それはあまりにグロテスクな光景。
主張の激しい胸を持つ美少女のを飲み込むかの様に赤い物体達が履い回る。
ミミズのようなそれは少女の体内に入り込んでいく。
決して途絶えることなく何百、何千ものそれが少女に群がる。
「うーん、話がみえないなぁ。分かりやすく説明してよ『ロードエルメロイ先生』」
しかしながら、少女はそれに対して何の不快感も感じられない声音で話す。
そう、これは彼女自身の魔術。
血液をミミズの形で使役する、自己還元型の使い魔。
その柔軟性故に冬木のほぼ全てを監視可能なうえ緊急時の輸血としても使える優れた魔術であるが。
その情報を受け取るには一度彼女自身へと戻さなくてはならないという欠点がある。
情報のタイムロスを少しでも減らす為に今はフル稼働で生成と還元を繰り返しているのである。
そうして出来上がった地獄絵図の中で少女が問を投げたのはロードエルメロイ二世もといウェイバー・ベルベット。
ではない。
ロードエルメロイ二世を写し取ったアサシンである。
彼のロードが持つ観察眼を使い場の状況整理を行う目論見である。
血液ミミズの情報を少女が視覚情報に切り替え、それを共有する。
得た情報に対して、アサシンがサーヴァントの特性、真名、対策などを決める。
ランサー襲撃に失敗した彼女達が次の策として産んだホーメーション。
「ふむ、では分かり易い所から整理しよう」
アサシンは紫煙を燻らせながら話し始める。
「まずはセイバー陣営とライダー陣営について、恐らくは彼等の戦闘中に割って入ったバーサーカーとの激突時だけの共闘と見るべきだが、マスター同士の親和性の高さと正統派英霊同士ということで彼等が敵対関係に戻る可能性は極めて低い。そのまま同盟を組んだとすればバーサーカーが脱落したいま最も驚異的な勢力と言えるだろう」
どちらも高パラメータなサーヴァント二体を保有した陣営。
特にダメージが殆ど通らない身体を持ち大軍規模の宝具を振るうローランは危険な相手と言えるだろう。
「しかしながら、ことマスター狙いの暗殺に関しては不可能ではない。バーサーカーのマスターを撃ち抜いたアーチャー当たりならばマスター二人を撃ち抜いてから逃げ切ることも可能であろう」
「んー、まぁもともと私達にはマスター狙いの暗殺以外勝ち目がないしね。要するにアサシンがアーチャーをコピーすればその二人を殺すことは可能ってことでしょ」
少女は首だけ気だるげにアサシンの方に向けながら話す。
「その通りだ椿。故にこの陣営にはなるべく目立って貰いたい。最高の形はランサーとキャスターを打倒してアーチャーがライダーとセイバーのマスターを撃ち殺し、アーチャーのマスターをアサシンが殺すという筋書きだが、まぁそう上手くは転ばないだろう」
そこら辺は臨機応変に変える必要があるだろう。と首に手を当てながらアサシンは言う。
「真名が分かってるのはライダーだけだったよね?他に分かったサーヴァントはいる?」
興味があると言うよりは間を持たせるために放った一言であるが、アサシンの返しに椿は驚愕することになる。
ロードエルメロイ二世の観察眼は彼女の想定を超えていた。
「『推測でいいのなら全てのクラスの真名を把握している』がどれから聞きたい?」
ポカンとした表情を一瞬だけ浮かべた椿だったがスグに切り替える。
「えっ?ホント?」
「本当だ、むしろ今回のサーヴァントは変化球もない分かり易い部類だぞ、まぁアサシンの宝具の特性ありきではあるんだがね」
眉間の皺をグリグリと伸ばしながらアサシンは言った。
「サーヴァントの真名は貴重な情報だ。これを掴み取った我々のリードはかなりのものであるだろう。それで、どのクラスから説明すればいい?」
「バーサーカー!」
迷いなく椿は答えた。
理由は恐らくもう脱落したサーヴァントだからだろう。
「承知した。バーサーカーの真名、それッ────」
アサシンがバーサーカーの真名を語ろうとしたその瞬間。
胸から黄金の太刀が生えた。
「オイオイ、他人の名前を言いふらそうとしてんじゃねーよ」
そう、彼等は把握していなかった。
バーサーカー陣営が敗退していなかったことを。
バーサーカーが解析程度の低いミミズからの隠蔽くらいなら可能なことを。
更にいえばそこから逆探知でこの拠点に辿り着くことすらも。
「まぁ、死人に口なし。悪く思うなや」
黄金の達をアサシンから引き抜いて、そのままミミズ塗れの少女を引き裂いた。
という訳でアサシン陣営敗退です。
これからバッタバタ脱落する奴らが増えて行く……