誤字脱字報告ありがとうございます。
かなり長くなったので分割してます。
今回の話はつなぎ要素が高い感じですが……
ちょい鬱展開?
E組の教室の前まで到着したテンション高めの横島を先頭にエリカ、美月、達也、幹比古が見たものは……
教室の扉から廊下に溢れんばかりに出来た人だかりだった。
しかも全員女生徒……
「なんだ?」
「なんでしょうね?」
横島と美月は疑問の声を上がる。
「これじゃ、教室に入れないわね……横島、様子を見に行くわよ」
「お、おう」
エリカは横島を引っ張り、女生徒の人だかりの中に入り込もうとするが、隙間が無い。
そこでエリカはとんでもない作戦に出る。
「横島が来たわよーーーー!!そこをどかないと知らないわよ!!」
横島を前にしエリカがそう叫ぶと、女生徒は一斉にこちらを見て、横島の前から女生徒達はサーっ引いて行き、そこに隙間が出来て行く。こうして教室の中まで道が出来上がった。
エリカは横島をモーゼの杖に、女生徒を海に例え、道を作ったのだ。題して「横島で女性の海に道を作る絵画」がここに完成した。
『ちかん、変態、覗きの横島』と普段から女生徒に恐れられている横島だからこそ出来る代物なのだ。
「エリカ……俺、普段からそんなに酷い?」
横島は涙を流しながらエリカに聞く。
「……それほどでもないけど、イメージはバッチりね!!」
エリカは横島にいい笑顔でグットのサインを出す。
しかし、そんな事も吹っ飛ぶような驚愕の事実を二人は教室に入り知る。溢れんばかりの女生徒の人だかりが出来ていた理由は……よく知る人物が引き起こしていたのだ。
「ガーーーーーーーーーーー!!なんじゃそりゃーーーーーーーー!!」
「うそよ!!これは夢よ!!夢に決まっているわ!!」
二人共同じような反応を示す。この二人、なんだかんだ言っても普段は結構相性がいいのだ。
二人が反応した先に……
女生徒の列をなしている先には……アイドルの握手会さながらに、レオが堂々とチョコを貰う姿があったのだ!!
しかも、女生徒一人一人に声を掛け握手し、もらったチョコの小箱を次々と用意していただろう紙袋に入れていく徹底ぶりだ!!レオの後ろに既にチョコ満載の紙袋が二つ出来ていた!!
そんな横島とエリカの叫びに気が付いたのか、レオがニカとして笑顔で軽く挨拶をしてくる。
「よっ!お二人さん」
横島とエリカは固まったまま動かない。
横島とエリカが作った道から、追って、達也、幹比古、美月が教室に入って来る。
しかし、達也の腕にも、幹比古の腕にも、チョコの小箱が乗っていた。
どうやら、この女生徒の集団。レオだけの為ではなかった事が判明。
目的はレオ、達也、幹比古だったようなのだ。
既に達也と幹比古の机の上にはシャイな女生徒が置いていったのだろう。チョコの小箱が小山に置かれている。
そこからが大変だ。達也と幹比古も席に付く前に次々とチョコ箱を渡されて行くのだ。
美月は苦笑しながら自分の席に付く。
エリカと横島は並んで立った状態で固まったままだ。
始業時間の予鈴が鳴ったところで、女生徒たちが引き、ようやく、エリカと横島は再起動する。
「レオ!!あんた!!何なのよ!!何これ!!」
「レオ!!お前は俺の仲間だと思ったのにーーーー!!イケメン組だったとは!!」
エリカと横島はレオに勢いよく迫り、叫ぶ。
横島の言動はおかし過ぎる。どこがどう見ても横島とレオは違うのだが……
「はぁ?何言ってんだよ、チョコに決まっているだろ?バレンタインデーなんだからよ」
レオはそんな事を平然と当然の如く言ってくる。
「チョコの数よ!!数!!あんた、なんでそんなにモテてるのよ!!」
「数?……ああ、この一袋は、学校に来るまでになんか貰った。後の二袋はさっきの行列だ」
平然と言い切るレオ。どうやら、レオは第一高校に来る前、中学でも同じ状況だったのだろう。
レオがモテるのは何となくわかる。レオは快活なイケメンなのだ。人当たりも良く、面倒見もいい、誰にでも優しいし、しかも誰にでも気さくに話しかけ、屈託のない笑顔を向けるのだ。
それにときめかない女子は居ないのだろう。天然的に女性を引き付ける要素が満載なのだ。
エリカもそれに対なす快活美少女なのだが……性格がややこしいためここまでモテない。
「………う、うううう、レオ~~~、お前なら俺の夢をかなえられるかも知れない。美女に囲まれて、爽快に歌を歌う事を……」
「はあ?俺だけじゃないだろ。達也だって、幹比古だって……ほら、お前だって……」
レオは横島がしょげて泣いている姿を見て、そんな事を言う。
しかし、達也と幹比古はわかる、結局彼らも、紙袋1袋程度のチョコを貰ったのだから……しかし横島は?
レオはその後、横島机を指す。
すると横島の席にも小箱やらなんやらが、山盛り一杯になっていた。
「げ!横島まで?」
エリカはその山盛り一杯の物を見て盛大に驚くのだが……
しかし、横島の机の上の山盛りは何かが違う。
確かに小箱や包みが崩れんばかりに山盛りに置いてある。
レオ達が女生徒達からもらったチョコの小箱は綺麗な包装紙でラッピングされ、女の子らしい可愛らしいリボンが付いている。包みも同じくだ。
横島の机の上に置いてある小箱は……良く言えば和風、箱一面に漢字一文字でデカデカと書かれていたり、文字が書かれた白紙張られているものが多い。字もなぜか赤字で書かれていたりするものがほとんどだ。
悪く言えば不吉としか言いようがない。デカデカと書かれた一文字は「呪」が一番多く、次に「殺」その次に「爆」「死」「滅」「捥」等が続く、実におどろおどろしい雰囲気を纏った小箱や包みは、バレンタインデーのテーマである「愛」などひと欠片も無く、憎悪や悪意しか伝わらない物であった。
「こ…これは……」
その時、E組の生徒全員の情報端末と教室黒板風スクリーンに1限目が休講になり自習時間になる事を告げる。魔法訓練機器の故障が原因らしい。
横島とレオに幹比古、達也、エリカ、美月達は悪意と憎悪で出来た小箱や包みの山が置いてある横島の机を囲む。
「たははははっ、モテモテだなーーーーーはっはっはーーーーはぁ」
涙チョチョ切らせながら乾いた笑いでそんな事を言う横島には同情の目を送るしかできない。
連日リーナに過剰なスキンシップを受ける横島への嫉妬心から来る嫌がらせだろう事は
中身を見なくても分かる。
そして皆は、その小箱の処分をどうするか決める。
取り合えず中を開けて、バレンタインチョコなのか、嫌がらせの呪い小箱なのかを精査することにした。
「みんな、すまん。こんな事に付き合わせて………ありがとう」
横島は心の底から皆に礼を言った。いや嬉しかったようだ。
横島は100年以上前の学生時代や私生活においても同じような事があったが、結局片づけや対応を一緒にしてくれたのは絹だけだったからだ。
「まあ、なんだ。こんな事もあらーな」
「横島は普段の印象が何故か良くないからね」
「お前との付き合いだ。こんな事も想定済みだ」
レオ、幹比古、達也は呪い箱等を開けながらそう言って、横島を慰めている様だ。達也の言いようは余りにも不器用だが……
エリカも最初は気持ち悪がっていたが、呪い箱の一つ二つ開けてみて手紙を読み。シャレにならない事を痛感し、憤っていた。
美月も数個開けて、中身を確認したところで、バンと机を叩き立ち上がり。
「なんて、心ない事をする人たちでしょう!横島さんが何をしたというのでしょうか!!陰険かつ矮小な行いを恥ずかしいとは思わないんですか!横島さんに対する嫉妬をこんなくだらない形でしか表せないなど、こんな幼稚な行いを平然と行う人間が同じ校内に居るだけで腹立たしい!!クラスの皆もこれを置いて行った人を見たはずです!!なぜ止めなかったのですか!!」
美月は本気で怒っていた。
普段は温厚で大人しい美月がこれほど怒気をはらんでいる姿をクラスメイト。いや、エリカや勿論横島達さえ見たことが無い。
クラスメイトはその形相に恐れを無し、言葉が出ない。
勿論エリカもだ……
「み…美月?」
「美月ちゃん……ありがとう。俺のために怒ってくれて、まあ、俺も悪いところあるから、クラスの皆が悪いわけじゃないし……その辺で」
「いいえ!言わせてもらいます!!横島さんにリーナさんが明らかに好意を持ち、過剰なスキンシップをしているのを気に食わないということで、こんなくだらない事をしているのです!!リーナさんは美人で魔法も勉学も優れ、普段は大人びた素敵な人です。男子は皆そのリーナさんに憧れや好意を抱くのは分かります。しかし、そのリーナさんがなぜ横島さんに好意を抱いているのかを考えもせず!!ただ自分の嫉妬心を稚拙な嫌がらせで横島さんに当たっているだけの事です!!
リーナさんは横島さんがこの第一高校の誰よりも魅力的に見えたから!!素敵だと見えたからではないのですか!!ならば、横島さんより魅力的になる努力をし、リーナさんを振り向かせばいい事では無いですか!!そんな努力もせず、横島さんに嫌がらせする事だけを考えるなど、自分が既に負け犬だと認めていると同然です!!そんな輩にリーナさんが、いえ、心ある女性が振り向くとは到底思えません!!」
美月は肩で息をしながらこう言い切り、そのまま席に座り、再び呪い箱の精査を行いだした。
クラスの皆や、横島を含む何時もの面々はその美月の弁論に圧倒され、言葉が出ない。
しばらく、教室内は静寂で包まれる。
「……美月、怒らせるとやっぱ怖いわ、聞いている私でさえビビるし、しかもぐうの音も出ないぐらいの正論だし…」
エリカはこの普段は温厚で大人しい親友を絶対に怒らせまいと心で誓うのであった。
「そう?エリカちゃん、普通だと思うのだけど……」
「柴田さん!カッコイイ!!感動したよ」
幹比古はそんな美月をキラキラした目で見ていた。
「おい達也、裏ボスはお前だと思っていたけど、美月だなこれ」
「……そうだな、深雪より美月を怒らせない方が良いらしい」
レオと達也は耳元で小声でこそこそと話し、意見が一致したようだ。
「美月ちゃんごめん、嫌な思いさせてしまって………そして、ありがとう」
横島は再度美月に頭を下げ、横島は感謝する。横島は涙が出そうだが我慢していた。ここまで言ってくれる人はかつて何人居ただろうか?思えば、ルシオラや絹、小竜姫ぐらいだろう。
「横島さんは優しいから…でも、ちゃんとリーナさんの事も考えてあげて」
「いや~、リーナの場合、ちょっと特殊というか、友達が俺だけだし、USNAの時からあんなかんじだったから、マリアによく怒られていたよ」
「……横島、あんたそれ本気で言ってるの?」
「横島さん……鈍感過ぎるのはどうかと……」
エリカと美月は呆れた顔で横島を見る。
「あれ?なんで二人とも怒っているの?」
「こりゃーアレだな、北山も大変だな」
レオも呆れる。
「なぜ、そこに雫ちゃんの名前が?」
「……そこまでくると病気だよ横島」
勿論、幹比古も呆れた顔をしていた。
今回の話しはふりでしかない。
次は、あの人登場~