横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回でUSNA編終わらそうと思ったのですが、次回も……USNA編です。
早く日本に話を戻さないと、
本当の来訪者編が始まらないですね><


128話 横島、小竜姫の来訪を受ける!!

横島は急に倒れた小竜姫を抱き上げ、こっそりホテルの自室に戻り、そっとベットに寝かせる。

因みに横島が宿泊しているホテルの部屋には寝室とリビングに分かれており、大きなベットが二つある。

 

外は大わらわとなっている。小竜姫が起こした災害級の巨大竜巻の後始末で消防隊や軍関係者が忙しく駆けずり回っていた。

明らかに自然の力としては不自然な動きをする竜巻である上に、それに伴い巻き起こる霊圧(サイオン量)も凄まじい物があった。

何者かによる魔法テロと間違われてもおかしくない。

しかしながら、早朝という比較的人が少ない時間帯で起きた事もあり、今の所、人的被害はないようだ。

 

 

横島はホッと息を吐き、改めて、ベットの上で寝ている小竜姫を見る。

「無茶を……この世界の現世に出られるだけでも、大変だろうに、ここまで来られるとは」

小竜姫が倒れたのは無理もない話なのだ。

神は主に、現世に置いて、神界の掟(ルール)に従い。霊気供給を限定している。

信仰の対象となる神は、人々の信仰心により、霊気を供給する。

土地に括られた神は、その土地から霊気を供給する。その代わり他の土地に移動すると霊気供給が絶たれるだけでなく、霊気が他の土地に吸われてしまうのだ。

そのどちらでもない小竜姫のような特定の役目を負った神は、神界からの霊力の供給に頼っているのだ。

滅多に現世に強力な神が顕現しないのはこの掟(ルール)があるためである。

逆に神が現世になるべく関わらない様にするためでもあるのだ。

 

因みに過去の小竜姫は日本における天界との橋渡し的な存在であり、日本という土地からの霊気供給と、神界からの霊気供給を受けていたのだが……今は、神と人の接点もなく、日本という土地からの霊気供給はままならない。現在、神界からの霊力供給のみとなっている。

 

そして、神界から隔絶されてしまった今のこの世界において、神界から霊気の供給を得ていた小竜姫は、この地(現世)に降り立った時から、霊気を消費する一方で供給できなくなる。

現世に降り立った小竜姫は陸に打ち上げられた魚同然なのだ。

通常であれば、小竜姫の霊力レベルで有れば、何もしなければ数日持つだろうが、先ほど多量に霊圧をまき散らしながら、ここまで来た。一気に霊気を消費してしまい、気を失ったのだ。

 

 

横島は寝ている小竜姫の額に手を当て、自らの霊気を送り続ける。

 

 

しばらくすると、小竜姫はゆっくりと目を開け、体を起こそうとする。

「小竜姫様、まだ、十分な霊気を送ってません。そのままで……」

 

 

「……私は……活動限界で倒れたのですね」

小竜姫は体が思う様に動かない事に気が付き、体を元の位置に戻す。

 

「なぜ、こんな無茶を」

横島はすかさずズレたシーツを元に戻し、小竜姫にそっとかぶせた。

 

「……貴方を連れ戻しにきました」

 

「俺は今、ここを動くわけにはいきません。手紙で説明したはずです」

 

「……関係ありません。この世界がどうなろうと……それはすべて人間が自分で仕出かした事です。今回の事もそうです。自ら悪霊を呼び寄せたようなものです。貴方が手を差し伸べなくとも……自分達で解決すべきです」

 

「魔神は介入の機会を伺っておりました。それを利用されただけです………それに俺も人間ですよ。小竜姫様」

 

「あなたは!……もういいではありませんか、貴方はもう、この世界に介入すべきではありません」

小竜姫は声を荒げるが、直ぐに冷静さを取り戻し淡々と横島に話をする。

 

「貴方は100年前に十分に目的を果たしました。この世界には妖怪・幽霊などはいなくなり、それに神魔も容易に手が出せない様になりました。後は人間達自身で時代を作るべきです。それが破滅へと向かおうが……」

 

「俺は……俺のせいでこの世界を作ってしまった。その責任があります」

 

「私は!……もう、貴方が苦しむ姿を見たくないのです………私は貴方があの島で海に落ちる姿を見ました……自らを犠牲にするような事ばかり……私はもう見ていられないのです……お願いです……横島さん……私と妙神山に帰り、私と一緒に居て下さい」

小竜姫はベットから上体を起こし、自分に額に霊気を送っている横島の手を握り、目を潤ませ、そう懇願したのだ。

 

「……小竜姫様」

 

バタン!

 

「ふはははははっ小僧!!朝食に付き合え!!」

「ドクター・カオス・ノックを」

当然の如く、我が物顔で横島が宿泊している部屋に入るドクター・カオス、そして、それを諫めながら、後に続くマリア。

 

「ちょい待った!」

横島は慌てて止めるが既に遅い。

 

「ぬ!?小僧に若い女だと!!……貴様ついにやってしまったか、どこから攫ってきた!!」

「横島さん・遺言をどうぞ」

カオスとマリアはベットの上の小竜姫と横島を見て、カオスは横島がどっかからか、攫ってきたと勘違い。横島がナンパ成功し、合意の上連れ込んだなどとは微塵も思っていなかった。

マリアも同様だ。そして、ロケットアームを横島に照準を付ける。

 

「待て!お前らーーー!なんで攫ってきた事が前提なんじゃーーー!!」

横島は反論の雄たけびをあげる。

 

 

 

「?この小娘、どこかで見たことが……?」

カオスは小竜姫の顔を見て、思い出そうとしている。

 

「・・・ミス・小竜姫・久しぶりです」

マリアは勿論記憶に残っている。

カオスとマリアは過去、何度も小竜姫と会っている。小竜姫からの依頼も受けた事もあるのだ。

 

「マリアさん、それにカオスさんお久しぶりですね」

小竜姫はマリアとカオスに笑顔を向け挨拶をする。

 

「おおお!!肝心なところでいつも役にたたん、龍神の小娘か!!」

カオスは思い出したように言う。

マリアの記録や過去の映像から、小竜姫の事を知っていたのだが、自分が思った印象をそのまま口にしていた。……まあ、間違ってはいないのだが……仮にも神に対しての口の利き方ではない。

 

「じじじ……じいさん」

横島は焦ってカオスをたしなめながら、小竜姫の顔を伺う。

 

「……役に立っていないのですね………貴方もそう思っているのでしょう……だから、帰って来てくれない……役立たずな神……小娘…肝心なところで」

小竜姫はズンと沈んだ表情をし俯き、後半はな何やらブツブツと自虐ともとれる言葉をつぶやいていた。

100年前のアシュタロス戦から、横島の世界分離まで、カオスは何かと横島に協力していたが、小竜姫は実際に何もできなかったのだ。

今の、小竜姫にとってこれほど堪える言葉はないのだ。

 

「そ、そんな事はありませんよ、何時も俺の修行にも付き合ってくれるじゃないですか……小竜姫様はあくまでも神界と現世をつなぐ管理者であって、そうそうこの世界に関与できないんだ!!カオスのじいさん!!謝れ!!」

横島は小竜姫に慰めの言葉をかけ、カオスに叱咤する。

 

「なんかようわからんが悪かったのう」

カオスがなぜ自分が叱られたのかも分かっていないが、小竜姫の様子を見て取り合えず謝る。

 

「ドクター・カオス・デリカシーが皆無です」

マリアもカオスの言動に呆れている様だ。

 

「どうせ、私など……しがない管理人……力の無い神……暴れるしか能がない神です…」

小竜姫は沈んだ顔でブツブツと呪いの言葉の様に自虐を繰り返している。

 

「しょ……小竜姫様……食事をしてませんよね?何か食べ物を持ってきてもらいますね………マリアすまんがじいさん連れて、朝食に行ってくれ、俺はルームサービスでここで小竜姫様と食事をするから」

 

「イエス・横島さん」

そう言って、マリアはカオスの襟元を無造作に掴んで、ズルズルと引っ張り部屋の外に出て行く。

 

「何をするんじゃマリアーーー!!」

 

バタンと部屋扉が閉まる。

 

 

「小竜姫様、俺は小竜姫様が役に立たないなんて思っていませんよ、何時も俺を励ましてくれますし、相談もたくさん乗っていただきました。俺がまだ、まともでいられたのは小竜姫様のお陰です」

 

「………そう思いますか?」

 

「はい……そうだ。小竜姫様どうやってこちらに来られたのですか?鬼門の瞬間移動ですか?」

 

「……はい…でも、霊力が足りず、アメリカ西海岸まででした」

 

「帰りはどうされるつもりだったのですか?」

 

「鬼門達に一旦妙神山に帰らせ、霊気を十分補給してから、翌日には……と思っていたのです」

 

「今日一日はここに居られるのですね」

 

「はい、本来直ぐにも戻らないといけないのです……役立たずな私が居ては迷惑ですね。貴方と一緒に居る資格もないです……しばらくしたら、瞬間移動した場所までもどります……」

小竜姫は完全に自信が無くなっていた。何時もの毅然とした姿は無く、俯いたまま、自嘲気味にそう告げた。

 

「小竜姫様……今戻るわけにはいきませんが、事件が解決したら、必ず戻りますので、それほど時間を掛けません」

 

「本当ですか?帰ってきてくれるのですか?こんな私の元に」

 

「こんな何て言わないでください。小竜姫様は俺の姉弟子なんですよ。それに俺のもう一つの家でもあるんですから」

 

「そ…そうですか」

小竜姫はホッとした表情をする。

 

「じゃあ、一日あるのなら朝食を取ってから街に出かけませんか?いつぞやのお約束も果たせますし」

 

「ほ、本当ですか!」

小竜姫はぱぁっと嬉しそうな表情になる。

 

「はい……じゃあ、もうちょっと霊気を送ります」

横島は小竜姫に元気が戻ってきたことにホッとする。

 

 

横島はそう言って、ルームサービスの朝食を頼み、サラサラと手紙を書き、妙神山の斉天大聖老師に向け、小竜姫が来た事と明日には戻ってもらう事を式神を飛ばし知らせるのだった。




次回はやはり出くわす……きっと出くわす……やっぱり出くわす。

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