誤字脱字報告ありがとうございます。
すみません。実はリーナのターンではありません。
USNA軍との交渉です。ギャグ無し><
横島はレオが入院している病院で真由美と別れた後、そのままリーナが住まうマンションまで行くことになったのだが、最寄りの駅に降りるとリーナが待っていた。
「タダオ!こっち!」
リーナは笑顔で手を振っていた。
「あれ?わざわざ駅で待っててくれたの?」
「二人きりになれるでしょ」
「たははははっ、で、リーナは俺に聞きたい事があるってわけか」
「タダオにはお見通しか……タダオはその、記憶が戻っているのでしょ?」
「ああ、戻った」
「そう…でも、よかった。記憶が戻ってもタダオってあまり変わらないから……ちょっと落ち着いた雰囲気だけど」
「そうか?学校の皆にはいつも、落ち着きがないとか、うるさいとか、蔑まれているぞ」
「日本の学生は見る目が無いだけよ。タダオはこんなに優しいのに」
そう言ってリーナは横島の左腕に自分の右腕を絡める。
「たはははっ………リーナの任務先って日本で、しかも第一高校だったんだな……」
「ごめんなさい。言えなくて、……それと、あの時お別れの挨拶も出来ずに……」
「いいって、任務なんだろ?それに、俺の方こそ約束の時間に間に合わなくてごめん」
「タダオの方も、実証実験で大変だったんでしょ?」
「まあ、そうかな……リーナ日本の任務って……やっぱりいいや」
横島はリーナの本当の任務について気が付いている。
USNAがマイクロブラックホール生成実験を行った経緯は、後からカオスから聞いた話だと『灼熱のハロウィン』に対抗するための実験だった事、スターズのエースであるリーナが第一高校に居るという事で明白である。リーナ達が『灼熱のハロウィン』を起こした達也を狙っている事を………
「タダオ?」
「で、昨日の件で話があるんだろ?」
「上の人も来ていて、タダオと直接話が聞きたいそうなの」
世間話をしながら、マンションに着く。
「アンジェリーナ・シリウス戻りました」
リーナは先ほどとは打って変わって、凛とした佇まいで、スターズの総隊長の顔に戻っていた。
しかし、一般のマンションの玄関でする挨拶ではない。
「お邪魔します~」
「ようこそ、ミスター横島。私はスターズのシルヴィア・マーキュリー准尉です。以後お見知りおきを」
シルヴィは玄関でリーナと横島を出迎えた。
「うわ、かっこよくて綺麗なお姉さん!僕横島!!よろしくお願いしま~す!!」
そう言ってシルヴィの両手を取って何時ものナンパまがいな挨拶をする。
シルヴィはやはりと言うか面食らっていた。
「タダオ!そういう挨拶は私だけにすればいいの」
リーナは総隊長の顔が崩れ、一気に子供っぽい態度に戻っていた。どうやら横島がいると緊張感が持たないらしい。
シルヴィの案内でリビングに入ると。ソファに座っている30代前半ぐらいに見える女性が立ち上がり、横島に挨拶をする。
「USNA統合参謀本部情報部大佐、ヴァージニア・バランスです。始めましてミスター横島」
バランス大佐は横島に握手を求める。
彼女は情報部の中でも実は監査部に所属しており、軍内の人事に大きな発言権を持っている人物でもある。彼女の報告次第では、将校と言えども、降格や退役、そして、軍規違反に問われる可能性もあるのだ。しかし、このバランス大佐、リーナの日本での一連の失敗劇に対しては、逆に擁護の立場に回っていたのだ。
「えーと、肩書とかないんですが、横島忠夫です。爽やか系のお姉さん!」
横島は何時もと違い普通に握手を返していた。
「その年でお口が御上手なんですね。……お座りください」
そういって微笑みながら、横島に席を勧める。
「たはははっ、いやー、大佐とかって厳ついおっさんとかがやるんじゃないんですか?それがこんな爽やか系のカッコイイお姉さんだったとは!」
横島はそんな事を言いながらソファーに座る。
「少佐」
「はっ」
リーナは返事をしバランス大佐の横に座り、丁度シルヴィが紅茶をテーブルに出す。
「シリウス少佐から、この程の経緯と提案を聞きました。正式に参謀本部に確認を取らないといけないのですが、その前に貴方から直接話を聞きたくて、正式の場でなく、こんなところで申し訳ないのですがご足労いただいたのです」
「まあ、こっちからの一方的な提案ですからね」
「正直言いまして、この提案を我々は受けざるを得ない。脅迫に近いと感じております」
バランス大佐は後ろ盾にドクター・カオスの名前がある事を指しているのだ。
「やっぱり?でもメリットも大きいと思いますよ」
「例えばどのような」
「既に悪霊に取りつかれているだろう人間を俺だったら、探すことが出来ます。現在日本に居るUSNA軍関係者、下手をすれば渡航者全員、悪霊に取りつかれている可能性があるので、それを一手に集めてもらえば、俺ならば判別するだけでなく、その場で対処可能ですよ。
さらに、リーナや他数名に、悪霊の対処の仕方と道具の使い方を教えます。但し実際に出来るかどうかは別ですし、対悪霊用の道具も安いものではないんでそこそこの費用もかかります。
最終的には俺が決着をつけますから、USNA軍は人に余裕が出来るだろうし、被害も最小にとどめることが出来るんじゃないでしょうか?
どうせ日本政府にはバレてるでしょうし、外交圧力かなんかで、今までの事をうやむやにするんでしょ?だったら、ここは今後の為にも協力して一枚かんでいた方が良くないですか?」
「……確かに、しかし、参謀本部は元々我が軍単独で行う予定だったものを覆させなければならないのです」
「単独で出来なかった。しかもこのままでは何もできない。被害が拡大するだけです」
「………」
「そもそも、USNA軍は悪霊の知識なんて殆ど持ち合わせていない。悪霊はそちらの想像以上に厄介な相手です。それをどうやって倒して駆逐するんですか?」
「貴方ならばそれが実現可能なのですね。しかし我々は貴方の実力を知らない。少佐から我が軍のミカエラ・ホンゴウに憑りついていた悪霊を、学生とは言えA級に匹敵する魔法師6名をもってしても倒せなかった物を、一瞬で倒したとは聞いております。……しかし、それだけでは不足なのです。貴方は世間ではまったくの無名です」
「まあ、そりゃそうですね。たかが一介の学生を信用するのは難しいでしょうね」
「一つ確認です。少佐からあなたは古来の魔術師である陰陽師だと聞いております……氷室家の人間ですね」
「そうです」
「やっぱり……」
リーナは小声で呻く。
「横浜のあの究極の防御魔法は………」
バランス大佐は『救済の女神』のことを指していた。
「ご想像にお任せします」
「……タダオ…」
リーナは横島を色々な感情が蠢いた表情で見ていた。
やはり、『救済の女神』の発動者にして、同じ戦略級魔法師だったことに嬉しさを覚えるのだが……それと同時に、不安も覚えたのだ。
リーナはUSNAの軍人、横島は日本人で……もし事が起これば敵味方となり対峙するかもしれないからだ。
「なるほど、そうですか………ドクター・カオス氏が自らの口で助手と公言したのは、この100年で貴方だけです。此方もドクター・カオス氏と貴方の結びつきが強い事は確認しております。
さらに、貴方自身『救済の女神』の後継者。保証する人物も実力も申し分ない事が分かりました。
我々としては、もともと飲むしか無い提案なのですが……我が軍へのメリットや貴方の素性も分からずには上層部に話を通すわけにはいかず、さらに、納得もしなかったでしょう。なので、こうしてお話の場を設けさせて頂いたのです。」
「こんなんで納得してくれましたか?」
「十分です。本国からも良い答えが返ってくる事でしょう。しかし、貴方には何もメリットがないように思えますが……」
「俺は陰陽師なんで悪霊さえ倒せればなんだっていいんです。それに、同じ目的なのに争うのはばかげているし、ましては知り合い同士が争うなんてのは嫌なんで」
「そうですか……ところで、ミスター横島は日本国防軍とは折り合いが悪いという噂を聞いておりますが……そして、氷室家も国防軍とは断絶状態だとか」
「たははははっ、まあそのなんていいますか」
横島は笑って誤魔化す。
「……ミスター横島、私は貴方を、USNA軍に迎え入れたい。貴方の要求、いえ、国を挙げて最大級の厚遇をもってUSNA軍は貴方を歓迎しますよ」
バランス大佐はすかさずUSNAに勧誘を掛けたのだ。
「それは、諦めて下さい。俺は何処の軍事組織にも入りません。勿論日本国防軍にもね。俺は俺の矜持で動いているだけなんで」
「将来は……ドクター・カオス氏の元に行かれるのですか?」
カオスの拠点は知られているだけで、USNAにヨーロッパ、中東に大亜連合、オセアニアに新ソビエトにある。日本にはない。
「まあ、それもありかもしれませんけど、今の所考えてないですね。カオスのじーさんやマリアとは友達だし、まあ、お互いピンチになったら助け合いますけど」
バランス大佐は、この言葉に、ますますカオスに手が出せなくなる事実を突きつけられたのだ。
「また、お誘いしますよ。何時でも貴方のためにUSNAは門戸を開けております。……今日はじつに実のあるお話が出来ました、正式に決まり次第、少佐と実際の悪霊対策と技術協定についてつめて下さい。出来れば我が軍にえこひいきしてほしいものですが……」
バランス大佐はそう言って、立ち上がり握手をもとめ、この会合の終わりを告げる。
「よろしくお願いします。……それと、一ついいですか?」
横島も立ち上がり、握手を交わす。
「何ですか?」
「司波兄妹も俺の友人です」
「……はぁ、司波兄妹?……それが何か?」
バランス大佐はとぼけて見せる。
横島は、バランス大佐に達也を狙うなと忠告したのだ。
バランス大佐もその意図を分かったうえでとぼけたのだ。
「それだけです。では、ここで失礼します」
横島はそう言って、お辞儀して部屋を出ようとする。
「少佐、ミスター横島をお送りさしあげなさい」
「はっ、了解しました」
リーナはそう返答し、横島の前に出て、一緒に外に出て行った。
バランス大佐は横島たちが出て行った後の扉を見据え、部屋の隅に控えていたシルヴィに声を掛ける。
「シルヴィア准尉、彼をどう思いますか?忌憚のない意見を言ってください」
「はっ、彼はとても16、7才の高校生には見えません。最初は年相応なのかと思っておりましたが、大佐と話している態度が余りにも堂々としていました。またその内容にも驚きを禁じえません。……しかも彼が『救済の女神』の使い手であることはこれで確定でしょう」
「……そうですね。彼は何者なのでしょうか?いずれにしても、ドクター・カオスをもって友人と豪語する人間です。ただものではないのは確かでしょう……しかし、あまりにも欲が無さすぎる」
「シルヴィア准尉、今後もシリウス少佐を導いて上げて下さい。また、横島少年の動向も逐一上にあげる様に」
「了解いたしました」
マンションを出て、横島とリーナは並んで歩く。
「タダオ……やっぱり氷室で、『救済の女神』の後継者だったのね」
「いや~後継者どうかは分からないけど、横浜の防御術式は俺の仕業かな」
「タダオ、さっきの最後に言った言葉……達也に聞いたの?私と達也と深雪がやり合った事を……」
横島がバランス大佐に言った「司波兄妹も俺の友人」という言葉を、リーナも理解していた。
リーナは司波兄妹と争った際、命令とは言え『灼熱のハロウィン』の容疑者として、また、スターズのアンジー・シリウスの正体がリーナであるとバレてしまい、達也を殺そうとしたのだ。
「いいや。あいつ、そう言う事をいちいち言う奴じゃないから」
「タダオ……敵にならないで…お願い。私、タダオとだけは争いたくない」
リーナは目に涙をためながら、訴える。
「何言ってるんだリーナ、俺がリーナの敵になるわけないじゃないか」
「……達也とは?」
「達也とも争わない。まあ、ケンカはするかもしれないけどな」
「なによそれ、………でも、私は……軍のスターズの総隊長なの、任務であれば遂行しなければならないの、たとえ達也がタダオの友人でも……」
リーナは俯き加減で苦しそうに言う。
「リーナって総隊長なの?へ~、まあ、そん時は全力で止めるさ」
「……なんで、私はタダオと同じ国に生まれなかったのかしら……達也達が羨ましい」
リーナは横島の腕を取り、自分の胸に抱き寄せる。
「まあ、それを言ったらキリがないし、俺もなんでイケメンに生まれなかったんだと散々恨んだものだ!あっ今もか」
「……私は、そのままのタダオが好きよ…」
リーナは横島の腕を強引に下に引っ張り、頬にキスをする。
「リ…リーナ??」
「またね、タダオ」
リーナはマンションへと走り去っていった。
横島はしばらくリーナが走り去った先を見据えていた。
「へ~、のぞき見とはいい趣味だ。俺ものぞきは大好きだけど、されるのは嫌いなんだー」
「!?」
黒羽貢は1キロ先にいる今の今まで監視していた人物が急に自分の後ろから現れ声を掛けてきたのだ。内心驚き、恐怖する。
黒羽貢の本来の目的はUSNA軍の拠点捜索と監視及びパラサイトの捜索なのだが……USNAの大物が動き、スターズの拠点の一つと思われるマンションに移動した知らせを受け、しばらく部下と共に張っていたのだが、そこにたまたま現れた横島の動向を遠方から見ていたのだ。
「おっさんがどこの組織かはしらないけど、日本政府関連は、手を引く約束したんだけど………まあ、いいや、次おっさん見つけたらとっ捕まえて、警察にでも突き出すかな~」
そう言って、横島は姿を消す。
「…………なんだ……あれは…まるで気が付かなかった。横島忠夫か……これ程とは…まずったな従姉殿にしこたま怒られるかな?」
次は、千葉家編
ギャグが出来る^^
貢出てきたけど……出オチ?
四葉偏あるのか??