横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

漸く、来訪者編の本筋が動き出します。
そのプロローグのような物が今回のお話です。


139話 横島、事態が動きだしている事をまだ知らない!!

「おはよ~、達也くん、昨日のニュースの見た?」

エリカは教室に入ってくるなり、最初に目についた友人、達也に勢いよく近づく。

 

「ああ、『吸血鬼事件』の事か」

達也はエリカが言いたかったニュースの記事について予想し答える。

 

「そう、それよ、オカルトチックな事件よね。やっぱ魔法師絡みかな?でも血液抜いてどうするんだろう?」

昨日のどこのテレビもニュースサイトもこの事件について報じていた。

東京中心地での連続殺人事件。被害者は全員外傷が見当たらなく、血液の一部が抜かれている事から、メディアは『吸血鬼事件』と名を打ったのだ。しかしこんなオカルトチックな事件なのだが、既に被害者は20人に達しているというのだ。

 

しかし、この事件が明るみになる前に、既に警察は動いており、七草家も秘密裏に動いていたのだが、犯人を未だ見つけられず。被害者ばかり増え、遂にはメディアにすっぱ抜かれる事になる。

 

「おはよう、達也、エリカ」

幹比古は教室に入り、一緒に居る達也とエリカに挨拶をかわす。

 

「幹は?どう思う。あの吸血鬼事件?」

エリカは興味津々に幹比古にも聞く。

 

「うーん、正直分からないな、もしかしたらパラサイトの仕業かも知れないし、でもあんなの滅多に出ないし」

幹比古は真面目にその事について答える。

 

「寄生生物の事か?」

達也はパラサイトをそのままの意味に取り、幹比古に聞いた。

 

「いや、この場合は超常的な寄生物と言ったものかな……でも、血液を採取するなんてのは聞いたこと無いな……だから違うかも」

幹比古は達也の問いに答えるも、今回の事件とは関係なさそうだと認識している様だ。

 

「……超常的な寄生物」

 

「そう、悪霊とか妖魔とか、昔から伝承がある物の怪の類の事だよ」

 

「プププププッ、幹も、マンガの見過ぎよ」

エリカはこの前の仕返しとばかりに幹比古を笑い飛ばす。

 

「エリカ、あのさ、真面目に答えているんだけど」

 

「幹比古、その様な物が実在するのか?」

 

「少なくとも古式魔法では共通認識としてあるよ。パラサイトについての研究発表何て言うのが世界的に行われているし」

 

「そうなのか……」

達也の知識の中でパラサイトと言う超常的な寄生物いや、悪霊や妖魔の類についての認識は無かったのだ。しかし、魔法でさえ、つい100年前まで超常の物としてとらえられていたのだ。悪霊や妖魔が存在してもおかしくないのではないかと、考えを改める。

 

「おっと、間に合った」

レオが始業ギリギリに教室に入って来て達也の前の席に座る。

 

「珍しいな、レオがギリギリとは」

レオは普段達也達より先に教室にいるためこのような聞き方をする。

 

「あー、ちょっと夜更かししちまってよ」

この時は何時もの、たわいもない日常的な会話だったのだが……

 

 

 

 

 

翌日、レオは学校に来なかった。

レオだけでなくエリカも来なかったのだが……

理由は早朝にエリカから友人達にメールで送られて来た。

 

レオが例の吸血鬼らしき人物に襲われ、病院に運ばれたとの事だった。

命に別状はないとの事だが……

 

横島との連絡を取り合った後、レオは気分よく何気なく夜の渋谷を徘徊していたが、たまたまエリカの兄、警部である千葉寿和に遭遇し、職務質問をされたのだ。

その時、寿和が連続殺人事件(後に『吸血鬼事件』)について口を滑らせたのがきっかけで、レオはその日から毎晩、何気なしに夜の街を徘徊し、その犯人をそれとなく捜していた。

 

偶然にも、若い女性が襲われているところに遭遇してしまい。若い女性を助けようとし対峙したのだが、レオも倒されてしまったのだ。しかし相手にもダメージを与えたらしく、犯人はその場を去った。

そして、その若い女性ともども、病院に運ばれたのだ。発見が早かったため、命の別状はなかったようだが、若い女性の方は今も意識不明である。

 

エリカはその事を寿和から知らせを受け、レオの運ばれた病院に駆けつけ、今も病室の外のベンチで座っている。

寿和と稲垣刑事コンビはレオに犯人又は犯人に関係する人物が接触する可能性を考慮し、レオと若い女性の病室を別室から監視カメラや盗聴器を使って監視していた。エリカもそれに協力していたのだ。

 

昼前にそこには何故か、制服姿の七草真由美と十文字克人が現れた。

エリカは特に気にする様子もなく。ベンチに座ったままでいる。真由美はエリカに微笑みながら軽く会釈した。十文字は一瞥するのみ……

実は、若い女性の方は七草家の家人で、吸血鬼事件の犯人を追っていたのだが、返り討ちにあった所をレオに目撃されたのだった。

十文字家と七草家は共に関東を守護する身として協力体制をとり、今回の吸血鬼事件を解決に乗り出していたのだ。そして、直接吸血鬼と対峙しながらも生き残ったレオと若い女性に詳しい状況を聞きに来たのだった。

 

エリカはそんな二人の行動を無視し、寿和がいる監視部屋に入り、状況を聞く。

「兄貴、二人はレオに何を聞いているかわかった?」

 

「いや、監視カメラも、盗聴器も無効化された。流石は若くても十師族といったところか……」

 

「使えないわね。なら、何しに来たと思う?」

 

「魔法師絡みの可能性がある事件だ。大方、解決に乗り出したのだろう」

 

「なに?兄貴の組織とは協力しないわけ?」

 

「そんなわけにいかないだろ。あちらさんとうちは組織が違うからな、お互い見て見ぬふりをして、それぞれが動くしかできないんだ」

 

「面倒ね」

 

「エリカは学校あるだろ?行かなくていいのか?彼が心配か?」

 

「あいつ(レオ)は一応千葉の門をくぐった人間よ。曲がりなりにも私はあいつに剣を教えたわ。私の初弟子と言ってもいいわ。弟子がやられてハイそうですかとはいかないわよね。兄貴」

 

「……少しは女らしいところは無いのか?まあ、お前らしいと言えばお前らしいけどな」

 

「フン、どうせ、警視庁からも、千葉家に協力要請がくるんでしょ?だったら、私が動いても何にも問題ないじゃない?」

 

「はあ、色気のない事で」

千葉寿和はそんな妹(エリカ)を見て、溜息しか付くことが出来なかった。

 

 

 

 

夕方になり、達也と幹比古と美月がレオの見舞いに来た。

病院内でエリカと合流し病室に向かう。

 

しかし、病室には先客がいた。

レオの姉で大学生の西条花耶である。因みに魔法適性はなく一般人である。

 

花耶は挨拶を交わした後、気を利かせて席を外した。

 

「よお、なんだ。見っともないところをみせちまったな」

レオは何時もの笑顔でベットの上から皆に挨拶をする。

 

「酷い目に遭った様だな」

「思ったより元気そうだね」

「大丈夫ですか?」

達也、幹比古、美月もそれぞれ挨拶を返す。

 

レオは今回の事の顛末を皆に話した。

犯人も素手であり、数度殴り合いになったのだが、犯人がレオの脇腹当たりに振れた瞬間、レオは全身に力が抜けたとの事、最後には踏ん張り、相手に一撃を与えたとの事だった。

犯人は白い覆面を被りロングコートで人物は確認できなかったが、殴り合った感覚では女だとレオは感じていた。

 

幹比古は、振れた瞬間力が抜けた事を訝し気に思い。レオの霊体を調べる事を提案し、札を使い古式魔法の術式をくみ上げ調べると精気が枯渇寸前状態になっていることが判明したのだ。

幹比古の見解では、犯人はパラサイトである可能性が非常に高いという事だ。

達也は霊体や幽体、精気などの言葉は知っていても実際どのようなものなのかは理解していなかったが、幹比古は説明しながら術を展開していたため、大凡は理解出来た様だ。

肉体と精神を繋ぐ情報体それが霊体であり、それを構成するエネルギー体が精気と呼ぶのだ。

パラサイトなどの悪霊や妖魔などは精気を喰らいエネルギーを得る。認識ではバンパイアは、血液と共に精気を吸い。食人鬼は血肉と共に精気を奪う。精気を全て喰われた人間は生命力を奪われたのと同義で、衰弱死する。

その辺の知識は世界分離前のGS時代の知識とほぼ同じである。

 

そして、その事が判明したことにより、エリカから寿和へ寿和から警視庁へ情報が渡り、吉田家にも協力要請が来ることになり、エリカと幹比古、そして千葉家門下と吉田家門下は協力して、吸血鬼を捜索することになったのだ。

 

 

 

 

その頃、USNAでは…

「横島さん、今から私に稽古つけて」

雫は学校から帰り、そのまま横島の部屋に訪れていた。

 

「今から、私と彼は、食前の修練に行くので邪魔しないでください」

何故か小竜姫は当然の如く横島の部屋でお茶をすすっている。

 

「私は、学校があるから、夕方前からしか横島さんと会えない。竜姫さんは一日中横島さんと行動できる。だから、今からは私が横島さんに稽古つけてもらう番」

 

「私は彼の姉弟子です。彼に修練を付ける義務があるのです」

小竜姫はそんな事を言っておきながら午前中は横島と、ダンタリオンが放った悪霊を探す名目で一緒に買い物を楽しんでいたのだ。そして、今からは横島と剣の修練に行こうとしていた。霊気が使えなくとも、剣の型合わせ位は出来る。

 

「姉弟子だからって、横島さんを無理矢理拘束する謂れは無いはず」

 

「……横島さん、わたくしと修練をするのが嫌なのですか?」

小竜姫はわざとらしく横島にこんな聞き方をする。

 

「……嫌なんて事は全然ないですが……」

横島は胃に穴が開く思いがし、二人の会話でドンドン肩身が狭くなって行く錯覚に陥る。

雫と小竜姫の言葉こそ丁寧なのだが、目は全く笑っていない。

 

「ほら、彼もそう申してます」

 

「私が先に稽古することを宣言したのに、横入りしたのは竜姫さん」

そう言って、雫は横島の右腕を取る。

 

「いいえ、彼の腕は鈍っています。だから私が付きっ切りで修練しないと」

そう言って、小竜姫は横島の左腕を取る。

 

「たはははははっ、だったら、しょうり……姉さんが雫ちゃんに体術を教えていただくのはどうですか?」

横島はそんな二人にこんな提案をするのだが……

 

「嫌、私は横島さんじゃないと嫌」

「私もお断りです」

 

「たはったはははっ、は~あ…」

横島の精神はどんどん削られて行くのであった。

 

 

 

しかし、横島はこの頃、夜中に抜け出し精神集中の時間を作っていた。

(魔神ダンタリオンが放った悪霊はまだいい。ダンタリオンの裏に魔神ネビロス級の大悪魔がからんでいたら……今の俺では……やはり、文珠をつかうしか……)

現在もピーク時の3分の1も満たない霊力しか発揮できない横島は、まともに魔神級と対峙するのは危険なのだ。もし、ネビロス級の魔神が現れたのならば……とても対処しきれないだろうと……文珠さえ使えれば、今の霊力でも十分戦える。

横島は文珠が記憶の無くした時生成出来た事について、考察しながら、文珠復活の道筋を模索していた。

 

 

 

 




事態は加速していきます。

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