横島MAX(よこしまっくす)な魔法科生   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
お返事は休日にはお返しさせていただきます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

また、投稿が遅くなりすみません。

今回はモロつなぎ要素しかない回です。
飛ばそうか迷ったのですが……



159話 横島 七草家に呼ばれる!!その3

「七草家当主弘一が長男、七草智一です。いつも妹が世話になっているそうだね」

 

「同じく、次男の七草考次郎だ」

 

「第一高校、一年の横島忠夫っす。いや~、俺の方が真由美さんに迷惑ばかりかけていますよ」

七草家の長男と次男が応接間に到着し、横島と挨拶を交わす。弘一の右側に智一、左側に考次郎が座る。ちなみに真由美は横島の右隣りに座ったままだ。

智一は現在25歳で既に既婚者だ。家を出て都内で夫婦で暮らしており、見た目もそうだが父親とは違い毒が無く真面目な好青年である。

考次郎は23歳、大学を出て、七草家直属の魔法研究所で、研究に没頭し、家に帰ってくることは滅多にない。勿論結婚はしていない。父弘一と似て、眼光が鋭い。

 

「わざわざ俺を研究所から、呼んだのは何故だ?重要な案件は兄さんと父さんで決定すればいい話だろ。しかも、今回の話は既に決定しているはずだ。俺はそれに従うのみだ」

考次郎は憮然としながら、弘一を見据える。

 

「考次郎そう言うな。この横島くんは、我々が手こずっていたパラサイトの撃退方法を教えてくれるとの事だ。興味があるだろう?」

 

「本当なのか?君は氷室の人間と報告を受けている……しかもパラサイト(悪霊)を憑依した人間から分離させたとも聞いている。氷室でも秘術だろうその古式魔法を教えてくれると言うのかい?」

考次郎は先ほどとは違い、横島に話しかける口調が柔らかくなっていた。どうやら魔法を教えてくれると言う話で一気に機嫌が良くなったようだ。考次郎は魔法力が真由美や智一よりも高く、高レベルの魔法も苦も無く行使できる実力者である。また、新たな魔法研究に関して並々ならぬ感心を持っている青年でもあるが、どうも一つの事に集中すると他が見えなくなり、それ以外の事はおざなりになる傾向がある。

 

「いや~、さすがに氷室独特の術式を教えるわけにはいかないですし、相当修行しないと扱う事もできないでしょうしね。まあ、悪霊を対処する方法は他にも幾つかあるんで」

 

「そうなのか、……そう言う事ならば、俺がここに来た意味は十分にある」

考次郎は納得した様にそう言った。

 

「まあ、そう言う事だ。横島くん。先ほども言った様に、基本的に七草家と十文字家は横島くん達と協力体制をとるつもりだ。その契約の内容については今から幾つか確認したいのだがね。十文字家とは当主同士ですでにすり合わせ済みだ。後の細かいところは此方に一任されている」

弘一は改めて、協力体制について切り出す。

 

「了解っす」

 

「まずは、協力体制については横島くんと契約させて頂くとして、細かい内容なのだが、我々からは真由美と十文字克人君が君の悪霊退治に同行させてもらい、君からノウハウを大いに学ばせてもらうよ。

また、大がかりな捕り物になる場合は横島くんの指示で真由美、克人君を通じて我々の組織の人間を動かしてもらって一向にかまわない。まあ、邪魔にならなければと言う前提が付くが……」

 

「今回の悪霊は厄介で、俺でも近くに行くまで判別が付きにくい隠密性に優れた悪霊の様なんです。

皆さんの、霊視による判別ができないにもかかわらず、悪霊に取りつかれた人間をあぶり出し、追跡していた組織力は流石ですね。手伝っていだたくと非常に助かります」

横島は先ほどより、若干丁寧な口調になり弘一の提案をありがたく受ける。

 

「重要なのはここからの話しなのだが、我々が一番危惧している事なのだが……

具体的に、君は我々に対悪霊対策をどのように、示してくれるのかね。

今さら、新しい魔法を作る時間も無い、かと言って古式魔法を使えるわけではない魔法師である我々にだ」

 

「丁度それが届いたんで、持ってきました」

横島は一緒に持ってきた大きめのスポーツバックの様なものから、大小二つのジェラルミンケースを取り出す。マリアが横島の自宅に持って行く予定だったカオスからの届け物の一部であった。

真由美との待ち合わせの前、横島はマリアを呼んで、カオスの届け物の中身を精査していたのだ。

 

「これは霊視ゴーグル、これで霊視が出来ない人間でも、ある程度の霊気や霊力の確認が出来たりしますが、今回の物は霊的な存在や悪霊などの波動を感知するのに特化してます。それと、悪霊などが関わった霊的遺物や人間などでは到底なしえない様な形跡もこれで探すことができるしろものです」

小さなケースからはスキーで使うゴーグルのような物を二つ取り出す。

 

「霊気?……ああ、サイオン量を測定する機器という事か……」

弘一は一つを横島から受け取る。

 

「な!?……こんなコンパクトなものが……」

その横では考次郎は驚きの声を上げる。

 

「いや~、意味合いが違いますが、……まあいいや。取りあえずかけてみて下さい。対象の人物の霊気の波動を測定する機器っすね。霊的な存在や悪霊に対してはその造形をクッキリ映します。どんな生物も霊気を帯びてますので、一応感知しますが感度を低く設定してます。霊気や霊力が大きい人や生物には反応しちゃいますね。……丁度いいや、皆さん霊気…サイオン量も多そうだし、右のスイッチを押してください」

そして横島は隣の真由美にも渡しながら説明する。

 

「おお!?ぼんやりと、人に色がついたように見えるな。考次郎が一番、色が濃く見える……これがサイオン量に比例するのか」

 

「ホント、凄いわねこれ……でも、横島くんには何も見えないわ?」

真由美はゴーグルを掛けたまま、隣の横島を見る。

 

「今は、霊力を抑え、霊気を隠しているので……」

そう言って横島は少し霊気を解放する。

 

「え?……横島くん?全身が均一に強く光っているのだけど、しかもボヤッとじゃなくて、クッキリと」

真由美は急に横島が発光し、青白い光を帯びているように見えたのだ。

 

「そうですね。俺の場合霊気コントロールをしているので、全身に均一にね。だからそう見えるんです」

 

「……横島くん、君は何の補助もなくサイオンやプシオンさえもを自由に操れるのか…………」

弘一もゴーグルを掛けた状態で横島を見据え、静かに驚きの声を上げる。

 

「意味合いは大分かわるのですが……まあ、現代魔法に翻訳すると、そう言う事になりますかね。……悪霊も同じことをやってきます…と言うかそれそのものが本体のような連中ですから」

 

「なるほど……」

 

「凄いな……」

智一は漸くここに来て小さく声を上げる。

 

「父さん!俺にも見せてくれ!」

考次郎は新しいおもちゃを見つけた様に興奮気味に弘一から霊視ゴーグルを受け取る。

 

「横島くん。これは凄い物だ。悪霊捜索や悪霊との戦闘で大いに役に立つ……それだけではない。対魔法師戦闘でも、これは使えるかもしれない……場合によっては……」

弘一は悪霊対策以外の利用方法をどうやら模索している様だ。

 

「まあ、流石に本物の霊能者に比べれば性能は格段に落ちますが、無いよりはずっとましと言う程度です」

 

「霊視とは、なかなか凄まじい能力のようだね……君は魔法発動や魔法師の位置を事前に察知できるのかな?」

智一は横島に質問をする。

 

「そう言う事になりますね」

 

「……君の前では魔法師は丸裸同然というわけか……出来るだけ数が欲しい。用立てしてくれないか?」

弘一は考えをまとめるようなしぐさをしながら、横島に売ってくれるように言う。

この霊視ゴーグルに価値を悪霊対策以外にも見出しているようだ。

 

「まあ、そのつもりですけど、それって一部非常に貴重な物が使われているんで数は無いはずですよ。しかも、USNAや千葉家にも渡さないといけないから、それ程用意できないんで」

このような霊具に使われているクオーツと呼ばれる精霊石の一種は、ほぼこの世界のレリック(オーパーツ)と同じであり、非常に希少であるため、通常手に入れることはできない。しかし、この霊視ゴーグルに使われているのクオーツの部分は、実は横島が作成した水晶の欠片に、霊気を封入した物をコアとして代用されているのだ。

しかし、横島はあえてその事は伝えず、現状では多量に渡すつもりもない。特にこの霊具は、一般の人間でも調整次第では霊気を辿り、特定の人間を探るなどの事もできてしまう。それを特定の組織や人間だけに渡すことは、政治的要素や軍事バランスなどに影響しかねない代物だと、少なくとも横島は考えていた。特に弘一のような野心的な人間には危険だと……

後は多量生産や一般化できる目途が立てば、カオス作、六道家などから販売もやぶさかではないのだが……

さらに今回の物はカオス作だ。少数渡したところで、複製は難しいだろう上に、無理矢理分解しようとしても、とんでもないトラップも間違いなくしこんでいる。また、コアとなるクオーツの代用品も現世では横島ぐらいしか作成できないだろう。

 

「そうなのか………出来るだけ此方に回してほしいものだ」

 

 

「いや~、まあ、その内にっすね。で、次、いいっすかね。これ」

横島は大きなジェラルミンケースを開け中身を弘一たちに見えるようにする。

 

「これは銃の様だが……」

 

「……旧世代のショットガンの様に見えるね」

智一はどうやらこの形状の銃を見たことがあるようだ。

 

「ショットガンと同じ感じです。通常弾は使えないけど……特製の弾丸を打ち出すための銃で、あまり銃器に慣れてない方にお勧めですね。弾丸内には悪霊退散の破魔札が複数入っていて、発射された弾丸は途中で分解して8枚ほどの破魔札が放たれ、目標に向かって飛んで行くようになってるんですよ。古式魔法師なら、投げるだけで多分正確に目標に飛ばすことが出来るんですが……多分、通常の魔法師では難しいんでこちらの方が良いかと、射程は30m位と思ってください」

此方もカオス作の破魔札発射式のショットガン。中身の破魔札は横島自作の破魔札になる。氷室や六道も破魔札を扱っているが、売り物にはしていないため数も無いはずだ。実際に悪霊(パラサイト)など殆ど出くわすことが無いからだ。

弾丸自身にも術式が埋め込まれており、此方も横島が最終的に霊力を封入している。

 

「ほう、これがあれば悪霊にダメージを与えられるのかい?」

 

「そうっすね。勿論、人にとりついた悪霊にも効果がありますよ。威力と効果が異なる弾丸も数種類用意してます。実際には中の破魔札と弾丸の薬莢の効果の違いです。中身についてはおいおい説明することにしますが、これならばそこそこ数は用意出来ますよ。まあ、買ってもらう事になりますが……」

破魔札ショットガンや霊視ゴーグルにしろ、マリアの記録に設計が残っていたのだが、横島が要求する出力や効果を調整したうえで、この短期間で作成し、量産体制まで整えるとは流石はドクター・カオスと言ったところだろう。

 

「なるほど、これならば我々でも何とかなるかもしれん」

弘一はショットガンを手に持ち、唸る。

 

「それにしても、このようなものがあるなど聞いた事も無いな」

考次郎の知識の中で、退魔用の霊具が存在する事すら知らなかった様だ。

知っている方が稀である。日本では氷室や六道等、ごく一部でしか知られていないからだ。

 

「横島くんは本当に陰陽師なのね」

真由美も感心した様に横島の横顔をまじまじと見ていた。

 

「現代の陰陽師か……東北の氷室家、そして、関東では六道家か……時代に取り残された旧家だと思っていたが……そうではなかったという事か」

考次郎はどうやら、魔法師協会にも古式魔法の団体や国家にも所属していない氷室家や六道家を時代錯誤をしている旧家程度に思っていたのかもしれない。

 

「あと、護身用に護符も買ってくださいね。ちゃんと退魔用護符とかいてあるものを……これらの霊具も全部六道家のショップから買えるように手配します」

 

「六道家か……うーむ。横島くん……困ったな…関東の魔法協会……十師族、特に七草家と六道家は仲が悪い。お互い同じ縄張りを持つものだけにね。……君からか、氷室家から直接買う事は出来ない物かな?」

弘一がこういうのも仕方がない話である。六道家と関東魔法協会は何かと利権や縄張り争いでいがみ合ってきたからだ。

 

「うーん、一応、六道家を通すのは、氷室の商品も関東での販売は六道家からなのと……。

物を買う事によって、その縄張り争いに目を瞑ってもらおうかなと言う思惑もあるんですよ。あわよくば手伝ってもらおうって言う魂胆も持っていたりして……少なくとも六道家は心霊医療が出来るんで、悪魔に長期に取りつかれた人を治療してもらおうかなと思って……せっかくだから、この際、仲良くしてはどうっすか?」

特に六道家当主の式神の中には、治癒に特化した能力を有し、悪魔化がかなり進行した人間も治療が可能なのだ。

 

「なるほど、そう言う事か、しかし、よく六道家が我々に物を売る気になったものだ。長年、お互いをけん制し、無視を決め込んでいたのだが……」

 

「いや~、それはこれからなんですよ。まだ、俺も六道家の本部に行ったことが無いんで」

 

「まだだったのか、それは大丈夫なのかね?」

 

「氷室14代目が15代目が一緒に頼んだらきっと大丈夫だとは言ってたし」

 

「そ…そうなのか、それは横島くんにまかせるしかないのだが……」

 

「まあ、その辺は任せて下さい」

軽い感じで言う横島に弘一は多少不安を覚えるが、この件に関しては任せるしかないのだった。

 

この後も、順調に協力体制の契約の確認を行い、短時間で同意に至った。

 

 

そして、弘一達と横島は敷地内の訓練所へと移動する。

横島が真由美を通じて打診していた通り、七草家の家人を一カ所に集めてもらっていた。

悪霊に取りつかれている人間がいるのかをあぶりだすためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回で七草家編終わりです。
次回は悪霊のあぶり出しと……
その後に危険地域への帰還が待ってます><

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