誤字報告ありがとうございます。
今回はつなぎ要素が殆どのお話です。
ここで一気につなぎ要素を出して本編へと……
「小竜姫様、老師から式神です。鬼門達が迎えに来れるそうですよ」
「……嫌です。貴方も一緒に帰ってくれるまで、わたくしもここに残ります」
「小竜姫様、本来の力を出せないではないですか……神が下界にこんなに長時間滞在しては何らかの影響があるかもしれません。しかも、今のこの世界は神も魔も不加入の条約を結んでいるはずです。早めに戻らないと小竜姫様まで罰を受ける事になります」
横島は小竜姫に妙神山に帰るように促す。
現在のこの現世は神と魔のトップが不加入の条約を結んでいる。さらに、神と魔のトップがこの世界に異物が入らない様に強力な結界を張っている。ただ、内側からは弱いのと、ごく微細な力なら侵入が出来るようなのだが……
「……なら、貴方も一緒に帰りましょう」
「小竜姫様、ダンタリオンの放った悪霊を退治するまでは帰るわけにはいきません。この件が終わったならば必ず、一度、妙神山に戻ります。ですから……」
「わたくしは何時まで待てばいいのですか?……わたくしは何時まで泣いていればいいのですか?……貴方の事が心配なのです。また急に居なくなるのはもう嫌なのです」
「…………小竜姫様。……必ず戻りますので、……申し訳ないです」
横島は小竜姫のその言葉に、ただ謝り、頭を下げるしかできなかった。
「……わたくしも分かっているのです。こんな事を言えば貴方が困る事も、……神とは言え感情は有るのです。それは分かってくれませんか?……では、約束です。帰ったら言う事を何でも一つ聞いて貰います。無理な願いは言いません貴方が出来る事を……」
「分かりました」
「いつも泣くのは待つ身の女なのですね。これは古今神も人も同じなのですね」
小竜姫はそう言って、渋々横島を残し妙神山に戻る事を了承する。
そして、翌日の午前中に、西海岸まで送り届けたのだ。
こうして、小竜姫のUSNA来訪は2週間程で終わる。
斉天大聖老師も小竜姫来訪を神界の介入ギリギリの線で見守っていたのだろう。それがこの期間だったのだ。斉天大聖老師も小竜姫の心情をおもんばかっての事だったのだ。
横島にとっては、いい迷惑だったのかもしれなかったが、それもこれも、横島が妙神山にちゃんと戻らないのが悪い。
また、雫と小竜姫はなんやかんやといがみ合いながらも上手くやっていたような気がする。
まあ、ほぼマリアが仲介に入ってのお陰なのだが……横島も胃潰瘍を引き起こすまでには至らなかったのも、マリアのお陰であろう。
横島は小竜姫を見送った後、早速とある人物に接触する。
「久しぶりっすね。響子さん!」
「……横島くん……やっと会えた」
藤林響子は感慨深そうにそう言った。半分涙目にも見える。
響子は政府から特命を受けてダラスにいた。横島との接触及び交渉の場を設ける事なのだが、この3週間、横島に接触どころか、見つけることも出来ないでいた。
横島が故意に響子を避けていたからなのだが、その間、政府からは一向に進展しない現状を憂いて、響子に圧力をかけていた様だ。
「あれ?そんなに僕に会えて、うれしいっすか?いやーーー!困ったな~たははははっ!」
「……記憶が戻っていたのね。そう……それでわざと私を避けていたのでしょ?」
「あれ?バレちゃってました?」
横島はわざとらしく茶化す。
「記憶が戻っている事は知らなかったわ。でも、なぜ今になって私に会う気になったの?」
「いや、日本か国防軍かが、俺に何か要求しにきたんでしょ?」
「……そこまでわかって」
「ならば、今から、話し合いませんか?」
「今から?交渉人はあと二人居るのだけど……呼ぶわ」
「ダメっすよ!響子さんだけっすよ。では、レッツゴー!!」
そう言って横島は強引に響子の腕を取って、ホテルまで自動タクシーで向かい、自室に招き入れる。いや……ホテルだからっていかがわしい事をするわけではない。
そこには、何故かドクター・カオスとマリアがソファーに腰を下ろし待ち構えていたのだ。
「え?……ドクター・カオスに魔女マリア……」
響子の顔から血の気が引く。罠にかかり、亡き者にされるのではないかと恐怖を感じた。しかし、自分の腕では、この3人から逃れるすべはない事も同時に悟る。
「うわっ、響子さん、そ、そんなに怯えなくても……別に取って食ったりしませんよ。俺はそうしたいっすけどね!たはははははっ!」
響子は観念した様に、ソファーに腰を下ろす。
「ふはははははっ、恐れ慄け!!わしが天才錬金術師ドクター・カオスじゃ!!」
「マリア」
二人は相変わらずの自己紹介をする。
「……日本政府から特命を受け、横島氏との交渉に参りました。国防軍少尉藤林響子です。かねがねお二方のご高名は聞き及んでおります」
響子は気を取り直して、自己紹介をする。一度は怯んでいたが、流石は日本代表として選ばれただけの事はある。何とかまともな挨拶が出来た様だ。
「あー、カオスのじーさんは、呼んでもないのにここに居るだけだから、邪魔だったら追い出しましすよ?マリアは記録してもらうために居てもらってます」
「横島くん。その、ドクター・カオス氏とミス・マリアとはどんな関係なの?」
響子は横に座っている横島に小声で聞く。
「ふははははははっ!小僧とわしは……そうよの~、今風で言うとマブダチじゃ!」
響子の正面に座っているカオスか代わりに答える。全然今風では無い上に何故か居丈高だ。
「マリアは・横島さんと・ずっとお友達」
マリアもカオスと同時に返答する。
「は…はい、そうなんですね。存じ上げぬとはいえ、失礼しました」
響子はカオスとマリアに頭を下げるが、内心焦っていた。横島が、カオスとマリアと知り合いの上、どうやら深いつながりがある事が予想外だったのだ。
ただでさえ、カオスとマリアが同席での交渉で難航を予想していたのに、さらに困難をきたしそうな予感がしてならなかった。
しかし、この時の響子はこの3人が集まっているこの現状の意味に気が付いていなかった。
国家その物を転覆させるぐらいの力が、今ここに集中している事を。
「まあ、昔から世話になってる二人なんだ。丁度その2人に拾われて、ここに居るって事、運が良かったのかな~~~」
「そ……そうだったの……」
「で、日本政府は俺に何の用なんです?」
「日本政府から、横島忠夫氏に対する要求は一つです。日本に留まっていただきたい」
「なんでまた?俺って、なんか軍の人に目を付けられてたように思うんですが。まあ、原因作ったの俺だし!たはははははっ!」
「ほほう、経緯はわからんが、小僧を撃墜したのはお主らの魔法ではないのか?都合が良すぎんか?」
カオスは鋭い視線を響子に向ける。
「そ…それは、そうなんですが」
響子は痛いところを突かれ言い淀む。
「じーさん、ありゃ、俺が勝手に戦略魔法に介入したんだ。俺を狙ったわけじゃないし。でも、あのまま魔法が完全に効力発揮したら、済州島の人が全滅だったしな、止めない訳にはいかないだろう」
「まあ、お主だったらそうするわいな………そんな事より、小娘!!小僧を撃墜した戦略魔法を放った人間に会わせろーー!!」
カオスは急に、体を乗り出し響子にそう言って迫る。
「へ?あの、その」
「会わせい!!それとも何か、このドクター・カオスのささやかな願いをも無下にするというのじゃな!!」
カオスは響子相手にぐずりだす。
「…マリア」
横島はマリアに目配せをする。
「イエス」
マリアはカオスの襟首をつかみ隣の部屋に連れて行く。
「何をするんじゃマリア!グハっ!ゴボっ!フベ!、わかった悪かった、邪魔はもうせん!バフッ!」
マリアが鉄拳制裁を行っている様だ。
そして……静まり返り、しばらくして……
マリアとボコボコになったカオスが戻ってくる。
響子はこの光景に唖然とし、冷や汗をたらたらと流す。
「黙っておればいいのじゃろ、ふ~酷い目にあった」
カオスはそう言いながら、CADを操作すると顔の傷が一瞬で直る。
「じーさん、いつか会わせてやるから、大人しくしてくれ」
「本当じゃな!!おう!持つべき者は友よ!!……フンッ、前の小娘は何の役にも立たん」
カオスは元のテンションに戻る。やはり反省は無い様だ。
「………」
響子はこの一連のやり取りに、声を出すことが出来ない。
「たははははっ、すんませんね。では続きを……で、なぜ、俺を日本に留めようと?俺は一学生に過ぎませんよ」
「……『救済の女神』の後継者、さらにあのマテリアル・バーストを阻止できる力を持つ魔法師を一学生とは言わないわ」
「まあ、そうなるっすよね~。でも、力は持っていても、俺は飽く迄も学生っすよ。……達也もね。それを日本の命運を任せるって事っすか?高々16、7のガキに」
「…そうよ。私達は君や達也くんに頼らないと、防衛もままならないのが現状なの」
響子の顔が苦しそうに歪みながら答える。
「はぁ、まあ、何ですかね。どこの国も一緒かもしれませんが、国内で権力の縄張り争いに力を入れるばかりで、本来の目的を忘れちゃってるんじゃないっすかね。自分たちのプライドや権力と国の行く末、どっちが大事なんすかね」
「私だって分かっているわよ!でも、今はままならないの……だから、君たちに頼るしかないの」
響子は感情的になっていた。響子自身もそれをひしひしと感じていたのだろう。
「小僧、その辺でやめてやれ、国とは、権力者とは概してそう言うもんじゃて、わしが1000年生きてこの目で見てきたのじゃ、人間の本質は変わらん。この小娘を責めても仕方がない事じゃ……」
カオスは横島を制す。1000年と言う膨大な時間を過ごし、歴史を生で見てきたカオスの言葉は、まさにそのものを意味している。
「すんません。言いすぎちゃいました」
横島は素直に頭を下げる。
「……その、私も感情的になってごめんなさい」
「交渉の件ですが、こっちの幾つか条件を飲んでくれたらOKすよ。そんな難しい事じゃないんで」
「その条件とは」
「俺が第一高校に復帰出来る事。あと単位は何とか誤魔化してください。皆と一緒に進級したいんで」
「それは可能だと思うわ。上には正式に確認を取る必要があるけど」
「次に、俺の事を調べ回るのをやめて頂けませんかね。九校戦以降、俺を監視したりする視線が絶えなかったんですが、それに付随して、俺の知り合いに関しても同じです。そんな事をやる暇があったら、大亜連合の諜報員をちゃんと排除してくださいよ」
「……分かりました」
横島の監視は響子自身も関わっていたのだ。それが全部バレていた事に少なからず驚きと、また、痛いところを突かれ、顔を強張らせていた。
「これで最後です。俺は基本的に日本に居るつもりですが、状況によっては他所にいっているかもしれません。その辺は自由にさせてというか、勝手にしますけどね」
「……それも基本的に大丈夫だと思います」
響子は意外にも横島の条件が思っていた物よりずっと軽いもので、直ぐにでも実現可能なものだったので、ホッとする。
「それと、条件とは別なんですが教えてくれませんかね。達也に済州島攻撃を命令させたのは誰ですかね?達也一個人に130万人殺させて、大罪人の汚名を着させようとした張本人」
そう言った横島の目は真剣そのものだった。
「…あ……そ、それは」
響子は答えられない。達也が済州島を攻撃した戦略級魔法師だという事もバレていた上に、その意義と意味さえも横島には分かっていたのだ。
軍人としてはそれは、命令系統で行った作戦の一部だろうが、世界的に見れば、戦略級魔法を使える人物が一人で、その様な悪魔の所業を行ったという事実だけが残るのだ。
そして、その片棒を担いでいたのは響子自身なのだ。
「小僧、やめてやれ」
「たはははははっ、響子さんに聞くことじゃなかったすね。すんません」
こうして、横島と藤林響子との1回目の話し合いは終わったのだが……ホテルから出た響子はフラフラと歩き、道端でしゃがみ込んでしまった。
響子はぞっとする。先ほどまで、とんでもない場所に居た事に、そして、横島と言う規格外の人物を今まで独立魔装大隊は敵に回していた事を……
そして、横島と言う人物を、誰にも従わすことが出来ない事実に、もはや、ドクター・カオスと同じ扱いにしなければならないのではないかと……
その頃、日本では……
リーナは対抗魔法パレードで偽装したアンジー・シリウスとして、エリカと対峙していた。
先ほどまでリーナとスターズの一行は吸血鬼となった元スターズのメンバーの一人、チャールズ・サリバンを発見し、追い詰めていた。
チャールズ・サリバン自身は、リーナの情報強化された銃弾で倒す事が出来たのだが、もう一体の吸血鬼が近くに潜んでいたのだ。
その騒ぎに、同じく吸血鬼事件を追っていた。警察組織の協力者としてのエリカと幹比古が出くわしてしまったのだ。
幹比古は、もう一体の吸血鬼を追い。
エリカは、吸血鬼の一味だと思い込んだアンジー・シリウスと対峙したのだ。
赤髪仮面姿のアンジー・シリウスの異様な姿を見れば、吸血鬼一味と勘違いされてもおかしくない。
アンジー・シリウスのリーナはエリカを軽くあしらって、吸血鬼を追うつもりでいたが、近接戦闘に持ちこまれ、対処に苦慮していた。
たかが、高校生と侮っていたリーナだが、エリカの鋭い剣撃とスピードに舌を巻いていた。
リーナはエリカの動きに対処しだし、徐々に魔法戦での優位に立ち、エリカに致命的な魔法を放つのだが、達也が介入し魔法を無効化されたのだ。
リーナは達也の介入と魔法を無効化された事に驚きを隠せないでいたが、直ぐに立ち直り、この場を立ち去る。
幹比古が吸血鬼とアンジー・シリウスを発見した際に、達也に連絡をしていたのだ。
吸血鬼に押され気味だった幹比古も達也の介入で、難を逃れていた。
エリカも見た目ボロボロになってはいたが、深いダメージは無い様だ。逆にリーナは鎖骨をやられていた。
結局は、スターズと警察組織はお互い吸血鬼を追っていたのだが、足の引っ張り合いをし、吸血鬼一体を取り逃す羽目になったのだった。
原作ストーリーはかなり加速させてます。