―東方撞賢木― 『巫女と男の運命』   作:Veruhu

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 これは俺が八雲紫に連れられて幻想入りした時の話である。
 
 この頃の俺は世界なんてもうどうだってよかった。努力しても報われなかったのだから。


*第弐章* 「巫女との出会い」
"第一節"


 これは俺が八雲紫に連れられて幻想入りした時の話である。この頃の俺は世界なんてもうどうだってよかった。

 

 努力しても報われなかったのだから……

 

 

 

 

    

     ―第弐章― 

       巫女との出会い

 

 

 

 

「付いて来なさい。」

 

 

 俺は、妖怪の賢者を名乗る胡散臭い八雲紫に連れられて、幻想郷という世界を目指している。といっても荷物をまとめて、スキマに飛び込むだけなのだが。荷物には向こうの世界で使うという和服と、ある金目になる物や生活必需品の類が入っている。どうも向こうの世界ではこちらの金銭は使用できないらしい。またこちらの世界の物が珍しく金目になるらしいから、向こうで売れそうなこちらの物をいくつか持ってきている。

 

 傍からみればこれからキャンプにでも行くかのような格好である。それくらい荷物を沢山持っているのだ。

 

 

「そろそろいくわよ?現世とのお別れをしておきなさい。」

 

 

 八雲紫はスキマに向かって歩き出しそういった。だが、もうこの世界に告げたい言葉もない、告げたい人もいない。俺は言葉を行動であらわすように無言でスキマに歩いた。

 

 

「なるほど、言葉は要らないのね。じゃあ覚悟して付いて来なさい。」

 

 

 八雲紫はスキマへと足を踏み入れた。俺もその後に続く。中に入るとそこは紅と沢山の眼に飾られていた。何千、何万という眼に見つめられるという経験したこともない状況に息を呑んだ。だがもう後戻りはしない。幻想郷に行く、そう決めたから。後ろに開いていたスキマが閉じていく。光の漏れる穴を閉じてしまう最後の最後まで見つめ、振り返った。この世界はどこまでもが紅と眼だけである。先はながく終点が見えない。もしここで迷子になってしまったら最後、生きては帰られないのだろう。

 

 

「こっちよ。」

 

 

 八雲紫は方向を指差し歩き始めた。それに俺は続く。この妖怪はこの世界で方角が分かるのだろうか。どっちに進めばどこに行くとか。そんなことまで分かってしまうのだろうか。いやこのスキマはあの妖怪が作り出したものだとしたら、それも可能なのだろう。それが妖怪の賢者の力というものなのかもしれない。俺はどちらが前で後ろなのかもよく分からないこの世界で一歩踏み出し、歩き始めた。

 

 

 10分ほど歩いた頃だろうか、八雲が振り返る俺を見ると口を開き話を始めた。

 

 

「今から行く所は、さっきも言ったように幻想郷という世界よ。この世界は元々この世界から隔離されていたわけではなかったの。

沢山の妖怪が暮らしていた土地に、それを退治する事を家業とする人間がやってきて住んでいた。そんな辺鄙な土地だったの。だけど、500年以上前だったか人間の文明の発達と人口の増加によって妖怪の勢力が人間におされ気味になった。そこで境界を操ることの出来る私が妖怪の力を拡張するために、幻と実体の境界という結界を張ったの。これにより単なる山奥だった幻想郷は、結界の作用によって幻となったものを自動的に呼び寄せる土地へと変化し、外の世界で力の弱まった妖怪達があつまった世界なのよ。」

 

「難しいです。」

 

 

 この妖怪は何を言っている。500年以上前?俺は生まれているいないとか、そんなレベルじゃない。歴史の教科書に数少ない記録が載っている、そんな時代だ。そんなことを話されてもすぐには理解しかねる。だがこの妖怪が幻想郷を隔離した張本人であることは理解できた。見た目どおりこの妖怪はとんでもない大妖怪のようだ。そんな大妖怪が俺を欲するとは何事なのだろうか。

 

 

「向こうの世界で必要な、最低限の知識よ。覚えていて損はないし覚えておかないと損するわ。頑張って理解しなさい。」

 

「はぁ。」

 

 

 俺は軽く頷いた。

 

 

「そして今から行くところは博麗神社という場所よ。博麗神社は現在、外の世界と中の世界とを分ける結界、博麗大結界を張っている拠点のような所よ。そこの巫女にあなたは会ってもらうわ。その巫女は名は、博麗 霊夢。別称、博麗の巫女とも言われるわ。博麗の巫女は博麗大結界の維持と、この幻想郷の維持を勤めているの。といっても霊夢は先代の巫女に比べてサボり気味ではあるけれども。」

 

 

 紫さんは少し笑いながらそう話した。

 

 

「さいですか。」

 

 

 幻想郷の維持に勤める博麗神社の巫女、博麗 霊夢か。博麗とはまた凄い名前だな。意味は分からないが考えついた人はすごいネーミングセンスなのだろう。名前もまたすごい、霊夢か。意味は神や仏が見せてくる夢だったかな。きっと堅苦しい古風な女なのだろう。

 

 

「因みに十五歳よ。」

 

「え"っ!?」

 

 

 十五歳っ!?!?子供が幻想郷を護っているのかっ!。子供が護れる程度の世界なのか?いやまさかな。この大妖怪が創った世界だ。とんでもない能力の持ち主なのだろう。しかし14歳か。こっちだったらまだ中学生だな。幻想郷には義務教育とかいうものは存在しないのだろう。まあ当たり前か、大昔に世界から隔離されてしまっているのだから、技術も知識も1世代ほど遅れているのかもしれない。きっと、とんでもない時代に違いない。

 

 

「だけど精神年齢は18くらいだから。全然話せるわよ。」

 

 

 紫さんは安心しろという風に俺に言い聞かせた。

 

 

「そうですか。」

 

 

 そしてこのやり取りを最後に互いにしゃべらなくなってしまった。無言で静かだが、紅で眼だらけの世界は続く。このまだ終わりは見えない。いや終わりなんて存在しないのかもしれない。そんな限りない無限にも思える世界を八雲と歩いた。

 

 長い、長すぎる。もうどのくらい歩いただろうか。このわけの分からない世界を歩きすぎて、方向感覚どころが脳内時計もおかしくなってしまっているのかもしれない。いつまで歩けばいいのだろうか。

 

「あの、八雲さん。」

 

「なにかしら?」

 

 八雲紫は、首と肩だけを振り返らせそう俺のほうを見た。いつ見てもこの大妖怪は軽く微笑んでおり胡散臭い。何を考えているのかさっぱり分からない。真顔だけがポーカーフェイスではないようだ。

 

 

「後どのくらいあるけばいいのですか?」

 

「あら、もう疲れたのかしら?」

 

 八雲紫は、少しだけ口角を上げ、また微笑んだ。

 

 

「疲れたというか、後どのくらいかは知っておいたほうが楽だと思いまして。」

 

「あらっ、この行路に限りなんて無いわよ?」

 

「なんだとっ!?」

 

 

 はっ!?どういうことだ?限りが無い?ていうか徒立ち!?戦いにでも行くのか!?

 しかしそうすると俺達はいつまでもいつまでも歩き続けなければならないということなのか!?ちくしょう!だまされるの覚悟で付いてきたがいざ種明かしをされるともう死にたくなったぜ。やっぱり俺は最後の最後まで騙される運命にあったんだな・・・。

 

 この妖怪畜生はまた口角を上げにっと笑い、こういった。

 

 

「だってとっくの昔に目的地についてるんですもの。」

 

「は?」

 

 

 俺が呆けた声を出した時、突然スキマが開いた。

 

 足の下に。 

 

 

「うわッ!?」

 

 

 という声を上げ俺は重力に引っ張られ落下していった。ああ死んだ。最後まで俺は騙され続けたんだなぁ。と走馬灯を見ながらそんなことを考えていた。

 

 

 

       ―どさっ!!!―

 

 

 

 そんな音とともに俺は地面へと衝突し短き人生を終えた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~、こんなところで寝ていられると困るんですけど。どいてくれませんか。」

 

 

 あ~ここは天国か。なんか女の子の天使に話かけられている気がするけど眼を開けるのが怖いから、もう少し寝ていよう。

 

 

「あ~はいはい分かりました。狸寝入りですね。じゃあゴミと一緒に焼却しますので。」

 

 

 そういわれ俺は何かちくちくするもので何度も刺され、転がされていく。さすがにそのままさされ続け、転がされ続けるのは嫌なのでがんばって仕方なく眼をあけることにした。

 

 眼を開けた瞬間、無数の木の枝のようなものが目に刺された

 

 

「痛ってぇぇえええええええっ!!!」

 

 

 俺は地面をのた打ち回り自分で転がりまくった。我ながら滑稽である。なんだこの天使はっ!たった今、死んだ人間に対してなんと言うひどい仕打ち!もう少し配慮してあげるとかは出来ないのか!!後で閻魔様に文句言ってやろうか!

 そうして何度も地面をのたうちまわった挙句、服を汚し穴を開けまくって、やっとぼやける目を開けその暴力天使を見てみると。巫女さんが箒をもっていた。俺をまるで汚物をみるかのような目で見ている。なんだこの暴力巫女天使は、天国じゃコスプレが流行ってるのか?

 

 しかし、なぜに巫女服を着るんだ。いやまてこの巫女服、普通の巫女服となにか違わないか?俺は巫女服を凝視していると、その暴力巫女天使は身構えた。だがそれを無視し、服を注視する。まず胸元だ。なんとこの服、首にネクタイのようなリボンがついているのである。リボン付きの巫女服とは伝統無視にもほどがあるのではないか?

 

 さらに注視すると、この巫女は頭に赤いろの大きなリボンをつけているのにも気づく。

 

 さらにさらに注視すると、この服は赤の比率が多すぎるのにも気づく。普通の巫女服は上の服が白くしたのスカートのような所が赤かったはずだ。だがこの服はなんと上半身も下半身もどっちも赤なのである。唯一白なのは、肩まで長さのある襟と袖の部分だけだった。

 

 

 さらにさらにさらに袖を注視するとなんとっ!

 

 

「脇が見えてるうううううううううううう!」

 

「夢想封印っ!!」

 

 

 少女がそう叫んだかと思うと七色の球が俺に襲ってきた。

 

 

「ぎやあああああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 峯野 威  天国で第二の人生の幕を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 今度の目覚めは布団の上だった。目を開けると天井が見え、右を見ると障子があり、隙間からは森が見えた。天国で死ぬとさらに上の世界に行くのだろうか。そんな考えを巡らせながら左を見た。

 

 

 いた。いたよ。さっきの暴力脇巫女天使。君の名前は俺の頭の中で決定したよ、うん。さらに首をひねると俺の頭の横には、妖怪の賢者、八雲紫が座っていた、俺が起きたことに気づいたのだろうか。背中に手を入れ体を起こして・・・くれなかった。俺がおきたことに気づいたのだろうか、紫さんはいつも通りにっと笑って・・・

 

 

「ぷっ……。」

 

 

 なっ!この妖怪失笑し始めたぞしかも、笑いこらえてやがる。

 

 

「ぷっふふふっ ははははははははははは!!」

 

 

 ついに我慢できなくなったのか笑いやがった!!しかもすんごい爆笑!!だけど口を豪華な扇子で隠しながら笑いやがって気品さを感じさせる、この野郎!!

 笑い声に気づいたのかさっきの暴力脇巫女天使は俺を見た、だがすぐに顔をそらしどこかへ言ってしまった。

 

 

「ふっ はははははははははは!!」

 

「あなたはいつまで笑っているつもりなんですか!」

 

 

 俺はたまらず起き上がり突っ込んでしまう!

 

 

「ごめん、ごめん、ごめんなさいね。 ぷっくくくっ。はぁ、久しぶりに爆笑させてもらったわありがとう。」

 

 

 妖怪は少し涙を流していた。涙を流すほど爆笑していたのである。

 

 

「な~にがありがとうですか。人を死なせて置いて。んで迎えにでも来たつもりですか!?」

 

「ははははははっ!嫌ね威、あなたは死んでいないのよ?あなたはスキマから5メートル落下して尻餅ついてから、少しの間だけ気絶していただけなのよ? ぷっ……。」

 

 

 妖怪は必死に笑いをこらえながらそう話した。

 What? この妖怪はなにを。

 

 

「あなたはね、ぷっ……。私が言った博霊の巫女に向かって脇ってほざいたのよ? ぷっ。」

 

 

 また必死に笑いを我慢しつつ妖怪はそう言った。

 

 はいっ?意味が分からない。この妖怪は何を言ってるのかさっぱり分からないよ、分かりたくないよ。でも分かっちゃったよ。そうか俺は、博霊の巫女に向かって。

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな俺の絶叫が博麗神社に響き渡った事は、いうまでもないだろう。

 

 

 それから紫さんは、暴力脇巫女天使もとい、博麗の巫女に弁解をしに行ってくれた。まあ、あの妖怪のことだ、まともな弁解は居てくれないだろう。だがあの巫女に合わせる顔も無い。俺がいったらさっきの不思議な術を食らわされるだけだろう。

 

 俺は布団から体を起こし、障子を開けた。そこには外界で直に見たことのない素晴らしい森林が広がっていた。そんな圧倒的な森林を見るため俺は布団を出て、商事を開け縁側に座り、景色を眺めた。風が吹き、木々が棚引いて、葉が擦れ合い音を鳴らした。時折強い風が吹くと枝が曲がり、落ち葉が落ちて、よりいっそう大きな音を鳴らした。

 

 

 それはまるで森林の合奏団であった。自然と共に暮らし、信仰し、愛してきた日本人の心の奥に眠る本能が、そう思わせた。

 

 機にはそこまで詳しくないが、あの葉の形は”もみじ”ではないだろうか。秋にはきっと綺麗な紅葉が見れるのだろう。掃除も大変そうであるが。

 

 ここで暮らすのは幸せそうながらも、大変なのかなと思った。

 

 

 そんな考えを巡らせながら森を楽しみ、暇を潰した。しばらくすると紫さんたちが戻ってきた。その後ろにはさっきの博麗の脇巫女が付いていた。まだ顔を合わせるつもりは無いみたいだ。体は完全に横の壁のほうを向いていた。

 

 俺は縁側から部屋に戻り正座をして待った。二人が正面に来ると同時に俺は両腕をたたみに突いて、腰を折った。俗に言う土下座である。

 

 

「あの、さっきはなんかすみませんでした。」

 

 俺は謝った。すべて俺が悪いとは思っていないがこのまま関係が悪かったら、この幻想郷で不利になると思ったからだ。俺はそのままの姿勢で少し目を上げ様子を伺った。

 

 巫女は驚いたように俺のほうを少し見たが、また目をそらした。そしてそのまま口を動かした。

 

「……別に怒っていませんから。」

 

 

 そういうことは俺を見ながらはっきりと言ってくれっ!それじゃまるで気を使われてるようでいたたまれない!そんな事を考えながら体を少し起こすと、また口を動かした。

 

 

「それに私も箒でいろいろとしちゃいましたし。」

 

 

 ちょっと謝りたくないような雰囲気を醸し出しながらも、ちょっとだけ同意してくれた!

 よしこのまま正常な関係に持っていくぞ!と、目標を立てていると今まで黙っていた妖怪の賢者、八雲紫が口を開いた。

 

 

「ところで22歳が14歳に向かって土下座して、プライドとかないのかしら?」

 

 

 確かにそうだけど空気読めこの妖怪!!俺もわかってたけど分かりたくなかったんだよ!!この状況を!!

 

 この野郎また笑いをこらえてやがる。畜生が! 俺は我慢できなくなりついに怒りを露にしてしまう。

 

 

「ていうかこれの一番の原因を作ったのあんただろうがッ!!」

 

 

 俺は体を上げ腕を広げてアピールをした。

 

 紫さんは少し考えた後、こう返した。

 

 

「5メートル程度の高さから落ちて気絶した挙句、死んだと勘違いするようなお馬鹿さんのほうが悪いんじゃないかしら?」

 

 

 俺は怒りが膨れ上がり、布団から立ち上がって叫んだ。

 

 

「あ・な・た・が! その5メートルの高さから俺を落とさなかったらこんなことにはならなかったでしょうが!!」

 

 

 俺は突っ込みすぎて肩で息をし、ゼェハァ、ゼェハァしながら次の言葉を待った。すると紫さんは肩を竦めて言った。

 

 

「難しいのよね、スミマを出す位置って。」

 

 

 紫さんは項垂れるような演技をした。

 

 

「嘘つけこの妖怪! 何千年も生きている妖怪にとってはそんなこと造作もないはずだ!!」

 

 

 俺は疲れながらも言葉を口にした。

 

 

「その通りよ!」

 

「もう意味わかんねえよ!!」

 

 

 俺はあきれ返って言葉も思いつかなくなってしまった。どうしてもこの話題を逸らしたかった俺は別の話題を振ってみた。

 

 

「はぁ・・・。気になってたんですけど、スキマの中でのこと。なんですかこの行路には限りが無いって。」

 

 

 すると紫さんは姿勢を戻し、いつもの顔に戻った後口を開いた。 

 

 

「あ~、あれはねスキマの中を楽しませてあげようと思ってやったのよ。やろうと思えば10秒で着いていたわ。」

 

 

  気を使ってくれたのはありがたいがあれは長すぎる! 1時間以上歩いた気がするが、時間間隔が狂っていたのかもしれないな。 紫さんはにっと笑った後、わりと真剣な顔をしてこういった。  

 

 

「さて本題に入りましょうか。しっかりとした部屋で話をしたいわ。移動しましょう。」

 

 

 そう言って立ち、歩いていった。俺も巫女も仕方なしにそれに続いた。途中、巫女は台所に入っていった。急須とお茶菓子が机に置いてあったからそれを出してくれるつもりなのかもしれない。そして、先を歩く紫さんは台所の近くの部屋に入り俺はそれに続いた。

 

 

 その部屋の外側の障子は開いておりさっきの部屋よりも綺麗に森と神社の境内を見ることが出来た。ここは本当にに贅沢な場所である。紫さんは俺を四角の机の前に座らせ、本人は俺の左の席へ座った。俺は何か話をしたいと、ありふれた話題の中から一つを選び投げ掛けた。

 

 

「ここは本当に景色の綺麗なところですね。贅沢です。」

 

 

 するとゆかりさんは机に頬杖を突き、言葉を返した。  

 

 

「たしかにそうねここは幻想郷一、景色が綺麗といっても過言ではないわ。私が幻想郷で一番中心で綺麗と思ったところに建立したんだもの。」

 

 

「なるほど。」

 

 

 おれは頷いた。すると紫さんは話を続けた。

 

 

「ここの山は幻想郷一高い、というわけではないけれど幻想郷の大体を一望することが出来るわ。あとで眺めてみなさい。」

 

「分かりました。」

 

 

 またおれは頷いた。幻想郷を一望することが出来るか。この世界の地理を勉強するのには丁度良いかもしれないな。だがまずはあの巫女と仲良くならなければならないだろう。よし、この世界での第一目標はあの巫女と友達になることからだ!

 

 と、心の中で目標を立てていると、お茶と茶菓子をもった巫女が入ってきた。

 

 

「霊夢はそこに座りなさい。」

 

 

 紫さんは俺の対面の席を手で指した。

 

 

「はい、はい。」

 

 

 霊夢はめんどくさそうに答えると紫さんと俺の前に、お茶の入った湯呑みを置き、指示された場所に座った。俺の正面の席である。

 

 

「じゃあ、まずは互いに自己紹介をしなさい。」  

 

 

 紫さんは頬杖を突きながらそういった。自己紹介か、そういえばまだしていなかったな。あんな騒ぎがあったものだから忘れてしまっていた。あの騒ぎの所為で巫女こと霊夢の俺の第一印象は最悪だろうからな。自己紹介ぐらいまじめにやって評価を上げなければ。

 

 しかしどうしたものか。俺には人に自負出来るような事があるのだろうか。得意な事といえばゲームと昔習った古武道程度なのだが……。後は戦場を見に行ったことかね。  

 

 悩んでいると、正面に居る霊夢が口を開いた。  

 

 

「私は簡単だから先にするわ。知っているみたいだけど名前は、博麗 霊夢(はくれい れいむ)よ。いろいろあって、博麗の巫女をやらされているわ。年は14歳、趣味はお茶を啜ることよ。あと賽銭が欲しいわ。」  

 

 

 そういって霊夢は口を閉じた。少なからず敵意を感じる様子であったのだが、仕方が無いだろう。大体は紫さんから教えてもらったことだったが、何かおかしくないか?語尾が。なんだよ賽銭が欲しいって。それ自己紹介で言うことじゃないだろ……。色んな所でおかしな巫女さんだな。さて俺はどういう自己紹介をしたものか。少しの間、腕を組み思案する。

 取り敢えず名前と年齢、趣味等は当たり前として俺がここに連れてこられるまでの経緯を簡単に説明してみるか。そう考えをまとめ、霊夢に向き直り、口を開いた。

 

 

「俺の名前は、峯野 威(みねの あきら)という。19歳だ。趣味はこれといってないがゲームと読書。で、なぜここに連れられてきたのかだが……。」

 

 

 俺は少し言葉を考えるように俯いた。取り敢えず、戦争だらけの世界に絶望して自殺しかけたところを紫さんに拾われたとでも言えばいいだろう。俺は再び口を開く。

 

 

「俺はこの目で戦争を見てきた。日本で戦争が起きているわけじゃない。別の国だ。その国に行って、その戦争のあまりの残虐さや非道さに、俺はこの世界と人間を恨んだ。……俺はあまりの惨さに鬱のようになり、自殺を考えた時、紫さんが現れた。いろいろと話した結果、俺はここに連れられてきたというわけだ。」

 

 

 俺は話し終えると、一息つきたくなりお茶を啜った。さてこんな馬鹿な話をして、どんな反応をするものか。

 

 

「なるほどね。自殺志願者を紫がここに連れてきたと言う事ね。いつもならスキマで幻想郷に入れた後、妖怪の餌にする紫が。」

 

 

 おい今なんか、もの凄く物騒なことを言わなかったか?俺は少し、血の気が引いてしまった。そんな事は気づきもしないのか巫女は会話を続けた。

 

 「そう言われてみると確かにかなにかしらの力を感じるけど、それもごく僅かなものよ。こんな人間はざらといるわ。私はこの人が、何かしら凄い能力を秘めているようには思えないわね。」

 

 

 霊夢は少し紫さんを睨み付けながら、そう言った。確かにその通りである。俺は俺が特別な能力を持った人間だとは思えないし、なにかこれまで不思議な能力を出した経験もない。やはり紫さんの思い過ごしなのだろうか。しかし、紫さんは俺の考えを遮るように答えた。

 

 

「これを見抜けないなんて、あなたは本当に修行不足ね。幻想郷の人間の中でも霊夢くらいなら見抜けると思ったんだけど。駄目だったなんてね。」

 

 

 そういって紫さんはため息をついた。と、途端に霊夢の顔が赤くなった。

 

 

 「まだあなたが正しいとは限らないじゃないの!」

 

 

 霊夢は憤慨しながら言った。 確かにその通りだ。紫さんが正言だとは限らない。俺だってたいして信じてはいない。何かしらの証拠があれば信じられるのだろうが、あいにく紫さんには掲示できる証拠は何一つとしてないのだろう。あるのは自信の確信だけだろう。残念ながら紫さんの頭の中まで我々は理解できない。

 

 しかし、紫さんは笑みを深めてこう返した。

 

 

「限るのよ、絶対にね。証拠は無いけれど絶対に目覚める。私には分かるのよ。」

 

 

 紫さんはそう言って自身の確信を示した。どうしてそんな確信を持てるのかは分からない。だが紫さんは有無を言わさぬ顔をしていた。

 

 

「それに例え目覚めなかったとして、別の役に立てるだろうからいいのよ。」

 

 

 紫さんは突然、笑みを浮かべ、 霊夢の方を見やった。なぜか霊夢はまた息巻き、悲憤する。

 

 

 

「なっ……。 私はイヤよ! こんなのっ!!」

 

 

「別に強制じゃないわよ。貴方が気に入らなかったら断りなさい。後は私が処理するから。でもねさっきも言ったけど、あなたはこんなのを絶対に気に入るはずよ。美しく言えば宿命、運命かしら。」

 

 

 紫さんは頬杖をついた。だが霊夢はさらに声を張り上げた。

 

 

「そんな馬鹿な話あるわけないわ! なによ宿命、運命って! 私はそういうのが大ッ嫌いなのよ! 私の宿命なんて!」

 

 

 そう、霊夢は言い俯いてしまった。まるで悲憤慷慨しているような様である。霊夢は顔を上げ、話を続けた。

 

 

「悪いけど、私は絶対に認めないと思うから。じゃ。」

 

 

 そういって霊夢は部屋から出て行ってしまった。俺は訳も分からず、追いかけようとした。

 

 

「え、あっ、ちょっ、どうしたんだよっ!」

 

 

 だが俺は紫さんに手を引っ張られ、追いかけるには及ばなかった。

 

 

「やめなさい、威。要因は貴方にもあるのよ。今、追いかけても逃げられるばかりかより一層、嫌われてしまうばかりよ。」

 

 

 確かに話の流れ的に俺が言っても逃げられるだけだろう。これ以上、巫女こと霊夢に嫌悪されたくはない。俺は静かに納得し、留まった。

 

 

「まあ、いいわ。貴方だけでも私の話しを聞きなさい。ほら、お座り。」

 

 

 そういって紫さんは先ほど俺が座っていた座布団を指す。俺は仕方なしと、座布団へ座った。

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