横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

申し訳ないです。
124話の後半会話シーンが何かちぐはぐだったので、変更しております。

今回で喪失編終了。
次回から何時もの横島が戻ってく来ます。

ここまでお付き合いして頂きましてありがとうございました。



125話 横島とカオスとマリア 横島喪失編完

ドクター・カオスは実証実験で元アシュタロスの部下だった魔神ネビロスを呼び寄せてしまい、その結果研究所は半壊。

幸いにも研究者や職員は迅速に退避をしていたためケガ人等は出ていない。元々ネビロスに人間殺害の意思はないためではある。興味がないと言った方がいいのだろう。また、ネビロスがカメラ等の記録装置を攻撃し破壊したお陰で、ネビロスと横島の会話は一切残っていない。

ネビロスの配慮なのだろう。流石は未来を予知する魔神である。

 

ただ、またドクター・カオスがやらかしたという不名誉な噂が流れるだろうが、いまさらそんな噂が一つ二つ増えたところで、本人は全く気にしていないだろうが…。

 

今回分かった事で、前回のマイクロブラックホール実験時、時空の穴が開いた際、悪霊の類が侵入した事は確定した。さらに、その後行方不明となった職員や軍事関係者、たまたま研究施設に居た人物などが、まず悪霊に憑依されたと考えていいだろう。

先日、拘束されたフォーマルハウト中尉もその一人であった。

また、ネビロスからの情報では、それは異世界の住人である。大悪魔72柱に数えられるダンタリオンが関わっているとの事であった。純粋な権力と力はネビロスの方が高いが、仮にも72柱の1柱であり、上級悪魔の中でも上位に位置する魔神である。しかし、ダンタリオン自身、争いや戦争には全く興味が無く、ただ、自分の右手に持っている書(通称:ダンタリオンの書)にすべての知識を書き込みたいと言う欲求だけで生きている様な悪魔である。よほどのことが無いかぎり余計なトラブルを起こさない。今回の事も何者かがダンタリオンを手引きした可能性が高いという事だ。

 

カオスは、研究所の安全が確保された事を、責任者に伝え、今回起った事の報告と対処方法について話し合いを行っていた。

幸いにも、この研究室のみが破壊されただけであって、他の研究室や、他の棟、マイクロブラックホール生成実験装置自体は無傷であったため、明日からはこの研究室以外は稼働が可能な状態らしい。

 

横島は研究施設の宿泊室を借り、未だ過去のバックアップを呼び出しシステム復旧を行っているマリアを寝かしている。

 

横島は既に自分に再封印を施し、第一高校に通っていた時の状態に戻す。

ただ、記憶を封印され、17才以前の記憶しか残っていなかった時に生成した効果が低い文珠が10個程手元に残った。

 

「ルシオラ……俺は今も心配かけっぱなしなんだな」

横島は自分の胸に手を当てそう小声で呟く。

 

横島は携帯端末を開けると、着信履歴とメールが多数送られていた。差出人を見ると全てリーナからだ。

「しまった。約束すっぽかしちゃった」

夕食の約束をしていたのだが、既に夜半を過ぎていた。

 

横島は慌てて電話を掛け様としたのだが……

「どう話せばいいんだ?記憶が封印されてた俺ってなんて言うか恥ずかしい時の俺だったし……うーーーん。まあ、なるようになるか」

 

取り合えず電話をするがつながらなかった。どうやら電源が切れている様だ。

リーナのメールを見ると、最初は、まだなのかという内容だったが、途中からはこの研究所の事故を知ったのだろう。安否を気づかう内容のメールがずっと続く。どうやら軍でも安否確認が取れたのか、大変だった事をねぎらうような内容だった。

しかし、最後のメールには……

別れの言葉が書かれてあった。次の任務に向かうため、既にリーナはダラスを発ったようだ。

長期間の任務のためしばらく会えない事、連絡も出来ない可能性が高い事、そして、横島に出会えて楽しかった事なども書かれていた。

 

「リーナ……」

 

リーナは本来、今日横島に会い。別れの挨拶を直接するつもりだったのだ。

ずっと横島と居たいという思いを告げたうえで……

 

横島は届かない可能性もあるがメールを返信した。無事である事、いつでも連絡をしてきて欲しい事、無事を祈っている事を伝える内容をリーナの顔を思い浮かべながら入力する。

この時、まさかリーナが日本に行き、ましてや第一高校に潜入捜査のため留学と称し在学するなど夢にも思っていない。

 

 

横島は改めて今日の魔神ネビロスとの会話を振り返る。

ダンタリオンと何者かが用意し、此方の世界に送り込んだ悪霊、昨日のフォーマルハウト中尉を見る限り、人格をそのままにして、思考のみを操る悪霊の類の様だ。送り込んだ際は簡単な命令しか実行できない様な弱い存在だったのだろうが、憑りついた人格と記憶を利用し、思考を操り自分たちの都合の良いように動かすのだろう。わざわざ人を殺すのは、その人間から知識を得るまたは霊力を得る行為の可能性もある。

横島はこの世界にとっては完全に異物な侵入者である悪霊を排除しなければとならないという考えに至る。

悪霊や霊等の概念がないこの時代では憑りつかれた人間を元に戻す方法は皆無、現状出来るのは横島のみであろう。ならば、この事件を解決するまでUSNAに残ろうと決心するのだった。

 

しかしながら、今は12月25日、既に自分が日本から居なくなってから2ヶ月が経過している。既に死亡扱いになっていてもおかしくない状態だ。

第一高校の友人達や氷室家に皆は心配しているだろうと思う。

しかし、今連絡するのは不味い、魔神が関わっている様な事件に友人や氷室を巻き込むわけにはいかない。特に友人連中は直ぐ危険に頭を突っ込む傾向がある。しばらく、死亡または行方不明のままでいた方がいいのではないかと、事件解決してから連絡を入れる方が良いだろうと判断した。

 

ただ、日本の状況も知る必要がある。14代目氷室恭子には連絡を付けるつもりでいた。

 

しかし……よく考えると、数日前に会ったのは、藤林響子だ。あの時は思い出せなかったが、今ははっきりとしている。もしかしたら、軍は自分の存在に気付いている可能性もあるが……その時は

その時だ。

 

取りあえずは此方から、日本側にアクセスするのは恭子一人に絞ろうと考える横島。

 

 

そしてある重大な事を思い出した。記憶を封印されてた時に見たニュースでは日本の火山が次々と噴火した事が映像で流れていたのだ。何故か今その事が頭によぎり、霊感なのか嫌な予感がして仕方がない…………横島程の霊力者ならばそのような霊感はほぼ当たる。額から脂汗が滴る。

横島は慌てて、そこにあったメモ帳を千切り、何やらスラスラと書き折りたたみ、術を発動させ、光の方陣を生み出し、折りたたんだメモ用紙を中心に置き、鳥の形をした式神を召喚させる。そして…………式神に霊力を送り、窓から飛ばしたのだ。

そう、妙神山に無事を知らせるための式神を急いで送ったのだ。USNAからでも、1日あれば届くだろう。

横島は、あの日本の噴火は小竜姫が起こしたものだと判断した。となると妙神山の状況は見るに堪えない事になっている可能性が高い。

さらに自分が妙神山に帰った時の事を考えると……身震いが止まらなかった。

 

 

 

 

再び、ベットに眠った様な体勢で修復中のマリアに目をやり、横島は思う。

この二人に本来合わせる顔など無い。

100年前、二人には協力を仰いでおきながら、あの時記憶を奪い。勝手に世界分離(世界改変)を行ったのだ。

 

カオスが横島とマリアがいる宿泊室に入ってくる。

「小僧、ホテルに戻るぞ。なんじゃ、マリアはまだ修復中か?何時のバックアップを呼び起こしているのじゃ?まさか850年分すべてか?」

 

「カオスのじいさん……俺は」

 

「まあ、ホテルに帰って明日にしろ!わしゃ疲れた」

 

 

横島はマリアを担いで迎えの車に乗せ、カオスと共にホテルに戻った。

 

 

 

 

翌日、

 

ガタン!!

 

「ななな?なんだ?」

横島は大きな音に飛び起きると、隣の部屋とをつなぐドアが強引に開かれ、根元で折れていた。

 

横島が宿泊している部屋は廊下を通らずとも隣に行けるようにドアが隣の部屋との間に設けられている勿論隣の部屋はカオスとマリアが泊っているスイートルームだ。

 

そして、ドアを壊した主はゆっくりと飛び起きた横島に近づいてくる。

 

「マ…マリア?どうした?」

 

「横島さん」

マリアはそう言って、おもいっきり抱き着いてきたのだ。

 

「マ……マリア!!ギブ…ギブギブ!!」

 

「マリア・記憶戻りました。横島さん、ミス・おキヌ、ミス・美神の事も・全部・思い出しました」

 

「!?どうやって?記憶は……俺が直接消したはず」

横島は驚きを隠せないでいた。確かに横島はマリアに直接文珠を発動させ記憶を消したはずなのだ。

 

「フハハハハハハッ、小僧、詰めが甘いわ!!マリアのバックアップは1日毎に行っておる。100年前からじゃ!!しかもじゃ、あの当時マリアの記憶障害を止めるためと、自動バックアップどんな場所でどんな状態からでも行えるようにするために、別次元、想定では8次元の時空に記録をバックアップするスペースを確保したのじゃ、そんでそこに、マリアの記録・記憶がすべてのバックアップが存在するというわけじゃ!!お主が、マリアの記憶を消したとて、そこまでは届いていなかったようじゃな!!どうじゃ驚いたじゃろ!!流石わし、まさしく天才!!」

 

「じいさん……」

 

カオスはマリアに抱き着かれている横島の頭に拳骨をかます。

「痴れ者が!!お主……100年前……あの魔神が言った通り世界改変をおこなったようじゃな!!世界をコピーし…人間と妖魔の振り分けたのか?」

 

「カオスのじいさんまで記憶が!?」

 

「いいや、わしは戻っておらん、しかし、マリアの記録した映像を一晩かけて確認した……大凡の事は理解した……で、どうじゃ?合っているのか?」

カオスはそう言って不敵な笑みを浮かべる。

 

「ほぼ正解だ……俺が行ったのは、世界分離だ」

 

「ふはははははっ!!世界分離とな!?わしの想像をはるか上を行っているではないか!!これでネビロスとやらが言っていた派生して出来た世界があるという意味がようやく分かったわい!!クククククッ」

 

「横島さん・マリア・役に立たなかった?だから・記憶を消した?」

マリアは横島から体を離す。

 

「違うんだマリア。俺のわがままで巻き込んでしまったんだ。ごめん」

 

「まあ、100年前の状況を見た限り、あんな状況で人間が生き延びるとしたら、お主の方法が最善じゃろうしな……と言うか世界分離など、どうやってやってのけたのじゃ」

 

「カオスのじいさんにあの時に『世界の卵』を使った世界創造についての理論を聞いたよな?そんでもって、平行世界誕生の確率論なんかも、それと神界で手に入れた知識、アシュタロスを模倣した時の知識を使って、文珠を形代に行った」

 

「そうじゃったのかいの、それについてはマリアの記録には無かったが……お主、その為にボケておったわしの脳を文珠とやらで一時的に活性化させおったのだな、そのおかげでわしも細胞を若く保つ理論を生み出し、遂には魔法で成し遂げたのだがな……そうか、お主は相当努力したようじゃな知識が無ければ成し遂げられん」

 

「すまん……じいさんとマリアには協力を頼み、色々と骨を折ってもらったのに……自分勝手に事を起こしてしまった。謝って済む問題じゃないかもしれないが……今の俺には……」

横島はカオスとマリアに深く頭を下げ、謝った。

横島は当時、マリアとカオスに知識だけではなく、妖魔と人間の戦いにおいても、仲裁などに協力をしてもらっていたのだ。

 

「ま、なんじゃ、そのおかげで今わしはボケもせず、若さも保っておる。しかも今じゃ億万長者で、自由気ままに生きておる。わしの方が得をしておるよ」

 

「横島さん・何も・悪くない」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

「しかし、お主100年の間、何をしておった?何故若いままなんじゃ?それも文珠の力か?」

 

「いや、世界分離なんて大それた事をやったおかげで、神界で罪を償うために魂の牢獄で100年間幽閉されていたんだ。この世界に降り立ったのは大凡1年前なんだ……年は、霊力が強すぎて……とらないかもしれない」

 

「そうか……小僧が一番、割を喰っているではないか……」

 

「横島さん・年とらない・マリアと一緒」

 

「まあ、それも罪の償いの一つと思えば……」

 

「なんじゃ?お主のそのマイナス思考は?お主、いわばこの世界の創造主と変わらんのじゃぞ。もっと堂々としておれ」

 

「…………」

 

「フハハハハハッ、それともわしと組んで世界征服でもしようではないか!!それはそれで面白そうじゃ!!」

 

「俺は普通に生活したいんだよ!!」

 

「なんじゃお主、真面目になりおって、記憶封印されたお主はもっとこう活力があったのじゃが」

 

「悪かったな、実際には20才で、精神年齢的には120才だ!!」

 

カオスは真面目な顔をする。

「横島忠夫、お主はようやった。これだけは言える」

 

「じいさん……」

 

「さて、お主今後はどうするんじゃ、わしはしばらく、ダラスに滞在するが、あの研究の後片付けもしなければならん……」

 

「俺もダラスに居るつもりだ。本当は日本の学校に通っていたんだけど……あの最初のマイクロブラックホールで出来た時空の穴からこっちに来た悪霊共をとっ捕まえないとまずい事になりそうだしな」

 

「そうか……お主に渡したブラックカード、今後も好きに使うがいい。このドクター・カオス、お主に協力は惜しまん……そういえば、なぜ、お主ほどの人間が黄海で気を失って漂っていたんじゃ?」

 

「いや、へまやらかして、ちょっとスゴイ魔法を喰らっちゃってな……」

 

「まさか、鎮海軍港が消滅したというアレか!!」

 

「いや、それじゃないが喰らった魔法は同じかな?」

 

「ほほう!という事は済州島で起こった戦略魔法未遂の可能性があった事案じゃな?」

 

「多分それだ」

 

「フハハハハハハッ、お主ほどの人間を窮地においやる魔法を放つ魔法師か!!実に面白い!!」

 

「まあ、しばらく厄介になる」

 

「マリア・また横島さんと・いっしょ・うれしいです」

 

「しばらくでなくともずっとでわしらの所に居ても良いのじゃぞ……」

 

「さすがに日本に戻らないと、学校も行きたいし」

 

「まあ、お主のお陰で楽しみが増えたわい、クククククッ、あの魔神とやらに対抗するためにビックMを本格的に大改造を!!そして、奴らに対抗できるぐらいの力を付けた暁には、大量生産し!!ビックM軍団で奴らが闘争の可能性の世界とやらに共に殴り込みに行こうではないか!!フハハハハハハッ、クークックー、今の世界は張り合いが無くていかん!!やはり、こうではなくては、こうではなくてはならーーーーん!!」

どうやら、魔神の出現と横島の話しから、やる気と本気度がMAXとなったカオス、また、とんでもない発明をしそうで不安である。

 

「じいさん?人の話聞いている?俺は普通に人生過ごしたいんだが……」

 

「フハハハハハハッ、長い時を過ごせる盟友ができたわい!!今日は祝杯じゃ!!」

こうして、昼間から3人だけの宴会が始まった。

 

 

横島喪失編完




横島喪失編が完了いたしました。
ここまでお付き合いして頂きましてありがとうございます。

引き続き横島来訪者編を書いて行きます。
少し間をおいて、始めます。

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