穂群原学園から少しだけ離れた、ビルの屋上。
「こいつはたまげたなぁ」
獣の如きに荒々しく笑う少年の目に映っているのは、魔獣を駆りその顔に疲労を滲ませたライダーとマスター二人に迫る危機を紙一重で凌ぎ切る盾のセイバー。
そして、その二人を相手に圧倒的なまでに優位を保つ規格外のサーヴァントのぶつかり合いである。
このまま行けばバーサーカーの勝利までそう時間は掛からないだろう。
「……ランサー、貴方であればあの三人は妥当可能ですか?」
同じ光景を目にしたベンジャミンは自身のサーヴァントに問いかける。
「無理だな、親父ならともかく俺はまだあのランクまでの戦士ではない、あの角生やした兄ちゃんだけじゃねぇ、あの三人と真正面からやり合ってもどれ一つ勝ち目がない、そんなレベルだ」
思いのほか正直に帰ってきた返答に戸惑いながら、そうですか、とだけ返す。
元々彼女も彼にそこまでは求めていない。
全盛期に至ることなく死した英雄。
全盛期の姿で召喚される他の英雄との勝負は分が悪いのは当然だ。
相手に切り札を切らせるだけの実力があればいい。
もしくはマスターを殺せるだけの実力があればいい。
もっと言うのなら、彼女がマスターを殺すまでの間サーヴァントを足止め出来るだけでいい。
と、ベンジャミンは結論付けた。
「分かりました。それではバーサーカーがライダーとセイバーを屠ったのち仕掛けます。貴方はバーサーカーをその場に釘漬けにしてください、その間にワタシがバーサーカーのマスターを始末します」
そしてこれからのプランを立ちあげる。
しかし、ランサーは更に笑みを深くして三本の指を立てて言った。
「三つほど聞きてえ。一つ目、あくまで可能性の話だが足止めついでにバーサーカーを討ち取るのはOKか?」
先程の発言をひっくり返す一言にベンジャミンは眉をひそめるがノータイムで返す。
「勝ち目があるのなら構いません」
うんうん、と頷きながら指を一つおるランサー。
「んじゃ、二つ目。俺が足止めしている間にバーサーカーのマスターを倒す検討は付いているのか?」
「バーサーカーマスターの居場所は既に掴んであります、接敵から五分もあれば殺し切ることは可能かと」
ランサーは指をもう一つ折る。
「それじゃ最後の質問だ。マスター、『もしライダーとセイバーがバーサーカーに倒されなかったら』俺達はどう動く?」
その言葉と同時に乾いた音が響き渡った。
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「逃げるぞ、マスター」
自身の成果すら目にすることなく、主人を掴み離脱を開始するアーチャー。
彼が最も恐れるカウンタースナイプを警戒してのことである。
「えっ、ちょ、ぇぇぇええええ!?!?」
果たして、白き死神の招待状は誰の胸に届いたのか。
それは頭を下に自由落下するヴィクトリアすらまだ知らない。
ぶっちゃけ、ランサーは自己評価が低いですがセイバーとライダー相手なら勝ち目は充分あるほど強いです。