横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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これで長かったバレンタイン編は一応終わりです。
では、先ほどの続きを……



156話 横島 ついに来たバレンタインデー!!その5

リーナはマリアが横島の心が疲れている、心の支えが必要だと言った事に対し、詳しくその事を聞こうとしたのだが、その前に屋上の扉がバンと開いた。

 

 

「マリア久しぶり、日本に来ていたんだ。リーナとなにこそこそと?」

横島が屋上に上がってきたのだ。

 

「横島さん・久しぶりです」

そう言ってマリアは横島に強く抱き着く。

 

「マリア~、ギブ!ギブ!」

横島の背骨が軋むところでマリアは横島を解放する。

マリアの毎度のこの行為は横島のバイタルチェックも兼ねている様なのだ。

 

「タダオ……ごめんなさい」

リーナは下向き加減で目線だけ横島に向ける。

 

「へ?どうしたのリーナ、急に謝ったりして」

 

「今、マリアに叱られたの。私がタダオに学校で抱き着いたりしたせいで……その男子に疎まれている事を……」

 

「なーんだ、そんな事か。別にリーナが悪いわけじゃないだろ?」

 

「でも、私、気が付かなかった。真由美やエリカが散々注意してくれていたのに……タダオがそんな状態になっているなんて……ごめんなさい」

リーナは目に涙を浮かべながら、横島に上目使いで頭を下げる。

但し、真由美は嫉妬心からくるもので、エリカは単に目の前でいちゃつかれるのが嫌だからであるのだが……

 

「いいって、リーナは、原因は俺にあるわけだし。美人で勉強もできる優等生のリーナと、学校最底辺の俺だからな。そりゃ、男共は嫉妬するよな」

そう言って、項垂れるリーナの頭を優しく撫でる。

 

「タダオ………タダオの事を皆わかってないだけよ。私なんて魔法が出来ても、実際に何も出来ないんだから……」

 

「リーナは努力して、USNA軍のエリートのトップになったんだろ?」

 

「井の中の蛙よ」

 

「まだまだ、若いんだしさ、これから、これから」

 

「なんか、タダオって、ずっと年上に見える時があるわ。……でも暖かい…大好き」

リーナはそう言って、自分の頭に乗っている横島の手を両手で触れる。最後の一言は横島に聞こえないぐらいの声で発する。さっきのマリアの言葉があったため…そうしたのだ。

 

 

「マリアはどうして、日本に?カオスのじーさんに頼んでいた物を届けにきてくれたのか?」

 

「イエス・ドクター・カオスの届け物・後で自宅に・送ります。それと・ミス・雫からと・マリアからバレンタインデー・チョコレートです」

マリアはそう言って、横島に綺麗にラッピングされた大きな箱を二つ渡す。

 

「マリア、ありがとう。家に帰ってから開けさせてもらうよ」

横島は、はにかんだ笑顔を見せる。

 

「では・マリアが・後で・荷物と一緒に届けます」

 

「俺は夕方から夜にかけて用事があるから、これ自宅の鍵。かなり遅くなると思う。忙しくなかったら待っててくれると助かる」

横島はマリアに自宅の電子キーを渡す。

 

「分かりました・マリア・横島さんの自宅で・待機しています」

マリアは電子キーを受け取り、手のひらの上で解析をした後、横島に返す。

 

「……タダオ…タダオの家に私も行っていい?」

上目使いで弱弱しくリーナは横島に聞く。

 

「いや、今日は七草家に呼ばれているんだ。遅くなるし何時に帰れるか分からないから、また今度の方が良いんじゃないか」

 

「私、待ってる……だから」

 

「でも、ほんと遅くなると思うぞ」

 

「横島さん・マリアが・ミス・アンジェリーナを見ておきます・大丈夫」

 

「……分かった。マリアよろしく頼む」

横島は明日が学校が休みだった事を思い出し、渋々了承する。

 

「イエス」

 

「マリア、あと一つ頼まれてくれないか、東京近郊の正確なマップデータと地下構造や空間、霊脈図もあれば助かる」

 

「了解・2時間程度で解析可能……ミス・アンジェリーナ・17:00に・迎えに来ます」

 

「ありがとうマリア」

 

 

「マリア、また後で……リーナ、食堂に戻るか、もう昼休み少ししか残ってないけど」

 

「でも、私が一緒に居ると、またタダオが……」

 

「別にいいって、いまさら気にしても仕方がないだろ?」

 

「……うん」

そう言ってリーナは横島の腕に抱き着きたい衝動を抑え、静々と横島の後に続く。

 

 

マリアは再び光学ステルス迷彩を発動させ、姿を消した。

 

 

 

再び、食堂に戻った横島とリーナなのだが……横島の後に静々とついて行くリーナの姿を見て逆に波紋が広がる。

 

そして横島は皆の席に座り、リーナも横島とくっ付かない程度に間を空け大人しく横に座る。

 

「横島!リーナに何かしたんでしょ!!もしや、遂に……!!あんたはセクハラまがいな事をするけど、本当にそんな事をする奴だと思ってなかったわ!!」

「横島……やっていい事を悪い事が有るよ!」

エリカと幹比古は横島に詰め寄る。

 

「へ?何の事?」

 

「隠しても無駄よ!リーナの態度がさっきまでと明らかにおかしいじゃない!!その……無理矢理リーナにいけない事をしたって事よ!!」

エリカはとんでもない事を言う。

 

美月はそんなエリカに苦笑する。

達也とレオは横島がするわけないだろうと、だんまりを決め込んでいる。

 

「何の事?エリカ?」

 

「エリカ……違うの、ごめんなさい。エリカや真由美が今まで注意してくれたのに気が付かなくて」

リーナがエリカに頭を下げたのだ。

 

「な…なに?」

リーナの急激な変化にエリカは驚く。

 

リーナは屋上でマリアに叱られた事、横島が自分のせいで酷い目に遭っていた事を知った事を簡単に話し謝ったのだ。

 

「まあ、分かればいいのよ」

エリカの場合半分以上、目の前でイチャイチャされるのがただ単に癇に障っていただけの事だったのだが……

 

「いや~、俺が悪いんだけどな」

横島は頭を掻きながら、苦笑する。

 

「あの……マリアさんって、あの魔女マリア?」

 

「そうだけど」

 

「えーー!!さっきまで居たの!?」

 

「さっきのアレはそうだったのか……」

達也はリーナが何かに引っ張られるように姿を消した理由が分かったようだ。

 

「おい、USNAに居たんじゃないのか?どうやって来たんだ?」

レオは至極まともな疑問を口にする。

 

「うーーーーん、多分大気圏突破かな~~」

 

「「「はぁ~~~!?」」」

エリカ、レオ、幹比古は素っ頓狂な声を上がる。

OOカオスライザーX2はマリアが装着することで、本来の力を十二分に発揮される。

マリアの能力もあって、軍事衛星や軌道衛星に探知されることなく、日本に来ることが出来るのだ。

 

「その魔女マリアだが、何をしに日本に来た。まさかリーナに説教しにきたわけではないだろう」

達也は淡々と横島に聞く。

 

「うーん。雫ちゃんとマリア自身のバレンタインチョコを直接渡したかったらしい。ついでにカオスのじーさんの届け物」

 

「はぁ~~~!?なにそれ、あんたにバレンタインチョコを渡したいがために、大気圏突破してくるの?」

エリカの疑問に、幹比古やレオも同意し頷く。

バレンタインチョコを渡すだけで大気圏突破してくるマリア達のスケールに、エリカ達はついていけない。いや普通は誰でもついていけないだろう。ドクター・カオスとマリアに一般常識を当てはめてはいけない。

 

「まあ、マリア単体だったら余裕じゃないかな~~って思うけど」

横島はそんな事を平然と言う。この男にも一般常識は通じない。

 

「横島さん。愛されてますね」

美月は何故かその話を嬉しそうに聞いていた。美月もちょっとずれている。

 

「魔女マリアか、僕も会って見たかったな~」

「私も会って見たいです。実物もきっと綺麗な人なんでしょうね」

幹比古と美月はそんな感想を漏らす。

 

「その内あえるんじゃない?」

横島はテキトーな事を言う。

 

「まあ、これで、横島に対する嫌がらせが減ればいいけど、今の態度だと逆効果の気がしないでもないわ……」

エリカはそう言ってこの場を締めくくった。

 

 

 

 

この後、教室で横島はレオに深雪とほのかに託された義理チョコを渡し、クラスの一部に好奇の目で見られ、あらぬ疑いを掛けられる一幕があったのだが。

 

放課後も、バレンタインチョコ攻勢が何時もの面々に押し寄せる。

結局最終的にはレオは紙袋五つ分 達也は二つ分、幹比古は二つ分弱と多量にゲットしていた。

 

横島と言うと、この後に、中条あずさに義理チョコと事務職員女性からの合同義理チョコと花音にチロルチョコ1個貰っていた。

後はもらえそうな3年の摩利や鈴音は志望大学も決まり、この時期に学校に来ていないため、もらう事が出来ない。

それでも横島は嬉しそうにしていた。ちゃんと青春を味わっている様だ。

 

 

 

昼休みの食堂で横島がリーナからチョコを受けとり、後ろから抱き着かれていた所を見ていた人物がいた。

「ま、まさか、雫に強力なライバルが!!雫がピンチだわ!!連絡してあげなくっちゃ!!」

ほのかから雫に事実が伝わるのも時間の問題だろう。

 

 

 

そして、達也はバレンタインチョコを持ち帰るために、テキトーな言い訳をして、深雪に先に家に帰る事を告げるが……何故か、男子ロッカー室から出てくる達也を待ち構えていた。

「あら、お兄様その手に持っている物はなんですか?」

 

「ち、ちょっとな」

 

「わたくしがお持ちしましょうか?」

 

「いや、大丈夫だ。それよりも深雪、生徒会の方は?」

 

「先に、お暇させて頂きました」

そう言って深雪は達也から紙袋を受け取ろうとする。

 

「いや、いい俺が持つ」

 

「大きな紙袋3つもお持ちになって、一体何がはいっているのでしょうか」

深雪はそう言って、強引に左手に持っている紙袋2つを達也から奪う。

 

「み、深雪」

 

「フフフフフッ、あらあら、お兄様~、随分おもてになるのですね。深雪は誇らしいですわ」

深雪は紙袋の中を覗きバレンタインチョコがびっしり詰まっている事を確認し、ニッコリとした笑顔を向ける。しかしその笑顔は何処か冷たく怖い。

 

「もう一つの紙袋は……何か大きなものが入っているようですが。一体何なんでしょう?」

深雪は冷たい笑顔のままもう一つの達也が右手で持っている紙袋に視線を注ぐ。

 

「こ、これは、違う」

そう今達也が持っている紙袋の中身は、四葉真夜が横島に送ったバレンタインチョコケーキが入っているのだ。まだ横島に渡すことが出来ていなかった。

 

「なにが違うんでしょうか?わたしは何も言っておりませんが」

 

「た、頼まれたもので、後で渡すために、早めに風紀委員を引き上げた」

 

深雪はそんな達也の右手に持っている紙袋をサッと奪う。

 

「深雪!ダメだ!!」

達也は焦る。あれの中身を深雪に見せるわけにはいかない。ショックで寝込むまである。

 

「まあ、随分立派なバレンタインプレゼントの箱………宛名は横島さん宛……申し訳ございません。お兄様、疑ってしまいまして、本当に頼まれたものだったんですね」

 

「そうだ。横島に責任もって確実に渡さなければならない。自宅に持って行くつもりだ」

 

「一体だれが横島さんに?……わざわざご自宅に持って行かなくとも、学校でお渡しになればよろしいのでは?」

 

「いや、横島はこの後、七草家に行く予定らしい。このような大きな荷物を渡すわけにもいかん」

達也は七草家にこれを持って言って、もし中身がバレてしまった時の事を思うと、この時点で横島に渡すわけにはいかないのだ。ある意味爆弾よりもたちが悪い。

 

「お優しいのですね。お兄様…………横島さんと何か?」

深雪はそう言いながら、達也は別の目的で横島の自宅に行くのではないかと察する。

 

「まあな、今後の事も話し合わなければならないしな」

しかし、今回の達也は、本日中にこの爆弾より危険なブツを横島に確実に渡すことが、第一目的なのだ。

 

「深雪は羨ましいです。お兄様と横島さんの関係が」

深雪はボソっとこんな事を言う。

 

「別に大したことは無い」

 

「それよりも、ほのかから頂いたチョコ以外、どれだけ本命があるのでしょうね」

深雪は達也にそう言って悪戯っぽく微笑む。

 

「………誰にも答える気はさらさらないがな」

達也はあの箱の中身をこれ以上詮索されない事にホッとし、結局深雪と一緒に家路につくのであった。

 

 

 

 




次は七草家編突入。

ダブルセブンより一足お先に姉妹登場です。

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