横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。

感想の返答が遅くなりましてすみません。

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では続きです。



155話 横島 ついに来たバレンタインデー!!その4

昼休みに入り、皆で食堂に向かう。この頃達也は生徒会室の方で深雪やほのか達と昼食を取る事が多いのだが、今日はE組の皆と昼食を取るようだ。

まあ、早朝の深雪とほのかのやり取りを見る限り、今日は向こうに顔をださない方が良いだろう事は誰が見ても明らかなのだ。

 

その達也は、1時限目の自習時間に、横島の机に置いてあった呪いの小箱群の中で最も大きく、最も高級そうで怪しげな箱をジャンケン勝負に負け中身を確認してから処分しに教室を出たのだが、処分しに行ったときよりも、戻ってきた達也の顔はあきらかに憔悴しきっていた。

エリカ達は、箱の中身が直視できないぐらい酷いものだったに違いないと推測し、多くを聞くのをやめる。

実際には、達也はその高級そうな怪しげな箱は処分をしていない。

その高級そうで怪しげな箱の中身が四葉家当主、四葉真夜が横島宛に送った本命チョコケーキだったのだ。

自分の母そっくりの叔母が同級生の横島にどうやら本気でバレンタインデーチョコを送ったという事実に驚愕と困惑をきわめ、そして現実逃避するしかなかった。しかも達也はその事実を誰にも言う事が出来ない。もちろん妹の深雪にもだ。

真夜は達也にその本命チョコケーキを再び横島の手に渡すことを言い付かったのだが、一度危険物として処分しに行った手前、教室に戻ったタイミングで渡すことは、色々と誤解を招いたり、怪しまれるため、現在更衣室の個人ロッカーに置き、渡すタイミングを計っていた。

 

 

 

「にしても………世の中わからないわ~、なんでガサツなレオがそんなにモテるの?」

エリカは同じテーブルで一緒に昼食をとっているレオの元に引っ切り無しに女生徒が現れ、バレンタインチョコを手渡している風景をだるそうに半目で見て、呆れたような声で美月に聞いていた。

 

「レオくんはカッコイイし、明るいし、爽やかだし、誰にも優しいから」

 

「一応私たちも、あいつと一緒に食事しているんだけど……あの子らは私達なんて眼中にないの?普通は躊躇するもんでしょ?」

 

「ははは、まあまあ、エリカちゃんはレオくんと口喧嘩ばっかりしているし、私は元々、その対象になってないから」

美月は苦笑しながら答える。

 

「私はそうだけど、美月は普段大人すぎかな。さっき見たいに怒った姿見せたら皆どっか行くんじゃない?……まあ、レオだけじゃないし、達也くんも幹もちょくちょく女の子来ているしね……うちの男共のどこがいいのだか?」

 

「エリカちゃん。レオくんたちは、女子が噂する学年でかっこいい男子5本の指に入ってるんだよ」

 

「……横島以外はね」

 

「わるかったな~、どーせ俺はイケメンじゃないし~、どーせ最底辺だしな~、クソッ!!羨ましいーーー!!一度でいいから、あんなに女の子にちやほやしてもらいたーーーい!!」

 

「何いじけてんのよ横島。あんたは確かに達也くん達とは真逆の、女子が噂する学年で最低男ランキングぶっちぎりで一位だけど………あんたは貰えるでしょど本命チョコ…ほーら、おいでなすったわよ~」

エリカは面白くなさそうに横島の悔しそうな顔を見て、バタンと開く食堂の入口を見やった。

 

「タダオ~~~!!」

金髪碧眼ツインテール美少女が手を振りながら横島の元に駆け付ける。

 

「リーナ、朝、急に居なくなってどうしたんだ?」

 

「タダオ心配してくれたの?……フフーン」

リーナは横島のその反応に嬉しそうにする。

 

「……タダオ、これ」

リーナは急にモジモジしだして、後ろ手から半透明のラッピングで包まれた小袋を差し出す。小袋はリーナの髪を括っている物と同じ色のリボンで閉じられている。

 

「リーナ、もしかしてチョコ?」

 

「うん。チョコクッキー…さっき作ったの……でも初めてお菓子を作ったから上手く行ったか分からないけど……開けて食べてみて……」

よく見るとリーナの色白の肌に、あちらこちらに茶色い物が跳ねてくっ付いていた。多分チョコだろう。

リーナは朝、美月に日本のバレンタインデーには好きな人にチョコを渡す習慣がある事を聞き、猛ダッシュでマンションに戻り、シルヴィと一緒にこのチョコクッキーを作っていたのだ。

リーナは料理などした事もない。シルヴィも料理は得意な方ではない上にチョコは作ったことが無かったため、シルヴィの記憶に微かにある小さい頃母親と作った事があるクッキーをベースに、チョコクッキーのレシピを見ながら、二人で四苦八苦し作っていたのだ。

 

「おお、焼き立ての匂いがする。初めてにしては上出来じゃないかリーナ……もしかして俺のためにわざわざ?……ありがとう…嬉しいよ」

ラッピングを開けて取り出したチョコクッキーは形は不揃いで、焼き加減もバラバラであったが……横島は気にせずに口に入れる。

「心のこもった。いいチョコだ」

横島はニカっとリーナに笑顔をみせる。

美味しいとは言えないが、嬉しそうに次々と食べる横島。一生懸命作った事がわかるクッキーだ。

 

「タダオ……」

リーナは涙を浮かべ食堂の椅子に座っている横島の後ろから抱き着く。

リーナはこれまで、自分の意思で誰かのために何かを作り渡したことが無かった。

誰かのためを思って料理することが、こんなにもドキドキして、嬉しいやら恥ずかしいやらない混ぜた感情が溢れ、そして、出来た料理を大好きな人が嬉しそうに食べてくれることが、こんなにも幸福感を満たしてくれるものだという事を、今知ったのだ。

リーナのこれまでの幼少期から青春期は、ほぼ軍で過ごした。ただ、厳しい訓練と、上からの命令で自分の意思とは関係なく任務をこなして行くだけの毎日だった。青春や自己の感情とは、無縁の生活を過ごしていたのだ。

つい4か月前、横島と接してからは、リーナが今まで持っていた世界観や感情がどんどん変わって行った。

 

しかし、その弊害もあった。それが今のこれだった。リーナは横島の前では溢れる感情を上手くコントロール出来ないのだ。まるで幼い子供の様に。

 

そして、また、後ろからリーナに抱き着かれたままの横島に男子生徒からの嫉妬などの悪感情持った視線が注がられる。

 

「リーナ!いい加減にやめなさいよね!横島も困っているじゃない!」

エリカはその視線を感じリーナに注意をする。今日の朝の悪意ある呪いの小箱の事があったばかりで、その遠因がリーナのこの行動にあるためだ。

 

「なんでよ!エリカに……」

リーナはエリカに反論しようとしたのだが……リーナは忽然と姿が消えたのだ。

 

達也はそれにいち早く気が付き、何者かがリーナを連れ去った事を把握し戦闘態勢に入る。

横島は気が付いたが、戦闘態勢には入らなかった。

エリカも美月も忽然と消えたリーナに驚くが、横島が「緊急の用事で魔法使ったんじゃない?」などと言って誤魔化していた。

横島が平然としている様子をみて、達也も戦闘態勢を解除して、再び座る。

レオと幹比古は、バレンタインチョコの対応で全く気が付いていなかった。

 

 

 

 

そして、今リーナは、人気のいない屋上に連れてこられていた。

「急になにするのよ!マリア」

 

「ミス・アンジェリーナ・横島さんに・人前で抱き着かない様に・と何度も忠告したはずです」

何もない空間からスッとマリアが姿を現す。光学ステルス迷彩(透明化)を解除したのだ。

USNAに居るはずのマリアが横島に抱き着いているリーナをロケットアームと光学ステルス迷彩の併用で捕らえ、誰もが目に追えない程の一瞬で連れ出したのだ。

 

「USNAからわざわざそんな事を言いに来たの?なんでマリアもみんなもそんな事を言うの?」

 

「……ミス・アンジェリーナ・横島さんは困っています・マリアは朝から・様子を見ていました」

実はOOカオスライザーX2を使ってUSNAから日本に早朝には着いていたのだ。マリアは光学ステルス迷彩を纏いながら上空から横島の様子を見ていた。と言うよりも、バレンタインチョコとカオスからの届け物を渡すタイミングを計っていたのだ。

 

「……それと、タダオと一緒に居ちゃいけない訳とどういう関係があるの?」

リーナは憮然とマリアに聞く。

 

「一緒に居ては・いけない事はありません・横島さんも・ミス・アンジェリーナには・気を許しております」

 

「だったらいいじゃない」

 

「過剰な・スキンシップで・横島さんが・窮地に陥っています」

マリアはこの半日の横島と学校の様子を見て、細かく情報を集め、今の横島の状況をほぼ正確に確認したようなのだ。

 

「……どういう事、タダオが窮地って」

リーナは横島が窮地に陥っていると言われ顔を顰める。

マリアは決して嘘をつかない。それはリーナも認識している事実だ。

 

マリアはそんなリーナの目の前で手を掲げ、空間プロジェクターを展開させ、今の食堂の様子を映像で見せる。

どうやら、先ほど食堂に5mm程度の超小型ドローンを数機投下したようだ。

 

「横島さんは・今男子生徒の悪意を・一身に受けています」

 

「……なぜ?知らなかった。どうしてタダオが?……タダオそんな事一言もいってなかった」

リーナはマリアの説明と、食堂の男子生徒が横島に明らかに悪感情を持った視線を送っている様子を見て、驚きと戸惑いの声を上げる。

 

「ミス・アンジェリーナが・横島さんに・過剰なスキンシップをすることにより・男子生徒は嫉妬・しているのです」

そう言って、朝の横島の机の呪いの小箱の様子を写す。

 

「タダオになんてことを!!許せない!!」

リーナは怒りを爆発させ、食堂へ向かおうとするが……マリアに止められる。

 

「ミス・アンジェリーナ、横島さんは・あなたに・楽しく学校生活を・送ってもらいたい・と思っています・だから・横島さんは何も・言わない・あなたと・学生が衝突してほしくない・と思ってます」

 

「タダオ……マリア、どうしたらいいの?」

リーナは先ほどの勢いがなくなり、シュンとする。

 

「人前で・過剰なスキンシップは・避けるのが・良いでしょう」

 

「でも……タダオは私のせいで……」

 

「横島さんに・今思っている事を・伝えればいいです」

 

「タダオに謝るわ」

 

「では・ここに横島さんを・呼びます」

マリアは内臓している通信機能で横島の携帯端末に連絡し、屋上に呼ぶ。

 

「ありがとう。マリア」

 

「それと・一つ・忠告します・ミス・アンジェリーナの・横島さんへの好意は・好ましく思います・しかし・横島さんは・非常に心が疲れています・心の休養が・必要です・今は求め過ぎてはいけません・心の支えが・必要です……………今の横島さんは……自分に向けられる女性の好意を・心のどこかで怖れています・だから今はまだ・そっとしてあげて・下さい」

マリアは横島と過ごしたこの3か月間でこう結論づけたのだ。100年前の横島を見てきていたからこそ、今の横島の心のありようをほぼ正確に見抜くことが出来たのだ。

 

「どういう事マリア?タダオの心が疲れているって、女性の好意を怖がっているって?……タダオに何があったの?」

リーナは困惑する。いつも笑顔で楽しそうにしているイメージしかない横島がそんな状態など想像もつかないからだ。

 

リーナはマリアにその事を聞こうとするが……丁度屋上の扉が開く。

 

 

 




この続きも少し間を置いて投稿します。

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