更新の間が空いて申し訳ないです_(._.)_私の都合上、更新ペースは不定期になると思われます。こんなに伸びると思っていなかったので喜び半分、更新するのが怖いのが半分といったところです。
今見返すと感想欄でご指摘いただいた通り変なところがいっぱいありますが、完結までいってしまってから、修正できるところはできるだけ修正していく方針で進めようと考えています。勉強になります。
10代のガキんちょが書いているので見るに堪えない箇所もあるかと思いますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
閲覧数、お気に入り数、評価の数、感想、すべて励みになっています。ありがとうございます、頑張れます
次回からネット碁の話です☺
次の日。
「あかり、どうした?」
あかりはいつものように指導碁を打ってもらっていたが、やはりヒカルの目は誤魔化せなかったらしい。
「実は昨日ね、親に囲碁の棋士になりたいって言ったの」
あかりの様子を見ている限り、いい返事が貰えなかったことは、鈍いヒカルでも分かった。
「反対されたのか」
「うん」
応援してくれると思っていただけに、反対されたのはあかりにとってショックだった。
棋士は特殊な職業。そして、一生勝負の世界だ。両親が首を縦に振らないのも頷ける。ヒカル自身、もし自分の子どもが棋士になりたいと言い出したらきっと止めるだろう。“こっち”のあかりはきちんと親に伝えたのに対し、自分はいつも事後報告しかしてこなかったため、この件については口出しする権利はない。ただ一つ助言をするなら。
「そうだな、期限を付けてみたらどうだ?」
「期限?」
「例えば、いきなりプロ試験じゃなくてまずは院生から。それから、院生でいられるのは18歳までだから高校卒業までにプロになれなかったら諦めて別の道を進む」
期限があると、少しは説得力が増すのではないかとヒカルは考えた。
「そうだね、ありがとうヒカル」
「今日はもうやめだ!中途半端な気持ちでやっても、いい碁は打てないだろ?」
今日の指導碁はお開きとなった。
家に帰って、夕飯を食べ終わったころのこと。
「お父さん、お母さん、私はやっぱり囲碁の棋士になりたい」
「前も言ったけど、お母さんもお父さんも反対よ」
震える手を誤魔化すようにぎゅっと握りしめた。俯きそうになる顔をあげて、真っ直ぐ二人の顔を見る。
「プロの世界はすごく厳しいと思う。それでも、私は棋士になりたい!高校卒業までにプロになれなかったら諦めるから。まずは、プロを育てるためのところがあるからそこに入りたいの」
あかりの両親は、しばらくお互い顔を見合わせて小さく頷くと、あかりのほうを向いた。
「あかりがそこまで考えているのなら、応援しよう」
父の言葉に、あかりの目が輝く。
「母さんたちも、できることは協力するわ」
「ありがとう!私、頑張るね」
その日、あかりは安心して眠ることができた。
朝、すっきりした顔で自分の部屋に現れたあかりを見て、ヒカルはほっと胸を撫でおろした。
「ちゃんと言えたみたいだな」
「うん!ヒカルのおかげだよ」
プロへの夢を応援してもらえる。それは、あかりがようやくスタートラインに立つことが許されたことを意味する。
「んじゃ、これからプロ試験の前に院生試験に向けてやることは分かってるな?」
「もちろん!お願いします」
この日からあかりへの本格的な指導が始まった。
3月末の進藤家。“前回”はなかった出来事が起きていた。
「ヒカル、何か欲しいものない?」
「え?」
突然のことにヒカルは驚いた。
「ほら、あなた何もねだってきた試しがないでしょう。成績もいいし、今度の入学祝いも兼ねてプレゼント」
ヒカルの部屋は、漫画もなければゲームもない。碁盤と碁石があれば十分だった。叶うなら、今欲しいものは一つだけ。
「パソコン」
「いいわよ。お父さんにも相談してみるわ」
決して安価な品物ではないため、駄目元で言ってみたが快諾してくれた。こうしてヒカル用のパソコンが進藤家に来ることになった。“前回”より随分と早くネット碁ができそうである。届くのは入学式の日らしい。そして、いよいよ当日を迎える。
4月、葉瀬中入学式。
通学路の桜吹雪と、ウグイスの声が春を告げてくれる。桜は満開の時はもちろん綺麗だが、その散る時が一番綺麗なのだと、そう教えてくれた彼はもういない。“過去”の思い出の中にいた人物が、“現在”はいなかったものとして新しく書き換えられていく。その事実は佐為がいないまま過ごしてきたヒカルを、ひどく切ない気持ちにさせた。
あかりはヒカルに声をかけようとしたものの、躊躇ってしまった。桜の木を見つめるヒカルが今にも泣きだしそうな顔をしていたからだ。
(このまま桜の花びらと溶けて消えてしまいそう)
ありもしない不安を抱いてしまうぐらい、今のヒカルはひどく儚げな雰囲気を纏っていた。
しばらく見入っていたが、我に返りようやく声をかける。
「ヒカル」
ぼんやりと桜の木を眺めていると、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「よお、あかり」
思ったより普通の返事が返ってきたことにあかりは少し安心した。
「この桜の木に、何か思い出があるの?」
「ちょっとね。あかり、帰ろうか」
そう言ってヒカルは歩き出した。
「う、うん」
自分の言葉をとられてしまい、少し驚いたものの慌ててそのあとを追いかけた。新しい生活が始まる。