「怯むなッ!あの邪悪を生かしておく訳にはいかない」
三万もの兵士を引き連れた若き将軍は声を荒らげ檄を飛ばす。
されど、いくら彼が叫ぼうとも兵士の指揮は下がり戦線は崩壊へと向かう。
山の高低差による不利。
止むことのない豪雨。
人数はそれ程でもないが、一体が何人分もの力を持つ鬼達。
圧倒的なまでの人数差を持ちながら敗走は秒読みの段階まで来ていた。
(────つまらんな。英雄と期待されては居ても所詮は人か)
玉座から腰をあげることすらなく、退屈そうに■■■は欠伸を咬み殺す。
「くそ、お前等!剣を持たぬか!背を向けるな!ここで命を拾うて何になる!!あやつを討たんと平穏はないだろう!!握れ、剣を……握れよ」
もはや男の声は誰にも届かず蜘蛛の子を散らすように兵士達は敗走を始める。
諸悪を絶たねばやがて来る捕食を知っていながら一秒先の生存を選ぶ。
(そう、それが人間というものだ若造。貴様が持つそれは確かに気高い英雄の素質、されどそれを他の人間なんぞに期待するな。ただの人間はそこまで強くは無い)
倒すべき鬼よりも逃げ惑う仲間にこそその目を向ける若き将軍に■■■は、憐れみとも同情とも取れる顔を向ける。
「畜生!腰抜け共がぁ!畜生、畜生、ちくしょぉぉおおお!」
若き将軍の慟哭と涙は豪雨にかき消される。
圧倒的な敗北を受け入れることからこの英雄の物語は始まる。
そして■■■の役どころは当然決まっている。
彼を英雄として昇華するための。
彼の英雄譚として消化するための。
何処にでもいる敵役。
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「………………夢…………?」
沙条鮮花が目覚めたのは深き森に佇む洋館の一室だった。
「ったく、世話かけさせやがって。まぁ眉間を貫かれて生きてるのは驚いたがな、魔術刻印の蘇生機能ってやつか?」
痛む頭を声のした方に向けると、憮然とした顔の鬼がそこに居た。
その手には何故かミミズのような赤い物体が数匹握られている。
「まぁ、それでも即死級のダメージを致命傷に抑えるのが限界だったみたいで、結局テメーが死ぬのは時間の問題だった訳だがな、そのお陰で『顕明連』が発動可能だったのは幸いか」
早口での説明は鮮花には充分理解できるものであった。
つまりあの夜フェンスからバーサーカーの蹂躙を見て悦に入っていた鮮花を誰か(恐らくはアーチャー)が狙撃して瀕死の重体に陥った。
それを宝具を使って回復させてくれたのだろう。
そして生死の境をさまよっている時に見たアレは恐らく。
バーサーカーの生前の話。
「そう、それでセイバーとライダーは?」
「逃げられた、ついでにテメーを狙撃したサーヴァントも補足できなかった。文句があるか?」
「いえいいわ、バーサーカーさえ居ればサーヴァントがどれだけ居ても問題は無い。それよりも問題なのは私の防御じゃサーヴァントの攻撃には無意味だったってところかしら、自信はあったんだけどなぁ」
あの時彼女はバーサーカーを使役しながらも三重の結界によって身を守っていた。
だがそれは魔弾に紙障子よりも容易く貫通され彼女の命に食らいついた。
(最強のサーヴァントを連れているが故にマスターを狙うのは当然。分かってはいたけれど想像以上に面倒ね)
六騎纏めて相手にしてもバーサーカーは勝利を収める。
それは間違いない、されども一騎がバーサーカーを抑えて、一騎が鮮花を討てばサーヴァントは二騎で事足りる。
極論、マスターでさえも鮮花を殺せるものであれば単騎でも打倒は可能である。
当たり前といえば当たり前の事実だが頭で認識することと実体験として身体に刻むのは異なる。
沙条鮮花は同じ轍を二度踏む様な愚者ではない。
故に。
「ねぇ、バーサーカー?『貴方の能力ならアサシンの真似事も可能よね?』」
その台詞にバーサーカーは口角を上げた。
「やっと分かってきたじゃねーか『戦い』ってやつを」
そう言いながら手に握ったミミズを握りつぶした。
最強が最強のまま手段を選ぶことなく暗躍を始める。
それを止めることの出来る陣営は果たして?
ちなみに、アサシンの宝具は魔力消費すらコピーするので、繰丘椿では耐えきれず自壊します。
感想、ダメだしお待ちしております。