僕の幼馴染がモテないのは僕の責任かもしれない   作:もこっちファンクラブ

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第二話なのに1とあるのは、前回が高校入学前だからです。


喪僕1 モテないから 三人でトークする

 

休み時間。教室にて鞄を見ると異変に気がついた。

 

「あー教科書忘れたか…」

 

教科書を智子に貸して貰いに行くことにした。クラスが別だとこういう時に便利だ。気安い中だ、お互い積極的に利用しあわないとな。

 

「すいませーん」

 

ガラガラとドアを開けると、いくつかの視線がこちらを向く。

 

「黒木さんいますー?」

 

それに反応したのは最初にこちらを見たグループだ。智子風に言えばいかにも合コンをやりそうな連中だ。眼鏡をかけた男子生徒が僕の質問に答える。

 

「んー?黒木さん」

 

知らないのかグループメンバーに振る。

 

「えーと…どこだっけ?」

 

他のメンバーもこの反応からすると、知らないようだ。今は教室にいないみたいだな。教室をざっと見回してみるが影も形も見えない。

 

「ありがとう。邪魔したね、後でまた出直すよ」

 

教室から出るとドアを閉める。意識してでかい声を出したから喉が渇いた。高校に入ってからの楽しみは自動販売機が校内にあるところだ。外にあるのと比べて安いし。さて、何飲むかな…

 

「えーと、コーラで」

 

人が走ってくる音が聞こえたと思ったら、足に衝撃が走ると同時にお笑い番組の様なゲシ!と蹴られる音がした。

 

「ぐぉ!」

 

足に響く。結構痛い。衝撃地点を目に向けると、引きつった顔の少女が現れた。あーこれは怒こっている時の表情だ。

 

「何してくれるんじゃボケ!」

 

いや、僕の台詞だから。足が小さいのでかえってピンポイントで直撃した。

 

「お前教室にいたのか…」

 

居留守を教室で使うなんて初耳だな。おおかた席を占拠されたか。

 

「出られるか!そもそも大声で人の名前を呼ぶな!!」

 

じゃあ無言で引っ張ればいいのか。かえって目立つと思うぞ。

 

「気まずいだろーが!あのなあ、ボッチは目立つだけできついんだよ!」

 

声かけただけでこれか。だいたいお前メール送っても見ないくせに。噂されると恥ずかしいって奴か。どんだけお前は人の目を気にしているのか。

 

「ならメール見ろよ…」

 

僕がそう言うと智子もちょっとは罪の意識を感じたのか、無言で教科書をこちらに押し付けてきた。

 

「ああ、ありがとう」

 

ぱらぱらと見ると、CDのカバーみたいなのが入っていた。

 

「付箋代わりか…」

 

どうやらまだ彼女に婦女子属性は突いていないようだ。ヤン…いややめておこう。いかん。パラパラと読んでいたらコッチを見てきた。

 

「あ、いや覗き見するつもりは無いよ」

 

もしかして見られたくないものを見てしまったのか。女のプライバシーに触れたとしたら厄介だな。

 

「貸してあげたからお礼にコーラよこせ」

 

お前が見ていたのそれかよ。なんというジャイアニズム。きっと弟の飲食物も横領しているに違いない。

 

自分の教室に戻った後で教科書を開いたら、そのページに「学校にテロリストが来たら」という趣旨の事がメモ書きされていた。

 

「そっとしておこう…」

 

とても悼まれない気持ちになった僕は、忘れることにした。

 

 

 

*   *   *   *   *   * 

 

 

 

放課後、教科書を返しに行くため今度は静かに1-10教室へ向かうとジャージを着た教師が智子に挨拶をしていた所だった。ところが、微妙な表情をして頭を思いっきり下げるとすたすたと逃げ出した。そして僕とぶつかりそそうになった。

 

「_________!?」

 

僕と鉢合わせた途端これである。眼を見開いてプルプルと指を指す。何か話そうとしているようだが声が出てないぞ。

 

「見てた、んならフォロー、しろよ!」

 

いっこく堂かお前は。声が遅れて聞こえてくるぞ。だいたい人が挨拶しているのに割り込むわけにはいかないだろう。常識的に考えて。つーか、ちゃんとさよならくらい言えよ。あの先生すげーいい人だと思うぞ。あれはちょっと余所余所し過ぎはしないか。

 

「話しかけられたのが久しぶりがすぎて…「さよなら」という言葉が出なかった…」

 

ぼそぼそと言う彼女にがっくりとうなだれる。こりゃ重症だ。僕まで頭が痛くなってきた…

 

あまりにも痛々しいので家まで送っていくことにした。普段ならついて来るなと(近づいただけで)言ってくるのに今回は無言で歩いている。ふと、並んで歩いてた智子が足を止めたので見てみると、ミミズがいた。そう言えば人並みにこういうのが苦手だったな。しかし智子はミミズをみながらぶつぶつと言い出す。

 

「…なら確実に赤ちゃん生めるのになー…」

 

僕は何も聞いていない。そうに違いない。

 

「帰ろう…家へ」

 

細く白い腕を引っ張る。お前に必要なのは、交尾のあと一生を終える五分の魂ではなく、孤独な魂を優しく包んでくれる人の愛なんだ。

 

まあ、彼女を優しく包むのは家族に任せよう。ぼっちだし。

 

 

 

*   *   *   *   *   * 

 

 

 

帰った後、メールが送られてきた。内容は「家に来い」だ。なぜ家に帰ってから呼び出すのだろうか。まあ、人恋しくなったのかと思い、人生ゲームとかトランプを持ってきておいた。(本当は人生ゲームじゃないやつが良かったけど、時間も無いので仕方が無い)

ベルを鳴らしても出ない。鍵は掛かってなかったので開けさせてもらうとペンギンがプリントされたシャツとパンツ(ズボンのことだ)という簡素な格好で智子が出迎えた。

 

「遅い」

 

無愛想な顔でぼそっと呟いた。アニメにでも感化されたか。かわいくないぞ。

 

「しょうがねーだろ。家に戻ってからだし…」

 

家に上がると、向かう先は何故か智子の部屋ではなかった。智子は自然な動作で弟の智樹の部屋にノックして入っていった。って、おい!やめろ!思春期の中学生の部屋に勝手に入るんじゃない!何かあったら手遅れだ!

 

「弟、三人でトークしよう」

 

自信満々の笑みで智子は宣言した。

 

「は?」

 

幸い、部屋の持ち主である弟の智貴はベットの上でマンガを読んでいるだけだった。それにしても、僕も「は?」と言いたい。

 

「いや…何勝手に入って来てんの?」

 

うむ、君の質問は正しい。これ以上迷惑は駆けられないのでシャツの首根っこを掴んで引きずっていこうとするが、空ぶる。白い首筋が見えた。

 

「ふー」

 

弟の質問に全く答えることなく腰を下ろした。コイツは一体何様のつもりなのか。

 

「何くつろいでいるんだよ!?」

 

うわーすげー迷惑そう。当たり前か。この傍若無人さをなぜ僕や弟以外に向けないのか。それくらいの押しを普段から生かせよ。こいつにそんな器用さが無いことは前々から知ってはいるけど。外では一応は良識で大人しく振舞っているから今はそれで良しとしよう。

 

「いいだろ別に姉なんだから」

 

相変わらず訳のわけわからんジャイアニズムだ。

 

「よくねーよ帰れよ」

 

ばっさりと智子の言葉を切り捨てる。いくら付き合いの長い僕でもここまでうまくは行かない。さすが弟だと感心していると、なんで?と頭に疑問符を浮かべた顔でコッチを見る。こういうところがモテない理由なのでは…。ふと、部屋にあった雑誌に眼を向ける。おっこれは!

 

「おっ、最近のマガジンじゃん。サンデーも持ってきたから後で貸すよ」

 

雑誌は鮮度が一番だからな。でかいからスペースをとる上にかさばるし。

 

「まじですか!じゃあ後でマガジン貸ますよ」

 

一転して愛想が良くなる。うむ、部活付き合いでもマンガは必須だよな。

 

「最近アレが面白くて…」

 

センスいいな。僕もそれは好きだ。

 

「だろ?」

 

久しぶりにゆっくりとマンガでも語り合いたい気分だ。

 

「待てお前ら」

 

何だよ、人が楽しく話ししてんのに。智貴はさらに表情が露骨だ。

 

「なんで私と態度違うんだよ、そてと私を無視。するな」

 

そう言えば勝手に入ってしまった。だがまだこのプチ暴君(笑)はまだ弟の部屋から動くつもりは無いようだ。このあきらめの悪さが普段は発揮されないのは何故だろう。

 

「あっほら久しぶりにウィ●レやる?」

 

気を取り直してとでも言いたいのか、智子は提案をする。

 

「やらねーよ出てけよ」

 

弟は会話のキャッチボールする気もないらしい。心底迷惑そうだ。

 

「あっそう言えば今日部活は?」

 

今度は雑談だ。部屋にいる時点で分かるだろうにそれを振る時点で墓穴を掘っている。せめて「最近悩みある?相談に乗るよ」とかだろ。智子の実力では相談に乗れないだろうけど。

 

「テスト休みだよ出てけよ。出てけよ」

 

ミス!すげぇ、取り付く島も無い。あいつもこれくらいテンポ良く会話できればいい修行になるな。弟の迷惑を考えなければの話だが。

 

「あ、えーと」

 

苦し紛れ何かに手を伸ばそうとしている。何をしたいのかさっぱり分からんぞお前。つーか動きが怪しい。あれか、気分は船が難破して溺れている人か。

 

「勝手に漁ってんじゃねー!!死ね!!」

 

ついイラッとしてしまったのかここ一番で一番でかい声だ。智子は真顔で固まった。まあ死ねは言い過ぎだ。ぶっちゃけウザイだろうがちょっと抑えてくれ。

 

「あ…」

 

僕の祈りが通じたのか否か、海の底へ沈んだ智子を見てちょっと気まずそうだ。つーか僕もう出て行っていいか?駄目か。彼女は顔が引きつっている。本気にするなよ。お前も良く「死ね」とか言っているだろ。人前では言わないだろうけど。

 

「うんわかった、自殺する」

 

顔が卑屈な笑いになっている。普段は無愛想なだけに結構怖い。

 

「いやするなよ。まあ、智貴も言い過ぎかもしれないがちょっとお前おかしいぞ」

 

長い付き合いでもここまでの重症は見た事が無い。見ろ、も面食らっているじゃないか。

 

「いや…ちょっとうざかったからで…まあ、あれだ」

 

言葉の文と言いたいのだろう。だが手を指し伸ばしたのが遅かったのか彼女は既に沈没船の亡霊と化していた。

 

「最近思ってたんだ…」

 

暗い雰囲気で語り始める。彼女の沈うつな雰囲気が瘴気となって部屋の中に浸透していく。

 

「高校生になったら急に人生の難易度上がったなーと…きっと今ハードモードくらいで…」

 

沈痛な姿に言葉に詰まる。実は今の鬱状態が彼女の素の姿じゃないかと錯覚しそうだ。ふと昔人生はクソゲーという言葉を教えられたのを思い出した。あきらめるな。お前はどんなゲームでも最後まであきらめなかっただろ。

 

「これから大学生社会人になったらきっとナイトメアモードくらいで…ならいっそのこと今エンディングに行っても…」

 

顔が凄いことになってきた。中学の頃の親友がいなくなったのがよほどショックだったのか。そりゃハードモードじゃなくて強制縛りプレイだな。RPGでレベルが低いのにソロプレイみたいな。たぶん今の状態ではエンディングじゃなくてゲームオーバーなのではないか。早まるな、リセットボタンがあるとは限らんぞ。

 

「悪かったから落ち着け…」

 

とうとう根をあげた。亡霊と化した姉への最後の情けか。君は良く堪えた。感動した。

 

「俺に用が合ったんだろ?そうですよね…」

 

うーむ、対応が大人だ。どうやら姉と違ってちゃんとまっとうな人生を送っているようで一安心だ。

 

「お、おう」

 

確か三人で会話しようとかなんととか言っていたような。だが弟に用があるのならなぜそもそもなぜ僕は呼ばれたのか。僕が必要な要素が想像がつかない。

 

「お前ら、私と会話して」

 

えー。そのまんまかよ。僕か弟かに悩み相談じゃないのか。

 

「は!?何それ…?」

 

ほれ見ろ、戸惑っているじゃないか。

 

「お姉ちゃんね…気付いたら最近誰とも会話してないの…」

 

マジかよ。いくらぼっちだって挨拶くらいはするだろ。次の授業なんだっけとか。つーか僕はカウントに入っていないんですね。わりかし長めの睫毛が揺れている。

 

「そのせいでね…家族とコイツ以外と会話できなくなったの…」

 

ああ、一応僕もカウントに入ってたのか。良かった。じゃない。お前中学の時よりもなんか人見知りが激しくないか。シャー芯が無くなったから貸し手とか位聞けるだろ。もしくは担任と話すとか。

 

「なんで?一人いるじゃん」

 

まあ、弟はスポーツマンで受け答えが大体ははっきりしてるからな。彼も会話でどもってしまうことは少ないから分かりにくいだろう。

 

「なんでも違うクラスの僕とは話づらいらしい。まあ、とにかく注目されたくないんじゃないか?恥ずかしいから」

 

本当はもっと根が深いと思うのだが、それは僕が触れていい領域ではない。

 

「お前は黙ってろよ!」

 

それは理不尽だ。代わりに説明してあげたのに。だいたい三人で会話するんじゃないのか。多分今のこいつに言っても無駄だろうけど。大きな瞳が据わってるし、童顔の顔も見る影も無く引きつっている。かろうじて智子は顔を戻すと弟に話しを続ける。

 

「だからリハビリの為私と毎日一時間会話して」

 

それは長過ぎないか…?今のお前はその半分にしたほうがいいぞ。それにだ。

 

「お前さ、毎日一時間も会話できるほどレパートリーあんの?」

 

お前に会話ふってもたまに「ああ…うん」とかしか言わないことあるじゃないか。さっきの会話みててもアドリブは下手糞そうだし。お、顔が赤くなった。勿論怒りで。色白の顔だから表情とあってるな。

 

「一々うっさいな!お前私の何だよ!」

 

プルプルと震えている。いや、幼馴染だろ。お前は何を言っているんだ。つーか甲高い声で怒鳴るなよ、うるさいな。こいつもこんなところは女らしいな。

 

「ちなみにいつまで?」

 

まあまあと僕たちを仲裁するように弟が聞いてくる。言外に早く終わらせてくれというニュアンスが込められている。

 

「友達…いや彼氏ができるまで」

 

「意味合い的に無期懲役と一緒じゃね?」

 

なかなかに辛らつだな。まあ、この必死振りを見ると不安になるのは分かる。

 

「いやたぶん一ヶ月くらいあれば…」

 

智貴が結構ポジティブですね、と耳打ちしてくる。ほら、予定は予定だし、言うのだけなら自由だ。

 

「よくわかんねーけど俺じゃなく友達と話せば?頼りに成る幼馴染もいることだし…」

 

智貴、僕に押し付けようとするな。それが駄目ならこのソロプレイヤー人の話を素直に聞くようにしつけてくれ。無理だろうけど。

 

「いると思いますか?それにコイツじゃ話になりません。」

 

話にならないのはお前だよ、会話的な意味で。今まで何回お前の通訳をやらされたと思っているんだ。

 

「友達一人もいない奴なんてさすがにいないだろ…」

 

うん、地雷踏んだな。会話できないのに友達がいるわけ無いじゃないか。智子の顔が酒に酔ったOLのような表情になる。

 

「さすが二年の時からサッカー部のFWでレギュラーしている人は言う事が違いますね」

 

僕も知っていけど改めて考えるとなんと言う格差だろう。弟に嫉妬するのも仕方が無いのかもしれないが、そこは褒めてやれよ。年上の矜持にかけて。

 

「あれですよねサッカー部のFWって試合で1ゴール決めるたびに女子マネと一発できるんですよね」

 

下品すぎる。此処はお前の見ているネットじゃないんだぞ。

 

「どんな部だ!?」

 

世の中のイケメンならできるかもしれないが、女子マネも限りがあるからトラブルの元になるだろう。

 

「サッカー部ってラグビー部の次に性的な事件起こしてるイメージありますよね?」

 

こいつの頭の中は週刊誌とかスポーツ新聞と発想が同じだな。発想が親父臭い上に低俗だ。

 

「なんかサッカー部に嫌な思い出あんの?」

 

弟よ、心配するな。スポーツクラブに入れは誰でもリア充という幻想に取り付かれて嫉妬しているだけだ。

 

「ていうかどーなの?早く決めてくださいよ?自殺しますよ」

 

弟の顔が姉そっくりに引きつっている。君のような未来ある若者が暗黒面に落ちてはいけない。まあ、そんな年は離れてないが。

 

「そもそもこの部屋で話す必要は無いだろ…」

 

うむ、同感だ。はやく追姉を追い出したいんですね、わかります。

 

「わかってねーな…一人一人と話せても集団と話せなけりゃ意味が無いだろ」

 

今のお前には早すぎると思うが。まあ、昔みたいにゲームやりながら会話すればいいだろ。僕は久しぶりに三人でゲームしながら会話をすることを提案した。

 

 

三人で人生ゲームをやるが、すごい微妙な雰囲気だ。既に智貴は僕の貸したマンガを読み始めている。

 

「ところで会話って…何話したいわけ?」

 

智貴がめんどくさそうに話を振る。すると智子はマンガをめくるのをやめてすごい必死そうな顔で智貴を見る。おお、引いている。

 

「お姉ちゃんってかわいい?」

 

いきなり地雷級の質問だな。さっきのあの態度で察しなかったのか。お互いにとって恥ずかしい質問するなよ。

 

「……普通」

 

無難だな。逆に言えばこれといった特徴が無いともとれるな。智子よ、コンプレックス丸見えだぞ。

 

「普通ってどれくらい中の上 中の中 中の下?」

 

弟がもう限界と絶望的な表情をしていた。それにしても女は細かい生き物だな。ちなみに今のは滑舌が良くて声も大きいからいつもそれくらいで喋れば理想的だな。

 

「中の上くらいかな…」

 

弟がマジかよと言う目で見る。君が信じなくてどうする。まあ、別に嘘ではない。それに世の中には地味な女子がタイプという層もいるらしい。けど話しかけられても反応が出来ないから、今の彼女にその層の需要を狙うのは無理だろう。

 

「いけるな…」

 

ゲームは今のところ智子が一番トップだ。二番が僕で、三番が智貴だ。心なしか顔に余裕が見えてきた。

 

「まーでも、中の下でも社交的で持てる奴も要るけどな」

 

「おのれブスめ…」

 

濁った眼で悪態をつく。お前って本当に失礼な奴だな。みっともないぞ。悪態をつく智子を眺めていると、智貴が僕を見つめていた。どうした?

 

「いや、一緒のクラスだったら良かったのにな…と思いまして」

 

そこまで迷惑は掛けられませんよね、とあさっての方向を向いた。来年に期待してくれ。僕がいても居なくても結果は代わらないと思うが。

 

ちなみに、智子が人生ゲームをトップでクリアした。現実(リアル)もこうだといいのに…となぜか落ち込んでいたが。まあ、ゲームはゲームだから。

 

 

 

*   *   *   *   *   * 

 

 

 

さて、修行の成果は出るか。本人から報告を受ければいいのだが何故か僕も見ることになった。智子が担任に近づくとそれに気付いて足をとめる。智子が声を絞り出すように言う。

 

「あっ…あっ…さ…さ…さよなら~ふふ…へへへ…」

 

蚊の鳴くような声だがちゃんと聞いてくれたようだ。偉いぞ。でも「ふふ…へへへ…」はいらん。

 

「おお!気をつけて帰れよ!」

 

あの教師が担任なのは彼女にとって幸いだったな。智子が担任が去った後、こちらへ駆けて来る。珍しく満面の笑みだ。

 

「やったー!」

 

声出んのかよ。器用な奴だ。

 

「良し!コンビにでアイス買って帰るぞ!」

 

走るな、転ぶぞ。三半規管弱いくせに。しょうがなく僕も走って追いかけた。(幸いそんなに早くは無いので直ぐに追いついた。)コンビニに入ると早速アイスのコーナーに駆け寄る。

 

「お前と弟にもアイス買ってやるよ。…一応お前らのおかげだから」

 

マンガも読んでないのにニヤニヤしながら籠(一応僕が持っている。)にアイスを入れる。

 

「どーも」

 

でもお前はハーゲンダッツで僕と智貴はガリガリくんなのな。まさに「一応」だ。別にガリガリくん好きだからいいけど。奢ってくれると言うので、彼女に籠を渡すとふらふらとレジへ向かう。おい、前見ろ、前。だめだ、上の空だ。

 

「こちらスプーンをお付けしますか」

 

「あっ!!あっは…」

 

そこは「はい」だろ。後半が声になってないぞ。智子が顔を上げた途端固まった。店員はなかなかのイケメンだったからだ。チャラ男風だけど。そのタイプの男ってアニメゲーム以外では嫌いじゃなかったっけ?まあイケメンだからいいのだろう。

 

「ぁ…ぃぃ…」

 

たぶん「あ、いいです」と言いたかったのだろう。僕が仲介しようと(むしろ店員が気の毒なので)するときっと睨まれる。僕が翻訳をしないで大丈夫だろうか。

 

 

「えーと?」

 

やっぱり聞こえてなかった。店員も困ってるぞ。

 

「…で、では入れておきますね」

 

声がだせなければ首を振ればよかったのでは…。まあいいか。

 

「え?ブホ…はい…ひ…すいやせん」

 

うわ、スッゲーどもってる。つーか卑屈すぎだろう。買い物を終え、二人してコンビニを出ると、智子が震えている。

 

「やべーイケメンとも普通会話しちゃった…!」

 

すごい赤面してる。全然普通じゃなかったぞ。意思疎通が出来ないじゃないか。バイトでこいう客を相手にするのは疲れるだろうな。いい人生経験になったと思ってあきらめてもらおう。

 

「そりゃ良かったな…」

 

改めて見ると今日一番いい顔しているな。内容はアレだが。まあ、いいことだ。千里の道も一歩からと言うが、彼女も少しずつ成長出来ればいいと思う。いつもあんな笑顔を心から浮かべられるようになれば彼女にももっといい事があるだろう。

 

「祝いに今度コーヒー奢ってやるよ」

 

お前に(安いけど)アイスも買ってもらったからな。

 

「マジ!絶対だな!」

 

やれやれ。現金な奴だ。歩きながら僕は考えていた提案をする。

 

「思ったんだけどさ、部活はどうだ?」

 

まあ、大した提案じゃないけどな。

 

「嫌だ。今の時期入れてもグループ内で孤立するだろ」

 

即答かよ。もう少し悩め。それに今入らないともっと駄目なような…。まあ、今の段階ではきつすぎるかな。

 

「あ、そ。じゃあ僕は…」

 

何がいいだろうか?放課後だべる部とかねーかな。つーかコイツにあう部活ってなんだ?

 

「お前も手伝えよ。私に彼氏が出来るまで」

 

同性の友人も出来てないのにもう恋人かよ。つーかお前はオレのなんだよ。

 

「幼馴染でしょ。馬鹿なの?」

 

やれやれだぜ。智子のリア充になるための旅は始ったばかりだ。もし死して屍になったら骨を拾ってやる。

 

…たぶんな。

 




アニメ化が迫る今日この頃、動くもこっちが楽しみで仕方がありません。アニメ化されたらもっと私モテの二次創作が増えるかも…!
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