横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。



アシュタロスと横島の過去を知るものが現れます。
では……



123話 侵入者

12月25日ダラス郊外のUSNA某研究所

 

横島はドクター・カオスとマリアに連れられて訪れたカオスの研究所にて実証実験の手伝いをしていた。

実際には、雑用をしているだけなのだが……

 

「そう言えば、カオスのじいさん、この世界に幽霊や悪霊の類はいないはずだよな」

 

「確認されておらんが、正確には居ないとも言い切れん。そうとしか思えない事象や事件が実際にあるでのう。世界各地で伝承という形で多々残っておる。まあ、わしは出会った事は無いがのう、全く持って残念じゃ」

 

「昨日の件、マリアから聞いたかもしれないが、あの男には悪霊が憑いていた」

 

「何じゃと!それは真か!!」

 

「俺は、その専門家って、まあ、見習いなんだけど、場数はこなしているから間違いない」

 

「クククククッ面白い!それで、悪霊が憑くとどうなるんじゃ?」

カオスは実証実験の作業の手を止め、横島に嬉しそうに詰め寄る。

 

「ああ、人格を変えたり、その体を乗っ取ったり、強力な奴になると、悪魔みたいな姿に変化しちゃう奴もいるな、まあ害が無いのもいるが、共生って奴か………厄介なのは人格をそのままに、乗っ取るタイプだ……一見では分かりづらい、まあ、専門家が見れば、霊力のズレや魔力を感じたりでバレるんだけどな」

 

「ほほう!実に興味深い………なるほど、となるとこの前、ここの研究所の奴らがマイクロブラックホールの実証実験を行った際、出来た時空の穴からそんな奴らが入り込んで、行方不明になっておる殺人を起こしている連中に、憑りついたという仮説が立てられるのぉ……もしや、お主の世界とつながったのか?」

やはり、ドクター・カオスその話から、即座に一連の殺人事件とマイクロブラックホール実験の関連性に仮説を立てた。

 

「へっ?そんな事になっているのか?カオスのじいさんなんで教えてくれなかったんだ?」

横島はこの実験と連続殺人事件との関連性について、カオスに一切聞いていなかった。

 

「……お主に言うの忘れておった、まあ、良いではないか!!今から、行う実証実験では、前に出来た時空の穴よりもさらに大きな穴が出来るはずじゃ、時空軸も全く同じになるように計算済みじゃ、これではっきりしたことがわかるじゃろ。お主もおるし、もしそ奴らが来ても対処ができるんじゃろ?」

 

「とんでもないのが出てきたら、どうすんじゃ――――!!お家帰るーーーーーー!!」

 

「フハハハハハハッ、飽く迄も仮説じゃて!!この実験は飽く迄も、時空の穴をあけるための実験じゃ、まあ、悪霊が出るならばわしも大歓迎じゃがな!!わしもマリアもおるし何とかなるじゃろ!!」

 

「いいいやーーーーー!!絶対分かってない!!タコ悪魔とかハエ悪魔とか出たらどうするんじゃーーーー!!」

 

「もう、遅い!!マリア準備は良いか!!」

 

「イエス・ドクター・カオス」

 

「フハハハハハハッ、ポチっとな!!」

カオスは高笑いしながらマイクロブラックホール生成装置を稼働させる。

 

ズウウウウウンと低い音の機械音が鳴り響く。

 

マイクロブラックホール生成装置内はモニターでしか確認ができない完全に密閉された大きな部屋となっている。そこから離れた研究室から遠隔操作で装置を動かしているのだ。

 

計器測定値を見ながらカオスは大声で言う。

「いよいよ、空間に穴が開くぞ!!」

 

モニター越しに何もない空間が歪みだし、計器は目まぐるしく反応する。

空間の歪みは大凡直径5mに及び真中に小さな黒い点が現れ徐々に大きくなり、直径50㎝ほどまで大きくなった。それが時空の穴だった。

 

 

「フハハハハハハッ、成功じゃ!!やっぱわし天才ぃ!!」

自画自賛のドクター・カオス実証実験は成功の様だ。

 

「計測結果も良好じゃ!……ん?なんじゃ?サイオン粒子の塊が時空の穴から流れこんだような反応がするぞい」

そんな高笑いもつかの間、カオスは計器と生成装置内の映像を見ながら、新たな反応を確認する。

 

そして、横島は異様な霊圧を感じる。

「なんかヤバそうな雰囲気が………」

 

サイオン粒子の塊が生成装置から、この離れた研究室に一直線で壁などをすり抜け飛び、横島に向かってきたのだ。

しかし、それを察知したマリアが防御魔法を展開しながら、横島を庇う様に前に出て防御態勢を取る。

 

そのサイオン粒子の塊はマリアの防御魔法すらすり抜け、マリアに入り込んだのだ。

防御態勢を取っていたマリアが急に横島に向き直り。

 

「異物検知……脳機能浸食率、20、30%上昇、感情機能低下…記憶メモリー凍結……横島さん・逃げてくだ…さい」

マリアの全身が震えだし、何かに必死に耐えている様にも見える。

 

「マ…マリア?」

 

 

「仮初の体だがよくできておる。人間もなかなか面白いものを作る。この体だけでも中級魔族に匹敵するかもしれんな……魂も強い……まだ、我に抵抗しておる」

マリアは震えが止まり、正面に向き直って発した声色は何時ものマリアの声ではあったが、話し方が全くの別者であった。

 

「何を言っているマリア?」

カオスはそんなマリアに近づこうとする。

 

「ふむ、こうだな………ほほう、これは良い」

そう言ってマリアは両腕から、マシンガンを展開し、周囲に乱射しだしたのだ。

 

「何をするんじゃ!マリア!!」

カオスは防御障壁を展開しながらマリアを叱るのだが・……攻撃は止まらない。

 

「うわわっ!こんなこったろうと思った!!ろくでもないことばっかしーーーー!!」

 

研究室は異常警報が鳴り響き、他の研究者や近くのブロックの研究者たちも、避難をし始めていた。

 

横島もサイキック・ソーサーを展開し防ぎながら、カオスにそう叫んだ。

「じいさん!それはマリアであって、今はマリアじゃない。何か憑りついた!!」

 

「何じゃと!!」

 

「ななな何とかしてみる!………悪霊退散!吸引!!」

横島は昨日フォーマルハウト中尉に行ったと同様、文珠で悪霊をマリアの体から吸い出そうとした。

 

しかし……

「ふむ、文珠か……しかし弱い、はて?」

そう言いつつ、悪霊に乗っ取られたマリアは両腕のロケットアームを飛ばし、片方で横島が持っている文珠を握りつぶし、もう片方の手で、横島の顔を掴み引き寄せる。

 

「ぐあッ」

 

「小僧!!待っておれ!!緊急停止……」

カオスはマリアに顔面を掴まれ持ち上がられる横島を救出すべく、マリアを緊急停止、スリープモードに強制的に移行するための対マリア専用の魔法を展開する。

 

「ん?なるほど……」

マリアは一瞬止まるが、直ぐに稼働し直す。

 

「バカな!!緊急停止が発動しないなどと……」

カオスは珍しく狼狽する。

 

「致し方が無い!!」

カオスは魔法を展開し雷撃でマリアを攻撃する。

 

「ふむ、人間にしてはやるではないか、この体で無かったら、消滅したかもしれんな……ふむ、お主も知っているぞ」

マリアは防御結界を張りカオスの攻撃を悉く防いでいた。

 

 

「やはり、横島殿だが……それにしても霊力が……封印か……アシュタロス殿の眷属か、確かルシオラ、滅んだと聞いていたが……余計な真似を」

マリアは顔面を掴まれ文珠の発作で苦しんでいる横島に顔を寄せ、覗き込む様に見る。

 

「ぬん」

マリアが気合をいれると、横島の額に蛍が浮かび上がり、そして、その蛍は直ぐに消滅する。

 

「ががっああああああっーーーーうわーーーーーーーーーー!!」

顔面を掴まれたままの横島は発狂したかのように叫ぶ。

 

 

1か月前、横島の魂の一部となったルシオラが、霊力を極限まで消耗した横島の意識から離れ、一時的に顕現し、横島に封印を施していたのだ。

なぜ、そのような事を……アシュタロスとの戦いの際、ルシオラは自分の命と引き換えに横島の命を救うため、自分の魂と肉体を形成する霊気の大半を横島につぎ込み消滅した。しかし、横島の魂の一部にはルシオラの魂が今もなお息づいていた。ルシオラとしての意識は既に存在しなかったが、それでも、ルシオラの魂には横島が体験した事が記録として蓄積していたのだ。

一時的に過去の記録から顕現したルシオラは、自分の死後、辛く苦しい体験をしてきた横島を思うあまりに、辛い過去の記憶を、横島の霊気を使って封印を施したのだ。

 

 

今、その封印が解けた横島は、激流の様に過去の記憶が頭に流れ込んできていたのだ!!

横島はその記憶の苦しみを受けながら、記憶が戻って行く。

 

そして横島を中心に莫大な霊力が漏れ、霊気の嵐となり吹き荒れる。

 

 

「な…なんじゃ?」

カオスはその現象に驚き。

 

「フフフフフフフッ!」

マリアは不敵に笑いだす。

 




横島ついに復活か?


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