スランプなので東方projectのちょっとした二次創作を投稿します。
アイデアが湧いたら新しいシリーズを書くかも…?

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桃っておいしいのかー

 彼女、比那名居 天子は暇を持て余していた。天人であるが故、何不自由なく暮らしてきた。おかげで、今日も今日とて暇なのだ。

「あ~、暇ね~。でもまた異変起こそうにもこの前異変起こしたからあの赤白とスキマに目付けられてるし…」

 彼女はこの前、幻想郷と外を隔てる『博麗大結界』の要、博麗神社を地震により壊したのだ。おかげで散々な目に遭った挙句、神社の修理をさせられた。それも二回

「あ~、ホント暇ね!こんな時に限って衣久はいないし!」

 よほど暇なのだろう、手元の本を開いては閉じる、を繰り返していた。

「……いいわ、地上よ。地上で暇つぶしよ」

 こうやって暇を持て余した彼女が地上へ行くのは、日常茶飯事だ。天子は、いつものように緋想の剣を持って地上へと下りた。

 

                      (桃) (桃) (桃)

 

 地上――

 天子は何か暇を潰せそうなものを求めて彷徨っていた。

「何かいつもと違うものがあるといいんだけど……ん? 何あれ?」

 天子が空を飛んでいると、向こうの方から何か『黒い球体のようなもの』が近づいてきた。

 それは、今まで天人である天子が見てきた闇の中で最も“純粋な闇”であるというのが一目で分かった。

「ってちょっと! こっちに来てるじゃない! あ、でもなんか面白そうね」

 天子は悠々とその闇へと突っ込んでいった。そして、そのまま勢いよく頭から突っ込み……

「きゃあっ!」

「あぅ!」

 そして中にいた何者かと頭からぶつかった。周囲にいい音が響き、頭を押さえながら天子は闇から出てきた。

「いったいわねぇ……ってなんか落ちてるじゃない!?」

 なんと、天子とぶつかったせいか闇はどんどんと小さくなりながら下に落ちていった。さすがにバツが悪くなったのか、天子は急いで闇を追いかけた。すると、下に降りれば降りるほど闇は小さくなっていき、とうとう中から少女が現れた。

「ちょ、間に合え!」

 天子はなんとか地面すれすれで少女を受け止めた。急に緊張の糸が解け、そのまま地面に座り込む天子。その手の中には、先ほど受け止めた少女が目を回していた。

「ちょっと、あなた! 大丈夫!?」

 天子は横にそっと少女を寝かせ、肩をゆさゆさと揺すって起こそうとした。

 その際、少女の少し短いブロンドヘアーがさらさらと天子の右手に当たった。

「う、う~ん……甘いにおい……」

 少女はなんだか幸せそうな顔をして、天子の手を掴んだ。口の端からは少し涎が垂れている。天子は内心、助けなくてもよかったんじゃないか? と思いながら再度少女の肩をさらに揺すった。

「ん~? あなたは、食べられる人間?」

「私は人間じゃなくて天人よ。それに、私なんか食べてもおいしくないわよ」

 寝ぼけ眼で少女は天子の右手を握ったまま離さない。そして、そのまま口に入れ、顎が閉じていき、ブチブチと肉の引き裂く鈍い音が周囲に響いた。

「ん~……、ペっペっ、何これ! 毒じゃない」

 すると少女は、涙を目じりに浮かべながら急いで口から天子の手を吐き出した。見れば天子の右手からは、鮮血が指を伝って地面に滴っていた。

「ひ、酷い 何もそんなに露骨に嫌がらなくても……」

 少女も涙目だったが、天子も涙目だった。天人の肉は妖怪にとって毒であるという事を、二人は知らなかった。実際少女にいたっては咽ている。

「何? そんなにお腹へってるの?」

 天子は右手をさすりながら、少女に話しかけた。

 因みに右手の傷はもうほぼ治りかけていた。天人は治癒能力も高いのだ。少女は今までの顔から一転し、キラキラと目を輝かせながら大きくうなずいた。

「しょうがないわね、あなただけ特別よ?」

 そう言って天子は、帽子についていた桃をひとつむしり、少女の前に差し出した。少女は悠々と桃を取ろうと手を伸ばす。

「わはー! って、あぅ」

 すると、少女がいざ桃を取る寸前で天子は桃を遠ざけた。少女はかなり恨めしそうな目で天子を見上げた。

「取る前にせめて名前くらい教えなさい」

 天子はいたずらな笑みを浮かべ、桃を少女の頭上へ持っていった。少女は指を咥えながらも、視線は桃に釘付けだ。

「私はルーミア、妖怪よ。言ったんだから早く桃~!」

 そういって少女、ルーミアは今にも桃に飛びかかろうとしていた。天子は危なそうだったので、早々に桃を渡した。

ルーミアは桃を受け取るや否や、すぐさまかぶりついた。その様は貪るという言葉が似合うほどの勢いだ。

「あなたねぇ、もうちょっと落ち着いて食べなさいよ……そんなにがっつかなくても別に誰も取らないわよ」

 そうしている内にルーミアは桃を食べ終えた。

 しかし、ルーミアはまだ食べ足りないのか、食べ終わるとすぐさま天子の帽子に付いている残りの桃に視線を移した。

 天子は面白かったのか、また一つ、桃を帽子からむしり取り、それをルーミアに渡した。因みに天子の帽子についていた桃はそれで最後だ。

 それももちろんルーミアがすぐさま食べきってしまった。

「おいしかったのか~」

 そういってルーミアは口の周りに付いた桃の果汁を、服の袖でごしごしと拭きだした。

 それを見て天子は、苦笑いを浮かべながら普段から持ち歩くようにしていたハンカチをルーミアに差し出した。

「こらこら、服で拭いたら駄目じゃない。これ使いなさい」

「ありがとう~」

 ルーミアは天子からハンカチを受け取り、口の周りを拭いた。薄いピンク色で、桃のロゴが入ったきれいなハンカチからは、桃の香りがしてルーミアの食欲をそそったが、ルーミアは何とかおなかが鳴るのを堪えて口の周りを拭き終えた。

「ねぇ、この辺で何か面白いものってないかしら?」

 天子からしてみれば目の前にいるルーミアは恰好の遊び相手なのだが、それでも聞くのが天子といったところだろう。

「ん~、あなた」

「私?」

「そう、あなた」

 するとルーミアは、事もあろうか天子を指差した。この予想もしなかった回答の天子は驚いてしまった。

「面白い事を言うのね……いいわ、遊びましょう!」

 そういって天子はルーミアを片手で抱き上げると、もう片方の手で緋想の剣を取り出した。そして、ゆっくりと剣を構えると

「しっかり掴まってないと、落っこちるわよ?」

 地面へと突き刺した。そして、小さな揺れと共に天子がいる場所だけ凄まじい勢いで円柱状に地面が盛り上がり、天へと伸びていく。ルーミアはあまりの衝撃に、また意識を手放してしまった。

 

                      (桃) (桃) (桃)

 

「ほんと、かわいいわね……ほら、起きなさい」

 天子はルーミアの頬をぷにぷにと突きながら、話しかけて起こそうとしている。内心、これは癖になりそうだなんて考えながらひたすらに頬を突いた。

「う、う~ん……あれ?ここは?」

「私の家よ」

 なんと、天子はあろう事かルーミアを自宅へと持ってきてしまったのだ。

 本来ならば、天界に妖怪を連れてくる事はご法度であるが、前の一件から監視が緩く、侵入するのが容易になってしまったのだ。

「そーなのかー。何するの?」

 ルーミアには天界の掟など難しい事は分からない。彼女にとってそれほど重要な事ではないのだ。

 そんな事より、今のルーミアにとってこれから天子と遊ぶ事の方がよっぽど大切である。

「うふふ、今から考えるわ!」

「え~、決まるまで暇じゃない」

 天子はルーミアに、もう既に楽しくて仕方ないと言わんばかりに宣言した。

「何言ってるの、考えるのから楽しむのよ!」

 

おわり


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