横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

再び日本編です。
横島捜索、進捗具合のお話です。



121話 横島捜索網進展

藤林響子が横島と接触した翌日、日本政府が設置した横島対策室では緊急会議が行なわれていた。

藤林響子達、横島捜索チームから横島発見の報告を受けたからだ。

 

官房長官は対策室の報告を受けていた。

「横島少年を発見したのだな、現所在は、ダラスの某ホテルだろうという事だが、はっきりした所在はわからないのか?」

 

内閣情報局長官は答える。

「横島捜索チームからの報告ですと、ダラス郊外で歩いている横島少年を発見したのが4日前、しかし、少年の傍らには常に魔女マリアが付き添っていたと、電子戦のエキスパート藤林響子少尉が、あらゆる情報網で監視を行おうとするも、全て魔女マリアに気付かれ、逆にマリアの監視網により、尾行及び追跡され監視が続行出来ないとの事でした。よって正確な横島少年の所在は分かりませんが、魔女マリア及びドクター・カオス氏が滞在しているホテルに同じく宿泊していると想定しております。

さらに、USNAの軍関係者も横島少年に同行していたようです」

 

「魔女マリアが……という事はドクター・カオスが関わっているという事かね」

 

「その可能性が高いと判断いたします。さらに最新の情報では魔女マリアが居ない隙を突き、藤林響子少尉が横島少年との接触に成功したそうですが、本人は記憶喪失との事です。少尉は横島少年と面識があり、顔を合わせても全く覚えていない状況であったとの話です。少なくとも、少尉と初めて接触した6月下旬以降の記憶はなく、その他八王子などの土地名にも疑問を持っていたようで、第一高校に入学以降の記憶が無い可能性が高いと判断いたします」

 

「何と、記憶喪失?その件については、どういう見解か?」

 

防衛省の制服組部長がその問に答える。

「正確な事は何も分かりません。藤林少尉が接触した時間も1分も満たない、ごく限られた時間でした。マテリアル・バーストの衝撃による記憶欠落。ドクター・カオスによる記憶操作。若しくはUSNAによる記憶操作の可能性もあります。彼の意思でUSNA(ダラス)に滞在している可能性は低く、少なくとも、我が国に不快感をもって彼の地に亡命したという線は現時点で無いと判断いたします」

 

「そうか……しかし、ドクター・カオスにUSNAか……しかし監禁している様子では無いようだな……」

 

内閣情報局局長が再び答える。

「はい、藤林少尉によりますと、横島少年はリラックスしているように見えたそうです。USNAの軍関係者とも好意的に会話をしていたとの事です。まあ、記憶操作やマインドコントロールなどされている可能性があるため、正常な状態ではない可能性もありますが……いずれにしろ、不自由な状態ではないようです」

 

「厄介な………ドクター・カオスとは接触及び交渉の余地はあるのか?」

 

外務省横島対策室室長が答える。

「ドクター・カオス氏は40年度程前に日本に来訪しておりますが、我が国と直接の取引や接触はありません。当時の記録によると氷室家と接触していたともあります」

 

「氷室家は横島少年の安否の確認は取れていないとあるがどういうことだ?」

 

内閣情報管理局局長が再び答える。

「はい、私共も、指示通り、内務省から氷室家と情報交換を行っているのですが、少年の安否を把握していないとの事です」

 

「……うむ、情報がまだ少なすぎるな。ドクター・カオスと接触するにしろ、USNAと交渉するにしろ、情報がまだまだ足りない。引き続き情報収集を行ってくれ」

 

次に警察省部長からの報告が上がる。

「先日から進めていました。横島少年の交友関係などを当たり、横島少年の性格は奇抜なのですが、どうもこれと言った欲がないように見受けられます。学校にも毎日キチンと出席し、風紀委員の活動も欠席せずに従事しており、交友関係も非常に良好だそうです」

 

「……横島少年は一人暮らしと聞いている……、それは学校生活そのものを楽しんでいるということではないか?」

 

「はあ……」

 

「少なくとも、学校にいる事を好んでいると判断した方がいいな……今後、日本に戻ってくる際は、横島少年には第一高校に戻れるように最大限に配慮するように文部省に通達。

そして、現地情報収集の強化、及びカオス氏の周辺を調査、USNAの動向に注視してくれ……既に先手を打たれている可能性もある。迅速に事に当たるように………」

 

こうして、今回の緊急会議は終わった。

横島の生存は確実となり、まずまずの進展具合だが、本人が記憶喪失の上、ドクターカオス、USNAが関わっている事が確実視された。それなのに、横島自信を他から隠そうとしないという不可解な状況であり、事態の見極めと判断が困難に陥っている。まだまだ、情報が少ないと言っていいのだろう。

 

 

 

 

12月25日。八王子の街の装いはクリスマス一色になる。

何時もの面々が何時もの喫茶店に集まり、プチクリスマスパーティーを行っている。まあ、クリスマスに託けて、集まっているだけなのだが……横島の生存の可能性が高まったおかげでこのような行事も自然と出来るようになったと言っていいだろう。

 

しかし、こんな雫の宣言からこの会は始まった。

「私、来年早々からUSNAに留学することになった」

 

「はぁ?雫、そんなの聞いてないよ!!」

ほのかは困惑しながらも、大きな声で聞き返す。

 

「ごめん、昨日決まったの」

 

「なんで!……って、やっぱりそうだよね、横島さんを探すためだよね」

 

「うん」

 

「よく留学など出来たな、雫程の素質のある魔法師は海外に渡航など、普通出来るものではないが」

達也は同盟国とは言え、貴重な高レベルな魔法師が海外に行く許可が出た事を意外に思い、雫に質問を返した。

 

「うん、お父さんが頑張ってくれて、交換留学という形で何とか行けるようになった」

雫の父、北山潮氏は政府とも掛け合い雫をなんとかUSNAにいけるように交渉していたのだ。最初は手ごたえはまるでなかったが、急に政府から交換留学という形なら了承すると言う通達が来たのだ。勿論これは、日本政府とUSNA裏取引で、リーナを日本へ留学させるための口実に丁度、合致したためだ。

 

「なるほど、交換留学、それならば可能かもしれないわね」

深雪は頷く。

 

「……そうか」

達也は無表情に答えるが、なんだか羨ましそうでもある。

 

「雫、それって期間どのくらいなの?」

エリカが雫に問いかける。

 

「1月から3月の間の3か月間、向うの学校のカリキュラムをクリアすれば、こっちの学校でも進級できる」

 

「やっぱり、ダラスですか?危なくないですか?あんなテロがあった後ですし、何やら不審な事件もあるようだし」

美月は横島を探すとなるとダラスに留学することになるだろう事と、現在ダラスは治安が良くないともニュースで流れているからの心配をする。

 

「うん、でも、速攻で横島さん見つける」

雫はそう息巻く。

 

「その方がいい、横島は確実にダラスに居る。ほぼ確定だ」

可能性だけの話しだったのだが、達也は確信しているようにそう言った。

 

「どういうことだ達也?」

レオは聞き返す。

 

「……ありとあらゆる手段を用いて、横島生存の可能性を探り、政府関係を探った結果だ。日本政府は横島捜索チームを作り、ダラスに派遣した」

 

「おい、ちょっと待て、それどういう事だ?日本政府が横島を探しているって」

 

「考えてみろ、この前の俺達に行った事情聴取、あのタイミングはおかしいと思わなかったか?それに聞いてきた内容もだ」

 

「確かにそうだけど」

幹比古はその意見には同意する。

 

「横浜事変で政府は横島を『救済の女神』の使い手だと把握している。そんな人間を放っておくはずがない、所在不明なら、秘密裡に捜索もするだろう。幹比古が見つけてくれたあのUSNAのテロ事件で映っていた横島らしき人物、当然政府の中でも気が付いた者もいたのだろう」

 

「おい、達也、そんな情報俺らにしゃべっていいのか?軍規違反とかじゃないのか?」

 

「今の俺は大黒竜也ではない、司波達也だ。軍からは情報を得てはいない。俺自身があの後、その辺を探ったのだが、見事に当たった」

達也は平然とそんな事を言う。横島を探しているのは軍の大黒竜也ではなく、友人としての司波達也だと言っているのだ。そして、自らの手でハッキングという非合法な手段で探し当てたのだ。

 

「……達也くん探ったって……それ犯罪行為じゃないわよね」

 

「……………いや比較的セキュリティが甘いところからだ、バレてもいいという事なのだろう。それに甘えさせてもらっただけの事だ」

 

「こわ、お前怖いわ……」

「達也くん、さらっと言ってるけど、やっていることマフィアのボスとかわらないから」

レオとエリカは達也にジトッとした目で見つめ呆れた様に言った。

 

「お兄様がマフィアのボス?……マフィアのボスのお兄様!!」

何故かそんな事を口ずさんで、嬉しそうに呆けている深雪

 

「さらにだ」

達也はそう続けたのだが……

 

「まだ、あんのかよ!!お前どんだけだよ!!」

「達也って………」

 

「ここからが重要だ。特に雫……横島は……記憶を失っているらしい」

達也は一瞬躊躇するような間を取ってこう言った。

 

「なによそれ!!」

エリカは横島のあまりの状態に思わず叫ぶ。

 

「だからか……連絡を付けられ無かったんじゃない、連絡の付けようがなかったんだ」

幹比古もそんな横島の状態に複雑な表情をする。

 

「横島さん……」

雫は悲しそうな顔で俯く。

 

「雫、横島に接触するには気を付けた方がいい、横島はどうやら、ドクター・カオス若しくは、USNAに囚われている可能性が高いらしい」

 

「!!………私がドクター・カオスを倒して横島さんを連れ戻す!!」

雫は拳を作り、闘志を燃やすようにそう宣言した。

 

「えええええ!!」

「やめなさいって!!」

「無茶だよ!!」

幹比古、エリカ、美月はそんな雫をたしなめる様に叫ぶ。

 

「ダメよ雫!!無理無理!!……だから、見つからない様に攫ってくればいいのよ」

勿論、親友のほのかも止めるような事を発言するが、何故かこんな事サラッとを言った。

 

「うん!!そうする!!」

雫は大きくうなずく。

この二人のコンビ、肝が座って来た様だ。

 

「雫がそんな危険を冒さなくても、日本政府も動く様だし、任せればいいのでは?」

深雪はまともな意見を出す。

 

「ダメ!私が行かないと!!きっと横島さんも待ってる!!」

雫は自分で横島を取り戻したいようだ。

 

「……結構日本政府って頼りになりそうにもないし、北山さんに逢ったら記憶が戻るかも、横島なら自分で何とかして日本に戻ってきそうだし……」

幹比古も雫が横島に会う事事態に賛成の様だ。

 

「俺も幹比古と同意見だ。日本政府はUSNAとドクター・カオスの交渉で難航するだろう。しかし、横島が記憶を取り戻したらどうなる。奴の事だとんでもない手段で戻ってくるに決まっている」

達也も幹比古と同意見の様だが、その自信はどこから来るのかわからない。

 

「何にしろ、横島が生きている事が分かって良かったぜ。あいつの事だ、『あー、死ぬかと思った』とかなんとか言って、へっちゃらな顔して戻ってくるさ」

珍しくレオが真顔でこの場を締めくくった。




次回USNA編に戻ります。
過去編と掛けた喪失編も終わりが近いです。
来訪者編への繋ぐためだったの話だったのですが、意外と長かったです。
これもあれもドクター・カオスのせいですww キャラが濃すぎ><

久々、オリキャラ出ちゃうかも……
フェイ兄弟はGSよりのオリキャラ
チョウ大佐は魔法科生よりのオリキャラ
次は?

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