【完結】藤丸立香のクラスメイトになった   作:遅い実験

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三人で

 

 

 

 

 女子会後半に起きた語るも恐ろしい事件(ギャグイベント)によって、私のカルデアでの滞在日数は伸びることになった。本当に恐ろしい事件だったぜ…。特にどうとは言わないけれど。

 日数が伸びたのは、事件に巻き込まれた際に悪い影響を受けていないか調べるために、精密検査を行うことになったからである。

 検査自体はすぐ終わるようだけど、その準備もあるらしく開始は明日からということになった。

 

 つまり、今日は暇なのだ。

 

 なにしようかな。歩き回るのも良くないだろうし。…よし決めた。立香を襲いに行こう。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ダブルクロス────」

「────それは裏切りを意味する言葉」

 

 というわけで、TRPGやります。

 

 

 立香を襲撃して返り討ちにされた私は、持ってきた色々な道具を取り出していた。

 

「TRPG、ですか?」

 

 TRPGとはテーブルトークRPGの略称であり、紙や鉛筆、サイコロなどを使い、決められたルールに従って遊ぶゲームである。

 自分のキャラクターをルールに則り作成し、そのキャラのロールプレイ(演技)をしながらシナリオを進行していく。彼らをプレイヤー・PLと呼び、彼らが演じるキャラクターはプレイヤーキャラクター・PCと呼ぶ。

 PLが遊ぶためのシナリオなどを事前に準備し、NPCを演じるなどしながらルールに則りシナリオを滞りなく進行させるための役割を持つ者を一般的にゲームマスター・GMと呼ぶ。

 キャラクターに沿った会話を行いながら、シナリオで巻き起こる出来事に対して行動する。何かPCが行動を起こすと宣言した場合、サイコロ・ダイスを振って行動が成功か失敗か判定したり、まあ要はそんなアナログゲームである。自由度の高いすごろくみたいな?

 

 うん、Wikiを見るのが分かりやすいね。

 

「理解しました」

 

 

 ダブルクロスはそのTRPGの一つなのだ。

 …マタ・ハリさんのスキルではなくて。

 

「簡単に言うと、レネゲイドという人間に超常の力を与えるウイルスが広まってしまった世界で、その力を隠しながら、人々を脅かす存在から自らの日常を守っていくという話かな」

 

 はい、そんな感じです。

 ネットで調べるのが早いね。

 

「さっきから説明を早々に諦めすぎじゃない?」

 

 だって口下手な私の説明より、そっちの方が分かりやすいのは事実だし。

 

「いえ、とても分かりやすい説明でした。きっとバーサーカーの皆さんもサムズアップしてくださると思います」

 

 マジか。バーサーカーでも分かるTRPG解説講座。…この名前は止めておこう。

 

 

 

 というわけで、立香、マシュさんがプレイヤーで、私がゲームマスターとなりTRPG・ダブルクロスを遊ぶことになった。…なったのだ!

 

 私、カルデアに来てから…、い、いや、大丈夫だ。私カルデアの職員とかじゃなくてただの学生だし。今冬休みだし。遊んでたって問題ないはずだし。

 

 …そういえば、私が焼却されていた一年半ほどの期間、立香は生き残っていたわけだから、年上ということに、いや待て、それで言うとマシュさんも私より年上に…?

 

 衝撃事実!後輩は先輩だった!?

 …どういうことなの?

 

 

「おーい、また意識が空を飛んでるぞー」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 昨日と同じ今日、今日と同じ明日。

 世界は繰り返し時を刻み、

 変わらないように見えた。

 ────だが、世界はすでに変貌していた。

 

 

 

────幸せな日常。

 

 朝の暖かな陽射しで目を覚まし、家族と今日の予定を話し合いながら朝食を摂り、通学路で落ち合った親友と馬鹿話をしながら登校する。

 

 

────暖かな毎日。

 

 高校での退屈な授業を終えて、友人達と放課後を遊んで過ごし、日が暮れればまた明日と別れ、家に帰って晩御飯を食べながら家族となんでもないような話をする。

 

 

────有り得ない幸福。

 

 おやすみなさいと布団へ潜り、ふと思う。

 

 自分は朝、あんなに目覚めがよかったか。

 

 自分は家族と喧嘩中ではなかったか。

 

 

 親友は、二ヶ月前に事故に遭って、もう二度と出会うことは叶わないはずではなかったか。

 

 

 …そうだ。これは幸福な夢。

 起きるのが嫌になるくらい幸せな悪夢だった。

 

 

────なら、目覚めなければいい。

 

 

 甘い声が聞こえる。

 

 

────そうすれば、その幸せな日常は永遠となる。いえ、そもそもこの世界こそが現実で、貴方が言うそんな世界こそ悪い夢に過ぎないのです。

 

 

 そうなのか。…ああ、きっとそうに違いない。

 

 ならば自分はこの幸せな日常を、いつまでも享受し続けよう。

 

 

────それは、なんて幸せなんだろう。

 

 

 

 

 そうして世界は変わっていく。

 

 ()()()()()()()

 幸せな日常に堕ちていく。

 

 皆が望む幸せな世界になるまで、

 あと少し────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の日常をもって彼女のクラスは決定された。

儚げな少女など偽りの器。

其れは人間が待ち望んだ、人類史を最も残酷に否定する大災害。

 

その名をビースト⬛。

七つの人類悪の例外(ひとつ)、『幸福』の理を持つ獣である。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ではなくて。

 

 なにこのシナリオ。

 

 いや流石にビースト云々はシナリオに記載されていないし、口に出してもいないけれど。

 

 くっそ重い!なんだこれ。なんでこんなシナリオを選んだんだ私。というかダブルクロスだよねこれ?敵の能力(チート)すぎないかな?

 ちらりと立香とマシュさんの方を盗み見る。大丈夫そうだ。負の感情は見えない。

 真剣にダイスを振っているマシュさんに、ダイス目を数えてあげている立香。

 ならば続きだ。クライマックスといこう。

 

 

 

 

 とある少女は世界を自由に改変できる能力を手に入れた。彼女はその力を使って世界中の人々を幸せにしようとした。神様になろうとしたのだ。

 これはただそれだけのシナリオ(はなし)だった。

 

 PC達は少女の正体と目的、そして居場所を突き止める。現場に急行するPC達。

 

「邪魔立てするというのであれば…。そう言うと少女はついと指先を貴方達に向けました。では」

 

 

 

 戦闘開始!

 

 プレイヤー達のダイス目が走る!すごい。十面ダイスに10が一杯だった。攻撃が痛い。リアル幸運値(ラック)高いなあ。

 

 翻ってゲームマスターたる私のダイス目。ひどい。なんだこのダイス目。ボスの威厳とかそういったものがなくなってしまう!

 

「攻撃に力がこもっていないぞ!自分の目的の正しさを信じきれていないんだろ!」

 

「…まだ!」

 

 

 というか、ダイス目が悪いだけです!

 

「相変わらずの幸運E(笑)」

 

 

 ぐぬぬ…。言ってくれるなあ。…。

 

 

「…ふっ。立香と出会ったことで、人生の幸運を使いきってしまったのかもしれない」

 

「…うわぁ。自爆覚悟の直接攻撃とか」

 

 痛み分けだった。

 

 

「…あ、あの!わたしも先輩と出会えたことが、人生で一番の幸運だったと思っています!」

 

 …マシュさんの追撃!

 藤丸立香にクリティカルだ!

 しかし、藤丸立香のカウンター!

 

 

「オレも、そう思ってるよ」

 

 …おお。立香は誇らしげにそう告げた。

 ふむむ。

 

 

 

「…私は?」

 

「…え?…じゃあ三番目の幸運くらいで」

 

「一応、二番目の幸運とやらを聞いてあげよう」

 

「今日の朝の星座占い、一位だったんだよね。ラッキーだったなあって思って」

 

 ははは、こやつめ。

 

「ダメですよ先輩、そんな思ってもないことを言っては。悠月さん、先程の返事はわたしに対してだけでなく────」

 

「マジレスはやめようかマシュ。穴掘って埋まりたくなっちゃうから」

 

「…ありがとうマシュさん。お礼にコレをプレゼントしよう」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 大きなダメージを受けた敵キャラクター。

 

「がくりと膝をつく少女。しかし、その瞳に宿る狂気は衰えるどころか、ますます色濃くなっている。力の出力を上昇させながら彼女は貴方達に問いかけてくる。

 …貴女方は何故私を止めようとするのですか?皆が永遠の幸福を手に入れられるのです。それを否定する理由があると?」

 

「…その目的の果ての世界に、」

 

 マシュさんは息を吸い込む。そして────

 

 

 

 

 

 

「────そこに、貴女の幸せはあるのですか?」

 

「…はい?」

 

 

 そんなのは与えられた偽物の幸せだとか、永遠なんて欲しくないとか、たった一人で運営する幸福な世界なんていずれ破綻するとか、そんなそれらしい理由ではなくて。

 

 ただ単純に、相手を想う言葉だった。

 

 

「貴女の願いをわたしは否定できません。けれど、神様だって一人ぼっちでは寂しいと思うんです。それではきっと…」

 

「…私の、幸せなど…」

 

「うん、そうだねマシュ。だから────」

 

 いやマシュじゃないから。キャラクターの名前を呼ぼう。ロールプレイしよう。

 

 

 

 

 立香とマシュさんはお互いに目配せすると、頷き合って、言った。

 

 

 

「────オレ達と一緒に行こう」

「────わたし達と一緒に行きましょう」

 

 

 

 

 ────────。

 

 

 

「…わ、たしは…、私、は…」

 

 眩い光だった。

 

 差し伸べられた手、彼女はそれを────

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「はい、というわけでシナリオクリアです」

 

 まさかの説得エンドとか。予想外…、というほどでもないのかな。この敵キャラクターは狂気に侵されていたけれども、その行動は誰かを想ってのことだった。…人間に戻れなくなった怪物(ジャーム)のつもりだったけどジャームのみが使える能力(Eロイス)を使ってないからまだジャーム化してなかったってことで問題ないな!

 だとしたら、二人にとって敵と見なすような存在ではなかったのか。まあ、そういう人、結構慣れているのかもしれない。

 

 

 それはさておき、シナリオ終了後の処理をすばやく終わらせながら、さりげなく聞いてみる。

 

「…どうだったかな?」

 

「はい、楽しかったです」

 

「それなら良かった。…色々とこういうの持ってきてるから、倉庫にでも仕舞っておいて、暇な時にでも気が向いたら使ってね」

 

「くれるの?」

 

「貸すだけ」

 

 さて、と。…これなら大丈夫だろう。

 

 ふむ。もうこんな時間か。そろそろ晩御飯だ。ちょっと長引いてしまったかもしれない。片付けが終わったら部屋に戻ろうかな。

 

「…じゃあ、私、部屋に戻るね」

 

「え?」

 

 うん?

 

「これ、とりあえず私の部屋にしまいに行かなきゃいけないし…」

 

「ああ、そうだったね」

 

 そう言うと立香は何か思い付いたようで、悪戯っぽく笑うとマシュさんの方を見やった。マシュさんはすこし首を傾げてから、すぐに立香の意図を理解したようでくすりと微笑んだ。

 

「じゃあ」

「はい」

 

 

 

 二人は息を合わせて────

 

 

「────オレ達と一緒に行こう」

「────わたし達と一緒に行きましょう」

 

 

 ────そう告げた。

 

 

 

「もうこんな時間だから、そのまま一緒に食堂へ向かえばいいし」

 

「そうですね。…あの、荷物持ちます」

 

 

 

 差し伸べられた二人の手。

 

 

 

 

 

 

 「…うん!」

 

 

────私はその手を取るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 
エイプリルフールに間に合わなかったから無理やり今回の話に突っ込んだ文章があるとかそんなことはありません。ありませんよ?
 
 
 
 
後書きっぽいもの。
 
もともと考えていた終わり方とは大分違うのですが、こんな主人公を応援してくだる方もいらっしゃったので、色々と変更して前回、そして今回のエンドに。
まあ、未来は誰にも分からないエンド、的な?
 
あと今回の話はレプリカのオマージュが露骨過ぎる気がする。以前から色彩とかのオマージュを分かりづらくしていたのですが。今回はほぼそのまま。歌詞そのままではないしぎりぎり大丈夫?
…そもそもオマージュってなんだっけ?
 
つらつらと書き連ねてしまいましたが、つまり今回こそ本編完結のはず。お付き合いいただきありがとうございました。番外編のはずだったけど、今回の話がすごく最終話っぽくなりまして…。
 
 
 
次は1.5部後か、2部後か…。
 
 
 
 
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