横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

昨日の続きです。
バレンタインは真夜のターンでしたが、ようやく弘一のターン!


158話 横島 七草家に呼ばれる!!その2

 

「横島くん、久しぶりだね」

 

「久しぶりっす。真由美さんのお父さん」

 

高級感漂う洋風の広い応接間に、七草家当主、七草弘一が一人座って待っていた。

弘一は横島とは3か月半前の京都で会っており、弘一の誘いで、高級料亭で夕食を共にしていた。

横島も真由美の父親とあり、畏まった口調ではなく、気軽な感じで話していた。

 

「まあ、座りたまえ横島くん。真由美も横島くんの隣に座りなさい」

弘一は横島に高級感溢れるソファーに席を勧め、その横に娘の真由美を座らせる。

本来なら、真由美はこの場では七草家側の人間であるため、弘一の横に座るべきなのだが……

それと同時に、家人が紅茶と洋菓子をスッと出し、応接間から静かに出て行く。

 

「あと、息子二人が出席する予定だったのだが、申し訳ない。どうやら到着が遅れている。重要な話はその時にしてもらっていいかな?」

 

「まあ、大丈夫っすよ」

 

「助かるよ」

弘一はそう言って横島に軽く頭を下げる。

しかし、真由美はその父弘一の言葉に訝し気に聞いていた。真由美の兄次男の孝次郎はともかく、長男智一は真面目な性格で、決してこのような重要な場面で遅れてくるような事は考えにくいからだ。

 

「しかし、横島くん君は横浜事変後、行方不明と知らせを受けていたのだが、よく戻って来てくれた。真由美も君が行方不明の間、元気が無くてね。あまり、そんな事も顔に出さない子なのだけど……今回ばかりは、私も娘の父として気が気で無かったのだよ」

 

「お、お父さん!」

真由美は父弘一に顔を赤くし抗議する。

 

「いや~、すみません。真由美さんや皆に心配かけてしまって」

 

「私も、十師族の長と言う立場にあるからね。だいたいの事は此方も把握していてね……君が行方不明の間USNAに居た事も、記憶喪失だったという事もね。しかし『救済の女神』の使い手である君に何があったのかね?」

弘一は横島が生存しUSNAに居た事を12月下旬に把握し、日本政府が躍起になって、横島の捜索と懐柔を行っていた事や、USNA軍とドクター・カオスとどういう関係かまでは分からなかったが、接触していた事も確認している。

七草家は、日本国防軍の一部隊を動かすぐらいの影響力を持っており、当然、軍部の情報も弘一の耳にも入って来る。11月初旬段階で、すでに横島が戦略級魔法を喰らい死亡しているという情報と共に事の顛末まで知っていた。まさかその横島が生きているなどは、その時は思いもよらなかったのだ。

生存の可能性について気が付いたのは、12月中旬に日本政府主導で横島捜索、懐柔のための情報収集の一環として、第一高校に警部を派遣し、横島にゆかりのある生徒に、色々と聞き回っていた事を真由美に聞かされてからだ。

その後の弘一の動きは早く、国防軍から情報を引き出し、政府関連から手を回し情報を得ていたのだ。

その時に副次的に、国防軍からの情報収集の中で司波達也が戦略級魔法師、大黒竜也であることも知り、さらに、横島に戦略級魔法を放った本人であると同時に、『灼熱のハロウィン』を引き起こした魔法師である事も分かったのだ。そして司波兄妹が四葉家の人間であることも、弘一の中ではほぼ確定していた。

 

弘一の中で、もともと四葉の台頭で十師族のパワーバランスの崩壊は免れないと言う危機感があり、七草家を何とか四葉家に対抗できるだけの力を得なければという思いを常に持っていた。

司波兄妹と四葉家の関係を確定し、さらに、達也が放った済州島と鎮海軍港に放った戦略級魔法の映像を見てからは、思いはより一層強くなっていた。

 

その切り札として、横島の取り込みが最も近道に見えたのだ。

本人は否定しているが、氷室家の重要なポジションにいるであろう横島は、最強の防御魔法『救済の女神』の使い手でもある。それだけでなく、京都から横浜まで、1時間弱で生身で到達する何かしら強力な魔法を持っていることも推定できる。さらに武術も凄まじいレベルで習得している。

しかも、人の手ではとても防げるような物ではないと思われるあの済州島で放たれた戦略級魔法を跳ね返せるぐらいの力を持っているのだ。

 

弘一はこの吸血鬼事件の協力体制による契約は横島を取り込むチャンスだと考えていた。

達也が関わってはいるが、直接四葉が関わる事は無いだろうと判断。

幸いにも、娘の真由美がどうやら、横島に気がある事は見ているだけでも分かる。

そして今日、弘一は真由美と横島の関係を進めるべく大チャンスだと考えていた。

そこで、ワザと、二人の息子には協力体制の話し合いの開始時間を遅らせて知らせ、こうして、弘一、真由美、横島の席を作ったのだ。

 

 

「いや~、不覚を取ってしまい。そんで海を漂っているところを、昔馴染のマリアとカオスのじーさんに助けられたんですよ」

横島は苦笑いをしながらそんな事を平然と言う。

 

「!!……君、ドクター・カオスと魔女マリアとは知り合いなのかね」

弘一は横島がサラッと言った話しに、衝撃を受け目を大きく見開く。

 

「まあ、昔からの腐れ縁で友達っすね」

 

「……腐れ縁………友達」

一瞬弘一の頭は真っ白になる。ドクター・カオスと魔女マリアを友人などと言う人間が目の前に居るのだ。

ドクター・カオスと魔女マリアと横島がそのような関係だとは全く考えていなかったのだ。

十師族の長たる弘一でさえ、その意味に驚きを隠せない。

十師族いや、上に立つ人間である弘一だからこそ、その意味に、真由美や横島の友人達とは比較にならない程の衝撃を受けていたのだ。

制御不能の天災錬金術師ドクター・カオスと世界最強の一角とされる魔女マリアを友人に持つ横島。口ぶりからするとかなり親密な関係に弘一は聞こえた。

USNA軍が横島に手を出せないのも、日本政府が横島の懐柔に手を焼いていたのも、これで納得がいった。

 

弘一の額に一筋の汗が流れる。

 

    ドクター・カオスと魔女マリアはまずい

 

ドクター・カオスと魔女マリア、そのとてつもない戦闘能力は一般の人間にも知られているが、そこだけではない。1000年以上も生きている生きた伝説にして、その天才ぶりは言うまでもないが、行動原理は誰も理解が追い付かないのだ。恩恵を受けた人間や国は多数あれど、その逆も同じぐらいあるのだ。

何処の国にも属せず、台風の様に各国を荒らしまわり。まさに制御不能な厄災や天災のような存在なのだ。

 

しかし、実際のカオスは善性に近い人間である。逆に悪事に全く向いていないため、悪事を働こうとすると必ず失敗するのだ。近くにマリアが常にいるため、悪事など出来ようも無いのだが………行動は常に派手で、誰にも理解されない。厄災を被った人間や国はほぼ、その人間や国に問題があったのであって、自業自得なのだ。ただ、その様な事は記録は歴史に残りようもない。

普通に接すれば、大きな問題は無いはずだ……ただ、ちょっと建物が壊れたり、街が壊滅したり、大爆発が起こる程度ですむハズ。……カオスと接するにはリスクはつきものだろう……それにあまりある成果が得られるため、大国のUSNAや大亜連合などはカオスと接触していたのだろう。

 

日本の場合、歴史上ドクター・カオスとの交流は皆無なだけに、余計に恐れている節がある。

 

 

弘一にとっても、今までの横島の在りようだけで、規格外な存在なのだが、さらにとんでもない付加価値が追加され、一つ間違えば、国が一つ滅ぶような事実を突きつけらえたのと同義だった。

 

「よ、横島くん。カオス氏とマリア女史はどのような人物なのかね」

弘一は気を取り直して、横島に質問する。

 

「え~っと、おもろいじーさんと、やさしいお姉さんって感じっすかね」

 

「はぁ?」

弘一は横島のその辺の近所の井戸端会議のような人物評に、つい間抜けな声が出てしまった。

 

「いや、普段はね。でもじーさんはいざとなると、めちゃ頼りになるし、マリアもなんだかんだと世話になっているし、俺にはもったいないぐらいのいい連中ですよ」

 

「そ…そうなのか」

弘一はこの横島の意外な返答に戸惑うが、加味して考えると、横島が、あのドクター・カオスと魔女マリアを制御出来ていると言ってもいいのでは無いかと考える。

そうなると、横島がいれば、カオスとマリアの恩恵にあずかれる可能性も高くなる。

リスクはあるかもしれないが、十師族に対し、いや、日本に対し、いや、世界各国に対し、ある意味最強のカードを手に入れたことになる。その恩恵は計り知れないものがあるのだ。

 

いまさら、横島を取り込む路線変更も出来ない。いや、さらに価値が上がったと言ってもいいだろうと弘一は考える。

是が非でも、真由美、もしくは娘達の誰かを横島と結婚させなければならない。しかも両者が好きあってくれれば尚更いいのだが。

弘一は、最初の路線を進める事にする。

 

「君が行方不明だと気が付いたのは、大分後だったと思うのだが、早くに気が付けば、こんな大事にはならなかった可能性もある。周りの友人や氷室家の人々はさぞ心配していたと思うのだが」

 

「そ、それは面目ないっす。ほんと皆には迷惑かけっぱなしで……」

 

「やはり、君には傍に誰かいてもらった方が良いのではないかと思うのだが、君は一人暮らしと聞いている。しかも、親戚は遠く離れた氷室家の方々だけと。男一人だと、普段の食事や生活も知らず知らずに乱れてくるのは仕方がないが、君は今回の契約の件もあり、こちらとしても体を大事にしてもらわなければ困る身だ」

 

「そ、それはそうなんすけど」

 

「今回の契約の件は後程話すが、七草としてもほぼ決定事項だ。ただ、君の健康管理について疑問が残るのでね。いっそう、我が家にしばらく逗留してもらい。衣食住の世話をさせてもらえないだろうか、そうすれば、君が言う、悪霊との戦い方の訓練や教育も我が家が保有している敷地内の訓練所や郊外にある大規模訓練所が何時でも使用できる。

なんならUSNA軍や千葉家との合同訓練を行ってもいい」

弘一はグイグイと横島に攻めいる。

 

「いや~、俺結構体は丈夫っすから」

 

「その君は、最近まで記憶喪失になっていたじゃないか、誰かが近くにいるだけでも、違うとおもうのだがね」

弘一は、横島が記憶喪失になったと思われる済州島で受けた戦略級魔法については触れず、飽く迄も、健康管理が至っていないなどの理由にすり替え、横島を攻める。

 

「そ、それを言われると痛いっす。しかし、三者と達也のとこも含めて四者は平等にしないと不満がでるので、七草家に逗留するのはどうかと……」

横島も、真由美の前で達也の戦略級魔法を喰らったなどとは言えず、押され気味だ。

 

「ふむ、一理ある。ならばせめて、君の健康チェックだけでもさせてくれ、君の家に、夕飯や日常の生活の負担を軽減させる手配だけでもいいのではないかね」

 

「いや、わざわざ悪いっすよ」

 

「わざわざではないよ。今後吸血鬼退治に一緒に行動する真由美を横島くんの家に、学校から直接向かい、夕飯の用意をさせ、掃除もさせる。どうせ夜間の行動となるから、ついでだ。手間は一緒だろう」

 

「おおお、お父さんな…何を言っているの!私料理なんて…!!それに男の人の部屋に、横島くんの……」

真由美は顔を真っ赤にして、弘一に抗議するが、最後は消え入る声だ。

 

 

そこで、応接間の扉が勢いよく開く。

「ぜーーーーーったいダメ!!」

香澄が大声を出して、父弘一に叫ぶ。

 

「なんだ香澄、今は接客中だ。後にしろ」

 

「お父さん!!お姉ちゃんをこの男の家に行かすなんて!!変な事されるに決まってる!!とんでもない変態なんだこいつ!!」

 

「香澄ちゃん……」

泉美はその様子をオロオロと扉越しに覗き見ていた。

どうやら、この二人、何時からか分からないが扉の外から中の話を聞いていた様だ。

 

「香澄!お客様に失礼と、何度言ったら分かるの!!横島くんはそんな事はしません!!」

真由美は香澄を叱りつける。

 

「うむ。香澄の言い分も一理ある。若い男の所に真由美を毎回一人送る事は、負担であろう。………なら、香澄、お前も、真由美の手伝いをしなさい。真由美がいけない時は横島くんのお世話をしてあげなさい」

 

「へ?なんでボクが?」

 

「お前が言ったのではないのか?真由美一人で負担させるわけにはいかないと」

 

「いや、そうじゃなくて……この男がお姉ちゃんを襲うかもしれないって」

 

「そんな事をするわけが無かろう。こう見えても、横島くんは氷室家の重要なポジションにいる人間なのだぞ。責任の取り方も十分知っている。愚かな事はしないだろう。香澄、何度も言っているだろう。自分の発言にはしっかりと責任を持つようにと、十師族に連なる七草家の娘なら尚更だ」

弘一のこの口ぶりは、どうやら、この双子姉妹が応接間の外から中に聞き耳を立てている事をしっていたのだろう。重要な個所は聞けない様に魔法で細工し、香澄が憤る場面のみ聞こえる様にしていたのだ。

そして、この展開に持って行き、なし崩し的に横島を無言の了承させ、真由美を横島の家に行かせ。ついでに香澄も上手く行けば、行かす様に仕向けたのだ。

 

「えええ!!氷室ってあの氷室?この変態が?」

 

「香澄!あなたはまだそんな事を!」

真由美は既に、横島の家に行く事よりも、香澄の失礼な発言に気がなっていた。

 

「だって~」

 

「わかったな二人共」

弘一は姉妹二人が言い合いをしている間に、そう言ってほぼ強制的に横島の家に行かすことを決定した。

 

「え?俺の意見は?」

その家族の言い争いの中、横島が介入できる隙は無かった。

 

「と言うわけで横島くん。二人をよろしく頼むよ」

弘一はさも決まった事の様に横島に軽く頭を下げる。

 

「アレ?なに?いつの間に決まったの?アレ?」

 

「仕方がないわ……香澄だけに任すわけにもいかないし……横島くん。しばらくの間よろしくお願いね。料理とかあまり得意じゃないけど、そこは許してね」

真由美はしぶしぶと言った表情でそう言っていたが、最後は顔を赤らめながら横島にニッコリとした笑顔を向けている。

 

「こちらこそって、……アレ?真由美さんまで……何を…」

 

「くっ、お姉ちゃんだけにさせるわけには……変な事したら、ただじゃ置かないから……」

 

「いや、あの香澄ちゃんも何を?」

横島の意見や言葉など誰も聞いていなかった。

 

 

「そろそろ、息子たちが帰ってくるころだ。香澄は退出しなさい。これから重要な話をする」

弘一がこう言ってこの場を締めると、タイミングよく誰かが廊下を此方に向かって歩いてくる足音がしてきたのだ。

 

香澄は横島を睨み付けてから、泉美と共に応接間から出て行く。

 

「ごめんね。横島くん。こんな事になって」

真由美は申し訳なさそうに横島に謝る。

 

「たははははっ、アレ?」

どうやらこれで、この件はうやむやの内に決定事項となったようだ。

 

 

弘一はそんな真由美と横島を見て、ニヤリとしていた。

どうやら、ここまでの弘一の策謀は、途中イレギュラーな事項があったが、順調の様だった。

 

 

 





横島のマンションが修羅場化するのは待った無しです><

横島に平穏な日々が訪れるのか?
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