をやりながら俺を3年生まで育てた。だが、貯金もそろそろ限界が来ており、このままでは難しくなったため、父は戦場カメラマンへと復帰した。
俺は、祖父の家に預けられそこで中学まで育てられた。
高校に入ると俺は一人暮らしを始める。
一人暮らしをしながら勉学やバイトに励み、ついに国立大学への進学を果たした。
そんな大学4年目、卒業間近のある日、父の訃報を聞いた。
世界に絶望するのもこれがきっかけであった。
「峯野さん。そんなところで黄昏てないで、手伝ってよ。」
「ゴメンゴメン。今行くよ…………霊夢」
また俺は少し考え耽っていた様だ。
例え、さまざまな事に絶望したとしても、自分さえ恨んでしまっても、諦めることはない。この世界、全てに絶望したわけではないのだから。
これは、宿命を恨む巫女と世界に絶望した能力者、そして幻想郷の物語である。