円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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うん。 コラボに費やした5時間分のデータが吹き飛んだショックでスランプ入ったんだ。

なので気を取り直すためにこちらを先に投下します。




第5次聖杯戦争+アルちゃんその5

「うぅ…頭痛い…」

 

 初日に待ち伏せをしたが、待ちぼうけをくらい今日まで寝込んでいたイリヤスフィール。

 アインツベルンの最高傑作を寝込むほどに蝕んだ病魔。それは、

 

「聖杯を手に入れたらインフルエンザなんて滅ぼしてやるんだから……」

 

 下手を打てば大の大人さえ命を危ぶませ、現在進行形で己を苛むウィルスへの怨嗟を吐き出しイリヤスフィールは呻く。

 発病当初に比べると症状は多少は落ち着いたが、未だ頭痛や喉の痛みに悩まされていたイリヤスフィールは、それ故に気付くのが致命的に遅れてしまった。

 

 ズズゥン…。

 

 アインツベルン城を震わせる振動に、イリヤスフィールは地震かと疑い、

 

「…? ッ!?」

 

 それが襲撃によるものだと理解したイリヤスフィールは、熱で茹で上がっていた頭が一瞬で冷えきるほどの衝撃に見舞われ、慌ててガウンを肩にフロアへと走り出す。

 そうして辿り着いたフロアは、品の良い豪奢な造りが嘘であったかのように破壊され、天井には大穴が空いて廃墟同然というほどの有様となっていた。

 

「セラッ!? リズっ!?」

 

 そんな破壊の痕跡の冷めやらぬ粉塵の中に、従者であるホムンクルスの二人が血塗れになって倒れているのに気付き悲鳴を上げるイリヤスフィールの意識を、無理矢理引きずり出すような傲慢な声が響く。

 

「ふんっ、我も鈍ったか?

 たかが人形如きを仕留め損なうとはな」

 

 そこに立っていたのは、短ランのような丈の短い黒い上着を着る金髪に赤い瞳の偉丈夫であった。

 そこに立っているだけで全てを圧してしまいそうなプレッシャーを感じたイリヤスフィールは、即座にそれがサーヴァントであると気付き、瞬時に己のサーヴァントを呼び付ける。

 

「バーサーカー!!」

 

 イリヤスフィールの呼び掛けに応じ、控えていたサーヴァントが現界。

 身の丈は3メートルは超えるだろう岩のような巨人が赤い光を宿す眼光を灯し、イリヤスフィールを守るように立ちはだかる。

 見る者に絶望を抱かせ、相対する事に死を確信するだろうその姿を目にした男にあったのは、しかし落胆の感情だった。

 

「フンッ。同じ半神の身と聞いていたが故に少々期待してやっていたが、よもや狂気に身を窶していようとは…。

 興醒めもいい所だ」

「っ!!」

 

 信頼するサーヴァントを見下され、ただでさえ体調不良で機嫌の悪かったイリヤスフィールの沸点はそこで限界を超えた。

 

「バーサーカー、殺して!!」

 

 その言葉にバーサーカーが野獣の如き咆哮を轟かせる。

 

「フッ、僅かながらにでも我を楽しませてみせろ」

 

 そして、蹂躙が始まった。

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

 バーサーカーと謎のサーヴァントが交戦を開始した一方、セイバーの先導でアインツベルン城へと向かっていた衛宮一行だったが、しかし後少しで城へと到着するというところでその歩みは止まっていた。

 

「妬ましい…」

 

 ギリギリと歯を軋ませ、射殺さんとばかりに殺意さえ籠もった鋭い眼光を向けるセイバー。

 

「…ふっ」

 

 そんな視線を受けながら、しかしその視線に対し勝ち誇った様子で笑みを向けるアルトリア。

 

「ふ、二人共こんな時に喧嘩なんて…」

 

 そんなのっぴきならない空気を醸す二人をなんとか宥めようとする士郎だが、しかしセイバーはその言葉に耳を傾けずアルトリアを睨む。

 そんな様子に呆れたと言いたげに凛は吐き捨てる。

 

「好きにやらせておけばいいじゃない」

「遠坂!」

 

 煽るような言い草に難色を示す士郎だが、そこにアーチャーさえ賛同の意を告げる。

 

「同感だな。

 事が事だけに後に引かせるべきではないだろう」

「お前まで…」

 

 どこか困惑の色を見せるアーチャーの言葉が皮切りになったように、セイバーが遂に口火を切った。

 

「なんで、なんで…」

 

 口から溢れるのは抑えきれない妬み。

 アーサー王(騎士王)としてではなく、アルトリア(騎士)として希い、しかし生前叶わなかった一つの願望。

 

 即ち

 

「なんでマルミアドワーズを宝具にしているんですか!!??」

 

 マルミアドワーズとは鍛冶神ウェルカヌスが打ち、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスに与えた神造兵器であり、アーサー王の物語の中において登場する数多の宝剣の1つである。

 幾多に並ぶアーサー王の名剣の中でもマルミアドワーズはアーサー王がいたく惚れ込んだ剣であり、物語の中ではマルミアドワーズを振るうためにエクスカリバーをガウェインに下賜した程だ。

 尤も、不老不死を与える星の聖剣をマルミアドワーズを持つのに邪魔だからで手放すような真似をマーリンが許すはずも無く、セイバーが動くより先にマルミアドワーズを処分することでセイバーの企みは潰えたのだった。

 ところが、アルトリアの時空では捨てる途中で畑に向かう途中の料理長に出くわし、その大きさから捨てるぐらいなら案山子代わりに畑に挿していいかと言われ、捨てる手間を面倒に思っていたマーリンが譲った事で失われずに済んだのだった。

 まるで駄々をこねる子供のようにそう喚くセイバーに対し、アルトリアは優越感に満ちた勝者の笑みを浮かべ嘯く。

 

「ふふっ、羨ましいですよねえ?」

 

 煽るように、いや、間違いなく煽っているとしか思えない態度でアルトリアは嘯く。

 あまりアルトリアらしく無い態度だが、同一存在故にセイバーの気持ちはよく分かるとアルトリアもつい調子に乗っているのだ。

 どうしてこんなふざけているような事に至ったのか、事の始まりはアインツベルン城での交渉に伴いアインツベルンの擁するサーヴァントを無力化させねばならなくなった際に備え、己の宝具について知っておいたほうが良いと判断したアルトリアの説明だった

 被害者であるセイバーも、自身が正規のサーヴァントになればエクスカリバー以外にも持ってこれるのかと、そう興味を持ったために聞きに回ったのが更に悪かった。

 

 そうして明かされたアルトリアが現在所持している宝具は5つ。

 

 マーリンに用意させた普段使い用のエクスカリバーのレプリカ。

 エクスカリバーと対を成す喪われた魔法の鞘。

 船にもなる魔法の盾。

 中に入れた食物を傷ませない壺と自在に温める皿。

 そして全身全霊を奮う際の真の切り札としてマルミアドワーズ。

 それらの品々にセイバーは嫉妬を大爆発させ、冒頭に至るのであった。

 

「本物のエクスカリバーはどうしたのですか!?」

「湖に返しましたよ。

 モードレッドに王位を譲ってしかも孫までいたのに、何時までも若い姿でいられますか」

「孫!!??」

 

 モードレッドに王位を譲ったのは聞いていたが、そのモードレッドに子供がいたとは聞いていなかったために顎が外れんばかりに驚愕するセイバーに、アルトリアは懐かしそうに語る。

 

「ええ。

 それはもう父と母の良い所だけを取り入れた様な溌溂としていながらも非常に聡明で、よくランスロットと真の祖父の座を決闘で争って、時折やり過ぎて本気で殺しかけたり殺されかけられたりしていましたね」

「えぇ…」

 

 楽しい想い出を懐かしむような表情に、だけど全くそぐわない物騒極まりない内容に士郎はちょっと引いてしまう。

 

「というより、ランスロットがもう片方の祖父ということはモードレッドの夫はギャラハッドなのか?」

「ええ。

 聖杯探索の旅の終わりにモードレッドが乗り込んできて、そこで二人共人間として生まれ直したそうです。

 子供が出来たのもその時の某が理由だと本人達は言ってましたね」

 

 つい口を開いてしまったアーチャーの問いにそう語るアルトリアに、とうとう黄昏れた様子で目を濁らせるセイバー。

 

「ギャラハッドが生還したことは喜ばしいですが、どうして私のブリテンは…」

「この件は完全に間が良かったとしか言えませんしね…」

 

 モードレッドが聖杯探索を知らなければギャラハッドが生還するはずも無かったので、こればかりは上げるも下げるも叶わないと困った様子でアルトリアは頬を掻く。

 

「そうではなく、百歩譲って他の至宝はともかく、なんで鞘を失っていないんですか!?」

「モルガンが盗み出す前に改心したからですよ。

 ブリテン解体にも彼女には助力してもらいましたし」

 

 血を分けた姉妹であり信頼する部下の母でありながら、しかし野望の果てにブリテンを滅ぼした怨敵でも足りない忌むべき相手さえ手を携えられたと聞かされ、セイバーは数えるのも馬鹿らしいぐらいになってきたヴォーティガーンの一撃超えのショックから崩れ落ちた。

 

「もはやご都合主義の領域じゃないですか…」

 

 頭から飛び跳ねた髪の一房を萎れさせながら涙の川を作るセイバーをアルトリア以外の三人は直視出来ず、口元を手で隠し顔を背ける。

 そうして再び暴食の権化と化すのかと内心で冷や汗を掻き始めた士郎だが、ふと、何か訝む様子のアルトリアに気付き問い掛ける。

 

「どうしたんだセイバー?」

「…先程から空気が微かに震えていませんか?」

「え?」

 

 真剣な顔でそう口にするアルトリアに、言いたいことを察したアーチャーが双剣を手に辺りを警戒し、同じく不穏な空気から先程までの意識を切り捨てセイバーも不可視の剣を両手に握る。

 

「戦闘が起きている…?」

「そう考えて然るべきだろう」

 

 腑抜けた空気を塗り変えるように情況の推察に入るアーチャーとセイバー。

 

「セイバー…ああ、アルトリアのほうだ。

 現在所在が分からないのはランサーとライダー、それとバーサーカーの三騎だったな?」

「ええ。

 アサシンはキャスターの所から動けないので間違いありません」

「ならば最悪を想定しておこう」

 

 その言葉に二人共「ええ」と応じ、マスターに警戒を促す。

 

「城まで一気に駆け抜けます。

 二人共、決して逸れないように」

 

 そう呼び掛け、アルトリア達はその行軍の速度を速めるのだった。




露骨なフラグの嵐に許さるのかと戦々恐々しつつ、次回はなんで誰もやんないかなとずっと見たかったネタまで行けたらいいなぁ…
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