横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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141話 横島、吸血鬼事件を知る!!

リーナは学校を休んでいた。

病気でも怪我を負っていたのではない。

まあ、怪我はしているが、学校に行けない程ではない。

緊急性のある命令で動いているわけでもない。

 

マンションの自室でふて寝をしていたのだ。

昨晩も、吸血鬼共を追っていたのだが、達也と深雪、そして達也達の師匠、忍術使い九重八雲に出くわしたのだ。

そして、達也に勝負を此方から挑みかけながら負けてしまい。その後、一対一で深雪と魔法による勝負を行い負けたのだ。

さらに、スターズのメンバーは九重八雲に無力化される始末。

完膚なきまでにこの3人にやられたのだ。

 

(グスッ、スターズの総隊長たる私が、たかが高校生二人に負けるなんて……しかも、一週間前もエリカにまで力で拮抗され……なんなの日本の高校生ってみんなあんなに強いの?しかもあの達也の師匠とかいう忍者があんなに強いなんて聞いてないわよ)

 

リーナはシーツを頭からかぶり、涙目になっていた。

 

(タダオもなかなか強かったわよね。タダオ、あなたの友達はみんな強いのね。……でもなんだかタダオは他の第一高校の人達と全然雰囲気が違っていた。なぜ?全然殺伐としてないし、フランクだし、いつも優しいし、私をいっつも立ててくれるし………タダオ、会いたいな)

 

シーツから顔上半分を出し、携帯端末から横島の写真を眺めていた。

 

 

「リーナ、いい加減に起きて下さい。学校をさぼるなど……先日の夜、何があったのですか?」

同居人でリーナの補佐官をしているシルヴィア・マーキュリー准尉がリーナの部屋をノックし、起きる様に言う。

 

リーナはのろのろとベットから出て、扉から寝間着のまま出てくる。

「シルヴィ……」

 

「朝食を用意しましたので、まずは食べて下さい」

 

リーナはそのままの格好で食卓につき、朝食をとる。

 

「それで、リーナ……昨日の夜、3時間も音信不通になり、さらには、スターズのサテライト級を4人全員重傷状態で回収する始末、何があったのですか?彼らは全員病院で手当を受けておりますが、リハビリが終わるまで長い時が必要となります。本国に送還が妥当でしょう」

 

「やはり、本国からお咎めがあるのでしょうか?」

 

「そうでしょうね」

 

「うううっ、シルヴィ……スターズの総隊長の任を返上させてください」

 

「どうしたのですか、リーナ…いや、シリウス少佐らしくない」

 

そこでリーナは先日起きた達也達との事をシルヴィアに話した。

「シルヴィ、たかが高校生に負ける総隊長なんてあっていいのでしょうか?もう自信の欠片も残ってません」

 

「彼らは普通の高校生ではありません。あの『灼熱のハロウィン』を引き起こしたかもしれない容疑者なのですよ。その実力からすると、十分あり得るではありませんか……リーナが体を張ってそれを証明したのではありませんか?」

 

「……そうよ!あれは普通じゃないわ、達也も、深雪も!しかも達也のあの魔法は分解魔法かも知れない!私は、吸血鬼を追って疲弊したところでの二連戦!!今度は負けないわ!!それと尻尾も掴んでやるんだから!!」

リーナはシルヴィの励ましの言葉に見事復活を果たす。

 

「……」

シルヴィは逆にこんな単純で大丈夫なのかと心配にはなるが、元気になった事で良しとしようと思うのだった。

 

 

 

 

翌日、学校でエリカは非常に機嫌が悪かった。最早誰も話せる雰囲気ではない。

 

一昨日、警察組織側のエリカ、幹比古は、達也の協力のもとに、吸血鬼を追っていたのだ。

スターズとも出くわしたが、達也と深雪たちがスターズを引き受けてくれ、吸血鬼達を追う事に専念できたのだが、十師族側の七草真由美と十文字克人達とも出くわした上に、上手く連携が取れずに取り逃がしたのだ。

予め達也から、エリカ達だけでなく、十師族側にも吸血鬼の情報は共有してしかるべきという事で、流してあるとは聞いていた。その事、自体に不満をも持っていた所に、いざ現場で鉢合わせし、しかも連携が取れずにターゲットである吸血鬼達を取り逃がす事態になり、さらに不満が募っていた。

 

その事で昨日の放課後、達也は気を利かしたつもりで、エリカ、幹比古、真由美、克人を呼びつけ、話し合い場を設けたのだが、主催者たる達也自身はとっとと引き上げて行ったのだ。

残されたエリカは最初から真由美達に敵愾心丸出しで接しているため、真由美の対応も自然とそちらよりになり、話し合いはスムーズにならない。幹比古は二人の間を一生懸命取り持つが一向に良くなる気配は無い。十文字は黙して座ってその会話を聞いているだけだ。

そして、この達也が設けた話し合いの場はエリカの機嫌の悪さをさらに悪化させたのだった。

 

 

「幹比古大丈夫か?」

達也は教室に帰って来た幹比古に声を掛ける。

幹比古は1、2時限目の授業は保健室で過ごしていたのだ。

 

「達也…恨むよ」

幹比古は達也を恨めしい目で睨む。

 

「どうした。穏やかじゃないな」

 

幹比古はそんな達也に昨日の、エリカと幹比古、真由美と十文字克人での吸血鬼事件の連携の話し合いの場について話す。

結局話は進まずに、幹比古の胃痛が限界にきて終了したのだ。

その影響で、幹比古は今日の1、2時限目を保健室で寝ていたのだ。

達也に恨み言の一つや二つ言っても仕方がないだろう。

 

「……大変だったね」

事情を知らない美月だが幹比古にそう声を掛けた事は幹比古にとって若干癒される気分になる。

 

 

 

その美月だが、昼休憩時間、皆といつも一緒に昼食を取るのだが後で行くと言って、校舎を出て、とある人物に連絡をしていた。

 

「あれ?美月ちゃんどうしたの?まだ、この時間学校でしょ?」

その人物はUSNAに滞在する横島だった。普段は霊視や霊気の訓練の事で夜に連絡をしていたのだが、今日に限ってこの時間帯だった。

 

「横島さん寝ている時間にごめんなさい。あの、私、今日学校に来てから不安感が止まらなくて、それが時間が経つと共に大きくなるんです」

美月はそんな事を横島に言う。

 

「なにかあったの?」

横島は美月の霊力が徐々に高まっていたのは知っていた。横島がいない間、真面目に訓練していれば、以前には感じられないような事も認識できるようになる。特に美月は感受性が非常に高いため、美月が言う不安感とは高まった美月の霊力中枢が危機をしらせているのだろう。虫の知らせと同じく危機察知能力の一つだ。

横島は美月の周りに良くない出来事が起こる可能性が高いと踏む。

 

「実は、皆には横島さんに迷惑かかるからと、口止めされていたのだけど、今東京で、頻繁に人が襲われる事件が……それが吸血鬼の仕業らしくて……そのちょっと前にレオくんが吸血鬼に襲われて今も入院中なの……私には詳しい事は皆は言わないけど、みんな吸血鬼を追っているみたいなの、それとこの不安感が一緒なのかは分からない。でも、何か良くないものが、近づいてきている様な気がして仕方がないです」

 

「!!……あのバカ達は……美月ちゃんそっちは何時間目?それと学校内に不穏な霊気を感じない?」

まさにその吸血鬼は横島がダラスで捜索していたダンタリオンの悪霊たちだと横島はその話で判断した。

 

「はい、今は昼休憩です。今の所、構内で不穏な霊気を直接感じません。……だから、勘違いかもしれないのですが……」

 

「もしもの対処だ。全身に気を入れて、霊気を高め、自分の体内に巡らせるイメージをもつんだ。それで、吸血鬼は美月ちゃんを容易に憑り移ることも霊力を奪う事も出来ないはずだ。それと幹比古に連絡入れる様に言ってくれ」

 

「はい……」

 

「直ぐじゃない……だから、十分落ち着いてから、みんなに伝えて、吸血鬼にあったら逃げろと」

 

「はい……横島さん」

 

「大丈夫」

そこで通話を切る。

美月は何時もであれば、エリカにまず相談するのだが、エリカは今は話しかけれる雰囲気ではない。次に、幹比古に相談しようとしたのだが……どうやら、精神的に参っている様だった。しかし、このどんどん広がる不安感に耐えかねて、横島に連絡をし相談したのだった。

 

 

 

 

横島は、美月にはまだ大丈夫と言っておきながら焦っていた。

カオスの部屋に緊急だとノックをすると、マリアに引っ張られながらカオスが出てくる。

「ムム、なんじゃこの夜更けに……」

 

「カオスのじーさんすまん。緊急事態だ。今すぐに日本に戻らないといけない。なんかいい方法は無いか?」

 

「……クククククククッ、あるぞい。丁度おあつらえ向けの物がな」

カオスは不気味な笑みを浮かべながら横島にそう言った。

 

 

その笑みを見て横島は嫌な予感しかしなかった。




話は加速していきます。

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