IS学園での物語   作:トッポの人

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( ◇)<もう悪い事をしてはダメだぞ☆


第43話

 最初はこの女子校にいるたった二人だけの男子だから友達になりたかった。でもそこに直ぐ近くにいる目標というのが加わるのにそう時間は掛からなかった。

 俺のやりたい事を出来るあいつがカッコ良くて、羨ましくて、憧れて。負けていられないと放課後の訓練で頑張って、がむしゃらに挑んだりした。

 

 結果は全敗。何度やっても目を覆いたくなるような結果しか出ない。目標はただひたすらに遠いのだと理解させられた。

 しょうがなかったかもしれない。こいつはたまにやれると思ったからとかいう理由で色々あり得ない事とかやるし。けど、それでも諦める気にはなれなくて。

 すると戦っていく内に今度はそこに悔しさも加わって、ますますがむしゃらに挑むようになっていく。

 

 でも今は違う。

 

 あの時、ゴーレムが襲撃してきた時から俺の挑む理由が変わった。切っ掛けは俺と鈴に向けて言った春人の言葉だ。

 

『……逃げろ。あいつの狙いは俺だから二人は大丈夫のはずだ』

 

 あいつにしてみればなんて事はない一言だったんだろう。確かに俺達は足手まといだった。まともに戦えばただでは済まなかった事も。それは殴られた俺が一番良く分かっている。

 だからそれまでの春人の行動と直前にゴーレムとぶつかった事を考えれば逃げろと言うのは当然なのかもしれない。

 

 でもその言葉は確実に俺の心に良くないものを残した。

 

 分かったんだ。春人にとって俺達はただそこにいる目的が一緒な人ってだけで、あいつの味方はあいつ一人だけなんだと。

 遊びも訓練も誘えば来るし、逆に誘わなければ来ない。あいつから誘う事もほとんどなかった。

 千冬姉ぐらい強かったら、千冬姉があそこにいたらどうだったんだろう。だがそれは所詮たらればで幾ら考えても答えは出ない。

 

 だから――――

 

「ふっ!」

「シッ!」

 

 お互い空中で短く息を吐くと四度目の交差へ。息を合わせたように擦れ違い様に刀を繰り出し合う。こちらは上段からの唐竹に対し、向こうは横凪ぎ。やたら大袈裟に振りかぶっているのが特徴的だった。

 

 アリーナに鳴り響く甲高い音。そして続けてやってきたのは鈍い音。

 

「ぶっ!?」

 

 春人は左手でこちらと鍔迫り合いをすると空いた右手で殴りかかって来る。両手で振りかぶっていたから直前まで分からなかった。

 そのまま殴った右手で顔面を掴み、刀を格納して自由になった左手で『雪片』を持つ俺の右腕を抑えると、柔道の大外刈のようにして俺の体勢を崩す。

 

「おおおっ!!」

 

 そしてそのまま地上へ加速。瞬時加速も使ってこのまま地面に叩き付けるつもりのようだ。そんな事されれば一溜まりもない。

 

「白式ッ!!」

 

 勿論、見てるだけ、やられるだけじゃない。白式の名前を叫ぶと共にこちらも瞬時加速を発動させる……が。

 

「押し返せない!?」

「行けよ、ラファールッ!」

 

 現在学園のどのISよりもスラスター出力が高いはずの白式が押し負けている。

 そういえば教わった時に瞬時加速にも色々種類があると千冬姉が言っていた。これはただの瞬時加速ではないらしい。

 

 だが減速は出来た。脱出までの時間稼ぎと最悪の場合を想定したダメージの緩和にもなる。あとは反撃するだけだ。

 

「この……や、ろぉ!」

「っ!!」

 

 右手に持っていた『雪片』を格納し、直ぐにがら空きの左手に展開。

 同時に刀身を展開して、ほぼ柄だけの状態になった『雪片』を春人の脇腹に押し当てる。息を呑む音がよく聞こえた。それが誰かのなんて言うまでもない。

 

「くっ!?」

 

 柄から発生する白刃が貫く、その寸前で身を横に捻りながら後ろに下がる事で掠める程度に抑えられた。相変わらず馬鹿げた反射神経と勘をしている。

 だがこちらはあくまで抜刀しただけ。そこから続く胴体を切り払う横凪ぎが本命だ。それは春人も気付いて少し距離を開けたがもう遅い。

 

「もらったぁ!!」

 

 凪ぎ払った瞬間、俺の動きが止まった。いや、止められた。

 

 胸を中心に前宙をして斬撃を避けたのだから。

 

「はっ? ぐおっ!?」

「――――月欠(ツキカケ)

 

 目の前で行われた大道芸に我ながら間抜けな声が出たと思ったら、呆けてるところへ前宙の勢いを利用した踵落とし。

 

「ぐっ、くっそ!」

 

 それにより落下速度が早まったが、地上に激突する寸前で姿勢制御して何とか着地。

 こっちが慌てたのに対して春人はゆっくり落ち着いた様子で地面に降り立った。

 

「ったく、相変わらず足癖が悪いな……!」

「……お前は手が早い」

「お前には言われたくねぇよ!」

「…………何故だ」

 

 俺の愚痴に不思議そうにしているこいつを見ると箒とかが少し可哀想に思えてくる。

 まぁそっちは他の皆に任せるとして。俺は俺のやり方でこいつに分からせてやるさ。

 

 そうだ。言っても分からないなら、実際やって分からせるしかない。頼りないかもしれないけど、お前の味方はあっちこっちにいるんだぞって。

 それが今こいつと戦う理由だ。不思議なものでそう考えるとどんどん力が沸いてくる。前まではそんな事なかったのに。

 

「……一応言っておく。降参しないか?」

「はっ! 盛り下がる事言うなよ!」

 

 このトーナメントで戦う相手全員に言っていた台詞を否定する。俺が目指すのはこいつと対等の相手だ。

 そんな遥か高みを目指している訳で。目指している相手からの降伏勧告なんて受け入れてはいられない。

 

「…………一応だと言った。それともう言わない」

 

 春人は再び刀を展開し、静かに構えた。こっちも刀身を元に戻した『雪片』を構え直すと叫ぶ。

 

「行くぜ、春人!」

「来い、一夏」

 

 

 

 

 

 

 

 

 危ねぇ……。胸の回転を知らなかったら『零落白夜』でバッサリだったぜ……。ありがとうガンバFly High。

 

 ていうか、お前じゃ俺のスピードについてこれねぇ! やろうとしたらしっかり付いてきてたでござる。言ってたら恥ずかしい事になってた。

 何だよ、量子格納と展開を利用して刀をスイッチさせるとか。まじでビビったよ。

 

『だって一夏イケメンですしおすし』

 

 何だよ、その理由……。あいつ主人公かよ……。

 

「オラァ!」

 

 こちらの動揺なんていざ知らず、飛び込んできた一夏が刀を振り下ろすと同時、片手で刀を保持して気合いと共に左拳が飛んで来た。

 こちらも片手で鍔迫り合いをしながら拳を受け止める。

 

「むっ」

 

 今回幾度か斬り結び、今もこうして拳を受け止めて分かったが一夏が強くなっている。現在進行形で。

 攻撃は繰り出す度に強く、鋭くなり、身体は動く度に少しずつ無駄がなくなり、どんどん速くなる。

 

「何だ……今日ならお前に勝てる気がする!!」

「そうか。期待している」

「なら応えなきゃなぁ!」

 

 極めて近距離での戦いでは『雪片』は邪魔だと判断したのか、格納してひたすら殴る蹴るによる攻撃が開始。それを受け止め、捌いていくがやはりどんどん強くなる。

 言葉から察するに一夏も何となくだがこの変化に気付いているらしい。第伍十戦術を使ってなければやばかったかもしれん。何なんだこれ。

 

『ハザードレベル二.五、二.六、二.七! どんどん上がっていく。こいつは面白い……!』

 

 えっ、ハザードレベルって何? ちなみに俺はそれ幾つなの?

 

『Xかな。でんじゃー!』

 

 数字じゃないんですが、それは……。

 

『まぁ今のは冗談だけど、白式が一夏の気持ちに応えてるんだよ』

 

 へぇ。あれ、ミコトちゃんは俺の気持ちに応えてくれないの? 俺はこんなに好きなのに?

 

『……ダメだよミコト……あんな甘い言葉に騙されちゃダメ。応えたら壊されちゃうから絶対ダメ……!』

 

 ひたすら自分に言い聞かせているミコトの言葉から俺はダメだと分かった。しかし今のは我ながら凄まじいクズっぷりだ。もう言うのはやめておこう。あと返事が何となくえっちぃ。

 

 とりあえず一夏はどんどん強くなる状態だが、俺はありのままの強さで戦うしかないと。強さに上限があればいいが、それも分からないから辛いってレベルじゃない。

 

「そこだぁ!」

 

 一夏から俺の顔面に向かって放たれる右のストレート。

 

 まぁ――――

 

「読めているぞ」

 

 ――――やってやりますか。

 

「うぇっ!?」

 

 繰り出された右ストレートを受け止めると、無理矢理腕を引っ張って体勢を崩したところへ突き出した足を右脇に引っ掛けた。そのまま足だけで持ち上げて反対側の地面に叩き付けるようにする。

 

 幾ら強くなってるといっても俺ってば目と反射神経は良いんだよね。これぐらいならまだまだ対応出来るのだ。

 

「よっと!」

 

 しかし、対応出来るのは俺だけではなかったようだ。一夏も地面に叩き付けられる寸前でバック転のようにして逃れると少し距離を取った。

 

 おお、あれも防ぐのか。時間を掛けるとより強くなるみたいだし仕方ない、春人くん秘蔵の必殺技であるコンビネーション・約束された勝利の剣(エクスカリバー)を見せる時が来たようだな。

 

『いや、無理だよ出来ないよ』

 

 まぁ、ビーム出せないからね。仕方ないね。エクスカリバーちっくなのがあればなぁ。

 

 さて、少しふざけたが短期決戦という判断は間違いない。まだ対応出来る内に倒すのは正解だろう。ならばやる事は一つだ。

 スラスターを吹かせると同時に地面を蹴り、一気に接近すると拳を固めた。織斑先生と訓練して覚えた三種類の攻撃を今お見せしよう。行くぞ。

 

「速くて軽いパンチ!」

「何だそれ、ってはえぇ!?」

『いりょくはないけどすっごくはやいぞ!』

 

 一夏の逃げ道を塞ぐ意味でも手当たり次第にスピード全振りのパンチを放つ。ぶっちゃけただの手打ちパンチなのだが。ジャブと言ってもいい。

 ともかく速さに驚いて咄嗟に防御した一夏だが、これが威力がないともうバレているだろう。そこでもう一つの攻撃。

 

「遅くて重いパンチ!」

「今度は何だ、ぐおぉ!?」

『はやくはないけどきょうりょくないちげきだ!』

 

 逃げ道を封じたところでガードの上から思いっきり殴り付ける。吹っ飛ぶ姿を見るに強くなっているとはいえ、まだ力では俺の方が上らしい。半分にまで抑えられている俺の方がである。筋トレが足りん。

 

 吹っ飛んだこいつの筋肉事情は置いといて、追い掛けて最後の三つ目。

 

「速くて重いパンチ!」

『来た! 最強来た! これでかつる!』

「ぐぅ……こんのぉ!」

 

 追撃の一撃を迎撃すべく、体勢を立て直した一夏からも拳が。

 

「おぉぉぉ!!」

「ぐっ……だぁぁぁ!!」

 

 向こうの右拳とこちらの左拳、二人の拳がぶつかった瞬間、鈍く大きな音がアリーナに響いた。

 受け止めていた時に比べてまた強くなっている。が、まだ問題ない。

 

「せいっ!」

「うおぁっ!?」

 

 拳を振り抜くと少し手応えが薄く感じた。多分自分から後ろに飛んで威力を和らげたんだろう。

 うん、近接戦限定なら今の一夏は相当強いな。どうしてこうなった。

 

『テンションに流された結果だよ』

 

 でもそんな熱いボウズも俺は好きだぜ?

 

『やっぱりスバルさんはカッコいいんや!』

「おおおっ!!」

 

 後ろに飛んだ熱いボウズこと一夏がアリーナの壁に足を着けるなり、壁を足場として蹴って再度突撃してきた。その手に唯一の武器である『雪片』を呼び寄せて。

 

「でぃぃぃやぁぁぁ!!」

 

 俺お得意の移動方法に加えて瞬時加速も併用、更には繰り出す攻撃は構えからして最短最速を行く突きと全てが速度重視だ。更には突進で身体ごとぶつけようという魂胆か。

 なるほど。まともに受け止めようとすれば吹き飛ぶし、そもそも回避という選択はさせないと。

 

 

 ならばとそれを迎撃すべく、こちらも刀をレーザーブレードで呼び出すと右半身を一歩下げる。左腕を盾に見立て構えた。

 

「止められるもんなら、止めてみろよ!!」

 

 咆哮と共に驚異的な速度で近付く一夏が読み通り突きを繰り出した。

 

 だが一つ、こいつは思い違いをしている。

 

「んなっ!?」

 

 俺は止める気なんて更々ない。

 

 切っ先が迫る中、突きを邪魔する事なく握り締めた左の甲を押し当てて軌道を逸らした。

 

「虚空陣――――」

 

 少し身を低くして腰構えから踏み込んで擦れ違い様に一閃。

 

「――――雪風」

「か、はっ……」

 

 レーザーブレードで加減したとはいえカウンターで腹部を斬ったせいか、一夏から肺の中の空気を全て出し切ったような声が漏れる。さすがにもう終わりかと思いきやまだ膝はつかない。

 

「はぁ……はぁ……! くっ!」

 

 だが呼吸を整えようと著しく動きが鈍っている今ならこのまま終わらせるのは容易だろう。

 

『あっ、ジャストモーメント。ちょっと待った』

 

 終わらせるべく刀を振り上げようとした瞬間だった。何かに気付いたミコトから待ったが掛けられる。

 

 どったの? こっちはもう少しで決着着きそうなんだけど。

 

『お宅のお子さんいじめられてるよ?』

 

 何で!?

 

 言われて思わずボーデヴィッヒの方へ振り返ると壁際に叩き付けられているパートナーの姿が。

 戦っているシャルの左腕にはシールドの代わりにパイルバンカー。ここへ来て必殺の武器を隠していたらしい。それが薬莢を排出し、再びボーデヴィッヒへ。

 

「お兄ちゃんとタッグ……! 羨ましい……!」

 

 凄まじい怒りや恨みを込めながらボーデヴィッヒにひたすら撃ち込んでいく。その根源が俺とタッグ組めなかった事っぽいのだがどうしよう。

 

 ていうかシャルさんってばあんな可愛い顔してなんて漢らしい武装を……。お兄ちゃんドン引きです。

 

『ちょ、春人! 見てないで早くどうにかしないと!』

 

 あいよ!

 

 まだ復活していない一夏を放置してボーデヴィッヒとシャルの元に急行。

 

「っ、お兄ちゃん!?」

「シッ!」

 

 途中でシャルも気付いて、俺の攻撃を避けるべくボーデヴィッヒから離れた。一先ずはこれでいいとして。

 ちらりと後ろにいるボーデヴィッヒに視線を移す。まだISが展開出来ている辺りを見るに、エネルギーは尽きていないようだが。

 

「……ボーデヴィッヒ、無事か?」

「私が、負ける……? 私が……?」

 

 俯いて表情は伺えないが、譫言のようにぶつぶつ繰り返している様からはとても大丈夫と言える雰囲気ではない。実質のリタイアだろう。

 

「シャルル、悪い……!」

「大丈夫なの?」

「何とか……な」

 

 更に悪い事は続くもので、一夏も復活したらしい。少しふらつく身体でシャルの近くにやってくる。

 

 さてさて、どうしたもんかね。俺は比較的元気だが、ボーデヴィッヒは紙一重の状態で戦える状態ではない。

 対して向こうは多少のダメージはあるものの、二人ともまだまだ戦えるし、一夏が更に強くなっているはず。

 

「……あり得ん」

「…………ボーデヴィッヒ?」

 

 必死に打開策を思案していると後ろで譫言を呟いていたボーデヴィッヒが動いた。腕を力なく下げたまま、ゆらりと立ち上がるその様子は明らかにおかしい。

 

 そしてもう一度、今度は皆にもはっきり聞こえるようにさっきの言葉を口にした。

 

「あり得んなぁ……!!」

 

 その口元を狂気で歪ませて。

 

『春人!!』

「っ! 一夏、シャル、下がれ!!」

「おう!」

「うんっ!」

 

 背筋に嫌なものが走った。それは二人とも同じようで、態々俺に言われるまでもなく距離を取る。

 

「最後に勝つのは……我らだぁぁぁ!!」

 

 紫電が迸り、ボーデヴィッヒのISがドロリと溶けた。誰が見ても分かる、異常事態発生だ。

 

 でもその前にミコトちゃん、一ついいですか?

 

『何でしょうか?』

 

 さっきボーデヴィッヒは『我ら』と言いましたが、そこに僕が含まれていないと思うのは気のせいでしょうか?

 

『気のせいではないと思います』

 

 泣けるぜ。




何か殺伐としてきたので台詞だけですがここで働くラウラさんを。


厨房で働くラウラさん(三角巾、エプロン装備)
「ん、良く来たな。早く食券を渡せ」
「おい……この前も同じものを頼んだろう」
「ん? 色んな人を相手にしててよく覚えてるな、だと?」
「ふふん。当たり前だ。何せ私は出来る夫だからなっ!」

短いですが、とりあえずこんな感じで。
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