誤ってしまい申しわけございません
ねぎごと――神仏に祈願する事柄。願い事。
一、 祈ぎごと
「やぁ、
「んの名前で呼ぶんじゃねーつうの」
「だがお前の氷は解けたんだろ? カリムから聞いたぞ」
「あのブサイク野郎ォ……で、わざわざこのような人間をシャーマンキング様のコミューンに連れてきて何させるつもりだよ」
「僕のためのお使い」
「言っとくが開発事業やらを全て壊せって話しはなしな」
「っふ。僕は地球にはびこる
ホロホロはぎりぎり歯を鳴らし目の前の、さらさらした漆黒な長髪で女顔な美形少年を睨む。
一人と一柱が相対する場所は辺りいちめん真っ白な世界であり静寂に包まれているが、ホロホロが召還されてから少し賑やかになる。
「何で俺なんだよ」
「キミが一番暇してるだろ?」
「お前は俺より暇だけどな」
言うや否やホロホロの顎に隕石が衝突ッ、今の彼でなければ簡単に避けられるのだが。
「ハオぉぉお、これ人にもの頼む態度かよ……!」
「これから僕が言うことをよく聞け。お使いといったがそこには人間たちが云う、いわゆる化け物が存在し、…………まぁ、迷惑をかけているんだ」
「
褒めるなよ、照れるじゃないかとハオは微笑み、ハオが左手の人差し指だけをたたしホロホロの額にあてて小さくつぶやき始める。かろうじて聞き取れるけれども聞いたことが無い言葉たちだった。
ホロホロは腕を自身の胸の前にはこび組み始める。
時は移ろい続ける。耳に聞こえてくるのはやはり、ハオの何かしらのささやくような詠唱。
突如として、ホロホロにビジョンが浮かんだ。一人の少女がバカデカい生物、否、怪獣と双斧で戦っていた。普段は活気あっただろう可愛げな顔は睨みを利かせ、頬は空気に触れ、少し黒っぽく変色した切り傷に水ぶくれ。勝負服はところどころ破かれ、血は流れてゆきゆっくりと、時間をかけてゆっくりと、赤く、染めゆく。細いがしっかりとした瑞々しい小麦肌なる脚にはアオイ痣ができ、土埃を体に被り、ちいさなちいさなコンクリートの破片がいたる傷グチから中身に触れてい、肩で呼吸するだけでいたいけな少女の肉へ侵入。怪物から遠ざかろうと足は震えて下がりそうになるが、なんとかして後だけには下がるまいっ! 純白な歯を思う存分にかっ、と見せつける少女を、碓氷ホロケウは視ていた。
ハオが確認を取りホロホロは、ああと一言発して消えた。
「ホロホロ 碓氷ホロケウよ
星祭りのゆめ紡ぐ
朝が歌は肴
小金の大地を結ばん
汝
……さて、お前らのほうは枯れるを恐れず咲くだけか……………」
コミューンには誰もいない。
樹海化は、少し解けていた。
「っくっそーこれじゃカッコつかん」
目の前で蔑んでくる一体のバーッテクッスを相手に三ノ輪銀はぼやく。バーテックスのペースに呑まれないために場違いなことを言ってみた。
雑音が消えて視野は広くなった。やっぱやってみるもんだなと新たな発見をする。
敵は他に二体いるが暫らくは下でお昼寝中である。一体だけでいい、今は一体だけでも撃退出来れば善い。斧を中段に構える。呼吸を落ち着かせ、全身の力を抜き、糞野郎の糞呼吸を見極め、合わせ、挫く。己は殺す斧だ考えるな感じるな、すると何かがきらめく。銀の持つ斧が熱を帯びて蒸気を噴き出し白銀に輝きだす、銀のまわりの空気が熱くなり、蝕んでいた破片どもが上空へと打ち放たれ、……斧には罅がはいっていく。風を切る韋駄天が怪物の首を狩りに飛びかかりバーテックスは一瞬にして消えた小娘を追い、見つけたかと思えば目前で頭を刎ねる構えが完遂されてい、バーテックスは今までナメ腐っていた
銀は叫んだ。満身創痍それがどうした怪物野郎、緩んだだって? これは
「お前に……!! あたしはっ!! にんげんさまのおお――気合いって、ヤツをさああっっッ――――」
衝撃波がこの瞬間生まれる。
上が騒がしいと思うも目の前の敵に全神経をもって集中する銀と、何故か泣きべそかきながら落下するホロホロが衝突したモノだ。
――にゃっぎっ!?
――イッ!?
三ノ輪銀とホロホロの意識が少し飛び、反動でバーテックスの視界から消える。死に直結する攻撃を二人は回避した。意識不明の機会を見逃してやるほどの寛容さをバーテックスは持ち合わせておらず、そして、二体のバーテックスが起き上がる。
三つの影が子ども二人を囲んでゆき三体は両手(?)を天へと挙げてためをつくる。先ほどまで紅く明るかった大空がだんだん闇を吸収していく。空に止まる白い鳥たちが黒いソレに吸い寄せられ縮まるにつれ細くなり、羽を空に舞いらせることなく散らす。
三ノ輪銀が起き上がり、白目をむき阿呆面した見知らぬホロホロを抱きかかえ十二分に逃げる。
視野に奴らがきっちり入るけれども身体は震え、置いてった斧を取りに往ゆけない。
――……バケモノはあそこにいるのにィィッ、ナニやられたんだ!!?
嘲うかのようなバーテックスの頭上にはでかく闇を凝縮した弾がイカヅチを帯びてい、銀の体が完全に停止した、しかし、睨んでいる。睨み続けることしかできなくて、ボロボロな己を叩くこともできなく、憎むべきものがあり過ぎて。――つ、――つ。緑におおわれた灰色のアスファルトが少しづつ濡れていく。
闇が静に迫ってくる。一つも残さず触れたものを歪ませ呑みこんでゆく。
闇に喰われる時が近づくにつれ、銀に弟の泣き声が届いた。己が体を戦わせてくれと願うが、指一本も動く気配がない。
死が頭によぎった瞬間――――ッ、こちらへ放たれた忌々しき砲弾が氷漬けになり、砕け散った。
「
雪花弁は舞う。
銀の瞳に映るホロホロ、少年の右の手に身体が青く頭が縦に長い小人(?)を乗せているホロホロを疑った。
「ワルイが、とっととひかねえと凍傷するぜ?」
三体の図体がビクッと震えたのち後退していきカベを壊していった。一体ずつ消えていく。
「おまえ、一体」
「ホロホロ、通りすがりのアイヌなシャーマンさっ」
バーテックスが壁を壊して撤退するなか、手すりを杖と見なし地に足をつけていた銀がくずれたが、ホロホロが翔んできたので事なきをえる。銀を、ホロホロは肩を貸してやり、戦斧を拾いにゆこうとすると短い悲鳴が聞こえる。足を止め歩道の手すりへとすぐさま切り替えす。たぱん、たぱん、背中を叩くも向きを変えない。整われた小さな口がおもむろに開いたり閉じたりし、力強い痛ましげな
唸りながら瓜ざね顔をぐっと近づけると、銀は、どこかひんやりする心地よさを感じた。
眠ってはいけないのに、ホロホロに体を預けるのを許してしまう。
「病院のとこさ行くから、休めよ」
――しょうがないなぁ、そうさとしているかの微笑みを向けられてしまえば痛みを忘るるために意識を手放してもよいかも、と暗い水面下から浮かびあがる。銀は従う。
橋の柵まで来た。
銀の負担にならないように抱き方を変えホロホロは空を飛翔した。久々に高く飛んだ彼は目を輝かせたまま、かるく息をつく。
「ころっ……ゥ゛、オーバーソウル
西の空は茜の色。
「
スノーボードから雪を放出して滑り降りる。雪の抵抗が落下速度を減速する役割をはたしていた。ホロホロに抱かれている銀は汗ばんだ髪を大きく揺らしながらぐっすり眠っている。
波うつ海にぱしゃんと音はたたなかった。海に着いたのは青い巨人だったからだ。
「オーバーソウルS・O・R」
SORは掌に二人を乗せ浜まで泳ぐ。ホロホロは自身を盾にし銀を風からかばう。
しかし銀の友達であり同じ勇者の鷲尾須美と乃木園子とすれ違いになってしまう。
しばらく砂浜に立っていたホロホロは道路に出る。横を見やるとあの橋に多くの警察やら消防団やらが集まっていく。それとは対照的にこの場所は閑である。
車道に向かって親指をたてると運よく一台の車が走ってくるも通りすぎる。次にまた現れるが通りすぎる。そして次は高級車が通りすぎていったホロホロが肩越しにチラと見やれば、ギンッといきなり止まった。車は一生懸命走りだそうとするけれどもこの主人はドアに凹みができていることを知らない。車の前にホロホロがヘアバンドを深くしながらおどりでる。
主人は少年とにらめっこを強いられてしまう。ごくり唾飲む時間も無いままに少女と少年を乗せる。
「お前、いいモン持ってるのに運転下手だな」
「うっ、うっさいよ君ぃい!」
静かにしなと少ししめっている銀を看ながら言いやった。銀の前に青い小人が浮かんでいる。
存外、病院はすぐに診てくれた。しばらくいろいろすべきことがあり時間がかかるらしいから一人で病院や周辺を巡り始める。あの青い小人を連れずに銀の側にいるよう頼んでいる。S・O・Rは名の通りありとあらゆる水の力を持つ精霊であり応用することで、日本神話にみられるイザナギの禊のように穢れを祓え、かつ怪我を治せるようになる。ホロホロはさらに治癒力を高めるためお手製の儀礼用具にS・O・Rをオーバーソウル――霊を物体に憑依そして霊の力をこの世に具現化――したのだった。
包帯に巻かれた頭をぽりぽりかく。
「あいつ頭かてぇんだよ」
ホロホロも石頭に自信があるのだけれども前の世ではあんなに危険な頭の持ち主はいなかったはず。だが、あぶねぇー頭のヤツはたくさんいた。この世界でも命がすり減る経験はしたくないと思ったからなのか歩くのをやめて、緑の背もたれ椅子に深々だらんともたれかかる。
周りを見渡すも何も視得無い。
なにも手を施していない病院にはさまざまな死者の霊や生き霊が躍り遊んでいたり誰か呪っている。お祓いされている病院であれば少なくとも残りかすが漂い、浮遊霊も寄ってこない。ここはさきの二つに当てはまらず、浜にあがったときもカムイたちの霊力を借り銀の痛みをやわらげようと試みるもカムイたちは顕れなかった。ただ、あのバーテックスに驚き逃げたのだろう思っていたものの、全く逢わないとは不可解。
未来王との初対面より肝冷えるっつうの
ここまで気味が悪いと感じるのはシャーマンをやっている彼でもそうそう無かったことである。
にしても病院のいたる部屋に、神棚が在るんだな。んまぁ、通院したことなんて指五本で足りるしな。
そろそろ戻るか、と言って探索をやめた。
視界に入ってくるものがぼやけている。三度ほどまばたきをしてみればよく見える。白い天井、硝子の花瓶、季節外れでおかしな紋様のスノーボード、筒を両手に嵌める青い小人、腕のかさぶた、風にたなびく日光に、耳をすませば波の音とそよ風が銀の側にいる。
深く蒲団をかぶり意識を手ばなしていく、というも土台無理な話であり無視することなぞ誰も出来ないだろう。目と目が合う。
がらりとドアが開かれた。
「お? 気分どうだよ」
「あのときの……、アレ? 痛み、ない。お前ら何した」
「治療を手伝わしてもらった」
「ふぅうん、その青いの何?」
「ちっちぇえのは
「今日が初めて、スピリットなんちゃらとラマがみててくれたんだ……ありがと」
銀が青い精霊をなぜる。
撫でるのをやめ口を覆う。
「まだ病み上がり、子供の薬は睡眠だぞ」
微笑みながら目をこすりもぞもぞうなずいた、心地よい寝いきがつたわってくる。
精霊が視えるのにこういう体験ははじめてとはますます頭がねじれてきた。たしかに、霊能力がある者でも神仏や霊との波長が合わなければ一生出逢えない
なんも異常は無し。俺のハラは異常あり
「まず食わねばなんとかなるもんもなんともならねっ。っし! 香川県ってなにうめぇんかなっ」
音符である。
遅すぎる昼食を食べることはなかった。財布にはいっていたのは千円と『千年魔京、千年の都、僕がシャーマンキングになるまで千年。』と書かれたかみきれのみで、これらを見てホロホロは食べる気が失せたのだった。銀行のカードはというと彼が住む予定の家にあるらしいが病院からは遠すぎる。
「千がどうしたんだよ……!! あいつ前よりましてめんどくさい」
銀の側で愚痴る。
すると銀が目覚める。
「んま? ずっと居てくれたの?」
「起こしたか。すまん」
「どれくらい寝てた」
「まだ今日の夜だ。あとよかったな、病院に空き部屋あってよ」
「………………よくない! あいつらが、まだあそこに。まってっる……!!! いかなきゃ」
「って、ヴぉい゛ィ」
ホロホロが押さえつけようとするも力任せに銀は抜け出そうとした。ベッドは軋み揺れ動く。
しばし、格闘が続く。
「は な し て !」
「ッうおっ」
目の前の邪魔な阿呆ヅラを押し返し病室から走り出した。ホロホロがころげるもすぐさま後を追う。
二人は夜の、病院の外に出る。逃げる銀であったが車止めブロックに足をもっていかれてしまった。ホロホロが跳び出し、銀の前まで腕を伸ばしてクッションになるよう一緒に倒れる。ごつっとヤな音が、腕の中でもがき息を切らした銀の耳を刺激す。
「おま――」
「ったく。慌てんなよ。逃げなくても一緒に行くつもりだったんだぞ、今から」
「マジ……。ごめん、て、おい! 頭から血が」
「気にすんな。時期になおる。ま、まずは病院に謝りに行くか。それからだ」
こっぴどくしかられた後、夜中に二人はこっそり脱け出しコンビニで腹のたしなるものを探っていた。
――あのさ、と銀が碓氷ホロケウに質問を投げた。
「ホロケウ、は勇者なのか。バーテックスを下がらせたし、氷がばぁアんって出て、精霊つかって治すし」
「勇者ねぇ。ふむ」
ホロホロが銀から飲み物と軽食を受けとりレジに出した。千円が減って還ってくる。
「……答えるが、こっちからもいいか」
「ん」
「その勇者ってのは幽霊や精霊、神を使役しばーてっくす(?)と面と向かうのか? 銀ちゃんの斧にばかでかい力を感じたんだけど」
「神様の力はつかってる。神樹様っていう神さま。わたしら勇者は神樹様をまもるために勇者になって、神樹様から力をもらって、いろいろしてる」
「ならオーバーソウルと同じシステムっぽい、か。……なぁあと一つ、さっきの斧だせる?」
「ちょっと待って。……………………アレ? ごめん、無理っぽい」
「ありがと。じゃ次俺が答える番。俺はシャーマンで、まぁ分かるだろ?」
「神さまをとらんす(?)して占うってゆうー」
「んだ。まとめりゃぁ俺たち呼び名が違うだけで中身はおんなじか」
話しはそれで終わった。銀はホロホロがどうやって勇者しか動けず、勇者しかいないあの場に入ってきたのか、なぜ動けたのかを訊くより、それより遙かに確かめたいことがあった。
黙り歩いているうちに着いた。三ノ輪家である。
銀はふりかえる。
「ありがと、ホロケウ」
「ホロホロだ。んじゃまた明日」
手を振る。
――ただいまあ。
無用心にも鍵がかかっていなかった。それはそうだ愛娘が行方知らずとなっているのだ、ドア開ければ入ってこれるようにし大人は大事な子どもを探しにいっている。
叱られるだろう思いながらも銀の足は軽かった。
涙は零れないけれどもどんな顔していればよいかがわからない。
もう一度、大きな声で
「ただいまーー、? おーい、なんでチェーンかけてんのさぁ」
すると家の奥からとたとた走る音が聞こえてくる。とたん、音は止まる。
「このよふけに誰ですか」
「いや。そういうきみこそ誰」
「三ノ輪の子どもですけど」
あのさーと眉をひそめる。
「三ノ輪家の長女やってきたけどキミみたいな妹見たことないんだけど。これはあれかい、新手のお仕置きみたいなもん? だったらすごうくタチ悪いんだけど」
「どっちが」
夜中の、親がまだ帰ってきていない家の目の前で、〈三ノ輪家の長女〉を名のる女の子は意味不明なことをしゃべる。
居間から悲鳴が聴こえる。衛星放送のとある検証番組のゲストであろう。下の子が今それを観ているうちに追い出さねば、三ノ輪の女の子はせっぱ詰まる。
二人が少し黙った。
「ねぇ!! はやくかえってよ!! いつまでいるの!?」
「し、閉めるなっ」
押され、引かれ、押され、引かれ、ドアは鳴る。ぎりぎり、ぎりぎり。
「だいたい、そっちこそ誰よ! あたしはぎん、銀杏の銀だっ名乗った!?」
「いやっ!」
また新たな人の気配が近づく。
「ねーさん、何してるん」
「きちゃダメっ! きたら呪われる」
「さっきから黙ってりゃ! お化けか! あんた、いい加減にさあッッ」
「ッヒ……」
幼児の女の子は泣いた。そして部屋に戻る。
「なんなのさぁああっ」
「ちょっ! あぶなっ!!」
三ノ輪の少女は下駄箱の棚の上に置いてあったナタを掴み、振り下ろす!
「ぎん! 銀色の銀だよぉお もうくるなああああ!!!!」
三ノ輪家の家のドアが閉じられた。
体がだらりとなった。二歩下がり段差であったことを忘れていて尻もちをつく。尻もちをついている少女の瞳孔は一点をみつめない、時を置かずに体を起こすものの首から上は起き上がれていない。起こすなんて、本当は面倒くさいのだけれども邪魔になってしまうし自分はまだ病み上がりなのであり聞き間違いなんだろう、全くここまでしなくても反省(?)しているのに、なんて思いながらか細い笑いが口からもれる。
三ノ輪家の門をたたいていた、髪をおろしていた少女がインターホンを鳴らす。先ほどの少女銀がこれに応じる。
「……親は、弟二人いるだろ」
『そこらへんにみんなの名前の表札があるよ』
「…………、
『あるの。あなたの家と勘違いしないで、うちはうち、あなたはあなた』
銀は、家の外で佇む自分と同じなを名乗る少女にしびれをきらしたのだろう助け船の様なものを渡す。
『そろそろママが来る時間だから聞けば?』
スクリーンに映る少女がぴくっと揺れる。そのまま顔をこちらに向けるようなそぶりを見せたので、銀がインターホンの電源を切った。
おい、お~い~~。どーしたー。家を跨げなかった少女はインターホンに向かった。切られたことに気付いていないのだ。――否、である。青い息がたくさん出てしまう。
ぴかっ――後が光るも背中には当たらない。振り向けば女性がこっちに向かい歩いてきた。
「きみ、どこからきたの?」
きみはくびをふる。ふって家をゆびさす。
女性がその先を追えば表札だった。
「だれに用事があるの? 銀? プリントかなんか届けにきてくれたのならありがとう。ご両親、見えなかったけど……、もしかして一人で来たの? だーめっ。ちゃんと言わなきゃ! んイヤまて」
――一人でよこすなんてどうかしてる、つぶやきがきみにはしっかり刻み込まれた。銀の母らしき人は車に戻った。
「お家どこ? 連れてってあげるよ」
きみはひょうさつをみてしまったないないないしっているおもいびとのなまえがみつからないまってまってっしっているなまえがあったぎんだぎんだぜぎんなんだよだぎんだけだったほおをつたういわかんをかんじてしまうにみだがきみからながれてゆくちがうそれじゃないんだっっさけ
べなかった
なぜかをあたまをかかえむしるようにかみをにぎりおえつをはきつづけながらかんがえるきみはしらないぎんもそこにかかれているひとたちも
ばんっとびらがひらかれたぎんとぎんのいもうとさんだふたりはぐずりながらかあさんのなまえをいうきみがしらないははのなを
きみはいもうとさんとるなさんとぎんをみつめ
きみがはしりだす
銀と別れたあとホロケウは周辺をうろうろするハメになってしまった。銀を送るときは電車が動いていたのだが時間がたち終電を逃してしまう結果となる。
ハラの虫が煩い。
肩で洗濯物のようになっている精霊に助けを乞うもなんの対応も反応すらもしない。
ため息をつきうな
「叫び声つっても魂の叫び声だけどな」
冷や汗をたらしその主のもとへ駆けだす。
なりふり構わず走るきみを碓氷ホロケウは発見した。さらに走力を上げてゆき、走る少女の腕をしっかり掴んだ。
振りほどこうとしていたが、――銀と呼ばれたために掴まれたまま案山子のごとく止まる。
そして、碓氷ホロケウに
「んな面して!」
「お前なにしたんだよッ――――ホロケウぅうう!」
襟を人を殺すが如くに掴み、叫ぶ。顔が近いのでホロケウに唾がかかる。
なにかわたしはわるいことしたの。
叩き込まれた。碓氷ホロケウに拳が。