僕の幼馴染がモテないのは僕の責任かもしれない   作:もこっちファンクラブ

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アニメ放送を記念して書いてみました。もこっちかわいいよもこっち!アニメはもちろん、OPEDのともに外れがなくて興奮しきりです。


僕喪 番外編 モテないから プール行く

1-10教室。入室して黒ぶち眼鏡の天パーを見かけると、声をかける。

 

「おーい、清田。教科書!」

 

グループで談笑していた清田は振り向いたが何やらキョトン、としている。

 

「え?」

 

どうやらこの男は自分の頼んだにもかかわらずすっかり忘れているようだ。

 

「何々ー清田が誰かに教科書を貸すなんて珍しいじゃん」

 

最近彼女持ちになった斎藤が清田の肩を組んでくるが、清田はまだぽかんとしている。

 

「いやいや、僕が貸す側だから。メールで貸してって言ってきたのに清田が借りに来ないから貸しに来たんだよ」

 

説明してやると、清田はやっと納得したようだ。

 

「あー!はいはい、忘れてた!」

 

すると中村(ベスト姿の人の良さそうな奴だ)がからかいだす。清田は基本的にチームの中の、リーダー格であると同時にからかわれ役でもあるのだ。そこが清田の魅力でもあると僕は思う。

 

「だから彼女出来ないんだよなー」

 

「うッせー、リア充はしね」

 

まあ、清田も積極的だからそのうち彼女はできそうだ。長続きはわからないが。

 

「はーい、清田が同級生を走りに使っていまーす」

 

「えー、彼女出来ないからって腹いせにいじめとかサイテー」

 

挙句、女子にまでからかわれ始めた。

 

「ちげーっての!」

 

相変わらずにぎやかな連中だ。智子もここまでいかなくてもノリが少しでもあればいいかもしれない。まあ、こういうノリが嫌なのだろうが。

 

「!」

 

憎悪に満ちた視線を感じ、冷や汗を流す。その視線の先を見ると寝たふりをしていた智子がじろりと睨んでいた。おそらく早く出ていけということなんだろう。

 

「…」

 

だが、切り上げる前に自分のほうがいたたまれなくなったのか、ほんの数分で智子は席を立って出て行ってしまった。

 

「おいー僕が悩んでいる時にどこを見てんだよー」

 

清田が絡んでくる

 

「ああ、わり」

 

しかし清田は目ざとく出口のほうを向くとつぶやいた。

 

「ん?黒木さん?お前知り合いなの?」

 

やばいな。下手に誤魔化しても同意しても今の段階では後で智子が文句を言ってくることは間違いない。

 

「偶然だろ。それよりも、清田、出会いはどこにあると思う?」

 

清田は僕の言葉にマジで考え込み、他のやつがはやし立てる。ついでにツインテールの子(たしか根本さんだったっけ?)が口をはさんでくる。

 

「清田は海にでも行って出会いを探せばいいんじゃないの?」

 

「いやー無理でしょ」

 

パイナップル頭の女子が口をはさむと清田はうっせーと悪態をついていた。ふと、その会話に思いつくものがあった僕は、話を切り上げてクラスに戻った。それにしても。

 

「寝たふりがうまくなっていたな…」

 

そして、夏休み前のとある休日。黒木家に遊びに来ていた僕は、かねてから温めていた計画を智子に持ち掛けることにした。

 

智子の母親から差し入れられたジュースを飲みながら、漫画を読んでくつろいでいる智子を眺めた。夏だというのに髪型は同じで暑そうなことこの上ない。相変わらず髪の毛は黒々としており、首筋と右目を覆い隠している。

 

「なあ、智。お前水着はもっているか?」

 

僕が聞くと漫画本を閉じて智子は顔を上げる。露骨に嫌そうな顔をしていた。まるで下着の色何?とでも聞かれたかのようだ。今時珍しい化粧気の無い青白い顔はいつも通りだ。ちなみに、僕たちの高校は水泳がないので彼女が水着を持っている可能性は低い。

 

「はぁ?お前水着フェチに目覚めたわけ?アニメの見すぎだろ、キモイから死ね」

 

目のクマを歪ませてますます人相を悪くする智子。アニメと現実の区別ついていないのはお前だろうに。水泳によほど嫌な思い出があるようだ。ところで水着はフェチに入るのだろうか。まあ、そんなことはどうでもいい。

 

「お前な、リア充になったとして友達と海かプールに行くとき水着がないと不便だぞ。ブランド品なんてすぐに売れるし」

 

僕の言葉に「ウッ」とうなる智子。しかしすぐにスレンダーな体系で虚勢をはる。ちなみにだいたいこのような時の虚勢は意味が無い。

 

「う…!いや、その時に買いに行けばいいんだよ、ブランドものじゃなくてもカワイイいっぱいあるし」

 

シリアス顔でこちらを向く。普段からこの顔で通せばいいと思うのだが。ちなみに、その時とはいうものの残念ながらこいつの動きは早くないのでそれは無理だろう。しかも見え透いた嘘を言って墓穴を掘るのだから始末に負えない。自分で言っていて自信を持ったのか、得意げになった。

 

「プライドが高いくせに何を言っているんだ。お前が今まで無計画で挑んで何度失敗したかわかっている?」

 

僕が過去の失敗を言おうとすると、過去のトラウマが蘇ってきたのか、智子は髪の毛でおおわれている耳をふさぐ。たぶんそんなことで僕の声は隠せないぞ。戦わなきゃ、現実と。

 

「あ…ほら、あれ。泳げなくても死なねーし」

 

いやいや、海だと死ぬから、それ。だいたい中一まで自転車に補助輪をつけていたやつがいう台詞じゃないぞ。ちなみに今ではちゃんと乗れるようになったのだろうか。少なくともその後、自転車に乗っているところ見たことがないけど。それよりも自分がまだおよげないという弱点をさらけ出しているのだが、それに気づく様子はない。

 

「大体だな、海なんて公開露出している変態の集まりだろが…」

 

なんという暴言。運動関連は娯楽さえも敵なのか。しかし海に行こうと誘えば断られるのは想定済みだ。苦し紛れの言い訳に白目をむきかけている智子に救いの手を差し伸べる。

 

「そうだな、潮風とかあまり気持ちよくないしな。髪もべたつくし」

 

同意してやると智子は勝ち誇った顔をしてうんうんと頷く。立ち直りの早い奴だ。だが、ここからが本題だ。

 

「まあ、お前が海に行きたくないのはわかった。なら、プールならいいんだな?」

 

智子が何かを言う前に僕が先んじてしゃべると、智子はキョトンとする。

 

「え?」

 

できる限り、智子が聞きやすくまた、興味をもつように話す。

 

「市民プールはそこそこ人が入るし、もしかしたら出会いがあるかもしれないぞ。夏休みにフラグとかなんとか立てるためにも。何事も経験だ。それに、アニメでも最初は海じゃなくてプールだ。」

 

もちろんそんな都合のいいことはないが、少しでも夏の思い出を経験するのはいいことだ。

少なくとも、何もせず夏が終わってしまうよりかは。

智子は妄想モードに入ったのか、水着を想像して顔が真っ赤になっている。

 

「水着で…ナンパ…いやいやそんなの早いから」

 

ぶつぶつ言いだした。ナンパされるところまで妄想が先走りするとは驚いた。調子が良すぎるのも考え物だが、この流れを止めるのはもったいない。だけど涎は止めておかないとな。

 

「智子、経験に勝るものはない。ここはお前のモテモテの未来のためにもここはがんばれ。それと涎が垂れているからそれは拭け」

 

最後の一押しをすると、智子は数分唸った後、首肯した。最近の学校生活での悲惨さから、さすがに何もしないよりはいいと思ったらしい。

 

「そこまで言うなら… だけどな、お前が行き場所を決めろ!それと、できる限り知り合いと会う可能性の少ない場所だ!」

 

予想通りとはいえなんと情けない宣言だろう。だが、これで計画は整った。僕は母親に休日は出かけることを伝えると、準備を始めた。

 

 

 

*   *   *   *   *   * 

 

 

 

知り合いがいそうなところは嫌だとか駄々をこねるので、適当な市民プールを探してきた。ちなみに弟の智貴も誘おうとしたが。

 

「勘弁してください。」

 

全力で拒否された。まあ、だいたい予想はできたけどな。

 

「しかしプールですか?」

 

「実はだな」

 

僕と智子が出かける事、そしてその事情を無言で聞くと、智子と似ている癖毛の頭を下げられた。

 

 「あのバカをうまくしつけてください、どうかよろしくお願いします」

 

そうシリアスな目つきの悪い尖った顔つきで頼まれた。

なんか変なフラグが立った気がするが、気のせいだろう。智貴は最近姉の話題すら嫌がることも多いからあんな変なことをいったのだろう。あの健気な弟のためにも姉を真人間に戻す努力は続けなければならない、と決心した。…僕は遊びに行くんだよな?

家まで迎えに行ってやると、智子は母親に 「忘れ物をするな」とか「危ないことはしないように」とか言われていた。

 

「子供じゃないから大丈夫だって」

 

確かに智子の場合は奇行のほうが問題だな。言い終えた智子の母親は僕のほうを向く。

 

「智子がバカなことをしないように、よろしくね」

 

智貴と言い、母親と言い黒木家は智子を僕に嫁がせるつもりなのか。

 

「私のほうが保護者だし」

 

嘘をつけ。姉としてもダメなのに何を言うか。最近は料理の面でも負けているし、女として勝っているところがないだろう。気を取り直して、智子の服装を見てみる。

 

智子はノースリーブのシャツ姿でわずかにアクセサリを身に着けるようになっている。相変わらず、足は小さく全体の大きさが小柄なのが印象的だ。首筋のあたりも白く、染みひとつないのは好ポイントと言えるだろう。

 

「ねみぃー…」

 

だが本人はそれらの点を全て台無しにすべるような不機嫌で疲れ切ったような顔つきをしているのだが。

夜更かしは若者の常だが、こいつは化粧でごまかすつもりはないらしい。ある意味その姿勢は男らしいな。あ、すれ違った子供がぎょっとした。

 

五分ほど電車に揺られ、少し歩くと目的地のプールについた。その間、智子は(主にストレスや寝不足で)具合悪そうにする以外は奇行も少なく、平穏無事な旅だった。まあ、ずっとスマフォやっていただけだけどね。一応事前の下調べであんまり同年代のやつは来ないことはわかっている。

 

「あー、だる。もうプールとかどうでもいいわ」

 

声が震えているぞ。ついでに汗だらだらだし。小学生の時もそうだが、よほど自分の水着姿を見られるのは嫌らしい。女性からすればじろじろ見られるのは確かにいい気分はしないだろう。彼女の場合は他人の視線全体が苦痛なのだが。

 

「此処まで来て及び腰になってどうする、ほら行くぞ」

 

背中を押す。すごい汗だ。いつもなら少しでも触れると烈火のごとく怒るのだが、その元気もないらしい。

 

「わかってんだよ、そんなことは。いいか、ナンパされたらお前は置いていくからな」

 

いや、若者が少ないところだから。親御さんと子供が多いし、僅かな若者もカップルだったりする。漫画の見すぎだぞ、お前。ナンパされて変なところについていかなければいいが。

そもそも話しかけられてちゃんとした対応とれるかどうかのほうが心配だわな。

 

更衣室で分かれ、着替えを終えた僕は入口で待っていた。

 

「幼馴染だからってのぞいたら通報するからな」

 

しねーよ。

 

当然のことながら、先に着替えが終わったのは僕だった。先に席を取っておいて、今智子を待っている状態だ。

 

 しかし、対して美人でなくても女の子の水着はドキドキするものだが、このときめきの無さはなんだろうか。彼女の見てくれは悪いわけではないはずなのだが。きっと幼馴染が相手だからだろう。決して普段の残念さを見ているからではない。僕がそう自分に言い聞かせていると、数分もしないうちにやってきた。

 

「来たぞ…」

 

細く色白な肢体に、セパレートタイプの水着を着ている。長くぼさぼさな髪を後ろにまとめ、日差しの眩しさから目つきの悪さもわずかにやわらげられている。色気は相変わらず感じないが、新鮮な感じだ。

 

「じゃあ、行くか」

 

なんとなくさわやかな気分になった僕は、プールに向かおうとするが智子に手首を掴まれた。

 

「待て、童貞。せっかく水着を着てきたんだぞ。そこは感想を言えよ」

 

これは智子が正しいな。僕としたことがデリカシーが足りなかった。よし。

 

「似合っているぞ、智」

 

できる限りにこやかな顔で智子をほめる。しかし僕の月並みな感想が気に入らないのか、目を吊り上げる。

 

「はぁ?しゃべんな、モブのくせに。目がぎらついてキモっ。これだから男子は獣なんだよなー」

 

どっちだよ。気難しすぎるな。僕の呆れた視線を尻目に日差しの厚さに瞼を細める。

 

「ところで、智子。日焼け止めは塗ってきたか?」

 

僕の質問に智子は怪訝そうな顔をした。

 

「あ……」h

 

母親がせっかく用意してくれた日焼け止めが無駄になるところだった。日焼け止めを忘れて日焼けになってしまったら二度と外に出なくなってしまうかもしれない。

 

「女なんだから、肌を大事にするくらいの工夫はしておけ」

 

肌がボロボロになってこれ以上美的センスポイントを下げすぎてはいけない。

 

「っせーな。お前は親かよ」

 

ぶつぶつ言いながら戻っていく。朝に、保護者気取りをしてこの有様である。考えてみれば家から日焼け止めを塗るように言えばよかった。

それからちょっとして戻ってきた彼女は、日焼け止めをぬって早くも疲れてきたのか、智子は愚痴が多くなってきた。

 

「だるー……こんなところで溺れたら…はー。早く帰ってネットやりたい」

 

そしたらそうしたで一日を無駄に過ごしたとか後悔することになるのは目に見えている。そうなれば引き留めるところだが、ぶつくさ言いながらそれでも帰らないのは彼女なりの義理なのだろう。

 

「やかましい。どうせいつもやっているだろうが」

 

それにしても見れば見るほど肌の白さが目立つ。プールサイドで特別ういているわけではないが多少の不自然さは感じる。

 

「だいたいここ、ガキしかいないし。出会いがねーな」

 

人を気にしながら気取っても全然決まらないぞ。

そういう場所が嫌だというからここにしたのにうるさい奴だ。もちろんが多くいるような場所へ行っても何もできないのは本人も理解している。

 

「そのためにも普通に過ごせるようにならないと。泳げなくても、コミュ力があればなんとかなる」

 

だらけてスライムになりそうな智子を説得する。だが、僕の説得にケッと皮肉げな笑みで返される。

 

「大体こんなプールは子供かバカの遊び場でしかないんだよ」

 

皮肉っぽく笑うが今の自分がその場所でないと立てないことに気づいていないようである。

 

「いいから、プールに入って涼んで来い」

 

僕に言われてしぶしぶ浮き輪をもって流れるプールに入って行った。餓鬼みたいにはしゃがないと宣言してはいたが、久々だからか若干興奮気味だった。

 

ところで、リア充とは何だろうか。清田たちの言葉を借りればモテモテで美形の恋人がいる人、ということになる。智子にとってみれば、友達がいて毎日楽しく過ごす人、ということになるだろう。だが、人づきあいというのは面倒なことも多いし自分の自由な時間も消費することが多い。友人はいないよりいたほうがいいに決まっているが、今の智子にとって自分の趣味を抑えてまで友人を作るのが本当にいいことなのだろうか。理想の学生生活とは何だろうか。

 

僕が視線を上げると、智子は浮き輪に乗って流れるプールに乗るのにはまったのか、五週くらい回ってから戻ってきた。

 

「流れるプールなんて子供の娯楽だと思ったけど…はまる」

 

途中で頭を突っ込んだのか長い髪がびしょびしょになって貞子みたいになった智子は怪しさ全開だ。子供に見られたら通報されるに違いない。

 

「ああ、そうかい」

 

智子にとってのリア充を真剣にかんがえていたのが馬鹿らしくなってきた。

 

「うぉー!」

 

その後もウォータースライダーにもひそかにはしゃいでいたのだが、途中でぐったりとして戻ってきた。

 

「あ―だりぃ…ガキが多すぎて萎える…早くでよー」

 

肉体的疲労と精神的疲労状態になっている。

小学生カップルがちゅーをしていたのを見てしまったのだろう。その時の智子の顔がサーヴァントで元フランス王国の元帥のような顔になっているのを見てしまったのだった。

 

「はは…ガキのうちにse○でもしてエイズになっても知らねーからな…」

 

子供の頃から出来上がっていた人生の差に打ちひしがれたからか、肉体的にも精神的にもぐったりとした智子を引きずり、二人分の席を取ると、お金を出す。

 

「昼食はカップでいいな?」

 

僕の言葉に彼女は顔をしかめ、溜息をつく。たしかにカップラーメンだとあれだが、レストランだと食べきてない可能性も高いのだ。

 

「お前はムードとか乙女心とか何も分かってない。そんな調子だと一生童貞のままだな…」

 

優越感と憐みの目で僕を見る智子。公共の場で何を言っているんだお前。人を貶す時には元気になるのだからしょうもない奴だ。だいたい人のことを心配する余裕があるのか。

 

「まあ聞け。プールで食べるカップは最高だぞ。それに、これを見ろ」

 

鞄からシートを出して、テーブルの上に出す。つまらなそうに見てた智子の目が輝きだす。

 

「これは…!」

 

何を隠そう最近はやりのカードゲームである。近所の駄菓子屋では小さな大会が開かれているほどだ。

 

「僕がカップ買ってくるから、お前は席に座って荷物を見ていろ」

 

出かけている間、おそらくスマフォやっていて見張りとしては何ら役に立たんだろうけどな。

 

「ほれ、お金。私がおごってやるよ」

 

そういって智子が5000円札を渡して来る。自分の太っ腹な一面を見せようとしているが、これは出発前に母親からもらったお金である。

 

「…ありがとう」

 

「あ、私の分にはハンバーガーもつけてね」

 

相変わらず食い意地の張ったはった奴だ。残しても知らんぞ。

 

久々のプールで体力を使ったからか、それともプールでのカップが予想以上にうまく感じたからか、智子はすごいスピードで食べていた。

 

「カップで腹ごしらえもしたことだし、再戦するか」

 

だが、カードを並べていると、視線を感じてそちらのほうを向くと小さな子供がじっと見ていた。小学生低学年くらいだろうか?

 

「おい、早くはじめろよ」

 

智子がせっつくが、子供を見ていることに気づくと慌てて視線を逸らした。そういえば智子は年下とはある程度話せるので、見知らぬ人と話させるのもいいだろう。僕は決心すると、子供の背の高さにかがんで話しかける。

 

「君、やってみる?」

 

子供に聞くと、子供はパアッと明るい顔をした。智子がどういうつもりだと目線を送ってくるが、気にしない。

 

「なら、お前が立つか?」

 

智子は横着するタイプなので席を譲ることはないだろう。スマフォも見尽くしたからか、予想にたがわず僕から視線を逸らした。

 

「ちっ」

 

智子の舌打ちとともに、子供に席をゆずる。

子供はカードを持った。

 

「言っておくけど、私は強いから覚悟したほうがいいよ。何せ近所ではクイーンと呼ばれているからね」

 

最高にだせぇ。子供相手に本気を出すクイーンはアニメとかの中だけだと思ってたぜ。

試合から数分。確かに子供相手に有利に進めていたが、子供相手だと油断したせいか少しずつ不利な局面になりつつあった。

 

「ん?」

 

怪しい動きをしていたので、智子の小さい手を良く見ると、カードを入れ替えてズルをしようとしていたので、後頭部にチョップしておく。

 

「___________!」

 

後で殺す、という眼で睨んでくる。だが、後ろめたいからか何も言わず、試合を再開した。結局、智子は接戦の末ぎりぎりで勝つことができた。

 

「すげぇー!本当にクイーンなんだ」

 

子供のきらきらとした目に照れる智子。久々に他人から褒められて照れているようだ。なんか考えていたら切なくなってきた。

 

「ま、まぁね!」

 

卑怯な手を使おうとしていたのによくもまあ、「クイーン」とか言えたものだ。子供は目を輝かせて再戦をせがむ。

数戦後、母親が子供を呼び戻しにやってきた。母親に頭を下げられ、しどろもどろになっている。

 

「じゃあね、クイーン!」

 

手を引かれた子供に言われて智子はダメージを受けた!母親に怪訝な顔で見られている。これは恥ずかしい。

 

 

 

*   *   *   *   *   * 

 

 

 

帰り道、水の中で過ごしてしんどくなったのか智子は足取りが変だった。

 

「いやあ、今日はモテまくって大変だった」

 

もちろんカードゲームの相手としてモテモテという意味である。物理的に男達からモテていたわけではない。

 

「ガキは論外だけど…考えてみれば何も同級生に限る必要はないんだよな…私の人生これからっしょ」

 

その理屈はおかしいと思う。変な勘違いをしてはいるが、夏の思い出が出来たので僕の目標は(一応は)達せられた。ここから、海へ自信をもって気楽に行けるようになるだろうか。今はまだわからない。

 

「ひと夏を過ごした私は今…無敵!」

 

すげぇな、プールに行っただけで無敵になれんのか。プールはすごいな。智子の妄言はともかく、久々に気分が高揚しているようだ。

 

「今だったら走っていけそうな気分」

 

智子はなにやら夢でも見ているかのようにふらふらと前を歩く。

 

「おい、待て」

 

こういう時の智子はろくなことにならない。ダダっと走ったと同時に、鈍い音があたりに響く。思いっきり電柱にぶつっていた。音からして、かなり強く打ち付けたらしい。

 

「~!う~、ヒッ、い、いつぅ…ううう」

 

涙をボロボロ流して鼻血を流している。言葉もとぎれとぎれでかなり傷んでいるようだ。

 

「おい、智子!」

 

こんな子供みたいなぶつけ方をする奴があるか。駆け寄り、頭を掴んでこっちのほうを向かせると、濡れタオルで鼻を抑える。大きな目は涙で潤んでいたが、同時に顔を青くして口元を抑える。

 

「うっ」

 

このえづき方、間違いない。来る、きっと来る!

 

 

…この後、彼女がゲロ吐いたのは言うまでもない。怪我は幸いたいしたことはなかったが…嫌な、事件だったな。

 

少しのトラブルはあったが、童心に帰り智子は自信を得ることができた。

 

こうして、僕たちの時間は、心待ちにしていた夏休みへと向かうことになる。…どうせ夏休みをだらだらと無駄に過ごして終わる、なんて思っていないぞ。

 

 

 




今回は原作でないであろうプール回を書いてみました。単純にもこっちの水着を妄想したいだけの理由なのは内緒。

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