「いってぇええええええ!!!!」
俺はあまりの痛みに声を上げた。
「あら、ごめんなさいね、威」
だがこの妖怪はしてやったりという顔で笑っていた。
「くっ……この妖怪!俺に何の恨みがあるってんだ!!」
「だから間違えたのよ。」
と、のほほんとした顔で返した。
「嘘付け!大妖怪はスキマの位置を間違えるのか!」
「間違えるわけ無いじゃない!」
この妖怪は全否定した。
「じゃあ今のはなんだよ!」
手を握って上下しオーバーアピールしながら、そう俺は突っ込む。
「わざとに決まってるじゃない?」
と、豪華な団扇で口を隠しながら話した。
「もう意味わかんねえよ!!」
俺はあきれ返っていろいろと諦める。
「だっ、大丈夫? 峯野さん」
霊夢がそばに駆け寄って来てくれた。うれしくて涙が出そうです。あんな冷たかった霊夢が……。
「だ、大丈夫だ霊夢、ありがとう。」
俺は手を付いて立ち上がった。なんなんだこの妖怪は、来て早々、俺をからかいやがって……。最近、妙にじゃれついて来ている気がする。
「なんのようなんですか……、紫さん。」
「用は無いわ。」
また、当たり前のように答える。
「じゃ、何しに来たんですかっ!!」
また立ち上がった俺が再び突っ込む。
「威いじり?」
「なぜに疑問系!?」
俺は”なぜ”の部分に力をつけて言った。
「冗談よ。」
そういって、紫さんは微笑む。
「勘弁してください……。」
疲れたと俺は肩を落とす。
「それもそうね、威のツッコミは下手だから面白くないわ。」
「さいですか。」
「冗談よ。」
「少しは微笑みながらそういうことは言ってください……。」
真顔で「冗談よ。」はない。ショックだ。
「さて前戯も終わったところで、本題に入りましょうか。話しやすい場所に移動しましょう?」
「そうですね。」
紫さんはまるでこれまでのことが無かったように真面目な顔になりそう提案した。しかし、前戯!?ぼけているのか!?本気で言っているのか!?よく分からん。そこで霊夢の顔をのぞくと、何を想像したのか顔が赤くなっていた。
俺たちはコタツの部屋に移動すると紫さんに上座に座ってもらい、俺は下座に座った。霊夢はお茶を注ぎに行ってくれたようだ。
今日話すことは案外どうでもいいことなのかもしれない。真面目な話を期待している俺が馬鹿なのか。
「さて先っきまでの話しは忘れて真面目な話に移るわよ。」
「はい。」
紫さんの真剣な雰囲気に飲み込まれそうになりながらも、また冗談が飛んでくるのはと思いツッコミを出す準備をする俺、馬鹿だ。
「まあ予想はしてたみたいだけど威の能力についてよ。」
そう真剣そうに話した。よかった真面目な話みたいだ。安心すると同時に、まだ安心できないとまたツッコミの準備をする俺、アホだ。
「あなたは幻想郷に能力を目当てで来たのよね。だからしっかりと説明をしておくべきだと思ってね。」
「まぁ能力も目当てですけど、行く当てもなかった、てのもありますよ?」
「なるほどね、まあ話を続けるわ。」
紫さんは真面目だが少し微笑んだ感じの、胡散臭い顔を崩さず話し続けた。少しどきどきする話だ、なんでかって俺の未来に関わる話なんだから。
「あなたの能力を開花させる方法はまだ分からないわね。」
紫さんは真剣そうにそれを俺に告げた。俺は少し驚き言葉を返す。
「えっ、能力ってのは修行をすれば手に入るとかではないのですか?」
「普通はそうね。だけどあなたは普通とは違うのよ。あなたはもうすでに能力を持っている。だからあとはその能力を目覚めさせるだけでいいはずなのよ。」
それを目覚めさせるだけでいい、か。
「なるほど。」
よくは分からないが。話を聞くことに越したことは無いだろう。
「取り敢えず能力を目覚めさせるための一段目として、幻想郷の説明をするわ。」
紫さんは少し姿勢を少し楽な形へながらそういった。幻想郷についての説明か。俺が頼まなくても紫さな。
「この幻想郷は博麗大結界によって、外界から隔離されているのは話したわよね?」
「はい覚えています。」
この話は一番最初紫さんに聞かされたものだ。あの時の紫さんもこんな感じだった。
「この幻想郷は外界でいう明治の時代にね隔離されたの。人間の科学文明の発達によって妖怪等が迷信だと思われるようになった。我々妖怪っていうのは結局は人間の思いによって出来ているの。人間が妖怪は存在すると考えることによって作られた存在なのよ。」
「なるほど。人間にはそんな力があるんですね。」
俺は驚いたように言葉を返す。人間の思いや、思い込みで妖怪が作られた。という話はどこかで聞いたことがあったが本当だったとは。
「そう、人間一人じゃどうにもならないけど、それが何万人と思うことによって創造されたの。外の人間により存在が否定されたことによって、妖怪の力は弱まり滅亡の危機に瀕した。幻想郷というものは昔からあったんだけどそれも崩壊寸前までいった。そこで私は、幻想郷と外の世界の境界に「非常識」と「常識」を分ける結界を張ったの。そして幻想郷を「非常識の内側」としたのよ。」
紫さんは、上等そうな扇子を開いて軽く優雅に扇ぎながら話した。
「なるほど……。ここでよく言われる非常識はそれが原因だったのですね。」
よくこの幻想郷では非常識という言葉を耳にしている気がする。まさかその非常識がこの幻想郷を保っている物だったとは。紫さんは話を続ける。
「そう、そして幻想郷を非常識の内側の世界にすることで、外の世界の幻想を否定する力を逆に使って幻想郷を保つことにしたの。」
「む、難しいです。そんなことが可能だなんて。」
「出来てしまうから面白いのよね。」
と、ここで霊夢がお茶を持ってきてくれた。それを机に置くと俺の横に座った。紫さんは話を続ける。
「そしてその存在が博麗大結界というものよ。そしてその博麗大結界の管理者が私と博麗の巫女の仕事、今の時代はあなたの隣に座る霊夢ね。」
「なるほど、だから博麗の巫女は必要とされるんですね。」
なるほど、やっと辻褄が合ったと俺は納得する。
「じゃあ能力開花の方法よ。現時点じゃ完全に開花させることは無理だろうから、そのコツを教えておくわ。」
「はい、お願いします。」
俺は真剣な眼差しで紫さんを見つめる。
「幻想郷とは非常識の世界というのはさっきも言った通りよ。つまりこの世界では外界では非常識とされることが出来てしまうの。だから空を飛べるし、弾幕も作れ、妖怪とも共存できる。」
「へぇ~、霊夢が空を飛ぶのには苦労したとはこのことか。」
「うん、そうだよ。」
俺は頷く。なるほど非常識の世界か。そして非常識を常識と思ってしまえばなんでも出来てしまうか。限度という物があるだろうけれども。
「だから、あなたはまず外界の常識を捨てることを努力しなさい。ここではその常識を持っている限り能力は開花しないはずだから。」
「分かりました。努力します。」
俺はまた頷き紫さんの言葉を了承する。
「そしてこれからは霊夢に稽古してもらうようにしなさい。出来るわよね?霊夢。」
紫は、霊夢に了承を求めるように顔を向ける。
「もちろんよ! 私に任せて! 峯野さん。」
「ありがとう、霊夢。」
霊夢は俺を見てニコッと笑った。実に頼もしいと、俺は頷き合い思った。俺が霊夢と初めて会ったときはこんなに素直で、優しくはなかったのにな。どうしてここまで心を許してくれたのか、俺は記憶を遡り、過去を思い出していた。
話は、俺が幻想郷に来るまでの経緯に変わる。