横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

USNAの横島にも変化が………
久々にあの人登場……
USNA編ですが、ギャグ無しです。ギャグすると話が進まないから><


120話 記憶と辻褄

横島は、リーナに付き合い連続殺人犯を探すのが日課になっていた。

横島が狙われる可能性があるとリーナは踏んでいたが、一向に現れる気配が無い。

その間も、連続殺人犯による被害者が続発していた。被害者の殺害の経緯は様々だったため、最初は複数の事件だと思われていたのだが、一様に血液を失っている事から、同一犯または同一組織犯とされ、その様相から吸血殺人事件とも呼ばれている。

 

「リーナは一応俺の護衛って事になってるけど、前から聞こうと思ってたんだけど、なんで、殺人犯も追っているんだ?それって警察の仕事だろ?リーナは軍人なのになんで?」

 

「今更それ?……その軍規に触れるから」

リーナは言いにくそうにする。横島の護衛と称し協力してもらっているとは言え、軍事機密なのだ。

さらに、マイクロブラックホール実験の影響で、失踪した人間が犯人の可能性が高い。さらに言うと、失踪した人間の中には、リーナと同じくスターズに所属している人間が居たからだ。

 

「まあ、言いたくないなら別にいいや」

 

「ううん、わざわざ危険を冒してまで、護衛と称して協力してもらっているし、ドクター・カオスも知っているらしいから、助手のあなただったら……実はその殺人犯、軍の人間かもしれないの……だから」

 

「ふーーん、リーナはその尻拭いってわけか、大変だな~~」

横島は指して関心がなさそうに答える。

その組織の総隊長がリーナなのだから、尻拭いではなく、当事者と言ってもいいだろう。

 

「ごめんなさい……タダオを危険な目に合わすかもしれない、でも私がタダオを絶対守るから」

 

「リーナ、いまさらだな~、まあ、逃げるのだけは得意だから、何とかなるって、あはははははっ!」

殺人事件を追っているはずなのに、なんの緊張感もかけらもない横島。

 

「本当にごめんなさい」

 

「いいって、いいって、リーナも立場があるし、俺もリーナみたいな美人と一緒に居られるし、一挙両得?」

 

「それ、意味違うと思うわ」

 

「あはははははっ、そう? ああ、腹減ったな、飯行こうかリーナ」

 

「付き合うわ」

リーナは任務中にも関わらず、こんな日常がずっと続けばいいのにと思わずには居られないのであった。しかし、リーナは既に次の任務を言い渡されていた。横島と過ごす時間もあまり残されていない。

 

横島とリーナはこの街に多数あるファミリーレストランチェーンの店に入り、食事を取る。

 

「タダオって日本人よね」

 

「ん?そうだけどなんで?」

 

「記憶喪失って言ってたけど、日本に帰りたいと思わないの?」

 

「……うーん、今は…いいかな、記憶戻ってからで」

横島は躊躇しながらもそう答えたのだが、日本に行くつもりはない。カオスの元で、文珠を生成して何とかするか、カオスが今の検証実験を終えてから、元の過去の平行世界に戻してもらう算段をしているからだ。

実際には、横島はこの世界の人間で、100年封印されていたとはいえ、120年の時を生き、苦難の末この世界自体を作りあげた張本人なのだ。今は、その記憶さえも無い状態。平行世界の過去などというものは初めから存在しないのだ。

 

「……そう」

リーナは残念そうにする。

リーナの次の任務と言うのは、日本に行き、大亜連合の鎮軍軍港を地形を変える破壊をもたらした『灼熱のハロウィン』を引き起こした魔法師を探し出す命令を受けていた。最悪、抹殺もあり得るのだ。リーナは不安で一杯であった。もし横島が日本に一緒に来てくれて、傍に居てくれたらと思わずにいられないのだ。

 

「ちょいトイレに行ってくる」

 

横島は小用を済ませ、男子トイレから出ると、突然、東洋人の美女に日本語で声を掛けられた。

「あら、こんなところで偶然ね久しぶり!!元気してた?」

 

「こ……これは逆ナン!!まじで!!僕横島!!ポニーテールが良く似合うお姉さん!!って、アレ??」

 

 

声を掛けたのはポニーテールに灰色のスーツ姿の藤林響子だった!!

 

横島捜索のためにUSNAに他数名と共に派遣されていた。

本来、高レベルの魔法師である藤林響子の渡航は困難であったが、日本政府はUSNAに対し、テーマパークテロリスト襲撃事件で邦人が巻き込まれたことに、事情説明および現場検証を行わせろと要求したうえで、裏取引をしたのだ。藤林響子以下数名をテーマパークテロリスト襲撃事件の現場検証を行わせるための渡航許可と引き換えに、USNAはある条件を出したのだ。

条件というのはリーナを交換留学扱いで日本に滞在させることだった。

USNAは交換留学とはあくまでも名目で、リーナには『灼熱のハロウィン』を引き起こした魔法師の捜索、または抹殺という別の任務を与えているのだった。

両国の思惑が一致したための取引成立であった。

 

 

響子達は3日前、横島を発見し動向を調べ様としていたのだが、近くにはあの魔女マリアがべったりとついていたのだ。

得意の情報操作やハッキングなどをしようとすると、マリアが警戒するかのような動きを取るのだ。

それがどんな距離だろうとだ。よって、横島を発見してから横島に近づくことすらできないでいた。

そして、もう一人、これも知っている顔だ。実際には会った事はないが、血縁者だ。アンジェリーナ・クドウ・シールズ。彼女は九島烈の弟の孫にあたる。響子は九島烈の孫で、再従妹に当たるのだ。しかも、彼女は幼い頃から優秀で、今は軍属であるとも聞いていた。

 

横島だと確認できたが……状況は最悪だった。

ドクター・カオスの相棒、魔女マリアが横島のそばに、そして、USNA軍属であるリーナも一日中行動を共にしているのだ。

もしかすると、日本には居られないと悟った横島は、USNAに亡命したのかもしれない。さらに、魔女マリアだ。ドクター・カオスに庇護を同じ理由で受けているのかもしれない。

そうなってしまうと、手が出せない。

最悪、ドクター・カオスはUSNAに協力している可能性もある。

 

響子はこれ以上近づくのは危険と判断し、追跡をやめて、本国に指示を仰いでいたのだが……今日に限って偶然レストランに入る横島とリーナを見かける。魔女マリアが傍に居ない。リーナと二人の状態だったのだ。

 

響子は念のため、CADも外し、一般客を装い。尾行を開始、横島が座った席の後ろに座ったのだ。

横島にはバレても構わない。そもそも横島なら、近づけば此方に気が付き、接触を図ってくれるはずだと。リーナについては此方の顔を知られている可能性もあるため、そちらには注意をする。

 

そして、横島は響子がこれだけ近くに居ても気が付かない。いや気が付かないふりをしている可能性もある。そんな事を思いながら会話に聞き耳を立てると……

(横島くんが記憶喪失??マテリアル・バーストの影響で?若しくはUSNAかドクター・カオスに記憶を操作された?)

意外な情報が入って来た。

 

響子は記憶喪失の裏づけを取るために、接触を図る事にした。

 

横島がリーナから離れて、トイレへと向かう。

 

チャンスとばかりに響子もトイレに向かい、出てきた横島にさりげなく声を掛けたのだが……

 

「こ……これは逆ナン!!まじで!!僕横島!!ポニーテールが良く似合うお姉さん!!って、アレ??」

やはり、響子の事を覚えていない様だ。

 

もう一押ししてみる。

「私、藤林響子よ、覚えてない?」

 

「へ?あれ?……こんな美人のお姉さんに一度でもあったら忘れないのに、あれ?それってどこで?」

 

「八王子とか結構色々あったんだけどな~」

 

「あれ?」

横島は混乱している様だ。

 

響子はそんな横島を見て、記憶喪失は確定したと判断し。

「ごめんなさい、知り合いによく似ていたから間違っちゃったかも、それじゃあね」

そう言って横島から離れ直ぐにレジで会計を済ませ、レストランを出て行く。

 

しかし、残された横島は

「あれ?なんだこれ?……俺、この世界の日本に知り合いなんて……どう、いう……藤…林、あぐっ!!ぐっ!!」

頭を抱え苦しみだしたのだ。

 

そんな異変に気が付いたリーナが駆けつける。

「タダオ!!どうしたの!!タダオ!!さっきの女に何かされたの?」

リーナは横島から離れ足早に会計を済ませ出て行く女を見ていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、大丈夫リーナ、何時もの発作みたいなもん…だ」

 

「タダオ……」

そんな横島の様子を心配そうに見つめるリーナ。

 

「大丈夫……ふぅ、なんだか疲れたし……ホテルに戻ろっか」

 

 

 

ホテルに戻った横島はベットに仰向けになり天井を見上げる。

 

今日、藤林響子にあった……この世界では自分の知り合いなどいないはず、彼女も間違いだと言っていた。しかし、その名前がどうも気になって仕方がないのだ。

 

横島はずっと違和感を感じていた。

カオスの話では過去の平行世界から飛ばされたと言われていたのだが……何かが違う。

そうだと思い込もうとしていただけなのだ。

それでは実証できない事が幾つもあったからだ。

 

自分の肉体の変化……自分の記憶では、こんなに鍛えられた肉体では無かった。体も相当動き、力も出る。出せる霊力量はさほどかわらなかったが、霊力の通りも良く、ちょっと霊力を込めるだけで数倍の力が出るのだ。

たまに、自分自身の霊力量がとてつもなく大きく感じる事もあった。

 

そして、背中の大きな傷、こんなものは無かった。最初はこの世界に飛ばされた際に出来たものだと思っていたのだが、明らかに古傷だった。

 

さらに文珠を生成する際に激痛と吐き気と共に頭に流れてくる知らない映像だ。

文珠を生成を重ねる毎に、映像が鮮明になって行くのだ。辛く、苦しい記憶の様に……

それはアシュタロスとの戦い以前の記憶しかない今の横島にはまだ味わっていない、今後起こる悲劇や苦しみの記憶だった。その傷もその強靭な肉体もその代償なのだが、今の横島に知る由もない。

 

「俺……いったい何もんなんだ?本当に横島忠夫なのか?……分からない」

 

 

 

 

 

 

その頃リーナは、一人ホテルの屋上で月を眺めていた。

「タダオに別れをちゃんと告げないと……、タダオは悲しんでくれるかな……だといいな」

 




次回、日本編に一度戻ります。
何時もの面々再び登場!!

背中の大きな傷……ルシオラを失ったきっかけの致命傷
ベスパつけられたあの致命傷です。

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