横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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小竜姫様第三弾です。




129話 横島、平穏は訪れない!!

 

自走タクシーに乗った小竜姫は窓の外の街並みを興味津々に見ている。

「100年前の東京と大きくは変わりませんね。若干建物の感じが違うぐらいですか」

 

「まあ、中心地のビル街ですから大きくは変わらないです。田舎の方に行くと街並みは明らかに異なりますよ」

 

「横島さん、あの者たちは下を向いて何をしているのですか?」

 

「あれが、この前言っていた、手軽に会話や映像を送る事ができる情報端末という機械仕掛け…からくりです。結局妙神山には繋ぐことはできませんでしたが」

夏休みに妙神山に戻った際、情報端末とネットについて老師と小竜姫に話たのだが、空間が異なる妙神山と電波はおろか物理的に線をつなぐことも出来なかった。もしかしたら、ドクター・カオスなら出来るかもしれないが……

 

「凄いですね。あんな小さなものなのですね」

 

 

 

 

 

「小竜姫様着きました」

横島はそう言って、自走タクシーを降り店に入って行く。

 

「きれいな服が色とりどり一杯です!!」

横島と小竜姫が入った店は、高級そうな洋服店だった。ちなみにリーナとよく来た店でもある。

小竜姫の今の格好は、妙神山にいる時の格好、古代の日本や中国の軍人の服装に似た格好をしているのだ。流石にこの格好で街中をうろつくと注目の的だろう。傍から見ればコスプレ美少女だ。

横島は、小竜姫の角は隠形の術で隠し、腕と頭の竜具は霊力の消費を抑えるためにも外してもらい。帯剣は陰陽術で札に変化させ持ってもらっている。

また、小竜姫は放つ神独特の神秘的なオーラも封印している。

 

 

「小竜姫様、お好きなものをどうぞ」

 

「いいのですか?でも、沢山ありますね。私、どれを選んだらいいのか分かりません」

そこで、横島はいつも通り、店員さんのお勧めでコーディネートしてもらう。

 

少し大人な感じな花柄が入った白のワンピにカーキのジャケット、靴は慣れていないので、ワンピースに合うようなおしゃれなカジュアルシューズ姿で試着室から小竜姫は出てくる。

そして、自ら、鏡の前で白い花の髪飾りを右耳の上に飾る。夏休みに横島からプレゼントされたものだ。どうやら肌身離さず持っている様だ。

「どうですか?」

小竜姫は何時もと違い少し恥ずかしそうに少女らしい笑顔を横島に向ける。

 

「よくお似合いですよ」

 

「ふふふっ、ありがとうございます」

嬉しそうにしする小竜姫。

 

 

若い店員は支払い時に横島に余計な一言をいってしまう。

「可愛らしい妹さんですね。横島様」

 

後ろで聞いていた小竜姫は

「……妹じゃないです。私が姉(弟子)です!!」

その店員をキッと睨む。

 

「たははっ、そうなんです」

 

「し、失礼しました横島様」

 

 

店を出た小竜姫は不満そうに横島に言う。

「私はそんなに若く見えますか?……横島さんよりずっと年上なのに……」

 

「小竜姫様が、それだけ可愛らしいという事ですよ」

 

「ほ、本当ですか?」

そう言いつつ、気分をよくする小竜姫。

 

「何処か行きたいところありますか?」

 

「私はよくわからないので………何か甘そうなおいしいものを頂きたいです」

小竜姫は何か思い出したように言う。それは、横島が第一高校で友人達と喫茶店やらで買い食いしているのを見ていた時に食べていたクレープやらアイス、ケーキなど思い出した様だ。

 

「では行きましょうか」

 

「今日は私が姉で横島さんは弟です。姉と呼んでください」

 

「え?さすがにそれは」

 

「実際に姉弟子と弟弟子です。姉弟もおなじです」

 

「小竜姫様?」

 

「違います。姉です」

 

「………姉…さ…ん」

 

「!!………はい……良いですね」

小竜姫は少し顔を赤らめている。

因みに小竜姫は神なので、姉弟でも恋人同士にもなれるし伴侶にもなれると当然の如く思っているのだ。

 

 

この後、幾つか、甘いデザート系の店を回り、川岸の公園にたどり着く、ここでも、露店でクレープを購入する。

「おいしいですね!私いつも、見てばかりで羨ましかったんです。横島さんが女の子と一緒に甘いものを食べたりお茶しているのが」

千里眼のイヤリングで横島の日常を見ていた小竜姫は何時もやきもきしていたのだ。そんな中、横島に危害や、悪口を言う輩が現れると怒れ狂い、それを老師と鬼門達が諫めるのが日常化していた。

 

「あの、小竜姫様?それは語弊が……男友達も一緒に居たと思うのですが……」

 

「姉さんです!次行きましょう」

小竜姫はどうしても横島に姉と呼ばれたいようだ。そう言ってクレープ片手に横島の腕を引っ張り歩き出す。

 

 

横島は100m圏内に雫の気配を感じる。先日雫とは夕方に会う約束をしていたのだが、今日は断るつもりでいた。どうやらこのまま行くと鉢合わせになるコースになりそうだ。まあ、会ったら会ったで、姉弟子が来ている事を告げるだけだと軽く思っていたのだ。

横島は小竜姫と雫が合う事に危惧を抱いていなかった。横島は雫の事を妹の様に思っている上、雫が横島に危害を加えることは無い。小竜姫からも雫に対し特に何やら怒りの文言は語られていなかったように記憶しているからだ。ちゃんと話せば誤解なく行けるだろうと踏んでいたのだ。

しかし、エリカやら達也、摩利さんに合わすと血の海になるだろう。小竜姫からは非常に印象が悪い様なのだ。

 

 

そして、小竜姫に腕を引っ張られるままの横島と雫は公園のメイン通りで出くわす。

 

「うっす、雫ちゃんこんなところで何してるの?」

横島は軽く雫に挨拶をする。

 

「……………横の女の人誰?」

雫は横島を見ずに、横島の腕を引っ張っている人物、小竜姫を見据える。

 

「えーっと」

横島は雫の迫力に言い淀む

 

「姉です……そういうあなたは確か……」

小竜姫は笑顔でそう言って聞き返す。

 

「横島さんにお姉さん?聞いたことがない。……私は横島さんの恋人」

雫は何故かこんな爆弾発言をする。

 

「ええーーーっ!ちょっ、雫ちゃん何言ってるの??」

 

「フフン?恋・人?どういうことか説明していただけませんか?」

小竜姫は笑顔だったのだが急に目の周りに影ができる。そして横島に首だけを回し、疑問をぶつける。

 

「たははっ、そ、それは、じょ、ジョーク、ちょっとしたジョークですよ」

 

「横島さん照れなくてもいい、順然たる事実………あなたは誰なの?横島さんに姉なんていないはず、無理やり横島さん引っ張ってどうするつもり?」

 

「フフフフフフフッ、私は彼の正式には姉弟子。妙神竜姫……姉弟仲良く、『逢引』を楽しんでいるところですのよ。それで……誰が誰の恋人ですか?」

咄嗟に作ったのだろう偽名を名乗り、物凄い笑顔の小竜姫はとんでもない返答をする。なぜかその笑顔がめちゃくちゃ怖い。

 

「ちょっ?しょしょう…逢引?なにを……」

 

「………横島さんは嫌がっている。無理矢理付き合わされてる。私は北山雫、横島さんは学校でもプライベートでもいつも一緒に居てくれる」

雫は小竜姫を睨みつけながら、空いている横島のもう片方の腕を取る。

 

ピキ!

小竜姫のこめかみの上あたりの空気からそんな擬態語が聞こえてきそうな雰囲気だ。

「フフフフン、私は彼と一つ屋根の下で、一緒に寝食を共にしていたのですよ」

 

ピキキ!

雫の額の上の空気からもそんな音が聞こえそうだ。

「くっ……横島さんはいつも私の頭を優しくなでてくれる」

 

ピキキキ!

「うらや……たかが、半年程度しか一緒にいないくせに!!私は彼とどれだけ長い時を過ごしたか!!」

 

「ちょ!小竜姫様!?」

 

「付き合いの長さは関係ない。横島さんの手は暖かいし、お姫様抱っこもしてくれる」

どうやら雫が優勢の様だ。雫は横島の腕を自分の頭に乗せ、無表情ながら余裕をかましている雰囲気をだしている。

 

ピキキキキ!

「この………フン、でも彼の趣味にあなたは合致しないみたいですよ……ご自分の胸を見て胸に手を当ててみて下さい」

小竜姫はそう言って雫の胸元を見、目は笑っていないが口元をニヤリとさせる。

 

「くっ……そういうあなたもあまり変わらない」

雫は自分のちいさな胸に手を当てて悔しそうにするが、キッとした表情を小竜姫に向け言い返す。

 

「………そこに直りなさい!!」

小竜姫から暗い笑みが消え、遂に剣を抜いてしまった。

 

「……横島さんは渡さない!!」

雫もCADに手を取り戦闘態勢をとる。

 

「二人共こんなところで、わけわからない事で、争わないで~~!!」

横島は両手を広げて二人の間に入る。

 

やはり手遅れだった。

小竜姫が抜刀した剣は横島の頭に直撃、雫が魔法で出した空気砲は横島の腹に直撃。

頭から血が噴き出し、その場に崩れる様に倒れる。

「ふぶはっ!二日…続けて、こんなん……ばっかし……ガク」

 

「彼になんて事を!!」

「横島さんに酷いことを!!」

二人はお互い顔を突き出しいがみ合う。二人の視線は勝ちあいスパークしているかのような火花が散る。

 

 

もう、止めれそうもない。

 

しかし、

「横島さん・困っている・マリア・横島さん困らせない」

突如空からマリアが現れ、倒れている横島を抱き上げ、連れて行こうとする。

 

「マリアさん待ちなさい!!私は彼とお出かけ中なのです!!」

「待ってマリア!!」

そんなマリアを止めようとする二人

 

「二人は・何しにここに・来たのですか?横島さんを・困らせるために・ここに・来たのですか?」

 

「「………」」

二人はマリアに抱き上げられ、目を回し血を頭からどぴゅどぴゅ出している横島を見て俯き沈黙する。

 

マリアの言葉は重い。

100年前、最前線で横島の横で戦い、協力してきたのはマリア、そしてドクターカオスなのだ。

 

「すみません……しょうしょう大人気が無かったようです」

「ごめんなさい。私もカッとなって……」

お互い頭を下げ、意気消沈する。

 

 

横島は復活し、マリアから降り。

「マリア……、二人を責めないでくれ、俺がみんなを心配させたのがそもそもの過ちだから」

 

「横島さん・悪くない・みんなを守りたいだけ」

 

二人はそんなマリアと横島の会話を聞き、罪悪感が募ると同時に、その関係を羨ましく思う。

 

 

その後、項垂れる小竜姫と雫を連れ、マリアと共に、近くのカフェに入り、改めてお互いを紹介をする。

小竜姫の事は、武術の師匠の姉弟子という紹介をする。名前はさっき、小竜姫が咄嗟に作った妙神竜姫(みょうじん・たつひめ)として……そして、明日には日本に帰る事も……

雫の事は学校の友人として、普通に紹介した。

そして、一応この場は収まったのだが……

 

 

その日の夜、横島が宿泊しているホテルの一室では、今も尚項垂れ自虐のような言葉を繰り返す小竜姫を一晩中かけてなだめていた。

 

翌日少しは元気になった小竜姫を送り届けるため、自走タクシーで時間をかけ、西海岸の瞬間移動で送られた場所まで来たのだが……所定の時間になっても、鬼門は現れない。

 

2時間待ち現れなかったのだが、代わりに斉天大聖老師の燕の式神が空から現れる。

そして横島の前で手紙へと変化する。

内容はこうだ。

(横島よ、鬼門達は無理が祟って、動けん状態じゃ、迎えは寄こせん。しばらく小竜姫の面倒を見てやってくれ( ^ω^)b グッジョブ!!)

横島の手紙を持つ手がプルプルと震える。

 

……………横島は胃に穴が空く思いがした。

昨日の状況を見た限り、小竜姫と雫は相性が良くない様なのだ。

幸いにも小竜姫は力を使えないため、大事には至らないだろうが……

 

小竜姫はその手紙を横島から受け取ると……そんな横島の思いも知らず、

「昨日みたいな事はもうしませんから、しばらくよろしくお願いしますね」

嬉しそうに横島にそう告げた。

 

横島は小竜姫と共にホテルに戻り、しばらくした頃、ノックの音が部屋に響く。

横島は部屋の扉を開けると

「こんばんわ、横島さん」

雫が目の前で、上目使いで挨拶をしていた。

 

「雫ちゃん……どうしてここに?よく入れたね」

このホテルには、カオスやマリア、横島を訪ねても宿泊していない事にするように言っていた。

 

「うん、今日から私もこのホテルで生活するの、横島さんを困らせることはもうしない。だからよろしく」

雫は嬉しそうにそう言って、廊下を挟んだ一室の扉を指す。

 

バスン!!

横島はその場で顔面から倒れ、ピクピクする。

「たはったははははっ、俺の胃もつかな」

 

 

こうして、USNAにおける横島の生活スペースのすべては、平穏から離れ試練が続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





やっとUSNA編終わりました。
当初は2話で終わるつもりだったのに><

やっと本来の来訪者編始まります。
舞台が日本へと移ります。

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