土方さんがイメージ通りの土方さんで安心したような、物足りない様な
「まいったなこりゃ」
自身が壊した校舎の壁から無傷で出てきたライダーは呟いた。
そして、岸波と秋人を見て言う。
「正直言ってあのバーサーカーは規格外だ、セイバーと組んでなお分が悪い。今ならセイバーを囮にして比較的安全に離脱出来るが、どうするマスター?」
戦略というものを練れないライダーは本能でこの場は退却するべきだと悟っていた。
秋人の居る前で、念話ではなく普通に喋る当たりがライダーらしい。
しかし、岸波は秋人を一瞬だけ見つめ、目を瞑る。
その足は恐怖に震えているし、顔色も正直言ってあまり良くはない。
岸波だってこの場から逃げだしたいという気持ちは強いのだ。
それでも、開き直したその目には揺らぐことの無い意志が宿っていた。
「……ライダー」
「はいはいっと、分かってましたよ。なんとなくね」
やれやれと言った感じに肩を揺らした後、ライダーは気合を入れ直すかのように顔を叩く。
その時、バーサーカーが大太刀を空へと放つ。
その数は校舎を覆うほどに分裂し、セイバーどころかこちらも巻き込みかねない。
ライダーも魔力を高め。
「んじゃコイツに付き合ってもらうしか無いな、借りるぞアストルフォ、来い『この世ならざる幻馬』」
グリフォンと馬の間に生まれたヒポグリフ。
この度彼がライダーとして呼ばれた所以。
「マスター、とついでにそこの少年、乗れ!」
岸波が秋人の手を掴み無理矢理に乗せる。
空を覆う刀は既にこちらへと迫っていた。
「セイバー!」
セイバーに向かって真っ直ぐに進むヒポグリフの背から秋人は手を伸ばす、セイバーはそれを掴み、ヒポグリフに乗った。
「些か重量オーバーだが、行けるな相棒!」
ライダーの発破に応えるように嘶きが轟く。
そして、そのまま降り注ぐ剣に向かって急上昇を始めた。
「馬鹿が!」
自ら首をギロチンに差し出すに等しい愚行にバーサーカーの罵倒が飛ぶ。
「うおぉぉぉおおお!『この世ならざる幻馬』!」
そして、刀と魔獣が邂逅するその手前でライダー達の姿がこの世から消える。
「なっ!」
無数の白刃との交差を終えた後、現世に再び降臨する。
「なんだこれ、めちゃくちゃむずいぞ! あと一瞬遅れてれば二度と帰ってこれなかったんじゃないか!?」
「宝具の使い方よく知らなかったんかい!」
「いやだって借り物だし」
そもそも宝具の貸し借りをそんなに簡単にするなよというツッコミを岸波は飲み込んだ。
「ヒポグリフ、それが借り物ということはシャルルマーニュが誇る騎士達、そしてその馬鹿みたいな頑丈さ、ということは貴方は」
逆にその会話を聞いた秋人は、ライダーの正体に辿り着く。
「おや、まだ名乗ってなかったかな? その通り、俺はローランだよ」
ローラン。
シャルルマーニュ伝説に登場する聖騎士。
全ての騎士の元祖とすら言われる誇り高き男。
狂えるオルランド、では金剛石の如き皮膚を身にまとっていたとされる。
ローランの歌、では叔父に騙された形で他の十二勇士達と共に殺された英雄。
その正体にセイバーはピクッとだけ反応を示す。
「次元跳躍とはおもしれぇじゃねぇか、このまま空中戦と洒落込むかい?」
が、セイバーが何かを言うよりも先に、雲に乗ってヒポグリフと同じ高さまでやって来たバーサーカーが言う。
その手には既に先程の大太刀が握られている。
「雲に乗るサーヴァントと言えば、孫悟空!」
「それ神霊だから多分無理、それに孫悟空には角もないし、何より得物に如意棒を選ばない筈がない」
岸波の言葉を秋人が冷静に否定する。
そんなどこか抜けたやり取りをするマスターに向けてライダーが念話を飛ばす。
(マスター、いくら『この世ならざる幻馬』でも人を四人乗せての空中戦なんてやってられないぞ、かと言って逃亡は尚更に絶望的だ)
(分かってる、でも選択肢は一つ)
帰ってきたなお揺るぎない意思に、ライダーは笑う。
「あぁ、受けて立つさコイツも雲ごときに尻尾を巻いたとあってはプライドか傷付くだろう」
ヒポグリフが応えるよう鼻を鳴らす。
「シャルルマーニュ十二勇士筆頭騎士ローラン推して参る!」
「応さ、死力を尽くせ一秒でも長生きしたけりゃな!」
戦いは空中戦へと移行し、激しさを増して行く。
生き残こるため、もしくは捻り潰すために。
という訳で、ライダーの正体はローランでした。
当たっていた方には拍手を