横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

この思い付きとギャグの為にやっていたこのお話も100話を超え、
ここで一旦うち切らせていただきたく最終回とさせて頂きます。

ただ、またいつか再開するかもしれません。
一応の少しは構想はしておりますので、後書きでお知らせいたします。

皆さまありがとうございました。




横島、『救済の女神』の再来!!横浜事変10終結 完

広場の中央に降り立った横島は

(太い霊脈が通っているここならば……)

 

「おキヌちゃん、術を借りるよ」

横島は小さく呟く。

 

横島は一度大きく息を吸ってから、吐き出すと同時に強力な霊力を発し、

指を器用に動かし術式を紡ぎだしていき、一気に複数の術式を展開していく。

さらに、真言や言霊と言われる。言葉による術式を次々と紡ぎだす。

 

横島の周りには多数の術式が次々と展開していき、繋げ合わせ、または、融合させながら、巨大な術式を完成させていったのだ。

 

そして……

 

「我が横島忠夫の名において、霊脈を解放する!!」

そう言って地面を右手の平を押しつける。

 

横島を中心に地面に青白く光る幾何学模様が円状にどんどん拡がっていく。そして大凡半径30キロメートルの巨大な術式が完成したのだった!!

 

「はぁぁあ!!」

横島の気合の掛け声と共に術式は横島を中心としたドーム状をした特大の結界が完成し横浜近隣一帯を包み込んだのだ!!

 

そう横島は、絹が50年前に東京で発動させた通称『救済の女神』と呼ばれる術式――一般には戦略級魔法の一つとされている――をさらに防御力を強化した形で再現したのだ!!

 

絹の場合、ネクロマンサー(現代でいうと精神系魔法の最上位)としての素養と治癒師としての能力があったため、ここまでの術式を展開せずとも発動可能だった。しかも横島が昔生成した文珠3つを使ったため、広大な範囲で発動することが出来たのだ。横島には絹のような素養は無い、しかも現在文珠は使う事が出来ない状態だ。そんな事も意に返さず自力で一から術式を組み合わせ作り上げたのだ。膨大な数の術式を次々に短時間で作り上げ、接合または融合し、その術式群を器用にコントロールしてのけたのだ!!膨大な知識と技術の研磨と超人的な精神力があったからこそなせる技なのだ。

 

この結界の能力は敵兵を一気に戦闘不能まで落とすマインドダウン、負傷者の回復、一般市民や味方の精神回復。そして、横島独自に追加したのはサイキック・ソーサーにも勝る防御壁だ。

 

 

そして、レールガンによる艦砲射撃3射目が始まったが、全て、この横島の超絶結界に阻まれ、横浜に落ちる事は無かった。

 

結界範囲内にいたすべての敵兵士や敵工作員、そしてレールガンによる艦砲射撃の巻き添えにならないために、偽装船まで一時撤退していた大亜連合の部隊は、一気に精神状態をマイナスに落とされ攻撃の意思が無くなり、戦意は落ち、さらには、体を動かすことすらままならなくなり、最後には全くの行動不能となるのだった。

 

この騒乱で横浜各地で負傷した人達は徐々に傷が癒え、混乱や恐怖、不安と言った感情は取り除かれていった。

深雪も例外ではなく、横島に対しての恐怖も一時的ではあるが、今は払拭されていくのであった。

 

 

そして、一般市民の中で、50年前絹が発動した『救済の女神』を体験していた人が、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいた。

「救済の女神がまた、我々を守ってくれた」と……

 

そして、それが徐々に伝播していき、横浜の人々は口々にする。

『救済の女神』がまた自分たちを救ったと、そして救済の女神、氷室絹の後継者が現れたと!!

 

 

 

 

 

達也は高台で、狙撃銃型の特化型CADサード・アイを受け取る。

 

無線からは、風間少佐が

「大黒特尉、敵と艦砲射撃を行っている艦は現在砲撃の射線から少なくとも、4隻あると判断される。現在特定している艦である偽装タンカーは距離は南南西230㎞の位置だ。すでに、戦略級魔法マテリアル・バーストの使用許可も受けている。

今作戦は現行のサード・アイ運用において想定外の距離になるが理論上は可能だ。いけるか?」

達也に現状の報告と、最終確認を行った。

 

「問題ありません」

達也は自信を持って言う。

 

達也は横島が張っただろう凄まじい結界を感じながらも、サード・アイを受け取りに行き、高台から攻撃準備に入った。

既に、敵は4射目の艦砲射撃に入っていた。

 

 

達也は不思議と冷静さと高揚感が一体となった様な感覚に見舞われる。

横島が張った結界の影響を多分に受けているのかもしれないが……

 

 

そして、戦略級魔法マテリアル・バーストを発動するため作成された長距離微細精密照準補助機能を搭載した狙撃銃型の特化型CADサード・アイを南南西に向け、230㎞先のタンカーに偽装した戦艦級の艦を狙う。

 

隣にはサポートの為に藤林響子が居る。

「衛星映像、サード・アイ、リンク完了」

 

「マテリアル・バースト発動」

達也は偽装タンカーに照準を合わせ、そう言ってトリガーを引く。

 

 

戦略級魔法『マテリアル・バースト』

質量をエネルギーに分解する究極の分解魔法である。

均一な物資であれば、それを起点にして、質量を分解することによりエネルギーに変換。

その分解する物質の大きさにより、威力が上がっていくのだ。事実上、地球そのものを破壊する位の威力も出すことが可能なのだ。

射程距離に関しては、専用CADサード・アイに依存する。現状では100㎞前後を想定して調整されているが、成層圏プラットホームや衛星などともリンクしているため、理論上ではかなりの射程距離が期待される。

 

 

 

そして、今回、サード・アイの調整不十分ながら230㎞という。長距離発動を成功させたのだ!!

分解する起点にしたのは100gの金属、フレームをつなぎ合わせるための大きなボルトだ。その物質の質量を分解し爆発的なスピードでエネルギーに変換していき、破壊のエネルギーが膨れ上がる。

そして、偽装タンカーは凄まじいエネルギーに包まれ跡形もなく消滅したのだ!!

 

現在世界で正式に確認している。戦略級魔法及びその魔法師は13人、達也は正式に表明されていないため、13人の中に入っていない。その中でも達也のマテリアル・バーストは、発動スピード、破壊規模、射程、どれをとっても、他の追随を許さない。

 

 

「敵、偽装タンカー消滅を確認いたしました。成功です。次のターゲットは潜水艦です。一隻の居場所を特定しております。南東300㎞です。

サード・アイ及び衛星とのリンクに少々時間を要します」

藤林響子はその状況を衛星で確認し報告する。

そして、次なるターゲットの準備に取り掛かっていた。

 

 

 

その頃、チョウ大佐は偽装タンカーが消滅した事を確認し、状況を冷静に判断していた。

「うむ、横浜でのレールガンの攻撃は全く、効果を満たさなくなった。50年前の東京……未確認情報ながらすさまじい精神魔法と防御を兼ね備えた戦略級魔法と伝えて聞いている『救済の女神』と酷似している。そして、タンカーの消滅反応は、3年前の沖縄海戦時、巡洋艦が消滅した時のデータとほぼ一致……

諸君撤退だ。他の艦にも、即時撤退を伝えたまえ」

 

そして、チョウ大佐は撤退を命じた。

 

沖縄海戦の巡洋艦の消滅は、各種データと検証から分解魔法ではないかと推測していた。また、沖縄に現れ、分解と再成を駆使して、大亜連合を撤退に追いやった沖縄の悪魔と同一人物と見ていた。

今回、沖縄の悪魔が現れる事を想定した布陣でもある。攻撃目標を超遠距離からの攻撃、そして、互いの艦の距離を大きく取る事だ。

一つ目の超遠距離からの攻撃で、相手の射程外からの超音速で攻撃、反撃されずに目的を果たす予定ではあったが、相手もあの超絶魔法をこの距離で発動出来た事は、見積りが甘かったと素直に受け止める。二つ目の互いの艦の距離を取った事はどうやら正解だったという事が今回の事で分かる。同時に二つ以上の目標は設定できない事がこの事から判明したのだ。

ここまではある程度想定し対策を取っていた。

 

しかし、最大の誤算は横浜にあの『救済の女神』の使い手が現れた事だ。50年前の使い手であった氷室絹は既に死亡が確認されている。噂の性能の魔法だとすると、彼女一代限りの専用魔法と考えてもおかしくないのだ。まさか、引き継いだものがいたとは想定外である。

しかも、光を明滅させながら、砲弾を確実に消滅させる魔法師、さらに太古の仙術をも使用する魔法師が少なくとも二人、全部で複数、少なくとも4人以上の戦略級に値する魔法師が横浜の防衛をしていると判断したのだ。(実際には横島一人がなしたのだが)

 

もはや、打つ手なしと判断し、チョウ大佐は早々に撤退の命令を下したのだ。

 

 

そして、潜水艦は静かに海の底に潜り撤退していった。

 

 

 

 

 

その頃、次のターゲットに向けサード・アイの調整準備が完了した達也達だったが。

 

「目標ロスト、撤退したようです」

藤林響子は、そう告げた。

 

その頃には艦砲射撃も止んでおり、他の艦も撤退したことも確認が取れた。

 

「ご苦労、このような攻撃を仕組み、さらに撤退も鮮やかなものだ。相手の指揮官は相当な切れ者だ。厄介極まりない。大黒特尉超長距離狙撃、よくぞ成功させてくれた。これが無ければ、相手も撤退しなかったかもしれん……」

風間少佐は無線越しに達也と響子にそう言っていたが、その声にはどこか力が無かった。

 

風間少佐は無線を切り独り言ちる。

「横浜のあれは、やはり50年前13代目氷室当主が発動した有史以来の最強精神系魔法『救済の女神』か………発動者はやはり……彼か……私は夢でも見ている気分だよ。……彼は本当に……」

風間少佐はその後の言葉を口にださなかった『彼は本当に人間なのだろうか?』と……

そして、あのレールガンの砲撃を悉く消滅させたのも横島なのだろう。もし、横島が国防軍と対峙したら、勝てるのだろうかと瞬時に頭を回すが、とても答えを出す気にはならなかった。

 

 

 

 

 

 

横島は、偽装タンカーが急に凄まじいエネルギーで消滅した事を確認していた。

(……消滅!?敵兵は……全滅か…………にしても予想以上に速い、達也自身横浜から動いていない。遠距離魔法攻撃の類か……タンカーの中心から一瞬達也の霊気を感じたあと、凄まじいエネルギーが……どうやったんだ?)

達也が魔法で何かをした事は理解したが、どういう原理なのかはわからないでいたが、驚いたのは230㎞離れていたタンカーをすさまじい速さで攻撃したことだ。

(あれが達也の切り札か……凄まじいってもんじゃないな、あいつ、周りの大人にいいように利用されなきゃいいが……)

 

そして、次々と潜水艦三隻が海に潜る。こちらに向かってくる殺意や攻撃の意思はもう感じられなかった。結界内にいる敵兵は言うまでもなく行動不能だ。脅威は去ったといっていいだろう。

 

横島はホッと息を吐き。

霊気を送り続けていた結界の発動を止める。

 

「ふぅ」

そして、横浜全体を探知する。

(かなりの犠牲者が出てしまったな……俺がもうちょっとなんとかできれば…………)

横島は自分の右手の平をジッと見る。今はどうやっても生成できなくなってしまった文珠、あれさえあればこんなことにはならなかっただろうと悔いていた。

 

しかし、老師や小竜姫には散々横島は言われていた。個人で出来ることなど限られている。それを全て背負うとするのは、間違っていると…………

 

「また、繰り返すか……」

横島はその場に座り込み、小さな声でやりきれない表情をしながら独り言ちる。

 

 

 

 

「横島さん!!!」

雫が勢いよく飛びついてきた。

 

「おっと」

横島は座りながらも両手で受け止める。

 

「横島さん!!ありがとうございます」

「横島さんやっぱり凄いんですね!!」

「ありがとうございます」

そして、美月、ほのか、深雪達は疲れを残しているが笑顔でその後について来ていた。

 

横島は深雪の顔をチラッとみる。しかし、先ほどの恐怖を向ける顔は無い。横島が張った『救済の女神』の影響で、恐怖や不安などのマイナス感情は打ち消されているのだ。ただ、数日すると術の影響は消える。その間、深雪は横島の力の事を冷静に考える時間がある。突発的とはいえ、横島の人知を超えた力を目の前にし恐怖していた記憶は残るだろう。その後どう判断するかは深雪次第なのだ……

 

 

続けて、レオ、幹比古、エリカが駆けつけてきた。

「横島!!お前スゴイな!!まじで今回はやばかったからな。助かった!!」

「横島!!さっきまでの結界ってもしかしなくても……『救済の女神』だよね!!凄まじいってもんじゃないよあれ!!体感できるなんて……生きてて良かった!!」

「横島!!あんたのあれは何なのよ!!流石の私も最初はビビったわよ!!だから説明しなさいよ!!」

レオ、幹比古、エリカは何時もの調子で横島に口早に勢いよく言い寄ってくる。

 

横島はその様子を見上げ、何時もと変わらず接してくる3人に内心ホッとする。『救済の女神』の影響を受けている可能性も考えたが、そうじゃなさそうだと横島は感じていた。

 

「たはははははっ、流石に疲れた……今は勘弁してくれ、落ち着いたら話すさ」

そう言って、屈託ない笑顔を皆に向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、達也は新たな任務でそのまま対馬要塞に向かう事になった。

(深雪を他人に任すなど、以前の俺には考えられない事だな………横島か……)

達也は自嘲したような顔をし、次の任務の為、高速輸送航空機に乗り込む。

そして今日あった事を振り返り。そして、数々の横島の人知を超えた力を思い出し。

(横島、お前は一体何者なんだ?)

そう思いながらも達也は以前の様な敵対心や警戒心といったものは、湧き起らなかった。

 

 

 

京都の四葉真夜は横浜の事態終息と横島が現場にいた事を聞き。

「フフフフフフッ、やはり彼は私を救ってくれる存在。あの時見た……」

鏡に向かい、妖艶な笑みを浮かべているのだった。

 

 

 

 

 

そして、この横浜事変と言われる。大亜連合による侵略行為は横島と達也の活躍により、撃退し終息した。

横浜に直接乗り込んだ大亜連合の工作員は死亡または捕縛。レールガンを多数搭載したタンカーは消滅。潜水艦3隻は撤退。その後の消息は不明。

横浜の街は半壊し、死者は1万人弱に及んだ。

 

 

 

横島は皆の笑顔を見上げながら自身の今後の事を考えていた。

人知を超えた力を行使したことを、一部の人間には見られていただろう。見ていなくても気が付く者がいるだろう。

たぶん、学校にはいられなくなるだろうと……

ただ、今は友人に囲まれ、皆の笑顔を守れたことに一息付きその心地よい余韻に浸っていたかった。

 

 

 

 

 

横島横浜騒乱編 完




という事で最終回でした。
ここで横島(MAX)を一度終わりにさせて頂きます。
皆さま本当にここまでお付き合いして頂きありがとうございました。

ただ、構想はあるため、再開できるようには終わらせたつもりです。

一応次の構想としては
追憶編を文字って?

『横島喪失編』
一応この最終回の翌日から始まる予定。
横浜事変の事後処理の話し‥‥
それぞれの立場の人たちがこの事件と横島について語って行くスタイルの予定。
そして……GSから新たなメンバーが登場する。←このためと来訪者編をつなげるために構想したと言っても過言でもない??
さらに、劣等生からは原作より登場が早くなる重要人物も……


余計な事ですがその間は
以前書いていた物の続きやらをかきながら、妄想パワーを充電させます。
そして、これは実は横島MAX10話で終わらせた場合に書く予定だった。おキヌちゃん主人公のクロスものSSをしばらく書きます。
おキヌちゃんものは、おキヌちゃん大好きなので、書いちゃった奴で、横島MAXとは全然ベクトルが違います。ギャグや戦闘は非常にライト、恋愛要素高めのつもり。
深夜か明日にはアップするつもりです。


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