ここで、とある魔術師について説明しよう。
五百年の妄執を拭えぬ亡霊の如き魔術師の話を。
かつては大願と共に男は在った。
だが流れ去った時間が男の全てを異形へと変じた。
姿も、魂も、そしてその願いさえも。
そして、そんな男が我が才でも届かぬ見果てぬ夢、されど我超える者無し、なればと産み落とした術式の一つ。
即ち、肉体の乗っ取り。
自身の魂を核に、肉体だけを入れ替える外道の延命。
繰り返す度に記憶は擦り切れ、魂は劣化していく。
遥か夢見た理想を忘れ、ただ終りを否定するだけの妄執。
そんな術式に目を付けてしてしまった一族がいる。
繰丘家。
間桐の生み出した神秘を解析し解体し改造した者。
そして、その成果全てを幼き娘に押し付けた者。
本人達はそれこそが愛だと疑う余地も無く、全てを冒涜する妄執を娘へと擦り込んだ。
そう、繰丘椿が死んだ瞬間に発動する術式、『その意義だけを見失わぬ妄執を自身を殺した相手にに押し付ける』呪い。
繰丘椿が滅んでも、その先をつなぐものが居ればいいという歪んだ大願。
両断された首から迸る血液が、炎の渦の如きにバーサーカーへとひた走る。
流石のバーサーカーも迫り来る血液を両断することは叶わず、その身を真紅に染め上げる。
「ちっ、現代の魔術師如きがこのレベルの呪詛を行使するとはな」
思考が染まる。
生き残りたい、存続したい、終わりたくない、終焉はまだ早い、此処では終わらぬ、生き続けたい、まだ、まだまだまだまだまだ......終わるならば紡げ、代わりに背負え、その身を差し出せ、終わらぬ、終わらせぬ、決して認めぬ。
「ッ舐めんなよ、この程度の呪詛、散々食らい散らかして飽き飽きしてんだよ! 俺を呪いたきゃ鈴鹿でも連れてくんだなぁ!」
染まった思考がクリアされて行く。
五百年以上の妄執が浄化されて行く。
そう、キャスタークラスとしても申し分ない適性を持つバーサーカーにはこの程度の呪いは通用しない。
「『せいぜい意識を裂く程度が関の山か?』あぁ、それこそがボクが待ち侘びていた瞬間だよバーサーカー!」
その台詞と共に突如として八本の柱がバーサーカーの周りへと突き刺さる。
「全てはボクの思うまま、これぞ大軍師の究極陣地!『石兵八陣』破ってみせるがいい、まぁキミには無理だろうけどね」
そのまま八つの柱は互いが共鳴するように震え、暗雲に包まれる。
その中は高度な迷宮と化し、バーサーカーを封じ込める。
「さて、トドメといこうか、ランサー?」
「ヘイヘイっと、全力で行くぜぇ『決して届かぬその投擲!』」
かつて、とある英雄が誇る投擲に対して無敵を確信した盾すら打ち破った一撃の模倣が駆ける。
空を裂き、その数は二十程に分裂し炸裂した。
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