誤字脱字報告ありがとうございます。
前回の続きのようなお話です。
まだ、第2部序章見たいな感じが続きます。
しばらく横島でません。よってギャグも出来ません><
ご了承ください。
横浜事変からの第一高校授業再開日放課後、真由美と摩利は十文字克人に呼ばれ、普段十師族がらみの密談を行う際、使用している空き教室に来ていた。
「七草、渡辺……率直に聞く、『救済の女神』を発動したのは横島だな」
「横島くんは京都に居たはずよ」
真由美は横浜に居た事を言わないでくれと頭を下げた横島との約束を守るべく十文字にそう返事を返した。
「七草、お前も知っているだろう。横島が京都から消えた事を……そしてあの『救済の女神』だ。それだけではない、俺はそれ以外にも凄まじい防御魔法を目撃した」
十文字自身あの横浜事変の大亜連合からの艦砲射撃を受けていた際、桐原、五十里、花音、紗耶香と合流し、防御魔法ファランクスを発動させ、レールガンの砲撃から4人を守り切っていたのだ。流石は十文字家次期当主と言ったところだろう。
その際、十文字は横島が発動した総延長2㎞の瓦礫や土で出来た巨大な防御壁、四神結界玄武を目撃していたのだ。そして、あの『救済の女神』だ。
後日、十文字は父親から横島が横浜事変時に京都から消えた事を聞いている。十師族の主だったメンバーはその事を把握しているハズである。
「ごめんなさい。わたしからは何も言えないわ」
真由美は半ば十文字にはバレているだろう事も分かっていたが、そう言う事しかできなかった。
「うむ、分かった。俺も奴の事を誰かに言うつもりもない………奴は……、引き留めてすまなかった」
十文字は横島を普段から高く評価していたからこそ、その事を確信に近いものと感じ、真由美の言動でそれが確定へと変わった。そして、「奴は何者なんだ?」という疑問を口に出すことをやめ、真由美達に詫びを入れ、教室を出て行った。
十文字が出て行った空き教室で椅子に座り、真由美は摩利と顔を合わせる
「はぁ、摩利、これじゃあ横島くんとの約束は守れていないわよね」
「仕方がないんじゃないか?十文字は十師族でどうやら当日横島が京都にいなかった事を把握しているようだし、確認したかっただけなのではないのか?」
「うーん、それだけじゃないの、うちのタヌキ親父からも横浜の件と横島くんの事を色々と聞かれて、上手く誘導させられた気がするわ……わざわざ京都から駆けつけてくれて、助けてくれた横島くんに申し訳ないわ」
「それにしても、あの場にいた横島が、本当に当校の横島なのかが疑わしく思える。何せあの時の横島の雰囲気は余りにも大人びていた。少なくとも年下には見えなかった」
「……うん」
真由美は若干顔を赤らめながら曖昧な返事をする。
摩利が言うあの時の横島とは、横浜事変の際、ビルの崩落から真由美を救った時の横島を指している。
真由美は真由美で忘れられないでいた「大丈夫ですか」と抱きかかえられ助けられた時に見せた凛々しい横島の顔を……
「しかし、まさか奴が『救済の女神』の後継者だったとはな。しかも真由美を助けた時のあのスピード、いや、瞬間移動なのかもしれん。私には全く見えなかった。ルゥ・ガンフゥの時でさえ、かなりのスピードだったのだが、あれを優に凌駕していた。さらにあの力だ。ビルを片手で支えていたのだぞ……」
摩利は何故か呆れた様に真由美に話していた。
摩利の常識が根底から覆る様な出来事が立て続けに起きたのだが、しかし何故かそれをおこしたのが横島であればありうるのではと思わずにいられない。今まで、数々のとんでもない行動や時折見せる底知れない力を見ていたからこそではある。もしあの力が横島以外の人間が目の前で振るっていたのだとすると、これほど落ち着いていられなかったであろう。
「……そうね。うちのタヌキ親父から聞いた話で京都から横島くんが消えた大凡の時間と、横島くんが私たちの目の前に現れた時間を差し引きして、大凡1時間で横浜に来たことになるわ。あの時交通機関はほぼストップしていたから、自力で来たのだろうけど、京都から横浜まで大凡直線距離で350㎞離れているから、加速魔法で走って来たとしても、少なくとも時速350㎞以上のスピードを維持していた事になるわ」
「もはや、人間の限界を超えているのではないか?そもそも奴は何なのだ?私はあいつがますます分からなくなった。普段のとんでもない事をしでかす奴の姿はあの巨大な力を隠すためのフェイクなのか?……いずれにしろ悪い奴ではない事は確かなのだが……」
「あの力、十師族がそろっていても、彼には太刀打ちできないかもしれない……私も色々と横島くんの事を改めて調べてみたのだけど、何もわからなかったわ。でも、横島くんが力を振るうのは必ず私たちや誰かを守るため、自分の為には使っていないわ」
「そうだな………まあ、軍には目を付けられただろうが、正直言って、あの力があれば軍も容易には手が出せないだろう」
「………摩利、あのね……うちのタヌキ親父、横島くんと一対一で京都で会っていたらしくてどうも彼の事気に入ったらしいの。しかも今回の事で更に拍車がかかって………口ぶりから、どうも、私と横島くんをくっ付けようとしているみたいなの。理由は多分、横島くんの力と氷室家との繋がりを付けたいためだけの話なんだろうけど……」
真由美の父親であり、十師族七草家当主、七草弘一は横浜事変の前から横島を七草家に取り入れようと画策していたのだが、横浜事変に横島が大いに関わった事を考察し導きだしてからは、それに拍車がかかった様だ。
「……真由美はどうなんだ?私は普段の奴ならお断りしたいところだが……」
「あの……横島くんとはその、ルゥ・ガンフゥの事件からまともに話してないし………年下だし……」
真由美は顔を薄っすらと赤く染め、もじもじとしだした。
「おい、まだ、ルゥ・ガンフゥの時のお礼も言っていなかったのか?」
摩利は呆れた様に言う。
「……うん。なんだか言い出せなくて…」
「今日、横島は学校を休んでいるらしいからな……次はちゃんと言っておけ」
摩利は真由美が横島に何らかの好意的な感情を抱いている事は知っていたが、どうやらその感情は着実に育っているようだと感じた。
「……うん」
一方、1年A組では、一日中雫は落ち着かない様子だ。
ほのかはその理由を知っていた。
横島と連絡が付かないからだ。横浜事変の後、雫は何度も、横島の携帯端末に連絡をしたのだが、無機質な女性の声で、『電波が届かない場所か電源が入っておりません』と返ってくるのみ。
たまにこういう事があるのだが、横浜事変の次の日から4日続けてこの調子なのだ。しかも今日、学校にすら来ていないのだ。
横浜事変の当日と翌日は、雫とほのかはそれぞれの実家で無事な姿を見せ過ごしていた。2日後に、ほのかが雫の家を訪ねている。
「ほのか、傷の具合は大丈夫?」
横浜事変の際、ほのかが艦砲射撃による榴弾の一部を脇腹に一発受けた事を指している。
「傷?あの時の…傷痕すらないよ」
横島のお守りの回復術式が発動して、傷を完全に治癒したのだ。
「よかった。横島さんのお守り凄い」
「横島さんのお守りというより……横島さん自身が凄くない?」
「うん、それは知ってる」
「あの時の横島さん。青白く光ってたし、しかもなんだか、大人っぽくて、かっこよかったよ」
「もともと、かっこいい」
雫は誇らしげに言う。
雫の基準では既に横島は普段からかっこいい認定らしい。
「でも、横島さんのあの術って何なんだろうね?魔法じゃないって本人も前に言っていたけど、手から光線のようなものが沢山出てたし、盾みたいのや、光る爆発とか……横島さん一人で、国の軍事力に匹敵するんじゃないかな、もしかして横島さんって正義の宇宙人?」
「ほのか……それは映画の見過ぎ、凄くても強くてもカッコ良くても横島さんは横島さん」
「ああ、あの横島さんが『救済の女神』の後継者か……やっぱり氷室に帰っちゃうのかな?」
「!!……それは嫌、氷室にはあの子も居る……」
不意のほのかの言動で雫は気が重くなり、同じく横島に思いを寄せているだろう一つ下だが大人っぽい氷室要を思い出す。
雫は携帯端末を取り出し、横島に連絡するが、『電波が届かない場所か電源が入っておりません』と無機質な女性の声で返ってくるのみ。
「電話、つながらない」
雫はシュンとなる。
「横島さんたまにこういう事有るって言っていたよね。この時代で電波が届かないってどんなところかな?地中奥深く?何かの実験所?……やっぱり氷室かな?あそこには強力な結界が張ってあるって言う噂だし、一般の電波は届かないのかも」
たまに横島に連絡がつかないのは実際には、月に1~2度、妙神山という異界に帰っているからなのだが、雫たちに知る由もない。
そんなほのかの言動で益々焦る雫。
「雫、冗談だって、そんな心配することないよ、直ぐに学校で会えるよ」
ほのかはその時はそんな雫を微笑ましく見ていた。
「うん」
しかし、いざ学校に来ると、横島は学校に来ていないのだ。
雫は、横島が氷室に帰ったままなのではないかと不安で一杯になっていた。
そして、その後1週間、横島は未だに学校に姿を現さない。
103話の平壌市の場所を変更します。地形的な理由です。