横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

バレンタインデーの続きです。



154話 横島 ついに来たバレンタインデー!!その3

横島への陰湿な悪戯に美月の怒りが爆発。E組のクラスメイトは普段大人しい美月だけに驚きはひとしおでは無かったはず、

その後クラスの皆は、反省したのだろう。謝りにきたり、手伝うよと声を掛けてきてくれたが、大人数はいらないわとエリカはやんわり断りをいれる。

 

 

なかなか減らない横島の机の上にある呪い箱の選別処分作業。

バレンタインチョコなのか、呪い箱なのかを確認し、中身に危険物がないかを調ベながら処分を進めていく。

爆発物などはなかったが、股間に釘が刺さった人形や、死体人形、どくろ人形や呪いの言葉が掛かれた手紙や、棺桶の模型が入っている物もあった。本物の死骸や汚物が入っていないだけまだましなのかもしれない。

 

 

「でも、横島も少し反省しないと、リーナとくっ付き過ぎだよ。まあ、あれがUSNAでは普通なのかもしれないけど、ここは日本でしかも、特に堅苦しい魔法科高校なんだし」

幹比古とこのような事になっている原因について横島に注意をする。

 

「いや~、俺もそうは思うんだけど、なんていうか、なかなか言うこと聞いてくれないし、妹みたいな感じだし、叱るに叱れないと言うか……」

 

「はぁ~、あんたって人には言うくせに本当に自覚が無いのね。リーナも大変ね」

エリカは、呪いの小箱を精査しながら、横島の鈍感さに呆れ、頑張っているリーナに同情する。

 

「横島さん。リーナさんって、あんなに甘えた態度をとるのは横島さんの前だけですよ。普段はキリっとして本当にカッコイイ感じなんですよ」

美月も再度横島にリーナのギャップについて説明をする。

 

「そ?そーなの?」

 

 

そうこうしている内に、呪いの小箱の山が無くなって行き、ひと際大きな高級そうな箱が現れる。

その高級そうな木箱は漆黒で彩られており、錠前までが付いている。丁寧にこれまた高級そうな紫のリボンが括り付けてある。

さらに達筆で横島忠夫様と掛かれたメッセージカードと箱を開ける鍵がリボンに添えられていた。

 

「これはどっちでしょう。今までのは全部、呪いの小箱だったのだけど……」

美月は対応に困っていた。

 

「そうね。本当にバレンタインチョコだったら、横島宛とはいえ、送った子に悪いし、幹、古式魔法で調べられる?」

エリカもどちらか判断に困っているため幹比古に頼む。

 

「さすがに教室で魔法をこんな事に使うのはヤバいよ」

確かに、構内で許可なしに魔法は一般生徒が使う事は禁止されている。

 

「開けてみるしかないか……横島、いい?」

エリカは一応横島に断りを入れる。

 

「別にいいぞ。見られて困るもんじゃないし」

 

「は~、あんたのそう言うところがダメなのよ。じゃあ、男連中でこれ開けてみて」

エリカは横島の言動に呆れながら、高級感あふれる漆黒の箱を指さし達也達に言う。

 

「ならば横島自身に開けさせればいい」

達也は当然だと言わんばかりに言う。

 

「達也くん、察してあげなさいよ。横島は今、かなり精神的にダメージを受けているのよ。この大きさの箱にとんでもない物が入っていたらどうするのよ。ここは男同士の友情を見せる時じゃないの?」

エリカは珍しく横島にかなり気を使っている様だ。まあ、誰でもこの惨状には同情はするのだが……横島は実際それほどダメージを喰らっていない。

100年前、人類の敵と蔑まれて嫌がらせなどを受けていた事に比べれば随分ましだからだ。

 

「よし、じゃあ、ここは恨みっこ無しのジャンケンで勝負だ!」

レオの提案で誰が呪い箱を開けるかをジャンケンで決めた。

 

そしてジャンケンで負けた達也が開ける事になる。

達也は自分が出したグーを見つめながらプルプルしていた。ここぞという所で負けたことが悔しかったのだろう。

 

「達也、向こうであけてほしいな。とんでもない物だったら見たくないし」

幹比古はそんな事を言う。ジャンケンに勝ったことが嬉しかったのだろう。本気で見たくない訳じゃないのだが、わざとこんな言い方をした。

 

「くっ、次は負けん」

そう言って負けず嫌いの達也は、自分の席にその漆黒の箱を持って行き、鍵を開け、箱を持ち上げると、大きなハート型の高級そうなチョコケーキが入っていた。きっとこれは本命チョコなのだろう。

 

しかし、達也はそのケーキを見て固まってしまった。

しかも息をするのを忘れるぐらい。

そして、自身の心臓の音が耳にうるさいぐらい入ってくる。

冷や汗が背中に流れる事も感じる。

 

上箱を持ったまま固まっている達也を皆は離れた場所から訝し気に見ていた。

 

 

達也はそれが横島に送られた本命バレンタインチョコケーキだったからその様な状態に陥ったのではない。

その大きなハート型のチョコケーキの上に乗っているメッセージカード状のホワイトチョコの板チョコに書かれている文字を見てそうなったのだ。

 

書かれていた文字とは。

 

 

 

 

おねえさんから

   ステキなあなたへ愛をこめて

               四葉真夜

 

 

………………………………………………………

………………………………………………………

………………………………………………………

………………………………………………………

………………………………………………………

達也の思考は完全に停止する。

 

 

「ねえ、達也くん、どうだったの?」

「まさかの危険物か?それとも汚物とかか?」

「また、呪いの言葉かな?」

エリカとレオ、幹比古はそう言って動きが止まった達也に近づく。

 

達也はその言葉にハッとなり、正気を取り戻し、そのチョコケーキを隠すように上箱をサッと素早く被せる。

 

「あ、ああ、ああそうだな……これ以上ない危険物だった」

達也はそう言うのがやっとだった。

確かに危険物だ。達也にとってはだが……まさかの四葉家当主四葉真夜からだったからだ。

真夜は自分の叔母に当たり、既に他界した母とは双子の妹に当たる。容姿は母そっくりの人物のなのだ。

それがなぜ横島に……達也は感情が欠落し希薄であり、深雪以外の親族、実母にさえ親愛や愛情などという感情はもってはいない。しかし感情論ではなくとも、論理的思考をしていても、到底許容できる事実ではない。

達也は全身から冷や汗が噴き出る。息づかいも荒い。

 

「達也くん、顔色が悪いわよ……」

エリカが心配そうに達也を見る。

 

「おい、お前、汗びっしょりじゃねーか、そんなにヤバいものだったのか?」

レオも心配そうにする。

 

「ああ、かなり、危険が危ない……」

 

「達也、なんか語彙が変だよ?そんなに?僕達が見たらヤバい?」

幹比古も心配そうにする。

 

「見、見るな!いや……見ない方がいい……今後の人生をふいにすることになる」

確かに見ない方がいいだろう。そこには四葉家当主の名前が刻まれているのだから……ヘタをすると、見た人物は四葉から消されるかもしれない。いや、達也に消すように命令を送られるかもしれないのだ。

 

「えええっ!達也くんにそこまで言わせるぐらいの物?横島には黙ってた方がいいかもね」

「おう、横島の奴には単にチョコじゃなかったと言って捨てた方がいいな」

エリカとレオも顔を顰めそう話をする。

 

「じゃあ、捨ててこよっか」

幹比古はそのチョコケーキの箱を取ろうとするが……

 

「幹比古!こ…これは俺が責任もって処分をする」

達也は必死の形相でその箱を持ち上げ、幹比古が取るのを阻止する。

 

「達也、大丈夫?」

 

「ああ、問題ない……では、処分してくる」

達也はこの呪いにも似たケーキの入った箱を小脇に抱えて、脱兎のごとく教室を出る。

 

「達也くんなんかおかしかったわね」

「ああ、アレは尋常じゃないな」

「あの箱、物凄い事になってたんだよきっと、ジャンケンに勝ってよかった」

エリカ、レオ、幹比古は達也が走り去った後を見て口々に言う。

 

 

 

 

達也は、旧校舎に行き、人気が無い部屋に入り、漆黒の箱の中身をもう一度確認する。

結果は同じ。

 

 おねえさんから

   ステキなあなたへ愛をこめて

              四葉真夜

 

メッセージは変わらない。

よくよく見ると、表のメッセージカードの横島忠夫様と書いてある文字は真夜の自筆だ。間違いない。

 

達也は四葉真夜から、横島と接触したことを聞いていない。

もしかしたら、深雪なら聞いているかもしれないと思ったのだが、流石にこのチョコケーキの事は言えない。

 

真夜が横島と会ったとするならば、横浜事変が起ったあの日か前日の京都しかない。

 

達也は心を落ち着かせ、冷静に思考する。

これは何のための物かを……

四葉真夜は、自分の叔母は、無意味な事をしない。

策謀を巡らせ四葉に、しいては自分に有利な状況を掴むためだったら何でもする女性だ。

これはもしかすると横島を四葉に取り入れるための策謀の一部なのかもしれない。

四葉は横島の事を知っているだろう。深雪が横浜での神魔の如く様相の横島を伝えているハズだからだ。

 

しかし、これはどういう策謀なのだろう。バレンタインデーにしかも、自分の名前が入ったバレンタインチョコケーキをわざわざ、学校の横島の席に置いておくとは……

普通に考えれば正気の沙汰ではない。

自分の息子程の年の男子に、告白めいたメッセージを書いたバレンタインチョコケーキを送るなど

……

しかも、自分の叔母がだ。母そっくりの叔母が横島に告白めいたメッセージ付けてだ。

 

達也は思考しても、叔母が、四葉家当主がこのバレンタインチョコケーキで紡ぎだす策謀がなんであるかを、考え付くことが出来なかった。

 

 

達也は意を決して、携帯端末から極秘回線を通し、四葉家に連絡をする事にしたのだ。

 

四葉家筆頭執事の葉山が応対し、四葉真夜に回線をつないでもらう事が出来た。

 

『あら、めずらしい。達也さんからわたくしに連絡をして下さるなんて、しかもこんな時間に』

ワザとらしく驚いた風で受け答えする真夜。

 

「御当主様、申し訳ございません。火急の用件で、今は四葉家御当主と深雪のガーディアンとしてではなく、甥として連絡した次第です」

 

『いいのよ、達也さん。わたくしは、貴方を息子の様に思っているのだから』

 

「ありがとうございます。それでは叔母上、第一高校横島忠夫の机の上に何故あのような物を送ったのでしょうか?」

 

『達也さんにばれてしまいましたか……しかしあのような物とは、わたくしでも流石に傷つきますわよ。あれは横島さんに純粋にバレンタインデーの思いを込め、お送りしたものです』

 

「いえ、その様な事を聞いてはおりません。どのような狙いがあってあのような事をなされたのですか?」

 

『狙い何てありませんのよ。わたくしは、ただ、横島さんに親愛の情を込めてお送りしただけですの。初めてですわこんなことは……わたくしは胸の高鳴りを鎮める事ができず、気がついたらケーキなどと言うものを焼いていましたの……あらいやですわ達也さん、わたくしに何てことを話させるのかしら……』

あの四葉真夜が若い乙女のような口調で恥ずかしそうに話していたのだ。

 

達也の思考は次元の向こうへ飛んで行ってしまった。

(もしや……本気か!?……しかし、横島とは30歳は離れている。横島は受け入れるハズが………あり得る!?すると……横島が俺の叔父に……なんだと!!)

四葉真夜がどんな手を使ってでも欲しい物を手に入れる魔性の女だという事を達也は知っている。

 

その結果……

【【横島『たはははっ、今日から真夜の旦那になった四葉忠夫だ。真夜の物は俺の物、四葉も俺の物。甥っ子の達也!俺のために馬車馬の如く働くがいい!!はははははっ、そして、四葉の女性も俺の物、今日から深雪ちゃんは俺の第2夫人だ!!』

深雪『忠夫様、ステキ!!』

達也『深雪?』

横島『水波ちゃんは第3夫人じゃ~、そして、第4、第5夫人と四葉ハーレムここに爆誕!!』

達也『横島!!何を言っている!?』】】

 

『達也さん?急に黙ってどうしたのですか?』

その真夜の電話越しの声で達也は変な妄想から正気に戻る。

達也は何故か横島が叔父として目の前に現れ、四葉ハーレムを作る妄想をしてしまっていた。

どうやら、大分横島に毒されてきているのだろう。

 

「何を!……いえ、申し訳ございません。少し通信状況が良くなかったようです」

冷静に応対したのだが達也は内心焦る。(まずい、横島が叔父で四葉を支配!?根拠もないが否定できる材料もない)

 

 

『それで、達也さんがなぜ横島さんにお送りしたチョコレートケーキの事を知ったのですか?……まあ、いいでしょう。わたくしのバレンタインチョコケーキを受け取った横島さんの反応はどのような感じでしたでしょうか?』

真夜はそんな事を言い、達也に嬉しそうに訪ねる。

 

「……今、自分が所持しており、横島の手に渡っておりません」

 

『なぜ横島さんに渡らずに、達也さんが所持しているのですか』

真夜の口調が厳しくなる。

 

「たまたま、自分が先に発見し、クラスメイトなど複数の目にさらされる危険があったため先手を打って回収したのです」

達也は今日クラスであった事など余計な事は言わずに淡々と答える。

もし、真夜が本当に横島を気にいっていて、かまっているのであれば、横島にあのような仕打ち(呪い箱)をした生徒達を許さないだろう。下手をすると、存在を抹消させられたり、廃人に追い込まれるまである。

 

『わたくしの名前が入っていたとて、本人からなどと信じる人は居ませんよ。横島さんだけは分かってくださるはずです。なので、ちゃんと横島さんに渡してくださいな。せっかく私が丹精を込めて作った手作りチョコケーキをなのですから』

真夜は元の妖艶な口調に戻り楽しそうにそう言った。

 

「叔母上は、横島と会った事があるのですね」

 

『もちろんですわ。そうでなくては、こんな、嬉し恥ずかしい事はいたしませんわ』

 

「…分かりました。横島にはそれとなく渡しておきます。あまり悪戯を過ぎませんように」

達也は冷静に再度思考する。やはり、有り得ない。あの真夜が一度会っただけの横島に懸想するなど……達也は多少不興を買うかもしれないが、このような言い方で真夜の反応を見た。

 

『悪戯だなんて……わたくしは彼にそのような事をいたしませんわ』

真夜の反応は相も変わらず、横島に気がある様な言い回しをしている。

 

「では、自分はまだ、授業中なので、これで失礼しさせて頂きます」

達也はこれ以上問答しても、横島をネタにはぐらかされるだけで、真夜の真意をはかる事ができないと悟る。

 

『達也さん。では横島さんのからのバレンタインケーキの感想を聞かせてくださいましね。……いえ、聞かなかった事にして下さいまし。きっと、ご本人からお礼の電話を下さるので大丈夫ですわ。今からお話をすることが楽しみですわ』

そう言って真夜は通信を切るのであった。

 

達也は最後の言葉で、真夜は横島となにか秘密裏に話をしたいがために、こんな手段をとったのではないかと推測する。それはもしやこの吸血鬼事件の協力体制についてのことではないかと、四葉が吸血鬼事件に一枚かむための工作なのかもしれない。

……電話番号は多分この箱のどこか、またはケーキの中に忍ばせているのだろう。

 

達也はそこで思考を停止させる。もはや、そう思わないとやっていられない。

 

上記が目的ならば、なぜ危険を冒してまでこんな面倒な事をするのだろうか?という最大の疑問が残るのだが……

横島が叔父になるなどという展開は考えたくもないからだ。

 

 

しかし肝心の真相は真夜本人にしか分からない。

 

 

何れにしろ、達也はこのチョコレートケーキを横島に渡さなければならない難題が残ったのだ…………

 

達也は疲れた表情で大きく溜息を付くのであった。

 

 




真夜が何をしたいのかは誰もわかりません。
だって、真夜だからwwww

達也くん真夜に振り回されるの巻きでした。

次もバレンタインなのですが……次は誰が主役なのかwww

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