横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

前回の続きになります。
今回に日本編を終わりにするつもりでしたが、もう一話伸びちゃいました。
よって、第一高校がらみは後編があります。






118話 横島がいない第一高校

12月中旬第一高校

 

1年A組のホームルームで、担任教諭から放課後に会議室に来るようにと、ほのか、雫、深雪の3名は言われていた。

何でも、警察から行方不明者について、聞きたい事があるとの事だった。行方不明者とは勿論、横島の事である。

 

それを小耳にした心ないクラスの男子達は、嫌な笑みを浮かべながら談笑していた。

「行方不明者ってアレだろ?アホの横島だろ?俺たち、横浜のあの事件で生き延びたって言うのに、あいつ何にもない京都で行方不明って、やっぱ所詮ウィード(二科生)だな」

「九校戦のアレはまぐれだったんだ。そうじゃなきゃ辻褄が合わない」

「行方不明って、もう1ヶ月半だろ?どっかで野垂死んでんじゃないか?」

 

 

ガタン!!

 

 

「横島さんは死んでない!!」

雫は勢いよく立ち上がり、そんな男子たちに涙ぐみながら睨み付けた。

 

普段おとなしい雫が感情を露わにし叫んだ事に、談笑していた男子たちはビクっとし驚きの表情で雫を見ていた。

 

「男子、いくら何でも不謹慎よ!」

ほのかは、雫のそばにより肩に優しく触れてから、男子に向かい抗議する。

周りの女子もその男子たちに抗議の目を向けていた。

 

「わ、悪かったよ」

「冗談が過ぎた」

男子は居心地が悪そうに、そう謝り、教室をそそくさと後にする。

 

そもそも、この話は今の男子たちだけがしているものではない。

この頃学校では横島が既に死んでいるのではないかと実しやかに囁かれ、噂に尾ひれが付き、あちらこちらで流れていたのだ。

雫は噂が上がり出した頃、信じてはいなかったが、学校中にその噂が流れ、あちらこちらで耳にする。しかも本人が1ヶ月半も連絡がつかず、頼みの綱の氷室家にも音沙汰がない状態だったのだ。何時もすぐそばにいてくれた横島が生死も知れない今の状態が不安で仕方が無かったのだ。

 

我慢し感情を抑えていた雫は遂にたがが外れてしまったのだ。

 

 

「ほのか……横島さん……本当は…」

雫は涙を溜めながら上目使いでほのかにこんなことを言う。

 

「雫が横島さんを信じないでどうするの?知ってるでしょ、雫が好きな人は世界で一番強いんだから、きっと何か理由があって戻ってこれないだけなんだから」

そんな雫をほのかはガッツポーズを見せながら元気よく励ましていた。

 

「雫、気にしてはダメよ………」

深雪も眉を顰めながら、雫を励ますのだが、どこか説得力が無い。

深雪は知っていた。横島が既に死亡している事を……しかしこの事は誰にも言う事が出来ない。ましてや、雫には絶対言えないだろう。

深雪はあの日、横島を殺してしまったと、嘆く達也の姿が頭から離れないでいた。

このうわさ話や、横島の話を聞くたびにその苦しそうにする達也を思い出してしまうのだ。

達也の嘆き、雫の悲しみ両方を知る深雪も、その板挟みになり苦しんでいた。

 

 

3人は会議室に向かう。

 

会議室には、同じ理由で呼ばれたのだろう真由美をはじめとする新旧生徒会メンバーと摩利達、新旧風紀委員会メンバー、そして、十文字克人、1年E組のレオにエリカ、幹比古、美月そして達也が集まっていた。

 

「あっ、深雪、雫、ほのか、こっちこっち」

エリカが深雪達が会議室に入ってきた事に気付き、手を振って、自分たちが座っている一帯に誘う。

 

何時もの面々はそれぞれ適当に挨拶をし、深雪達も席に座る。

 

「ったくよーー、今頃これかよ、横島いなくなってもう一ヶ月半だぜ」

レオは苛立っている。警察が横島について本格的に動き、こうやって事情聴取を行うのは初めてなのだ。すでに行方不明になって一ヶ月半経っているのだ。文句の一つも言いたくなるのは当たり前だ。

 

「そうですよ。余りにも遅いです」

美月も珍しくプリプリとしている。

 

「横島みたいなの、すぐわかると思うんだけどな、どこ行っても声はデカいし、叫ぶし、泣きわめくし……やっぱ、軍とかが噛んでるんじゃない?」

幹比古の言い分は何となく棘があるが、それも心配の裏返しなのだろう。

 

「日本の警察は当てにならないわね。ああそうよね。うちの兄貴がキャリア組なんていわれてる位だから、そりゃあてにならないわ」

エリカは警察と千葉家次期当主である自分の長兄を痛烈に皮肉っていた。

 

そんな中、スーツ姿の二人の男性と、第一高校のカウンセラー、小野遥先生が会議室に入り、壇上に立つ。

 

「げっ、寿和兄貴」

エリカはスーツを着崩した男性を見て悪態を付く。先ほどまで皮肉の対象としていた本人が登場したのだ。

 

それに気づいたのか、千葉家次期当主で警察官警部の千葉寿和が自分の妹であるエリカに向かって、ニヤケながら手を振った。

 

小野遥先生が集まった生徒に話し始めた。

20代中頃の地味目だが美人顔でスタイルが良く、明るく生徒受けもいい先生だ。

彼女は正式な第一高校教諭として採用されているカウンセラーではあるが、警察省公安庁の秘密捜査官でもある。その他にも秘密のアルバイトしているのだが……

「皆さん集まってもらったのは、担任の先生に聞いていると思いますが、今、当校の生徒で行方不明となっている、1年E組の横島忠夫くんの捜索捜査に協力してほしいの。そこで皆さんから、横島くんについて、こちらに来られた警察の方に、知っている事を話してほしい。こちらが千葉警部と稲垣警部補です」

 

「警察省の千葉です。貴重なお時間を取らせてもらい、捜査に協力感謝いたします」

「同じく、警察省の稲垣です」

エリカの兄寿和とその部下の稲垣が簡単に挨拶をする。

 

「今日は3年生、2年生、明日は1年生という順番になります。一年生は今日は解散です。では一人づつカウンセラー室で、お話をお伺いします。」

小野遥が事前に横島と親密な関係を持つ友人関係等をあらかじめピックアップしたのが今日集まったメンバーなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(七草真由美さん、横島くんと仲が良かったと聞いております。3年生で一科生のあなたと1年生で二科生の彼とはあまり接点がないように思われますが、横島くんとはどのようなお知合いで?)

 

横島くんと私?

私と横島くんとの最初の関係は生徒会長と風紀委員補欠

手のかかる弟みたいな感じ……最初はそうだった。

でも彼は必ず私がピンチになると、颯爽と助けにきてくれて、何もなかったように笑顔を私に向けてくれる。

 

(横島くんとは普段どのような少年でしたか?)

 

横島くんは普段はおちゃらけていて、皆を困らせるような事もするけども、皆を笑顔にすることが出来るムードメーカー。

それは、思いやりと優しさがあっての行動。

そして、圧倒的な強さと並外れた精神力を持つ戦士としての顔。あの時の彼の顔は私よりも年上に見え、その……素敵に見えた。

 

(横島くんは普段から、なにかその興味がある事とか何か言ってませんでしたか?)

 

横島くん……あなたは誰なの?

私は横島くんに何をしてほしいの?

 

七草真由美は自宅のベットの上で、今日の学校で横島について警官二人と小野先生から事情聴取のような物を受けていた事を振り返り、横島との事を考えていた。

 

しかし、真由美は薄々横島が既にこの世にいないのではないかと感じており、何時も悲しい気分になるのだった。

それは、真由美の父、七草弘一は横島事変直後は横島と真由美をくっつけようとする話を盛んに行っていたが、横島が行方不明と判明してから、しばらくし、全く横島の話題を上げなくなったのだ。それは父、弘一が横島の何らかの情報を得て、横島の利用価値がなくなったという事だ。それは、存在していた価値が無価値になる。イコール、死んでしまった事を指すのではないかと………

 

真由美は横島と、ルゥ・ガンフゥの件から真面に口をきいておらず、逆に恥ずかしさのあまり、横島から逃げていたのだ。本当は助けてもらったお礼を言いたいのだが……その前に衝撃的なトラブル(局部目撃)があったためとはいえ、いまさらながら後悔している。

さらに、横浜事変の時の助けてもらった事についてもお礼を言っていない。あの時も一瞬の出来事で横島と真面に口をきいていない。

 

真由美は思う。

(横島くんに生きていてほしい……あの時の事、お礼を言いたい………もっと彼と会って色々と話したい…)と……

 

もやもやする気分を変えるために真由美はシャワーを浴びに部屋をでたのだが、リビングで帰宅した父、弘一と出くわした。

「……お帰りなさい」

 

「ああ、帰った。ん?真由美、この頃学校はどうだ?何かあったか?」

弘一は、真由美がこの頃元気が無いのを知っている。横島の件であろうとも推定していたが、ワザとこんな言い方を真由美にしている。

 

「…警察が来たわ、横島くんの事を今頃聞きに……いまさら、何をしたいのかわからないわ」

真由美は弘一に含みを持った言い方をする。弘一に対する小さな抵抗だ。

 

「……………真由美、その話を詳しく聞かせてくれ」

弘一は少し考えるしぐさをした後、真面目な顔つきになる。

 

真由美は弘一に、今日、警察が横島について聞いてきた内容を話し出した。

 

「横島くんの趣味や信条、将来の夢なんかも聞いていたのだな!」

弘一は真由美が話た後、声を大にして、質問をする。

 

「そ、そうよ」

 

「そうか、そうか、クククククッ、そうか!」

そう言って、弘一は自室に戻り、考えをまとめていた。

弘一は横島が行方不明になった後、早い段階で、横島が死亡したことを防衛省関係者から情報を引き出していた。

しかし、今、何故この時期に改めて横島の身辺調査をするのか?死亡が決定的であれば、する必要などないはずなのだ。そして、真由美に聞いてきた内容だ。交渉材料にするようなソースが幾つも混ざっているのだ。

 

弘一が導き出した答えは……『横島が生きている!!』……そして、何らかの交渉をしなければならない事態に陥っている。それは本人を脅すためか、懐柔するためかは、分からない。

横島の今の状況は分からないが、とりあえず生きている可能性がかなり高くなったのだ。

 

「クククククッ、まだ盛り返せるかも知れん。彼が生きてさえいればな、忙しくなるぞ」

弘一の目はギラギラとしていた。

 

 

 

真由美はそんな父を見送り、何か悪だくみをまたしているのだろうとこの時は単純に思っていた。

 

そして……真由美は今日も寝るその時まで、横島を思い出し答えの出ないこの感情に翻弄され続ける。

 




次は何時もの面々のお話です。

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