On your mark   作:夜紅

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更新遅くなりました(・_・;)
欲を言えば、ヒカあかにもっとくっついて欲しいけど怒られちゃうかな?

感想欄のヒカル源氏計画に笑いました( *´艸`)
更新、ゆっくりでもいいと言って頂けたので頑張ります!どうしても更新できなくなったら、プロットと最終話を投下します




奈瀬とあかり

今日はあかりにとって2度目の院生手合い。自分の秘密を打ち明けた後、この話は誰にも言わないで欲しいとヒカルに言われた。同時に、ヒカルがプロになりたがらない理由も知った。saiの存在を知ってほしかったから、ヒカルはネット碁をはじめた。プロになれば“sai”は“進藤ヒカル”になってしまう。

 

(saiのことをまた聞かれてしまうかもしれない)

話題を振られたとき、うまく誤魔化せるかも不安だ。緊張しつつ、入り口をくぐる。

「よお、藤崎」

「おはよう、和谷くん」

先ほどから警戒していた人物から一番に声をかけられるとは思っていなかったため、あかりは少し驚いてしまった。悲鳴をあげそうになったのは許してほしい。

「あかりちゃん、おはよー!」

和谷のとなりにいた女の子が挨拶をしてくれた。高校生ぐらいだろうか。太陽のような明るい笑顔に、こちらの表情も自然に緩むのが分かる。

「おはようございます」

「この間はゆっくり話せなかったから今日はいっぱい話したいな。私は奈瀬明日美!女子は少ないから嬉しいよ」

「よろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしく!あ、敬語じゃなくてもいいわよ」

堅苦しいのは嫌いだから、と言って奈瀬は優しく微笑んだ。

 

「はー、お腹空いた」

あかりは軽く伸びをした。午前中はこれで終了だ。満足できた碁もあるが、そうでない碁もある。帰ったらヒカルと検討だ。

「あかりちゃん、よかったら一緒にお昼食べに行かない?」

お昼はどうしようかと考えていると、奈瀬が声をかけてくれた。

「いいの?」

「もちろん!誰かと食べたほうがおいしいもの。あかりちゃんはハンバーガー好き?」

「うん!」

「よかった。それじゃあ、行こうか」

あかりは、もう一人姉が出来たような気がして嬉しくなった。

 

注文していたものが出来上がったので、2人で窓際の席に座った。

「そういえば、あかりちゃんはどうして碁を始めたの?ほら、同い年ぐらいで碁を打てる子って学校にあまり見かけないから」

いろいろな話をしているうちに、すっかり馴染んだ頃、碁を始めたきっかけの話になった。

「幼馴染が打っているのを見ていて、楽しそうだったから!後はその、対局している幼馴染がカッコよかったから」

最後の方は恥ずかしくて小声になってしまったが、奈瀬は聞き逃さなかったらしい。ニヤリと笑った。

「あかりちゃんはその子のこと、好きなんだ」

あかりの顔が真っ赤になる。奈瀬が追い打ちをかけるように尋ねる。

「それで、付き合ってるの?」

「ひ、ヒカルと付き合うなんてそんな!」

慌てて訂正しようとしても既に手遅れである。女子はどうしても恋バナが好きな生き物らしい。

 

その頃、ヒカルはいつも通りワールド囲碁ネットにログインしていた。待ち構えていたように来る対局の申し込みをすべて断る。

「ん?もしかして…」

画面をスクロールしていると、見覚えのある名前を見つけた。国は日本と表示されている。人違いでなければ緒方の可能性が高い。佐為との対局を強く望んでいたにも関わらず、打たせてやれたのはあの一回きりだ。この世界での面識はないので、sai過激派だった彼は、あの時のようにsaiと打たせろと詰め寄ることはないだろう。しばらく考えてヒカルは対局を申し込んだ。持ち時間はいつもより長い、2時間に設定して対局を申し込んだ。

 

緒方はじっとパソコンの画面を見つめていた。ネット碁にとにかく強いプレイヤーがいるという噂を聞いたためだ。プロ棋士がこぞって対局を申し込んだが、いまだに負けなしだという。棋譜を見てみるとかなりの打ち手であることがうかがえた。どこか秀策を感じさせるその棋風で、序盤は腰の据わった碁を。ところが対局が進むと予想外の一手を打ってくる。意味のないように思える一手も、必ず武器にしてくる。そのヨミの深さは底知れない。対局を重ねるごとにその強さは増しているように見える。それは、彼――もしかすると彼女かもしれない――がギリギリの勝負をしているのを見たことがないからだ。

 

これだけ強ければどこかのプロだろうと考えたが、どのプロ棋士の打ち方にも見覚えがない。チャットは返さない。名前だけが広まるばかりで、その正体は不明。日本人ということしか分かっていない。どこまで自分の碁が通用するのか分からないが、一度打ってみたいと思った。噂の人物の名前を探していると、対局の申し込みが来た。

「sai?まさか、本物なのか」

こんなに早く叶うとは思わなかった。相手の気が変わらないうちに、緒方は対局を承諾した。

 


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