横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

漸く千葉家編終わりです。
修次さん編行きましょうか~


151話 横島 千葉家に行く!!その3

本人の申し出で、エリカの次兄で渡辺摩利の恋人である千葉修次と模擬試合をすることになった横島。彼はしかも『イリュージョン・ブレード』の異名を持つ世界的に名が通っている剣術家であり魔法師なのだ。

 

 

「シュウ頑張って、無理しないでね」

 

「摩利は心配性だな、模擬試合だよ?」

修次は顔をほんのり赤める摩利と目を合わせ微笑みながら愛刀を受け取る。

傍から見ると美男美女カップルの微笑ましい一幕に見える。

 

 

「うがーーー!!摩利さんの目がハートになってるっ!!イケメンめ~!!見せつけやがって!!」

今、千葉家敷地内にある野天練習場の端で横島は対面端の摩利と修次を嫉妬の炎を目に宿し見据えていた。

修次の提案でこの野天練習場で模擬戦を行う事になった。この野天練習場は林に囲まれており、外部から見ることが出来ない。秘剣の練習などを行う際、外部に流出しない様にと作られた練習場だ。30m×20m程度の広さがあり、途中に何本か木がそのまま植わっている。

 

千葉丈一郎、寿和、エリカそして特別にレオが、併設している壁の無い8畳程の休憩所目的で作られた木造建屋に座り様子を見ている。

 

稲垣が練習場の中央で立ち、審判役をやるようだ。

「お互い中央に」

 

 

「横島くん試合を受けてくれてありがとう。陰陽師の力を存分に体験できるよ」

そう言って修次はさわやかに横島に握手を求める。

 

「ふっふっふっふ~、それはどうも、イケメン兄さん。真の陰陽師の恐ろしさを究極の術を持ってその身であじわうがいい」

横島はドス黒い笑顔で握手を交わす。

 

「……お、お手柔らかに」

 

 

「お互い、位置について」

稲垣が両者下がるように言う。

 

「……待った。お互いもっと遠くから始めませんかね~、せっかくこの広さがあるんだから」

横島はそこで提案をする

 

「それもそうだね」

 

(かかったな!!イケメン!!)

 

 

「では、お互い位置に着いたら手を上げて下さい。両者揃ったところで開始の合図をします」

稲垣はルール変更に柔軟に対応する。

 

 

横島は練習場内に幾つか生えている大きな杉の木に近づき、懐から蝋燭を二本取り出し火を付け、頭のバンダナに挿した。

そして、さらに懐から何やら取り出し、左手には奇怪な藁で出来た人形、右手には太い五寸釘と槌を持つ。

 

(ふはははははははっ!!イケメンめ!!味わうがいい!!この横島が夜な夜な、呪怨を唱えながら呪術を一本一本に我が怒りと嫉妬の炎で煮えたぎる血を混ぜた墨で書きすり込みし藁!嫉妬に狂った男どもが夜な夜なその鬱憤を晴らし心の叫びを受け入れる専用井戸の水に浸した藁縄!出来ちゃった婚をしたアイドルファンの血と涙をしみこませた和紙で出来た呪いと書いた和紙を張りつけ完成させた究極の呪いの藁人形……横島嫉妬スペシャル呪殺王人形!!

そして、嫉妬狂いの龍神が吐いた炎で錬成した真鉄で出来た五寸釘、五寸釘怨我(オルガ)!!

完璧だ!!

さらに、7回妻に逃げられた工匠が作ったと言われる憤怒の槌で、我が嫉妬と怒りと悲しみの思いを込めこめ叩き!!イケメンを地獄に落とすのだーーーーーーー!!ふはっふははっふははははっーー!!」

横島は両手に持ったそれらを上に掲げ、最初は心の中で叫んでいた様だが、途中から完全に口に出して大声で叫んでいた。

 

 

そして開始の合図

「それでは、はじめ!」

 

 

 

「ふはははははっ!!そーーーれ!!」

 

カーーーーン!!

 

横島は大きな杉の木に、藁人形…横島嫉妬スペシャル呪殺王人形を押し付け、人形の股間に五寸釘怨我をぶっ刺し、ドス黒い笑顔で笑いながら、憤怒の槌で五寸釘を豪快に打ち抜いた。

 

 

「「ぎゃーーーーーーーーー!!」」

遠方で聞こえる叫び声。

 

 

「ふはははははははっ!!思いしったかーーーー!!摩利さんを奪われたこの悲しみ!!まだまだ!!それそれ!!」

 

カンカンカンカンカン!!

 

 

「「ががががーーーっ!!ごわーーーーーーっ!!」」

 

 

「陰陽師横島!!最強の呪詛術!!ここでなったりーーーーー!!ふははははははっ!!その叫び声が聞きたかったのだーーーー!!それそれそれそれそれ!!」

 

カンカンカンカンカン!!

 

 

「「ふへへふへえ~あばばばばばっ!!ブクブクブク!!」」

 

 

 

横島は凶悪な笑顔で一心不乱に呪いの藁人形の股間にささる五寸釘に槌を振るう。

 

 

しかし、そんな横島にうしろから爽やかに声を掛ける人物がいた。

「横島くん?何やってるんだい?」

 

「今、いいところだから!!あとでな!!ふはははははっ、このこの、イケメンめ~あそこを使えなくしてやる!!」

 

「おーい、って、試合中なんだけど?」

 

「何見てんだ、試合してんだろうが!!……ってあれ?」

横島が再度声を掛けてくる人物にうっとおしそうに振り返るが……

 

そこには爽やかな笑顔で此方を見ている修次がいた。

 

「あれ?あれれ?あれれれれ?あの~、股間痛くないっすか?」

 

「君、こんな時に何を言っているんだい?相変わらず面白いね」

修次は全く何ともなさそうだ……であれば、あの叫び声は……

 

横島はハッとして、木造建屋の方へ振り迎えると。

 

そこには、股間を抑え悶絶し白目をむいて泡を吹いている丈一郎と寿和が転がっていた。

そう、さっきからの叫び声は丈一郎と寿和の物だった。

そのすぐそばには、顔面黒々とした凶悪な笑顔でそんな二人を眺めているエリカがいた。

そして、その笑顔のまま目を光らせ、横島に視線を合わせてきた。

 

「ひぃーーー」

横島は余りの恐ろしさに身震いをし、後ずさるが……

 

横島の肩に手が乗る。

「なぁ、横島~、これはなんだ?」

 

いつの間にか横島の後ろを取り、目が据わり怒りの形相の摩利が、五寸釘怨我が股間に刺さった嫉妬スペシャル呪殺王人形を片手に横島に問いかけていた。目が据わった状態で普段よりもゆっくりとした口調で話しかけてくるからよけいに怖い。

 

「あばばば……」

 

「何だと聞いているのだ?」

 

「はいぃぃぃ!!あ、あれ?な、なんですかね。こ、この不気味な人形は?この道場のオブジェ?」

 

「ほーぅ?」

 

いつの間にか、凶悪な笑顔をしているエリカが摩利の横に居た。

「へ~、この釘をこうすると」

エリカは摩利が持っている人形の股間に刺さった五寸釘をグリグリと回す。

 

「「はべべっ、ほご~!!」」

遠方で丈一郎と寿和の悶絶声が聞こえてくる。

 

「ふーーーん。なるほど~~これ私でも使えるんだ~~」

エリカの凶悪な笑顔がさらに歪む。

 

「な、なんのことでせう」

 

「知ってるんだぞ~、達也くんから聞いていたからな……九校戦閉会式のダンス前、一条将輝に使っただろ?」

そう横島は、九校戦の閉会式の際、第三高校一条将輝のイケメンぷりに嫉妬し、呪いの藁人形を使ったのだ。その際、その人形は摩利に見られていた。

今回の人形はその時の能力は比ではない。今回の人形は横島が陰陽術の粋を使い完成させた究極の呪いの人形だ。一般の人間でも効果が発現できるレベルの代物なのだ。

 

 

しかし、今回どこでバレた?

 

 

実はこの模擬試合前、エリカが試合で使用する道具の持ち物検査を申し出ていたのだ。

女の勘なのだろうか……いつもはそんな事はしないのだが……

 

横島は修次との試合を渋々受けたのだが……摩利といちゃつく修次を見て、究極の呪いの人形を使う事を決めていた。

横島は、神通棍と札類、そして呪いの人形セットをだす。

横島は人形について、使い方など誰も知らないだろうと高を括っていたのだ。

 

しかし、摩利が九校戦の後、達也にあの人形について、何気なしに聞いていて、達也も起こった現象を素直に話していたのだ。

 

横島がトイレに行っている間、摩利がたまたまエリカが横島の持ち物を検分しているのを見て、呪いの人形を見つけてしまったのだ。

そして、二人は呪いの人形からはみ出ている毛を見て、修次の物だと判断したのだ。恋人とブラコンの力なのだろう。

事もあろうか、エリカはその毛を呪いの人形から取り出し、丈一郎と寿和の毛を入れ込んだのだ。

 

 

 

 

そして、今……

 

「横島、観念しろ、お前の所業は既にバレている。それでシュウの……大事なゴニョゴニョ……を……」

摩利は最初は目が据わっていたが、途中から急に顔が真っ赤になる。

 

「修次兄様に何てことを……使えなくなったらどうする気かな?」

エリカは凶悪な笑顔のまま横島に迫る。

 

「……あの~エリカさん?お父さんと、髪の毛モジャ兄さんはいいの?」

 

「別にいいわよ、あんなのは………」

泡吹いて気絶している丈一郎と寿和は哀れにも、エリカにあんなの扱いをされている。

 

「横島、貴様をどうしてやろうか!!」

摩利は既に横島を殴る気満々である。

 

「……待ちなさい。もっといい方法があるわ」

エリカはそう言って摩利を制し、横島の髪を無造作に引っ張り10本程抜く。

 

「横島……この髪の毛をこの気色悪い人形に居れて、学校の玄関に置いとくの……『この人形の釘をこの槌で叩くと横島は必ず呪われます』って書いて……もう一筆必要ね。『リーナを救おう変態から』って書いておこうかしら……ボーイフレンドの横島くん」

エリカが凶悪な笑顔で言った提案は横島最大のピンチを招きかねない。そんな事をしたら、嫉妬の力により何倍にも増した強力な呪詛が横島の股間にダイレクトに伝わる事間違いなしである。

 

「それはいいな、真由美からも聞いているぞ。なんでも金髪美女がお前に纏わりついて、全校男子の嫉妬がお前にむいているとか……クククッ」

摩利もその提案に同意する。

 

「はがががが……あがが、あの~~、すいませんでした!!!!!!!!」

横島はエリカと摩利の言葉に学校で呪殺王人形が使われることを想像すると……死より恐ろしい拷問に遭う事を理解した。

横島はその場でジャンピング土下座を敢行する。

 

「ごめんですんだら警察いらないよね~」

「風紀委員も不要だな」

 

「もうしません!!ご勘弁を~~!!」

涙をチョチョ切らせながら頭をコメツキムシの様にバッタバッタと下げ続ける横島。

 

「摩利もエリカも、もういいんじゃないか?横島くんも多分、陰陽師と悪霊の恐ろしさを教えてくれるために善意でやってくれたのだと思うよ。やり方は過剰だけど……」

修次は苦笑しながら、摩利とエリカを止める。

 

「イケメン~~、やっぱいい奴だ~ゴメンよ~~」

 

「修次兄様は甘い!!横島は修次兄様に悪意だけを向けていたのよ!!」

「シュウ、こいつはこれぐらいしないと懲りない奴なんだ!!」

エリカと摩利は修次に思いっきり反論する。

 

「取り合えず、その、悪霊とか陰陽師の力はわかったから、目的は達成だよ。だから、もういいじゃないかな?」

修次はさらに説得をするのだが……

 

 

「兄様、私の気が収まらないの……」

「シュウ、私はこいつを先輩として少々指導しないといけないのでな……」

そして、横島は肉屋に売られて行く子牛のような目をしエリカと摩利に引きずられ、林の中に消えていった。

その後、横島の断末魔が絶え間なく聞こえたとか……

 

 

今回の一部始終を唖然と見ていた幹比古とレオは……

「女の人って怖いね……」

「ああ、しかし、エリカの奴が特別だと思いたい……」

 

 

さらに、股間に最大級のダメージを受け、気絶している丈一郎と寿和はしばらく放置されたとか……

 

 

 

 

そして、翌日、協力体制について、エリカからOKの返事を聞く事になる。

丈一郎は布団の中で二つ返事で頷いたとかなんとか……

ここで千葉家との正式な契約がなされたのだが……釈然としない。

 

 

 

あの呪いの人形、横島嫉妬スペシャル呪殺王人形はジャンケンの末、渡辺摩利が大切に保管しているそうだ。

修次に……将来使われない様に……祈るばかりである。

 

 

 

 




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その頃達也は……
「くしゅん」

「あら、お兄様、風邪でも?」

「いや、何故だか悪寒が……誰か噂でも?」

「まあ、お兄様らしくない事をおっしゃるのですね。横島さんの影響かしら?」


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千葉家から帰った横島は……
「アレは他で使われたらヤバいし、効力がバレたら、狙われるしな~、術を解除しておこう~~」

確かにそうである。あの効力で誰でも扱える等、レリック(オーパーツ)そのものだ。
100年前の仕様と違い使用者に呪いが返る事が無い。

横島は何やら印を結ぶと摩利の所に行った呪殺王人形の効力は無くなったのである。

今の世界では、この世の物ではない物とは繋がりが無い。ましてや神や魔も滅多に介入できないこの世界では、呪いの類の発動は通常出来ない。なんだかんだと理由は突けているのだが。実際には呪いに見せかけた横島の術式である。しかしどんな術式なのかは誰も分からない。それとも、神魔に匹敵する存在である横島自身が呪いを仲介しているその物の存在なのかもしれない……

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次は七草家編ではなく、バレンタインデーが間に入ります。

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