IS学園での物語   作:トッポの人

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4月から新しい子に文字通り手を焼かされています。
私だけではダメで他の人達も一緒になってやってるくらいです。



マムタロトくんっていうんですけど。


第31話

 ルンピカしてる織斑先生と毎朝イチャラブ(地獄)を続けてはや一ヶ月が経とうとしていた。日曜日というたまの休みである今日は昼頃に街へと繰り出して買い出しへ。

 と言ってもそんなに買うものなんてない。買うのは俺のラファールの修理に付き合ってくれた布仏先輩を始めとする先輩方への礼としてのケーキだけだ。女の子は甘いものに目がないってね。

 

『春人、春人。皆にはお土産買わなくていいの?』

 

 ミコトに言われてふと考えてみる。

 確かに入学してから今まで皆には何かと世話になっていた。日頃からの感謝として皆の分のケーキも買っていいのかもしれない。

 

『わくわく! わくわく!』

 

 あっ、でもこれ違うわ。これ俺がどう答えるか期待してるだけだわ。

 しょうがない。子供からの期待に応えるのも年上の役目だ。

 

 そうだな……皆へのお土産はいらないんじゃないかな?

 

『えっ、何で何で?』

 

 何でって、そりゃあ――――

 

 次に俺が何て言うのかと期待に満ちた返事がやってくる。姿は見えないが、きっとキラキラと瞳を輝かせている事だろう。

 だから俺はわざと勿体ぶって、少しためを作ってから決めた。なるべく期待を裏切らないように気を付けて。

 

 ――――俺の笑顔で充分だろ?

 

『ヒュー!!』

 

 何とか期待には応えられたようで、ミコトから黄色い声があがる。

 

『でもそれ出てくる難易度エクストリームだけど大丈夫?』

 

 ダメですね。どう考えても。なのでちゃんとお土産買います。

 

 冷静になってみれば殆ど笑った事なんてなかった気がする。別に今に始まった事でもなく、昔からそうだった。気付いたらこうだったのだ。この悪い癖をどうにかしたいと思う反面、どうにも出来ない。

 

「……あれは」

『セシリアですねぇ』

 

 もどかしさを感じながら、美味いと評判であるお目当ての店に向かっているとその途中でセシリアを見つけた。

 むしろ見つけない方が難しい。それほどの存在感を放っていた。

 

「はぁ……」

 

 着ている衣服やその整った容姿、ただ立っているだけで伝わってくる気品と相俟って、退屈そうに溜め息を吐く姿は喧騒とした街中で彼女だけがまるで違う空間にいるように見える。映画にあるワンシーンを切り取ったと言ってもいい。

 周りの人達もそれを感じているらしく、近くを通る人の殆どが目を奪われていた。かくいう俺もその一人だ。

 

 だがこの女優だけの映画に突如として一般人があがる事になろうとは誰も予測出来なかっただろう。

 

「あら……?」

 

 少し遠目から眺めていた人物とセシリアの視線が重なる。すると恐る恐るだがゆっくりと確実に歩みを進めていく。

 疑惑の視線が歩を進めるにつれて確信に変わっていき、それに応じてセシリアの表情が退屈そうなものから変わっていった。段々と楽しそうなものへ。

 見とれていた人達がそんな少女の変化に気付かぬはずがない。追うように視線がその先にいる人物へと注がれる。

 

「やっぱり春人さんですわっ」

 

 ていうか俺だった。

 

 俺の元へ着く頃にはまるで探していた宝物を見つけたような嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 代表候補生として人前に立つのに慣れているセシリアとそんなのに縁がなかった俺。とてもじゃないが耐えられそうにない。

 

「…………すまない、場所を移そう」

「構いませんが、どちらに行きますか?」

「……喫茶店でどうだ?」

「はいっ。では早く行きましょうっ」

 

 苦し紛れのこちらの提案を嬉々として受け入れてくれる。それは弾む声からでも分かるほど。

 とりあえずここから少し離れたところにある喫茶店へ行く事に。注文も終えると今回の目的を話した。

 

「春人さんはどちらに行かれる予定で?」

「……今更だがラファールを修理してくれた先輩方にケーキでも買おうとな」

「あれは突貫作業でしたものね……」

 

 三号との戦いによるダメージは相当なものだった。リミット解除『一刀修羅』による負荷も加わり、詳しくは分からないがとにかく悲惨だったらしい。しかもそれを早く直せときたもんだ。

 布仏先輩や布仏だけではとても手に負える内容ではなかったので、いつぞやの優秀な先輩方の手を借りたのだ。

 おかげで俺は怪我が治ったと同時にISに乗れたという訳だ。本当に頭があがらない。

 

「……セシリアは?」

「わたくしは色々と買い物を」

「……一人でつまらなそうにか?」

「まぁ。見ていたなら声を掛けてくださいな」

 

 無茶言わないでくれ。俺からしてみればあんな状況で逆に声掛けられただけでも厳しかったのに。

 

「…………次はそうする」

「楽しみにしています」

 

 いつ来るか分からない次を想像してか、実に楽しそうに笑うセシリア。先ほどまで退屈そうにしていた少女と同一人物とは思えないほど明るい。

 

「……本当に楽しそうだな」

「はい。春人さんがどう声を掛けてくれるのか想像するだけでとても楽しいですわ」

「……そんなものか?」

「そんなものなんです」

 

 そう言うと目を瞑り、両手を自身の胸に押し当ててセシリアは続ける。

 

「さっきまでの退屈な時間も、ただ春人さんと一緒ならと考えるだけで楽しくなりますもの」

「……そうなのか」

「ええ。こうして本物には勝てませんけれど」

『ですって春人さん』

 

 そ、そう言われてもな。こちとら話題を振るだけで精一杯だっての。そもそも面白い事なんて何もしてないぞ。

 

 困ったと頬を掻いているとそれを見てまたセシリアが静かに笑う。口元に手を当てて、くすくすと。

 

「困らせてしまったみたいですわね」

「…………まぁ、な」

「ふふっ、すみません。お詫びとして春人さんの買い物にお付き合い致しますわ」

 

 予期せぬ展開から俺の買い物に同行者が。

 正直、ケーキを買うだけなんだが女性視点での意見というのも欲しかったのだ。ミコトに訊いても俺が選んだのならいいとしか言わないし。

 

「……ああ、よろしく頼む」

「でしたら早く行きましょうっ」

 

 急かしてくるセシリアと共に店を出ると、俺の右腕を取って自身の腕と絡ませてくる。肘に柔らかな感触がががが。

 

「…………その、これは?」

「あら、殿方がレディをエスコートするのは当然の事ですわ」

「……エスコートなんてした事ないぞ」

「それでしたらわたくしが厳しく指導致しましょう。また今度のために」

 

 先ほど交わした口約束が早速効力を発揮してきた。ウィンクしながらこちらを伺ってくるセシリアは淑女とは程遠い小悪魔的な顔を覗かせている。

 観念した俺は溜め息を一つ。それとせめてもの細やかなお願いも。

 

「…………お淑やかに頼む、レディ」

「お任せくださいっ」

 

 お土産のケーキを買うついでに急遽教わる事となったエスコート。せめてものお願いもあまり意味をなさなかった。

 

 というかお詫びとは一体……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。休み明けの月曜日になればまた朝から慌ただしくなる。具体的には織斑先生とのイチャラブ(地獄)だ。

 

「シッ!」

「ぐっ!?」

 

 繰り出される銀線はこれが訓練とは思えないほど鋭い。織斑先生も加減しているとはいえ、こちらは二刀流なのに手数で圧倒されている。

 

 織斑先生が止まらない! 止まらない、止まらない!

 

『ワルキューレが!?』

 

 止まらない!

 あっ。やばい、ふざけてる場合じゃないぞ!? どうすればいい!?

 

『ガッツでガッツンガッツンだよ!』

 

 凌いで来ますよ篠田さん!

 

「はぁっ!」

 

 訂正、凌ぐのも無理だった。こちらの防御を掻い潜って刀が迫ってくる。避けるのも不可能。

 

 くそっ、仕方ない。我がアルター能力を見せる時がきたようだな!

 

『見せちゃってー、見せちゃってぇ!』

 

 うおおお、こんな時こそ発動しろ我がアルター『おねがい☆ティーチャー』!!

 

『来た! マニアックなやつ来た! これでかつる!』

「命乞いか? らしくもない!!」

「ごふっ!」

『春人ー!?』

 

 そんなものが鬼神に通じるはずもなく、文字通り斬って捨てられた。本日早朝、最後の一試合の結果がこれだ。

 膝をつく俺に織斑先生が興味深く見てくる。ややあって、意図が分からない質問をしてきた。

 

「櫻井、ISに乗る以外何かしていたか? 刀を振るような事だ」

 

 う、ぅん? 結構具体的に訊いてきたな。何が言いたいんだろう?

 

「……入学してからたまに竹刀を振っていました」

 

 やっていたとしたら剣速を上げるために竹刀を振るっていた事しか思い付かない。

 最近はこっちが忙しくてそれもやってなかったが、ここまで具体的に問われるとそれしか出てこなかった。

 

「どんな風にやっていた?」

「……箒から教えてもらった構えを崩さずになるべく早く振るだけです」

「今はやっていないのか?」

「……最近はあまり」

「たまにとはどれくらいだったんだ?」

「……一週間に二回あるかどうかです」

「そうかそうか……」

 

 織斑先生にしては珍しい質問攻め。全て答えると何か納得出来たらしく、しきりに頷く。

 また暫く考えてから大きく頷くと口を開いた。

 

「よし、これからは毎日やれ。いいな?」

「……はい」

 

 何かよく分からないけど、また新しいメニューが増えた。今日からより一層忙しさを増していく事に。

 

『やったね、春人! メニューが増えるよ!』

 

 おう、やめーや。

 

 織斑先生との訓練も終え、ボロボロの身体を引き摺りながら部屋へ。身体がボロボロになるのはいつもの事だが、今日は心もズタボロになりつつある。

 

『オデノカラダハボドホドダ!』

 

 何で急に滑舌が悪くなっちゃうんだよ。ビックリするわ。

 

 他愛ない話をしながら今日はどうするかを考えていればあっという間に部屋に到着。

 鍵なんて使わず、ドアノブに手を掛けると――――

 

「おかえり、春人。今日は早かったな」

「……ただいま。まぁな」

 

 ドアの先にはすっかりこの部屋の住人と化している箒がいた。何か洗い物をしているようだ。

 

 ちなみに箒と別に一緒に住んでいる訳ではない。相変わらず俺は一人部屋だ。

 ただ怪我が治ってからは箒が来る頃には俺は織斑先生との訓練でいなくなっている。

 そうすると箒は何故か俺の部屋の前で帰ってくるのを待っていたのだ。今日は早く終わったが、遅い時もあるから終わったら連絡すると言っているのだがそれも聞かない。

 なので織斑先生にお願いしたら結構あっさり合鍵をくれた。朝付き合わせている礼も兼ねてらしい。

 

「ほら、早く汗を流してこい。今着てるのも洗濯したいんだ」

「……すまない」

 

 さすがに女性の目の前で着替える訳にもいかないので浴室で着替える事に。その時、ふと箒の格好を見て漸く気付いた。

 

「……そうか。今日から夏服か」

「そうだぞ。冬服は今日クリーニングに出しておくからな」

「……ありがとう」

「ふふっ、どういたしまして」

 

 礼を言われるとそれが嬉しいのか箒は幸せそうに笑う。これが一夏相手ならもっと幸せそうにしているんだろう事は想像に難くない。

 

 ていうか箒さん家事スキル高いんじゃが。これ練習しなくてもいいんじゃね? いきなり実戦でいいような気がするんですけど。

 

『それ言ったらグーで行きます』

 

 えぇ……。いや、助かるから俺はいいんだけどさ……。

 

 シャワーを浴びて汗を流した俺は渡された制服に袖を通してから浴室を出る。

 その頃になれば朝の家事は粗方終わったようで、箒は一緒に食堂へ行くために俺をじっと座って待っていた。

 

「……待たせた」

「気にするな。これも将来のためになる」

 

 うぅん、なるほど。箒は待つのは平気か。男の子的にはポイント高いぞ。少なくとも俺的には高い。

 

『うぅん、これは成功してるのかな……?』

 

 どう考えても成功してるだろ。

 

「……食堂に行くか」

「待て待て。そのままで行く気か?」

「……?」

 

 さて、食堂に行こうとすれば箒から待ったが掛かる。そのままでと言われたが、パッと見て問題はないようにも思える。

 と、そんな俺の疑問を払拭するように箒はこれだと忘れ物を見せてきた。

 

「ネクタイを忘れているだろう」

「……必要なのか」

「学園の指定だからな」

 

 中学の時は学ランだったから知らなかったが、夏服にもネクタイは必要らしい。

 

「ほら、ちゃんと真っ直ぐ立て」

「……ん」

「よいしょ……」

 

 箒に促されるまま、いつもの如く直立していると持っていたネクタイを首に巻かれる。家事の他にネクタイを結ぶのも箒の役目となっていた。

 何でも将来は箒がやってあげたいんだそうな。だから今の内から慣れておきたいとの事。

 

「……慣れてきたな」

「ま、まだまだだと思うぞ。うん」

「……そうか」

 

 そう言うと箒はほんのり顔を赤くして否定した。俺より余程綺麗に結べるのにまだまだらしい。俺が思っているよりネクタイは奥が深いのか。

 

「よしっ。出来た」

「……ありがとう」

 

 言葉と共に俺の胸板を軽くポンッと叩いて終わりを教えた。何度見ても仕上がりは綺麗だし、何より早い。

 そして美少女がやってくれたという事できっと自分でやるよりもカッコ良さに補正が掛かっている事だろう。

 

「どうかしたのか?」

 

 ジロジロとネクタイの出来栄えを見ていたら不審に思われてしまった。

 

「……少しは見てくれがマシになったかと思ってな」

「ふむ、どれどれ……」

 

 今度は箒がまじまじと俺を眺めてくる。頭から足の先までじっくりと。

 ややあって箒はくすりと笑い、こう答えた。

 

「――――ああ、カッコいいぞ」

 

 えっ、まじで? 来た。俺の時代来た。やっぱり美少女補正って凄かったんや。

 

『まぁ初っぱなIS使う授業ですけどね』

 

 俺の時代早々に終わるやんけ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー」

「おはよう」

「おはようございます」

「うむ、おはよう」

「…………おはよう」

 

 ざわついているクラスメイトからしてくれた挨拶に簪、セシリア、箒、そして俺が応える。

 寮から出る頃にはこのメンツが俺の左右を固めていたのだが、何これ。どうなってるの?

 

「おっ、皆おはよう」

「おっそいわよー」

 

 先に来ていた一夏と鈴も合流し、一年生の専用機持ちが一ヶ所に集まる。どう考えても過剰戦力としか言いようがない。

 

「おはよっ。ねぇねぇ、また転校生来るんだって」

「そうなのか? 相川さんもよく知ってるな」

「うん、朝たまたま聞いちゃった」

 

 さっきからざわついているのはそういう訳らしい。そういえば織斑先生もそんな事を言っていた気がする。

 

「転校生……」

「あらあら、それはまぁ……」

「何とも……」

「…………何故俺を見る」

「「「別に」」」

 

 簪とセシリア、箒は転校生が来る事に何か思うところがあるのか口々に呟く。何故か三人とも俺にジトッとした視線を向けて。

 問い掛けても口を揃えて何でもないと答える。あからさまに何かあるような口振りでだ。気にするなという方が難しい。

 

「はーい、皆さん席についてくださーい」

「そんじゃ、またあとでねー」

「俺達も席に戻るか」

「うむ」

「そうですわね」

 

 三人の息の合ったチームプレイを見せたと同時に山田先生が授業開始を告げる。鈴が去ると一夏達も自分の席へ戻っていく。

 

「春人……」

 

 ただ一人、簪を除いて。

 違うクラスではあるが合同授業で直ぐに会う鈴はいいとして、簪は早くてもお昼まで会う事はない。その口から表情に合った寂しげな声が聞こえてくる。俺の名前と共に。

 

 い、いつもの事なのに今日は何故?

 

『転校生が来るのに何かを感じ取ったんだろうね。女の勘ってやつ?』

 

 えぇ……何それぇ……? どうすればいいんだ?

 

『その問いに対する検索は既に完了している。こうすれば大丈夫さ』

 

 さっすがミコトちゃん、頼りになるぅ。でもその無理に男の子っぽい声を出すのは意味があるの?

 ていうか教えられたのくっそチャラいけど大丈夫か?

 

『騙されたと思ってやってみるよろし』

 

 ま、まぁやってみるわ。ダメだったら次の手を用意しなければ。

 

「……また、な」

「っ、うん! また、ね!」

 

 言われた通り子供をあやすように天使の髪を撫でると、本当にあっさり天使に笑顔が戻った。気のせいか頭に付いていたヘッドギアが僅かに動いた気がする。

 

「「んんっ!!」」

 

 小走りに去っていく簪を見送ると小さく咳払いが聞こえて視線を向ける。そこにはそれはそれは大変不満そうにしている箒さんとセシリアさんのお姿が。

 

 俺が何したってんだ……。

 

「さて、早速だが転校生を紹介する。入ってこい」

「「失礼します」」

 

 俺が頭を抱えている間に織斑先生も来ていたらしく、噂通りに二人が呼ばれてやってきた。

 途端に盛り上がっていたクラスメイトが押し黙る事に。その内の一人にクラス全員が目を奪われるのも仕方なかった。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。不馴れな事もあるかと思いますが、よろしくお願いします」

「えっ、男……?」

 




二人出すと言っといてすみません、すみません。
次こそは次こそは……。

それはそうとTwitterでR指定のお話について聞こうと思ってます。

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