横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


今回は1年生諸君が事情聴取を受けます。
チョット話が進む感じです。……では



119話 横島がいない第一高校、横島は何処に?

12月中旬、第一高校

 

エリカの兄、千葉警部と稲垣警部補の警察官二人とカウンセラー小野遥先生による、横島行方不明の捜査協力という名目の事情聴取が行われている。実際には、政府がUSNAに居る横島を日本に連れ戻すための交渉材料を取得したいがため、横島についての情報、特に、趣味嗜好や人間関係、将来の夢などを友人関係から聞き出すための物だった。

そんな事情は末端のこの3人には知らされてはいない。

 

そして、今日はその二日目、対象は1年生の横島の友人達だ。

1年A組から五十音順に一人づつ、カウンセラー室で聞き取り調査が行われる。

そのトップバッターは雫だったのだが……

 

バタン!!

 

カウンセラー室から勢いよく出て走りさる雫、俯き前が見えてない様だ。

それを追いかける、警察二人と小野遥先生。

 

エリカと美月は順番がまだの為、飲み物を買いに行っている間にそれに出くわした。

 

エリカと美月は二人がかりで走り去ろうとする雫を体で抱き留める。

「雫!?どうしたの?」

「雫さん……」

 

雫は涙を流し声を出さずに泣いていたのだ。

 

そこに警察官と小野先生が追い付き。

「ナイス、エリカ……助かった…その子、足速いね」

警察官の片割れエリカの兄、寿和がグッドのサインをエリカに送りそう言った。

 

雫は嗚咽しながら、エリカと美月に体を預け小声で

「ウウッ…横島さんは死んでない……自殺何てしない……グスッ」

 

「雫さんに何を言ったんですか?」

美月は追いついてきた3人に強い口調で尋ねる。

 

すると、稲垣警部補と小野遥先生は、ジトっとした目で千葉寿和警部を一斉に見る。

 

「やっぱり寿和兄貴が何か言ったのね!!」

 

「いやー、その彼になんか悩みとか言ってなかった? 自殺とかも考えないといけないからって言っただけなんだけど」

寿和は苦笑いをしながらそう言った。

………この人をデリケートなこの現場に派遣する事、自体間違っている。

 

「この……バカ!!」

 

「エリカ?待て!」

 

エリカは寿和を殴り飛ばしていた。

 

「フン、デリカシーの欠片も無い人ね。しかも不真面目、少しは修次兄さまを見習ったら」

エリカはゴミを見るかのような目で倒れている寿和を見下ろす。

 

 

最初にそんなトラブルがあったのだが、以降はつつがなく、事情聴取は進んだ。

右目回りを青く腫らした千葉寿和警部はそれ以降、殆ど口を開いていないのが功を奏している様だ。

 

 

 

その後、エリカ、レオ、幹比古、美月、それに雫とほのか、そして達也と深雪で、久々に揃って何時もの喫茶店に寄った。

 

「ごめんね。雫、うちの兄貴がバカな事言って」

エリカは雫に手を合わせ謝る。

 

「……うん」

雫は頷くもやはり元気が無い。

 

「あーー、これ意味あったのか?ほんと今更だぜ、捜査に関係なさそうな事も聞いて来たしな」

 

「そういえばそうですね。横島さんの趣味とか、目標とか……」

 

「ただのパフォーマンスかも知れないね。捜査をしましたって言う。氷室家から圧力がかかったんじゃない?」

 

レオ、美月、幹比古は今日の事情聴取がとても意味のあるものに思えなかった様だ。

ほのかとエリカも頷き、その意見に同意の様だ。

 

「たくっ、あいつは何処にほっつき歩いているのやら……」

エリカはワザとらしく横島に悪態を付く。

 

「「…………」」

 

雫はうつむいたまま、達也は暗く、言葉を発していない。それを心配そうに見る深雪。

場は暗い雰囲気に包まれている。

 

普段だとここで横島のギャグやエロ行動で重い空気が壊れ、明るい雰囲気に戻るのだが………

 

 

「あ、そう言えば、ドクター・カオスが数十年ぶりに現れたアレ見た?」

幹比古はそんな場の雰囲気を察して、わざとらしく話題を変える。

 

「はい、USNAで起きたテロリスト事件ですね。私もお兄様も一緒にあの報道は見ておりました。ドクター・カオスが使っていた魔法はどうも、世界的に認知されていない新しい魔法らしいですね。お兄様」

ようやく深雪が口を開き、達也に話題を振る。

 

「ああ」

それでも達也は相づちを打つに留まる。

 

「魔女マリアも居ました。綺麗な人ですね」

美月もその話題に乗り、話を続ける。

 

「美月、魔女マリアは人じゃないわ、ドクター・カオスがゼロから作った人造人間って噂よ。しかもテレビ中継で出てたのは、魔女マリア本人じゃなくて、マリアを模した巨大ロボットらしいわ」

エリカが言っている事は正解である。テレビ中継でまともに映っていたのはビッグM(マリア型巨大ロボ)で、本人は映っているが、衛星カメラだったり、望遠カメラで撮っているため、画像が荒い。

 

「それにしても、あんな巨大ロボットが存在するなんて……、それと、魔女マリアがあの映像でまた脚光を浴びて、今色んな所で報道されてるみたいだし……なんか映画や、グッズの版権がどうのこうのっていう報道もされてて、マリアブームが来るかもって」

ほのかもそれに続く。

 

「にしても、教科書に載る様な人物だけどよ、中継見て、すげーー派手だったよな、天才じゃなく天災錬金術師って言われるのも納得だぜ。しかし、あの破壊で、ケガ人無しって有り得るのか?」

レオは感心した様に頷いていたが、疑問を口にする。

 

「僕もそう思うよ。数日後のテーマパークの様相は廃墟だったしね。それと、吉田家や僕もなんだけど、ドクター・カオスや魔女マリアの魔法を解析してたんだけど、さっき司波さんが言ってた通り、新しいと言うか知られていない魔法だったり、強化したものだったりしてるんだ。その中でも古式魔法みたいなのもあって、やっぱり魔法に関してはドクター・カオスは天才だよ。…あっ、そう言えば、みんなに見てもらいたい面白い映像を見つけたんだ!フフフフフッ!」

幹比古はレオの疑問に同意しつつ、吉田家でもカオスが使った魔法の数々を興味を持って解析していた事を話す。

そして、何やらその中で気になる映像を見つけたらしく、笑いながらスクロール型のタブレットを取り出し、皆の前に映像を出す。

 

そこにはドクター・カオスが派手に魔法をぶっ放し、数々の破壊を行っている映像が映し出されていた。

 

「これがどうした?幹比古、テレビと同じじゃないか?」

 

「ふっふっふー、そこじゃない、ここを拡大して、ちょっと映像をいじると……」

幹比古は楽しそうに笑いながら、画面の端っこの方を拡大し、画像修正を掛ける……すると

顔は分からないが何やら、派手に飛び回っている人物が見えるのだ。

 

達也と雫以外、その映像を見た瞬間、幹比古のタブレット端末にグイっと顔を寄せ、覗き込むように見る。

 

「これ、誰かさんに似てない?偶然だと思うけど笑えるよね。こんな不格好で攻撃よけるなんて」

幹比古は笑いながら、得意そうにそう言った。

 

しかし……皆の反応は違う。

 

「おい!!幹比古!!これ繰り返し見せろ!!!!まじかまじかよ!!」

「幹!!これもっと大きく映せないの!!画像が荒いわよ!!」

「おおおお、お兄様!!見て下さい!!」

「雫!!!!これ、早く見て!!」

 

「へ?映像はこれ以上は無理だけど繰り返せるよ、あともう一場面あるし」

幹比古は皆が興奮して詰め寄ってくる理由が分からないでいた。

 

雫と達也はほのかと深雪に引っ張られ、タブレット端末に近づく。

 

そして、その画像には、顔やはっきりとした姿は分からないが、蛙飛びのような恰好やルパンダイブのように電撃を避ける人物が映り、もう一場面では女性らしき人物を抱え、土煙を上げるような変なドタバタとした走り方で、攻撃をジグザグに避ける人物が映し出されていた。

 

「幹比古!!!!でかした!!間違いない横島だ!!!!!」

レオは幹比古の両肩を掴んで、バンバンと叩く。

 

「へ?だって、これUSNAだよ。顔とかわかんないし、画像も荒いし、似た人だよ」

幹比古は困惑顔でそう答える。幹比古は横島だとは思っていなかった。場を和ますだけのソースとして、この映像が横島に似ていたため、見せただけなのだ。

 

「何言ってんのよ!!こんな変な避け方と、こんなとんでもない走り方する奴、この世の中で他に居る?!!!しかも、カオスの攻撃避けてんのよ!!」

エリカは幹比古の胸倉を掴んで叫ぶ。

 

「えーーー、勘違いじゃない?」

 

「何言ってるんですか吉田君、横島さん以外こんな事しませんよ!!きっと顔は涙目になって、何か叫んでいるハズです。しかも女性を助けている様だし!!」

美月も幹比古に怒ったような言い方をする。

 

「えーーーー、柴田さんまで、なんで横島がUSNAに居るのさ」

 

 

雫はそれを見、タブレット端末を手に取り、再度映像をまじまじと見て……手が震えだしている。

そして、さっきまで、下を向きこの世の終わりみたいな顔をしていたのだが、目には光りが宿り、何かを決意したような顔つきになっていた。

「ごめん!私、先帰る」

 

そう言って、足早に喫茶店を出て行き、それをほのかが追いかける。

「ま、待って雫ーー!!ごめん、皆先帰るね」

 

 

 

達也は雫が見終わった後、タブレットを取り、目を大きくし、何度も何度も映像を繰り返し見ていた。

「……埒が明かないな………すまん、急用が出来た。先に引き上げさせてもらう」

さっきまで暗い雰囲気の達也だったのだが、活力がみなぎって来たかのように、今はシャキッとした感じになっていた。

 

「お兄様?……待ってください!! みんなごめんなさい、先に帰るわね」

そう言って、達也と深雪の兄妹は喫茶店を後にする。

 

 

「えーーーーーーー冗談のつもりだったのに、横島じゃなかったらどうするのさ」

 

「お前な!!そんな事を言うなよな!!でもよーーーあれ絶対横島だって」

 

「だったら、連絡位寄越してもいいじゃない?氷室家も知らない様だし……」

 

「なんか有るのよ!!連絡出来ない訳が!!幹はなんでそうマイナス思考なのかなーー」

「そうですよ、吉田君の悪い癖ですよ」

エリカと美月に何故か責められる幹比古。

 

 

 

 

 

 

 

雫の父である北山潮氏は複数経営している内の一つの会社の現在社長室で、会議資料に目を通していた。

 

外が少し騒がしい事に気が付く。

 

バン!!

 

しばらくすると重厚な社長室のドアが勢いよく開く!!

 

「お父さん!!私、USNAに行く!!お願い手伝って!!」

 

「雫!?」

北山潮は驚く。雫が無断で会社に来ることは今までなかったのだ。しかも、この頃の雫は暗く、ずっと沈んでいたのだ。それが急に仕事場に現れ、大声で何やらうったえてきたのだ。

 

 

 

 

 

一方達也は、自宅に帰り、直ぐに自室に引きこもった。

複数のディスプレイを見ながら、忙しなく、キーボードを操作していく。

達也はドクターカオスの事件の際、映像解析をしていなかった。いや、する気力が無かったのだ。

本来の達也ならば喜々として、解析を寝る間を惜しんでやっていただろう。横島の件からは、何をするのも気力がわき起らなかったのだ。

その達也が、今、一心不乱に作業をし、映像解析をし、横島らしき人物を見つけて行く。

そして、鈍っていた頭が、回転しだす。

なぜ、このタイミングで警察が動き、横島の事を聞き回るのか?

横島らしき人物の映像を見ながら、さらに考察を進めていく。

 

横島は俺が殺したはず。しかし、あの後誰もあの現場を見ていない。生きている可能性もあるのでは……

もし、これが横島ならば、USNAに亡命?または軟禁状態になっている?なぜUSNA?もしかするとドクター・カオスが関わっている?

政府は横島を取り戻すため、横島の情報を欲している。あの質問は横島自身と交渉するための材料では?

 

達也の中でいろいろな情報が一つにつながって行く。

 

「クククククククッ、ハハハハハハハッ」

達也は自分でも気が付かないうちに笑っていたのである。

 

 

 

深雪は達也の自室扉の隙間からそんな達也の様子を見、元気になって行く達也にホッとするも複雑な気分になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

USNAダラスで第一高校時代の記憶を忘れている横島は、今日もリーナとマリアと一緒に……

 

「タダオ!いっしょに訓練しましょ、手合せ位、いいでしょ?」

 

「げっ、また~~、この前もやったばっかりだ!!」

 

「いいじゃない、私の強さをタダオにわかってもらうまで……」

 

「えーーーー十分わかったって、いっつも俺ボコボコじゃん」

 

「ボコボコなのはマリアの所為、私じゃない」

 

「横島さん・必要以上に・女性と接触・禁止」

 

「マリア、私でもダメなの?」

 

「イエス・ミス・アンジェリーナ」

 

「いいじゃない、タダオもいいって言ってるし……」

 

「……リーナ、あまりマリアを刺激しないで、ボコられるのは俺なんだから……」

 

のんきに日常生活を送っていた。

 

 

 

 

 




次回はUSNAの横島に話が戻ります。

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