IS学園での物語 作:トッポの人
「お兄ちゃん、今日放課後にちょっと付き合って欲しいんだけど……」
「……構わないが何をするんだ?」
先にお昼を受け取った俺とシャルが先行して皆が座れるぐらいのテーブルを確保しようとした時だった。
義理の妹が放課後に何かしたいから付き合って欲しいとの事。というかそもそも俺の予定なんて訓練ぐらいなので何も問題はなかった。
『悲しいね……』
あれ、何か涙が出そう……。目にゴミでも入ったかな……。
『泣くなよロッズ』
泣いてねぇよ。
「あのね、僕の専用機の調整が終わるんだって。だからその瞬間を一緒にいて欲しいんだけど……」
「……なるほどな」
シャルは櫻井の名字になった際に国籍も日本に変わったため、今はフランスの代表候補生ではない。となれば今まで使っていたISは返す必要があった。
ただ専用機を持っていたレベルの元代表候補生を日本が放っておくはずもなく、即座にお誘いが来ていた。専用機も渡すとのお話付きで。タッグトーナメントの成績が良かったのもあるかもしれない。
「でも白式の二号機なんてよく貰えたよね」
「…………そうだな」
俺も知らなかったが、実は白式は二機あったらしい。スパロボOGシリーズのタイプLとRみたいだ。
一機は一夏が使っている単一仕様能力発現に重きを置いた特化機体。もう一機はデータ収集用兼一夏機の予備パーツとして不測の事態に用意していた通常機体。
そちらを譲り受けたというか、貰ったというか、何というか……。
『まぁ半ば脅しでしたねぇ』
そういうのも無理もない。その場に何故か俺も立ち会っていたが楯無さんの圧が半端ではなかった。
というのも大切な妹である簪の専用機が未完成だったのは突如として一夏が現れたため、そちらの開発を優先してしまったから。
それが理由で廻り廻って簪が一夏をあまりよく思ってなかったそうだ。たまに冷たい理由が分かった。
学生の俺としてもちょっとそれどうなのよ案件を引き出し、調整はこちらでやるから早く寄越しなさいと詰め寄る楯無さんを宥めながら交渉。
結果、以前話した俺の稼働データと二号機の稼働データを渡す代わりに直ぐ譲り受けた訳だ。
「……どんな機体になったんだ?」
「えへへー、内緒ー」
「……そうか」
訊ねればにっこりと笑って可愛らしく誤魔化してくる。今日も俺の妹が可愛い。たまにペットになっちゃうのはどうにかして欲しいけど。
そういえば束さんがくれると約束してくれた俺の専用機っていつ来るんだろ。
『むふふー。知りたいでしょー』
おお、ミコトちゃんその感じだと知ってるね。是非とも教えてください。
『えっと、かみんぐすーんですっ!!』
言ってきた割にあんまり分かってなかったのかい。でも元気よく言えたのでよし。
続々と皆が座ってきて最後に一夏と箒がテーブルが満席になった状況を見て箒が呟いた。
「ああ、今日は私か」
「どうかしたのか?」
「いや、何でもない。もうここは席が空いてないようだ。向こうに行こう」
うん、素晴らしく自然体だ。まるで演技とは思えないほどの完成度。未だ誘う時にやたらしどろもどろになる鈴とは大違いだ。
しかし、たまにしかない貴重なアピールの機会を忘れているようだが大丈夫か。
「何か鈴か箒と食べる機会が多い気がするけど気のせいか?」
「…………気のせいだろう」
「うーん……そうかなぁ……」
首を傾げながら箒と二人で離れた席に向かっていく。一応不規則に間を空けて鈴と交互にやっていたがさすがに気付いてきたか。
そろそろ次の手を考えておかなければならない。
「はるるーん、早くたべよーよー」
「……すまない。いただきます」
考え事をしていた俺を待っていたらしく、皆が今か今かと待ちかねていた。
漸く箸を進み、食事もそこそこに世間話が始まる。内容はさっきシャルと話していた事だ。事前に虚さんにも言っておかないと。
「……虚さん。今日シャルの専用機でお邪魔します」
「虚さんありがとうございますっ」
「いえいえ。いつもより騒いでるけど気にしないでね」
「……分かりました」
そういう虚さんには若干疲れた様子が見える。何かあったんだろうか。
トラブルを抜きにしても生徒会との両立をしっかりやっているのだ。疲れていても無理もない。
「しゃるるんおめでとー」
「うんっ。本音も簪もありがとうっ」
「ううん、困った時はお互い様だから気にしないで」
「は、春人さんどうされましたか?」
「…………気にするな」
はぁー……無理。そういうの好き……。
三人が手を取り合って喜びを分かち合う姿が眩しくて目頭を抑えてたらセシリアに心配されてしまった。
簪も自分の出来る事ならとプログラミングを手伝ったりしていたらしい。あとでお礼言わないと。
「お、お嬢様、大丈夫ですか?」
「簪ちゃんが、簪ちゃんがあんなに嬉しそうに……!」
横を見ると俺と同じく、いや過呼吸みたいになってる時点で俺より酷い症状が出ている楯無さんがいた。相変わらず重度な妹大好き病だ。
「はぁ、あんたの周り個性的過ぎない?」
「…………そうだな」
「こっち見て言わないでよ」
だってそう言ってる鈴もツンデレの化身なんだもの。まぁ最近あまり見せなくなったが、向こうにいる箒もそうなんだけど。
「……という訳で……かずは何がいいだろうか?」
「ならこういう……」
「ふむふむ……」
「で、それなんだけど……すればもっと良くなるぞ」
「なるほど……」
ふと気になって離れた二人へ意識を向けてみる。時折聞こえてくる内容から何かについて相談しているみたいで一夏の言っている事を必死にメモしていた。
うん、何か俺が想像していた甘酸っぱいサムシングではない気がする。
少なくとも鈴とはそんな雰囲気が出ているのに箒とはまるで主婦同士の会話のようだ。甘酸っぱさなんて欠片も感じない。
『一夏は甘酸っぱいの感じてるから大丈夫やで』
ほんまか工藤。それならいいんだけど……あとついででもう一個聞きたいから忌憚のない意見をくれると嬉しい。
『どったの?』
端から見てると俺って多数の美少女を侍らせてるとてつもないクズなのではないでしょうか。
『あ、気付いてたんだ』
泣けるぜ。
さて、放課後になれば約束通りシャルと共に整備室へ。その前に乗りながら調整するために着替えようと更衣室に行く事となった。
「…………何で俺も一緒なんだ」
「だって今日は僕に付き合ってくれるって言ったから……」
「そ、そうだな。付き合うって言ったからな。だから泣くな、な?」
そんなやり取りもあり、更衣室前のベンチで大人しく待つ事に。しかしたまたま周りに人がいないのもあって凄く静かだ。更衣室から衣擦れの音が聞こえてくるほどに。
「…………」
無言でイヤホンを装備して大音量で音楽を流した。余計な事は聞かず考えず、ただシャルを待つ事にする。
『――――♪』
「…………ゃん」
流れるアップテンポの音楽に合わせてミコトも歌う。こうして歌声を聴くのは久し振りな気がした。
実はミコトの歌声は意外と気に入ってたりする。上手いし、俺と趣味がほぼ完全に合致しているのもいい。たまに俺が知らない歌を歌うがそれも好きだった。
「…………ちゃん?」
釣られて俺も鼻歌を口ずさみつつ、足でリズムを取っていく。遅れてこのライブを楽しみ始めていた。
「…………いちゃん!」
『春人、さっきからシャルロットが呼んでるよ』
んあ? 着替え終わったのか?
歌を中断して言ってきたので更衣室の入り口に振り向くもそこにシャルの姿は見えない。
しかし、何かあるかもしれないから今度はちゃんと聞いてみようと思い、イヤホンを外したその時だった。
「お兄ちゃんっ!!」
「っ!?」
『エッッッ』
更衣室の扉を勢いよく開けて飛び出たのはスカートを穿いてない、ワイシャツ一枚だけというやたら扇情的な姿をしたシャルだった。
急いで顔を背けたが俺に詰め寄ってきたため、嫌でも視界に入ってくる。
「何でさっきから無視するの!?」
「そんな事よりはしたないから早く戻れ!」
「スーツだからはしたなくないもんっ!」
へ?
言われて恐る恐る見ると確かに足にはISスーツ用のサポーターが。
落ち着いて首元を見ればISスーツで覆われていた。ワイシャツの下もISスーツのようだ。最初から下に着ていたらしい。
「わ、分かったから。ちゃんと聞くからとりあえず早く戻れ」
「むー……!」
どちらにせよ今のシャルの格好は俺の精神衛生上、非常によろしくない。不満そうにしているが何とか更衣室に押し込んだ。
「……お兄ちゃん、聞こえる?」
「…………ああ」
溜め息を吐く暇もなく、即座に扉越しに声が掛けられる。応えれば小さく安堵したような吐息が聞こえてきた。
「良かった。嫌われたのかと思っちゃった」
「……なったばかりとはいえ家族を嫌う訳ないだろう」
「何年も一緒にいても嫌われる場合もあるんだよ」
つい最近までシャル自身が体験したのもあって重みがある言葉だ。
そう考えると悪い事をしてしまった。意図せずとはいえ無視した事も、今軽率に言ってしまった事も。言われてから気付くなんて本当に馬鹿だと思う。
「…………俺はお前を嫌ったりしない」
「お兄ちゃん?」
「……たとえお前が俺を嫌ったとしても、俺は嫌ったりしない」
だからそんな事にはならないとはっきり言おう。新しい家族が心配しないように。可愛い妹がもう不安にならないように。
「僕もお兄ちゃんを嫌ったりしないよ!」
「……そうか」
「うんっ」
暫くの沈黙のあと、ロッカーが閉まる音が聞こえる。
「お兄ちゃんっ!」
「……っと」
着替えが終わったのかと立ち上がれば扉が開くと同時にシャルが飛び込んできた。
何とか受け止められたがこれは危ない。下手をすれば俺だけじゃなく、シャルも怪我をしていたのかもしれないのだ。なので今も頬を緩める妹に少しだけ怒る事に。
「……シャル、危ないからやめろ」
「お兄ちゃん以外にはしないから大丈夫」
「…………それはそれでどうなんだ」
「僕はいいのっ!」
もう少し言おうとしたが、今の幸せオーラを振り撒くシャルには幾ら言っても聞きそうになかった。
「…………いい加減に離れてくれないか」
「やーだ」
右腕に抱き付いたままのシャルを引き連れて何とか整備室へ。ISスーツでやるのはやめて欲しい。
「だから何度も言ってるでしょうが!」
「……ん?」
「またやってる……」
無事到着した俺達をいきなり怒号が襲う。誰かが言い争っているようだ。しかもシャルの反応からして初めてではないのか。
「天才って自称してる割には随分物分かりが悪いな」
「自称じゃない、私はてぇんっさいだ!」
誰かと思えば片方はいつもお世話になってる藤尾先輩。そしてもう一人は男性の声だ。
男性といってもIS学園で限られているが一夏ではないし、勿論俺でもない。というか声からして年齢はもっと上のように感じる。
「ならこっちの言いたい事も分かるだろう?」
「いいや、分からないね!」
「おいおい……」
呆れたように呟く男性が何で揉めてるのかが遂に明かされる。
「ウサギと言ったら戦車だろう」
「ウサギと言ったら龍でしょうが!」
「…………何だあれは」
「ずっと言ってるんだけど僕にもさっぱりで……」
二人ともどういう連想でそうなったんだ。どっちにしてもウサギが一方的に狩られる姿しか思い付かない。
『ミコトちゃんがいいねしました』
いいねしちゃうんだ……。
「二人ともいらっしゃい」
「はるるんにしゃるるん、いらっしゃーい」
「……お邪魔してます」
「今日もよろしくお願いします」
喧騒な整備室の入口で二人立ち尽くしていると虚さんが歓迎してくれた。
布仏も歓迎してくれるんだが、いつものように背負ってもらおうと直ぐに俺の背後に回ってくる。裾も引っ張ってくるアピールも付けて。
「んー……」
「…………ほら」
「わーい!」
素直に背負えば不満そうな表情から直ぐご満悦なものに。
「もう……いつも本音がごめんなさい」
「……いえ、いつもお世話になってますので」
「お世話してますのでー」
「じ、自分で言っちゃうんだ」
「はぁ……」
俺の言葉に続いた布仏の言い分に二人が呆れる。俺も少し呆れたが言ってる事が事実なだけに何も言えなかった。
「……ところで誰か他に男性がいるんですか?」
「ああ、あれ変声器で声変えてるだけで話してるのは女性なのよ」
「…………何で変える必要あるんですか」
「さぁ……聞いてもいい声してるだろとしか言わないし」
確かにいい声ではあるけど。そういえば前にミコトが同じ事言ってた気がするな。その人の影響だったのか。
未だに聞こえてくる二人の怒声をBGMにシャルの新しい専用機の元に辿り着いた。
そこにはある一点を除いてオレンジ色に染められただけの白式が。色は前のシャルの専用機から引き継いだようだ。
「後ろが五月蝿いけど簡単に説明するわね。シャルロットちゃんが今まで使ってた仕様をそっくりそのまんま移したの」
虚さんが持っていた端末で見せられたデータにはラファールの時とのスペックが載っていた。第三世代との差か、ほぼ全てにおいて以前より上回っている。
搭載されている武装も日本製のものにはなったが、構成自体は変わらないようだ。
「……ところであの右肩にあるのは何ですか」
ただ一つ、右肩にある機体全長ほどの厳つい何かを除いて。
俺の疑問に横で一緒に見ていたシャルが話始めた。
「あれはパイルバンカーだよ」
えっ、パイルバンカーでかっ。何このIS、レグジオネータとでも戦おうとしてるの?
「取り回しは不便だけど威力は折り紙付きで、他にも特殊な機能があるの」
「…………特殊な機能?」
「先っぽから毒を出すんだってー」
「えっ」
背負っていた布仏からのんびりとしながらもやたら物騒な単語が聞こえてきた。思わず固まってしまう。
「といっても人体には無害だから安心して。精々目の前で出されたら視界が悪くなる程度だから」
「…………では何に対する毒なんですか?」
「ISのエネルギーに対する毒さ」
と、そこで口喧嘩を終えたらしい藤尾先輩が加わってきた。しかし、その表情は見るからに不満が溜まっている。
「直接、もしくは空間に散布してシールドエネルギーなり、エネルギー兵器なりがこの毒に触れれば食い尽くして無効化する……全く、毒なんて悪趣味だな」
どうやらこの毒は藤尾先輩が作った訳じゃないらしい。そもそも悪態を吐きまくっているから関わっていないのか?
「これね、さっきのいい声の人が作ったんだよー」
「……なるほど」
こちらの疑問に答えるように布仏が教えてくれた。さっきまで言い合っていた相手だからここまで嫌っているのか。余程馬が合わないらしい。
ところで――――
「……これ自分は感染しないんですか?」
「勿論するわよ」
「実際テストで何回か感染してエネルギーなくなっちゃったからね。あははー……」
その時を思い出してシャルが乾いた笑みを浮かべる。何事も器用にこなすシャルが何度も失敗するくらいだから相当難しいのだろう。慣れるのに時間が掛かりそうな武器だ。
さて、簡単にだが一通り説明が終わったところでシャルから恐ろしい提案をされてしまった。
「でね、お兄ちゃんに名前考えて欲しいんだけど……」
「…………俺が?」
「うん」
「…………ネーミングセンスなんかないぞ」
「でもお兄ちゃんに付けて欲しいな」
にっこりと可愛らしい顔でとんでもない事をお願いしてくるマイシスター。やっぱり俺の妹可愛い……可愛くない?
でもやばい、どうしよう。変な名前を付けたらこれから代表候補生として活躍する時後ろ指差されるなんてはめに。
『ほーらほらほら、春人くんどうしちゃうんですかー?』
何故かミコトから早く早くと急かされる。周りを見れば他の皆からもじっと見つめられる。その気はないんだろうが急かされているようにしか見えない。
待て待て待て。焦らせるんじゃないよ。
えっと機体の色がオレンジ……黄昏の魔弾……黄昏?
でも黄昏ってこれから夜になる時だしな。それならありきたりかもしれんがこちらにしよう。
「…………暁、でどうだ」
「暁?」
「……夜が明けてこれから明るくなる時を指す言葉だ」
これからシャルの未来も明るいものになりますようにと願いを込めて。
金ぴかじゃないし、ビーム反射出来ないけど。
「うん……うん! 暁にしよう!」
「じゃあその名前で登録しておくわね」
気に入ってもらえたみたいだけど、何か凄いあっさり決まっちゃっていいのかな。
さぁ、始まるザマスよ!
『行くでガンス!』
そこまでやり取りをすれば何処からともなく跳ねる音が聞こえてくる。といっても直ぐにその正体は判明するのだが。
「お、おお?」
「嫁のペットか」
皆の頭上を飛び越えてウサギさんがこちらに来たかと思えば、地面を滑りながら両方の前足を使ってスケッチブックを掲げる。
そこには『ふんがー!』と書かれていた。ミコト以外とコミュニケーションを取るにはこういう風にやるしかないのである。
しかし……。
『冷静に考えればあと一人足りなかったね……』
それな。
俺達の会話を聞いてか、ウサギさんは前足を使って器用にページをめくるとそこに書いてある文字を見せてきた。『白けるぜ』と書いてある。
それだけ見せるとウサギさんはまた何処かへ行ってしまった。何か下らない事で呼んですまない。
「なぁー、春人ー。またやろうぜー」
模擬戦をな。主語を言え。
まぁ暇していたのも理由がある。
シャルの機体の調整も大体終わって場所はアリーナに移った。射撃訓練になると俺の出番はもう的になるくらいしかない。
だから遠くから眺めているだけだったので、ウサギさんも呼んでさっきの事をやっていたらまた一夏が誘ってきた。俺に対して積極的過ぎる。箒か鈴にやってくれ。
「なぁー」
「…………分かった」
とはいえやる事もなかったし、断る理由もない。毎度の事で二人には悪いがまた相手になろう。
「よっしゃ! そんじゃあ早速……」
「……ただし今回はルールを追加しよう」
「お、何だ?」
一夏の逸る気持ちをどうにか抑えて話を進める。
「……俺達は戦ってると口汚くなるだろう」
「あー、んー、まぁ……そうだな」
思い当たる節は多々あるはずだ。男だからか、戦いでテンションが上がりすぎてお互い野郎とか口汚い事をよく言ってしまう。
ISは女性が乗るものなのだからそれではいけない。
「……だから今回は攻撃する時、相手を褒めよう。もし褒めないで攻撃したり、口汚く返したら負けだ」
「えぇ……」
「……これは戦っている最中にも他の事を考えられるようにするためでもある」
だったらいいな。
『願望じゃんよ』
えっ、嫌いだった?
『ちゅき』
「う、うーん……まぁ分かった」
ミコトと一夏からもどうにか同意を得たので始めるべく距離を取る。
「面白そうだからおねーさんが判定するわね」
「……お願いします」
俺達の話を聞いていた楯無さんが審判を務める事に。さすがに今回のは微妙なところも出てくるだろうから非常にありがたい存在だ。
お互い武器を呼び出すと一夏が叫ぶ。
「じゃあ俺から行くぜ!」
「……来い。第伍十戦術」
《Dual up!》
半分まで制限を解除すれば同時に一夏が飛び出した。スラスターに火が灯り、その速度を更に上げる。
「春人のぉ……!!」
刀を振り上げたところで若干溜めを作った。振り下ろすと共に褒め言葉を言うつもりか。
さて、正直何が飛び出すのか皆目検討もつかない。楽しみでもあるが怖くもある。一夏は褒めるところがたくさんあるから余計不安だ。
「色男ー!」
「嫌味か貴様ッッッ!!」
「ぐはぁー!?」
「『あっ』」
あっ。
まさか一夏に言われるなんて思ってもなかったからいつもの感じで普通に殴ってしまった。褒めてないし、口汚く返してしまったのでダブルパンチで負けだ。
き、気を取り直して次に行こう。
「この前食べたお前の弁当、本当に美味かった! 正直お前が女の子だったらって思ったくらいだ!」
「「「…………」」」
斬りかかった際に以前食べた弁当の感想を打ち明けると何故か鈴を除く皆から冷たい視線が向けられる。感想くらいいいじゃんよ。
「俺は学園に来てから十三回思った!」
「「「えっ」」」
『ほぼ週一で思われてて草』
えっ、何でだよ。女子力アピールなんてした事ないのに。
その後も何度かやったが全部負けた。というか色々知ってはいけない事を知ってしまった気がする。
次回は久し振りのウサギさん(人)の予定です。あとおりむー先生。